第16話 元・魔王、手に職をつける
翌朝。
ギルドで《魔具創造》の仕事をこなす前に、俺はティアナの部屋へ瞬間移動した。
ちょうど着替え途中だった彼女は、半裸のまま固まり、次の瞬間――腰を抜かすほど驚きの声を上げる。
「ちょ、ちょっと!! 何なの突然!? 着替えてるんだから出てってよ!!」
衣服で胸元を必死に隠し、顔を真っ赤にして抗議してくる。
「別に今さら恥ずかしがる必要ないだろ。何回中出しした仲だと思ってんだ?」
「そ、そういう問題じゃないから!!」
構わず俺は話を続ける。
「とりあえず、今みたいに俺は瞬間移動で、いつでもここに来れるようになった。で――」
《精神感応》を発動。
頭の中でティアナに語りかける。
『俺とお前は、この通り精神で繋がった』
「えっ!? なにこれ!? 頭の中にあんたの声が響いてるんだけど!!」
『お前も試してみろ。頭の中で俺に話しかけるんだ』
「え……?」
ティアナは困惑顔のまま固まっていたが、やがて恐る恐る意識を向ける。
『こ、こう? 聞こえる?』
『ああ、バッチリだ。そんな感じでいい。これから俺の力が必要になったら、いつでも呼べ。治療でも、魔獣退治でも』
『わ、分かった。こんな風にあんたをイメージして話しかければいいのね?』
『おう。……ってか、久しぶりに会ったら、やりたくなっちまった。今からどうだ?』
『やらせるわけないでしょ!! 馬鹿!! 変態親父!!』
……あっさり拒否された。
最近、イラーマやオフィーリアと愛のあるセッ〇スを重ねてきたから勘違いしてたが、俺は冴えない中年太りであることを思い出させられた。
そのまま帰るのも何なので、ティアナの母さんが用意してくれた朝飯をありがたく平らげ、俺はアルナの街へ戻るのだった。
◆◆◆
ギルドの酒場に入ると、昨日依頼してきた連中が、そわそわしながら俺の到着を待ち構えていた。
「よう、待たせたな」
「あ、ああ! 待ってたぞ。ほら、約束の金だ」
男は勢いよく金貨十枚を差し出してくる。
これ一枚で数ヶ月分の食費にはなるはずだ。
そして、おずおずと大事そうに剣をテーブルへ置いた。
手入れが行き届いていて、刃も鞘もピカピカに光っている。
「なかなか良い剣だな」
「だろう? 商売道具だからな。買った時は150万もしたんだぜ」
俺はその剣に手をかざし、《魔具創造》を発動させる。
掌が淡く光を放ち、それに呼応するように剣は黒い魔力を纏い始めた。
「おおっ!」
「すげぇ!」
「しかもノーモーションでスキル発動だと!?」
周囲を囲んでいた野次馬たちからどよめきが起こる。
男は感激した表情で剣を握り直した。
「……ありがてぇ。これで、もっと高ランクの依頼に挑戦できそうだ」
「そうか、それは良かったな」
すると、すぐにその男を押しのけるように、大柄な若者が前に出てきて席に腰を下ろす。
「お、おい! おっさん、次は俺だ。この斧を頼む!!」
金貨と共にテーブルへ叩きつけられたのは、刃こぼれこそしているが、見るからに重厚な戦斧。
その頑丈な造りは、鍛え上げられたそいつの肉体によく似合っていた。
――ん? あれ……こいつ。ひょっとして。
俺は手招きで呼び寄せる。
若者は「なんだ?」と眉をひそめながらも、警戒しつつ顔を近づけてきた。
俺はその耳元へ口を寄せ、周りに聞こえないよう小声で囁く。
「お前、オフィーリアとやったことある?」
「……え?」
俺は自分の耳に手を当て、「内緒だぞ」とジェスチャーする。
若者は一瞬きょとんとしたが、すぐに意味を察したのか、周囲を気にしつつ口元を手で隠して答えた。
「……い、一回だけな。酒の席で酔った時に、あいつの部屋に連れ込まれて」
やはりか。
マジでゴリマッチョには目が無いんだな。
俺はさらに小声で追い打ちをかける。
「で、どうだった? すぐにイった? あいつの締まり、やばいだろ」
「そ、そうだな……。10分くらいしか持たなかった気がする」
10分か……。
それでも俺よりは充分、長持ちしてるな……。
俺はさらに声を潜めて訊く。
「ゴムは着けてたか?」
「あ、ああ。もちろんだ」
……なるほど。
生の方が全然気持ちいいって話はよく聞く。
もしこいつもナマでやってたら、俺と同じくらいで果ててたかもしれねぇな。
てか、いまだにゴム着けてやったことないな、俺。
「そ、そんなことより!」
男は赤面したように咳払いし、斧を指さして急かしてくる。
「分かってるよ」
俺は軽く笑い、手をかざす。
再び《魔具創造》を発動させ、斧は禍々しい黒の魔力を纏っていくのだった。
そんな感じで、今日だけで四人の武器を魔改造した。
明日の予約も受けたし、不安定な冒険者ではなく、魔改造屋としても生計を立てられそうだ。
A級にランクアップしたばっかだけど。
となれば、オフィーリアの部屋に居候するのもそろそろ卒業だ。
そう考えた俺は、ギルドを出ると不動産屋を巡り、さっそく部屋探しを始める。
《無限収納》があるから、部屋は別に広くなくてもいい。
ただ、水回りとか陽当たりとか、その辺にはこだわりたい。
あと隣人とかいるとうざそうだから、出来れば一軒家だな。
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