第7話 いざ、サンセルトの町へ
思いのほか長いお話になってしまいました。すみません。何か気になる点があれば感想にどうぞ!
「………………」
「………………」
呪いの竜と戦った地に戻ってきた神官の女はひどく驚いていた。
少し前に自身が涙して別れた男が地面に横たわっているからだ。
「…あの……」
「……………」
「生きてますよね?」
「あぁ」
「やっぱり回復魔法かけますね?」
「……その…頼む…」
神官の女は倒れている男の右隣に座り回復魔法をかける。
このとき男は兜をつけててよかったと心の底から思っていた。
(少し前に回復魔法はいらないと言っておいて回復魔法をかけてくれと頼むとは…恥ずかしすぎて顔を直視できん)
そうして回復魔法をかけてもらっている途中、男はずっと顔を逸らしていた。この時も2人に会話はなかった。
「……………」
「……………」
そして回復魔法をかけてもらったあとも無言の時間は続いた。とうとう耐えかねて男から神官の女に喋りかける。
「…回復魔法、本当に助かった、ありがとう」
「いえ、ですけどそんなに危険な状態だったならきちんと話して欲しかったです!」
「回復瓶が全部割れてしまって…いや、申し訳ない………ところでなぜここに戻ってきたんだ?忘れ物か?」
そう男が口にすると神官の女は即座に男に質問を問いかける。
「お名前を聞くのを忘れていたんです!」
「名前?名前なんかを聞くために戻ってきたのか?」
「はい!知りたいと思っていたので聞きにきました!」
「…そういえば君の名前も聞いていなかったな」
神官の女は口を開きハッとする。
「確かにそうでした。私も名乗っていなかったですね。…では改めて」
「私の名前はエリシア・セインレットと言います」
「…………」
「俺の名前はウェイン……ウェイン・ノクナリアと言う」
「ウェインさんですね…格好いいお名前です!」
「………ありがとう。名前を褒められたことはあまりなくてな…俺もエリシアという名前は君に合っていていいと思うぞ」
「え?あ…はい…ありがとうございましゅ…」
エリシアは本日何度目か分からないが顔を赤くした。
(よくこの子は顔を赤くするな…照れ屋さんなのか?)
(名前を褒められただけなのに…なんで顔が暑いんだろう…?)
ウェインは赤面することについて疑問に思いつつ別の質問をする。
「エリシアはどこの町に行く予定なんだ?」
「ふぁぃ!へ?えっとその[サンセルト]という町に向かう予定です!」
(なんか変な声出ちゃった…///)
それを聞いたあと、ウェインは少し考える素振りを見せて言う。
「[サンセルト]の町に向かうんだな?」
「そうです」
「俺は[サンセルト]の町のギルドで依頼を受けたんだ」
「ということは行き先は同じなんですね!?」
「そうだ。だが…その…君はさっきどこに行こうとしていたのだ?」
「…どういうことですか?」
「いやなに、君がさっき向かった方向の反対方向に[サンセルト]の町はあるのにこの子は一体どこに向かおうとしていたのかと不思議に思っただけだ」
「反対方向だったんですか!?」
「あぁ、真反対だな」
「……名前を聞きに戻ってきてよかったです〜」
エリシアはほっと胸を撫で下ろす。
(地図を無くしてしまったのだろうか?それとも持ってきていなかったのか?どちらにせよ聞きに帰ってくるという選択をとってくれたおかげで俺も助かったのだけどな…本当に良かった)
ウェインも心の中で胸を撫で下ろすのだった。
「さてと…[サンセルト」に向かう前に一つやらなくてはいけないことがある」
立ち上がり、男は言う。
「?何をするんですか?」
エリシアは首を傾げて質問する。
ウェインは呪いの竜がいた場所付近に歩き始める。
「呪いは完全に消えているか?」
「…え?あ…呪いの元凶である呪いの竜はすでに完全に消滅しているので安全だとは思いますが…」
それを聞いてウェインはしゃがみ込み何かを探し始めた。
「何か探しているのですか?」
「あぁ、おそらくあると思うのだが………あった」
そう言ってウェインは一つの小さくて青黒い物体をエリシアに向かって見せる。
「これは……鱗?ですか?」
ウェインがエリシアに見せたものは呪いの竜の鱗らしきものであった。
「その…なんで鱗を拾ったのか教えてもらえますか?」
「一応ギルドに討伐の証拠としてな。証拠になるかは分からんがないよりはいいだろう。腐ってない綺麗な鱗が残っててよかった」
「呪いとかこもってそうで少し怖いですね…」
「……そうだな…よし、とりあえず聖水にでもつけておくか」
そう言ってウェインはバックパックから聖水を取り出してその中に呪いの竜の鱗を入れる。
「用は済んだ。[サンセルト]の町にこれから向かうが、一緒に来る「当然行きます!!!」…そうか」
エリシアの食いつきぶりに少し引くが気を取り直してウェインとエリシアは[湿霧の森]の先にある[サンセルト]の町へと共に向かうのであった。