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第29話 逆転の一手

形勢が逆転し窮地に陥ったエリシア。


視界が霞んでいる彼女には二匹の姿を正確に確認することができていない。


一方、ゴブリン二匹は苦痛で顔を歪め、地面にしゃがみ込んで動きを止めている女を見て勝利を確信しているのだろう、下卑た笑みを浮かべ悠長にトドメを刺す準備を進める。


依然として状況は最悪だがエリシアは生き抜くために体勢を変えながら必死に頭をひねる。


(見えない...倒さないと...でもどこにいるか分からない、耳もよく聞こえない...だったら攻撃するタイミングは...)


エリシアはあえて目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。


そんな危機的状況に陥ったエリシアにゴブリン二匹はついに火球(ファイアボール)と毒を塗りたくった矢を撃ち放つ。


この瞬間を待っていた。


「今!!!」


エリシアは杖から魔力を解き放つ。


その魔力は一度逃げ出した杖持ちを追いかけている時から今に至るまでに無意識に杖に込められたものであり、それを一気に全て解放した一撃であった。


今のエリシアは毒によって目がよく見えておらず耳もあまりよく聞こえなくなっている。なので相手の攻撃を避けるには当然勘頼りになるのだが、相手には魔法を使う者が一匹おり、魔力の起こりを読む力には多少の自信があるエリシアの頭の中には一つの打開策が思い浮かんでいた。

そう、エリシアが狙っていたのは杖持ちの攻撃魔法に対するカウンターである。


だがこれはエリシアからしたら賭けであった。


弓持ちが杖持ちよりも先に攻撃してきたら負け。杖持ちの近くにいなくても負け。魔法発動がこちらの方が遅ければ負け。ゴブリン二匹が身動きのとれない自分を弱者だと油断している前提の賭けである。


そしてその神官は全ての賭けに勝った。


『『!!!』』


二匹のゴブリンの目の前に存在するは弱った女の姿ではなく、女の姿を隠すほどの極大の白い魔力の塊。


『ギャァ!』『ガァ...!』


ゴブリン二匹は敗北を、死を悟り武器を投げ捨て一目散に逃亡を図る。


神聖なる光線(ホーリーレイ)!!!」


辺りが白い光によって一瞬強く照らされる。

エリシアから放たれるのは通常の神聖なる光線(ホーリーレイ)とは比べものにならない大きさの極太レーザー。目がかすれてあまり見えておらず相手の位置も大まかにしか分かっていなくても前方にいさえすれば確実に当たるようにした彼女の魔法。


それは真っすぐに逃げたゴブリン二匹の背中を即座に捉え、


ジュッ...


光線に当たったゴブリン達は蒸発するように消えていく。


エリシアは魔法が当たったことと光線を伝って感じる。そして周囲の影響も考えて魔法を止める。


「はぁはぁ...これで倒せたはず。...早く解毒魔法をかけてウェインさんの所に加勢をしなくては...ですがその前に...」


エリシアの顔がより一層青ざめ、気が重いといった様子で右足の大腿部に刺さった矢を見る。


「...まずこの矢を抜かないと」ゴクリ...


あまり深くは刺さっていないが抜くのはとても痛いだろう。だがエリシアは一刻も早くウェインの助太刀に行かないとと考え矢を引き抜く決心を固める。


「ふぅ...はぁ、深呼吸をして...こういうのはゆっくり抜かずに一気に抜いたほうが痛みを感じないかも...では、3、2、1」


ずちゅ


エリシアの声にならない小さな悲鳴が周囲一帯に響き渡ったのであった。


~ウェイン視点~


『グゥ...』


ホブゴブリンはウェインにトドメを刺そうと歩みを始める。


すると、


ピカッ


木々の向こうで暗闇を照らす白い光が短い間光り輝いた。


エリシアの魔法の光である。


ホブゴブリンの注意がしばしの間そちらに削がれる。


地面に仰向けで倒れたウェインは瞼の奥で輝く強い光を感じてようやく意識を取り戻す。


「ッ...」

(気絶していたのか...どうやらまだ生きているようだ)


ドンッ


ウェインが目を開けると同時にウェインにトドメを刺すべく、ホブゴブリンが()()()()


(何ッ!?)


