魔術師(1)
一方、話題の渦中にいる聖女と護衛はというと……
「聖女様、あまり窓にへばりつかないでください……
せっかく、あれだけ考えた装いが台無しになります。」
さっきまで、窓に近寄って大量の紙がばらまかれている様子を見ていた聖女が、窓から離れ護衛である聖騎士の方へ顔を向けた。
「もー。
レオたっらほんとに頭硬いんだからー!
装いって行ったらホントあんたにお似合いよ、その服。ちょー可愛い♡
私が見立てただけあるわ……マジ天才かも」
「はぁ……
ホントにアナタのワガママには付き合いきれませんよ……
絶対アイツらにバカにされる……」
「特に先生とか、魔術師は絶対爆笑してるわ。
ていうか、誰も見てないしいつも通りで接しなさいよ。なんかムズムズするわ」
そう言うと、さっきまで姿勢よく立っていた彼は、壁にもたれ掛け、気配を和らげた。
「あぁ、そうする。
で?アネモネはほんとにアイツらが来ると思うのか?」
「絶対くるわ!
だって、こんな面白いものを世界中に配ったのよ!
ただの置き手紙じゃダメだったけど、私はそんなんで諦めるたまじゃないわ。
これだったらアイツらも絶対くるはず!
だって、アナタがこんな可愛らし格好してるのよ!
バカする絶好の機会を逃すはずないじゃない」
そう言う聖女の顔はイタズラを計画している幼い子供のように目をキラキラさせていた。
「最悪の理由だよ。
ていうか、ほんとお前は鋭いのか鈍感なのか分からんよ。
置き手紙の件も、理由はお前が最後に余計なこと書くからだろ。」
「ふっふーん。
だって必要事項だもの!
レオは誰が1番に来ると思う?」
「魔術師だろ。」
「だよねー。」
聖女は満足そうに頷くと、もう一度窓に視線を戻し、魔術師と出会った当時を思い出す。