第20話 サフィラ
三日後の夜。
《精神感応》でミレナから、ギルドの酒場で待機するよう連絡が入る。
ギルドは二十四時間営業しているとはいえ、夜も更けると人影はまばら。
俺は騒がしいパーティーのテーブルから離れ、一人でひっそりと酒を呑んでいた。
『今、ギルドの裏に馬車を回しましたので、乗って下さい』
再び、ミレナからの連絡。
俺はウェイトレスに金を渡すと席を立ち、指示通り裏手に回る。
そこには、伯爵家御用達らしい豪華さはなく、至ってシンプルな馬車が用意されていた。
乗り込むと、待ち構えていたミレナが目線を合わせる。
『目立たぬように、今日は裏門から入ってもらいます』
『なんで、《精神感応》で話しかけてくるんだよ。横にいるのに』
『御者に会話を聞かれるわけには参りませんので。今夜の出来事は、貴方も墓場まで持って行って下さい』
『はいはい』
敷地に入り、馬車を降りる。
月明かりに晒されぬよう、俺たちは屋敷の影に身を潜め、裏口へと進む。
そして誰にも気付かれないように警戒しつつ、サフィラ様の部屋へと向かう。
――さすが猫だな。
ミレナは足音一つ立てずに滑るように歩いている。
屋敷内は必要最低限の照明しか点いておらず、静寂に包まれていた。
やがて先を行くミレナの足が止まり、コンコンと小さくノックする。
すると扉が静かに開き、俺たちは、そっと部屋へ滑り込む。
目の前に現れたのは、夜着に身を包んだサフィラ様。
電気は消され、月光だけが大きな窓から差し込み、その白い顔と、銀色の猫耳と髪を柔らかく照らす。
まさに息を呑むほどの美しさ。
俺は思わず片膝をつき、敬礼してしまった。
「なにをしているのです?」
サフィラ様が困惑したように問いかける。
「あ、すんません……気品に圧倒されて、体が勝手に」
「ふふっ……貴方は魔王様なのですから、あまりそのようなことはなさらぬ方が宜しいかと」
「気をつけます……」
サフィラ様は窓の方へ目線を向ける。
「月がとても綺麗ですね」
「そうっすね」
俺も横に並び、静かに蒼い月を眺める。
「俺の故郷では、『月が綺麗』という言葉には、もう一つ意味があるんすよ」
「そうなのですか? どういう意味でしょう?」
「――あなたを愛してます、という意味です」
中年太りし始めたおっさんが、こんなこと言っても全然締まらないな……。
「魔界でも、そんなロマンチックなやり取りをしているのですね」
「あ、魔界じゃないっす。俺が魔界に転生する前のことで――って、ややこしい話なので、一旦忘れてください」
「秘密の多い方、わたくしは好きですよ」
「光栄です」
そのまま無言で暫く月を鑑賞していると、サフィラ様が口を開く。
「さて、もう夜も遅いです。貴方も眠くなってくるでしょうから、そろそろ始めましょうか」
柔らかく微笑むその瞳に、思わず吸い込まれそうになるが、意識をしっかりと保つよう踏ん張る。
「……了解っす」
とは言ったものの、どうやって始めればいいんだ、これ……。
このまま、脱がしちゃっていいの?
困惑していると、部屋の隅に控えていたミレナが静かに近づいてきた。
そして、俺の衣服を手際よく脱がし始める。
「え? 何でお前に脱がされてんの?」
「念の為です。気にしないで下さい」
ミレナは器用に俺を生まれたままの姿にさせると、前回同様、事務的に、しかし念入りにボディチェックを始める。
「オーケーです。では、ベッドで待機していてください」
そう言うと、軽く背中を押され、ベッドに押し込まれる。
何の流れ作業だよ。
「お嬢様、失礼します」
ミレナはそう告げ、続けてサフィラ様の夜着に手をかけようとすると――
「わたくしは大丈夫です。……恥ずかしいので、貴女は戻ってもらえる?」
その言葉に、ミレナは素直に頷き、扉の近くまで下がって待機の姿勢を取る。
あ、良かった……。
間近で監視されながらやるわけじゃないんだな……。
俺に背を向けたまま、サフィラ様はそっと夜着を脱ぐ。
月明かりが差し込む部屋で、その白い肌が柔らかく浮かび上がる。
尾から伸びる銀色の尻尾までもが、光を反射するかのように滑らかに輝いていた。
目の前のプリプリした生尻に、俺のチ〇コはビンビンになる。
やべっ……暴発しないように気をつけんと……。
サフィラ様はそのままするりとベッドに潜り込み、俺に身を寄せる。
「では、宜しくお願いします。お話した通り、わたくしは何も分かりませんので、全てお任せいたします」
「は、はい……頑張ります」
俺は三日前のミレナの指導を思い出しながら、進める。
まずは、猫耳を優しく撫でるんだったな……。
で、キスっと。
――やべぇ。
めっちゃ唇柔らかい……。
あと何で、こんないい匂いすんの?
