第23話 朧ノ国①
結局、その晩は久し振りのティ穴に俺の興奮は冷めやらず、夜が明けるまでに三回も中出ししてしまった。
浅い眠りの後、目が覚めた頃には、完全にすっからかんとなっていて、暫くエロいことをする気力など起きないと確信できるくらいに、燃え尽きていた。
やってる最中、ティアナに「もう、いい加減にして!」などと怒られることもなく、俺たちはずっと激しく求め合い、目が覚めると、普通に優しく「おはよう」とキスしてくれた。
てか、普通にこいつのベッドで一晩を過ごしたけど、お母さんに何か思われないだろうか……。
ドキドキしながら朝の食卓に向かう。
ティアナの母が用意してくれていたのは、焼き立てのパンに野菜スープ、卵料理といった、至って普通の朝食。
だが、これがいい。落ち着く。
ありがたく頂いた後、ギルドに行く昼までの間は、昨日の続きでティアナに召喚魔法の指導を続けてやった。
「さて、じゃそろそろ行くけど、課題はちゃんとやっとけよ」
「わ、分かってるわよ!」
「次会う時にはレベル6くらいまでは上げておくようにな」
「……次って、いつ?」
「ん? お前に『精神感応』で呼ばれたら、いつでも来るけど」
「わ、私が呼ぶんじゃなくて、あんたの方から――」
「……ま、今回の冒険が終わったら、すぐに来るから」
「だから、それがいつになるのかって――」
「いや、それは分らんけど」
「じゃ、じゃあ……待ちくたびれたら呼び出すから」
「おう、いつでも待ってる。遠慮するなよ」
別れ際、ティアナはほんのり赤い顔で視線を逸らす。
その表情がたまらなく愛しすぎて、思わずキスをしてしまったが、ティアナもそれに応えて、俺をギュッと抱きしめ、軽いキスどころか自然と舌を絡め合う濃厚なキスへと変わっていった。
◆◆◆
予定の時間にギルドへ到着する。
受付嬢に案内され、俺は依頼者と顔を合わせた。
現れたのは、黒髪に黒い瞳を持つ中年の男。
アルナの街で見かける人たちとは雰囲気が違い、衣服もどことなく和を思わせる。
なんか日本人っぽい感じか?
「はじめまして、冒険者殿」
男が差し出した右手を、俺は握り返す。
「どうも、ヒロシです」
「拙者の名は田中と申す。では、早速依頼の内容だが――」
田中って……。
しかも一人称、拙者かよ。
間違いなく日本人だろ、これ。
髪型はさすがにちょんまげじゃなく、普通の短髪だけど。
◆◆◆
田中さんの話を要約すると――
一ヶ月ほど前に突然、朧ノ国が、外敵の襲撃を受けたらしい。
その正体については「現地で確かめてほしい」の一点張り。
どうやらアルナの街に限らず、近隣各地のギルドに声をかけ、腕利きの冒険者を募っているようだ。
その話を聞いて、一瞬オフィーリアを誘おうかと考えたが、まずは状況を確認してからにすることにした。
現地に着きさえすれば、『瞬間移動』でいつでも連れてこれるしな。
俺たちは早速、東の海港へ向け馬車に乗り込む。
道のりは馬を飛ばして五日ほど。そこから更に船で数日を要するという。
揺れる車内は思った以上に狭い。
むさ苦しいおっさん二人旅……なかなかキツいものがあるが、それ以上に胸の奥では、年甲斐もなく、未知の国へ向かうワクワク感が高まっていくのを感じていた。
道中、『無限収納』で日用品をポイポイ放り込んでいたら、田中さんに「な、何ですか今の術は!?」と驚かれたりもしたが、特にアクシデントもなく港へ到着する。
空は澄み渡り、潮の香りが鼻をくすぐる。
異世界でも海は同じだな、と少し感慨にふける。
案内された小舟に乗り込むと、グラグラ揺れて頼りない。
……クラーケンみたいな大型の海洋生物とかいないよな?
一発で沈められそうなんだけど。
そんな不安を胸に出航したが、波は穏やかで特に危険を感じることなく船は進む。
船上で釣りを楽しみ、新鮮な刺身に舌鼓を打つなど、緊張感のないバカンス気分のまま俺たちは目的の港へと到着したのだった。
――陸に降り立った瞬間に分かった。
こっちに転移してからは感じることのなかった、懐かしい気配。
それは決して心温まるようなものではなく、むしろ気が滅入ってくるような感じ。
「ヒロシ殿、どうかされましたか?」
周囲を警戒し、集中力を高めた俺の様子に、田中さんはすぐに気づいたようだ。
「……いや、何でも。急ぎましょう」
港に手配されていた馬車に俺たちは乗り込み、先へ進む。
「こ、これは……もうこんな状況にまで……」
田中さんは馬車の外の景色を見て、絶句する。
俺も田中さんの肩越しに確認してみると、そこには瓦屋根の家々が無惨に崩れ落ちた村の姿があった。
竹垣はなぎ倒され、朱塗りの小さな祠は黒く煤にまみれ、白壁の土蔵はまだ燻る煙を吐き出している。
道端に打ち捨てられた人々の遺体は、着物の色さえ分からぬほど汚れと血で変色していた。
「今回の討伐対象の敵っすか?」
「――はい」
田中さんは唇をギュッと噛みしめ、握りしめた拳はわなわなと震えていた。
――三日後。
俺たちはこの国の都『夢見京』へと辿り着いた。
道中で立ち寄った村はことごとく壊滅しており、そのたび胸に重苦しいものがのしかかってきた。
都の城壁は黒ずんだ焦げ跡や大きな亀裂に覆われ、崩れ落ちそうな箇所も少なくない。
城門を抜けて街に入る。
昼間だというのに通りは不気味なほど静まり返り、生活感というものが感じられない。
店は閉まり、暖簾は色褪せて破れ、住人はうつむいたまま足早に過ぎ去っていく。
「こちらになります」
馬車が止まったのは、広大な石畳の前庭を備えた高台の屋敷だった。
屋敷は重厚な木造建築で、瓦屋根は幾重にも重なり、軒先には鯱や獅子の装飾が施されている。
屋敷全体から歴史の重みが漂い、ここに住む者の高貴な身分をひしひしと感じさせた。
――こんな立派なお屋敷に住むお嬢様がいたら、何ポイントくらい貰えるかな。