空からホブゴブリンが石の斧を振り下げて落下してくる。が、それをウェインは間一髪で転がって避ける。


『グゥッ!?』


ホブゴブリンは目を見開きながら大口を開け、声を上げてウェインを見る。


「俺が起きた事に驚いたのか、それとも攻撃を避けられたことに『ガァァァァァァァァァ!!!!』!?」


ホブゴブリンが叫ぶ。そしてなぜだか怒りを露わにしながら地面を石の斧で何度も何度も叩いていた。


(なんだ?そこまで怒るようなことだろうか...短気なだけか、それとも()()行動自体に答えがあるのか...)


数秒経ち、怒りが収まったのか、ホブゴブリンは土が付いた斧を構えながら突撃してくる。


ウェインは防御と回避に専念してホブゴブリンの攻撃を防ぎつつ策を練る。


(ホブゴブリンは個体によるが単体で危険度C上位~B中位ほど、俺では真正面から戦っても力任せの攻撃で押し切られかねない。援護を頼みたいが、エリシアは...こちらに向かって来ていないことを考えると何かしらのトラブルで足止めを食らっているのだろう。となると魔法を乗せた剣での中距離攻撃で屠りたいのだが...)


ウェインは剣に風属性魔法を付与する。


『...!!!』


ホブゴブリンは剣に風魔法が付与された途端、大げさに後ろに下がってウェインから距離を取り、こちらに近づいてこようとしない。


「そこまで魔法が嫌いか」

(体の火傷跡といい、突進を止めるために火を出した時の過剰とも言える反応といい、火属性魔法もしくは火自体が特別嫌いなのかと思ったが、この反応...魔法そのものが嫌いなようだな。これほど魔法を警戒されては当てるのは難しい...さて、どうしたものか)


ウェインは回避と防御に重点を置いた戦い方を止め、速度を注視が逆転し窮地に陥ったエリシア。


視界が霞んでいる彼女には二匹の姿を正確に確認することができていない。


一方、ゴブリン二匹は苦痛で顔を歪め、地面にしゃがみ込んで動きを止めている女を見て勝利を確信しているのだろう、下卑た笑みを浮かべ悠長にトドメを刺す準備を進める。


依然として状況は最悪だがエリシアは生き抜くために体勢を変えながら必死に頭をひねる。


(見えない...倒さないと...でもどこにいるか分からない、耳もよく聞こえない...だったら攻撃するタイミングは...)


エリシアはあえて目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。


そんな危機的状況に陥ったエリシアにゴブリン二匹はついに火球(ファイアボール)と毒を塗りたくった矢を撃ち放つ。


この瞬間を待っていた。


「今!!!」


エリシアは杖から魔力を解き放つ。


その魔力は一度逃げ出した杖持ちを追いかけている時から今に至るまでに無意識に杖に込められたものであり、それを一気に全て解放した一撃であった。


今のエリシアは毒によって目がよく見えておらず耳もあまりよく聞こえなくなっている。なので相手の攻撃を避けるには当然勘頼りになるのだが、相手には魔法を使う者が一匹おり、魔力の起こりを読む力には多少の自信があるエリシアの頭の中には一つの打開策が思い浮かんでいた。

そう、エリシアが狙っていたのは杖持ちの攻撃魔法に対するカウンターである。


だがこれはエリシアからしたら賭けであった。


弓持ちが杖持ちよりも先に攻撃してきたら負け。杖持ちの近くにいなくても負け。魔法発動がこちらの方が遅ければ負け。ゴブリン二匹が身動きのとれない自分を弱者だと油断している前提の賭けである。


そしてその神官は全ての賭けに勝った。


『『!!!』』


二匹のゴブリンの目の前に存在するは弱った女の姿ではなく、女の姿を隠すほどの極大の白い魔力の塊。


『ギャァ!』『ガァ...!』


ゴブリン二匹は敗北を、死を悟り武器を投げ捨て一目散に逃亡を図る。


神聖なる光線(ホーリーレイ)!!!」


辺りが白い光によって一瞬強く照らされる。

エリシアから放たれるのは通常の神聖なる光線(ホーリーレイ)とは比べものにならない大きさの極太レーザー。目がかすれてあまり見えておらず相手の位置も大まかにしか分かっていなくても前方にいさえすれば確実に当たるようにした彼女の魔法。


それは真っすぐに逃げたゴブリン二匹の背中を即座に捉え、


ジュッ...


光線に当たったゴブリン達は蒸発するように消えていく。


エリシアは魔法が当たったことと光線を伝って感じる。そして周囲の影響も考えて魔法を止める。


「はぁはぁ...これで倒せたはず。...早く解毒魔法をかけてウェインさんの所に加勢をしなくては...ですがその前に...」


エリシアの顔がより一層青ざめ、気が重いといった様子で右足の大腿部に刺さった矢を見る。


「...まずこの矢を抜かないと」ゴクリ...