香水の匂いでもないし、何これ?
匂いだけでイキそうになったが、必死に我慢しご奉仕させて頂く。
時おり漏れるサフィラ様の吐息に、ますます興奮は高まっていく。
途中から、ミレナが部屋に待機していることなどすっかり頭から消えるほどに、俺は集中していた。
……もちろん何も知らないサフィラ様の下半身には、ミレナに指導された以上のエロいこともこっそりとやらせてもらっている。
そして、頃合いを見計らい、俺のチ〇コは肉体的な膜と同時に、種族の垣根も階級の壁も優しく貫いた。
押し寄せる快感の波を、素数を数えることによって何度か乗り越えたものの、時間にすると、やっぱり数分程度だろう。
全てを絞り出すように、俺は果てた。
荒い息を吐いていると、サフィラ様がそっと俺の腕を取り、その上に頭を預ける。
肩に伝わる温もりに、ようやく緊張がほぐれる。
「思っていたほど、痛くはなかったです。お疲れさまでした」
「……俺も全然経験が浅いので、どうなるかと緊張してたんすけど、無事に終わって良かったっす。じゃ、早速スキルを――」
そう言ってスマホを取り出しかけると、サフィラ様はそっと俺の唇に人差し指を押しつけ、静かに制する。
「わたくしの初めてを捧げました。図々しいお願いかと思いますが、羽織の魔力回復の他にもお願いしたいことがございます」
「あ、え? ああ、多分ポイントは少し余るからそれで別の――」
「そういうことでは、ございません」
サフィラ様は微笑みを浮かべ、静かに続ける。
「わたくしと契約をして頂けませんか?」
「契約……?」
「はい。貴方と婚姻を結ぶことは叶いません。であるなら、せめてわたくしの守護者として、見守って頂きたく思っております」
「ああ、そんなこと……」
俺は軽く笑みを漏らし、付け加える。
「俺は、中出しした相手とは魂の底で繋がります。どんなに遠く離れていても、俺と連絡を取ることができる。俺の力が必要な時は、いつでも呼んでください」
「え? もう、わたくしとも……そのようなことが可能に?」
「はい、あと《魔王の加護》も自動的に付与されました。詳しいことはミレナにお聞きください」
ミレナが蒼月の羽織を手に、俺たちの元へやってくる。
俺は《魔具創造》のレベルを5まで上げ、羽織に魔力を付与する。
すると、羽織は深い蒼色の光に包まれ、その光がゆっくりと染み込んでいった。
「お、力を取り戻したな。なるほど、周囲から姿を消す隠密能力があるのか」
「――どうしてそれが!? 能力は秘匿していたのに??」
「あ、すんません。能力まで分かっちゃうんすよ。てか、まだ隠されてる能力がありますよ?」
「な、なんと――それは、わたくしも初耳です。何でしょうか?」
「精神攻撃耐性っすね。悪意ある精神支配を弾いてくれるみたいです」
俺がそう説明すると、サフィラ様は一瞬目を見開き、じっと考え込むような仕草を見せる。
まだ全裸だから、少しサマになっていない。
「なるほど……わがアルナ家が数百年前の政争を生き延びた秘密が、何となく見えてきました」
そして、俺に向き直り問いかける。
「その力まで取り戻すには、あとどれ位のポイントが必要でしょうか?」
「え? そうっすね……多分、70万弱くらいかな?」
頭の中でざっと計算し、答えを出す。
「では、あと四回ほど夜を共に過ごせば、可能ですね?」
「お、お嬢様!? 私がこの男の相手をしますので、ご無理はなさらないで――」
いや、お前のポイントだと毎日やっても全然足りなさそうだけど……。
「無理などしておりません。わたくしは今日、とても満たされた気持ちに包まれました。これからもわたくしの守護者となって頂くお方です。体を重ねるほどに、精神的な結びつきも強まると考えます」
「そ、それは――」
「ということですので、ヒロシ様、今後とも宜しくお願いいたします」
まだ納得がいかない様子のミレナを無視し、サフィラ様は俺に向かって柔らかく微笑みかけた。
この夜の出来事の詳細は、ノクターンに連載中の
「 元・魔王の中年童貞のエロ日記 」
ep07. アルナ伯爵ご令嬢サフィラ様との性交
にて公開してます。
宜しければ、そちらも読んで頂けると嬉しいです!