あまり深くは刺さっていないが抜くのはとても痛いだろう。だがエリシアは一刻も早くウェインの助太刀に行かないとと考え矢を引き抜く決心を固める。


「ふぅ...はぁ、深呼吸をして...こういうのはゆっくり抜かずに一気に抜いたほうが痛みを感じないかも...では、3、2、1」


ずちゅ


エリシアの声にならない小さな悲鳴が周囲一帯に響き渡ったのであった。


~ウェイン視点~


『グゥ...』


ホブゴブリンはウェインにトドメを刺そうと歩みを始める。


すると、


ピカッ


木々の向こうで暗闇を照らす白い光が短い間光り輝いた。


エリシアの魔法の光である。


ホブゴブリンの注意がしばしの間そちらに削がれる。


地面に仰向けで倒れたウェインは瞼の奥で輝く強い光を感じてようやく意識を取り戻す。


「ッ...」

(気絶していたのか...どうやらまだ生きているようだ)


ドンッ


ウェインが目を開けると同時にウェインにトドメを刺すべく、ホブゴブリンが()()()()


(何ッ!?)


空からホブゴブリンが石の斧を振り下げて落下してくる。が、それをウェインは間一髪で転がって避ける。


『グゥッ!?』


ホブゴブリンは目を見開きながら大口を開け、声を上げてウェインを見る。


「俺が起きた事に驚いたのか、それとも攻撃を避けられたことに『ガァァァァァァァァァ!!!!』!?」


ホブゴブリンが叫ぶ。そしてなぜだか怒りを露わにしながら地面を石の斧で何度も何度も叩いていた。


(なんだ?そこまで怒るようなことだろうか...短気なだけか、それとも()()行動に答えがあるのか...)


数秒経ち、怒りが収まったのか、ホブゴブリンは土が付いた斧を構えながら突撃してくる。


ウェインは防御と回避に専念してホブゴブリンの攻撃を防ぎつつ策を練る。


(ホブゴブリンは個体によるが単体で危険度C上位~B中位ほど、俺では真正面から戦っても力任せの攻撃で押し切られかねない。援護を頼みたいが、エリシアは...こちらに向かって来ていないことを考えると何かしらのトラブルで足止めを食らっているのだろう。となると魔法を乗せた剣での中距離攻撃で屠りたいのだが...)


ウェインは剣に風属性魔法を付与する。


『...!!!』


ホブゴブリンは剣に風魔法が付与された途端、大げさに後ろに下がってウェインから距離を取り、こちらに近づいてこようとしない。


「そこまで魔法が嫌いか」

(体の火傷跡と突進を止めるために火を出した時の過剰とも言える反応からして、火属性魔法もしくは火自体が特別嫌いなのかと思ったが、この反応...魔法そのものが嫌いなようだな。これほど魔法を警戒されては当てるのは難しい...さて、どうしたものか)


ウェインは回避と防御に重点を置いた戦い方を止め、カウンターと速度重視の戦い方で果敢に攻めていくがウェインが魔法を使えることを確信したからか、今度はあちらが慎重な戦い方を始めウェインは攻めあぐねていた。


逃げるは論外。このまま戦っても押し切られる、助けも期待できず距離を取った攻撃もおそらく当たらない。ならホブゴブリンの弱点を突いて倒すしかない。どんな敵であっても弱点というものは必ず存在し、そこを突ければ案外簡単に倒すことができものだ。そうウェインは考える。


(何か弱点は...)


何か弱点はないかと今までの戦いを頭の中で振り返っていると、


『アガッ...!』


「またそれか...」


ホブゴブリンは距離を少しとった状態で木を投げつけてくる。ウェインはそれを避けるが、自身の左横に着弾したことにより地面が抉れ、土煙が舞う。それによりウェインの態勢が若干崩れる。


「くっ...面倒だ...?」


ホブゴブリンの追撃を警戒してすぐに正面を向きなおす。だが先ほどまでいたはずのホブゴブリンがいなくなっていた。


周囲にはホブゴブリンが隠れられるような障害物はなく、逃げるような素振りもなかった。となると、


「...上か!」


上を向いている時間は恐らくない。そう察したウェインは即座に左方向に飛び退く。


ドォンッッッ...!


その直後、ウェインがいた地点にホブゴブリンが斧を振り下ろしながら降ってくる。


「なんてやつだ」

(確か俺が意識を取り戻した時もこの攻撃をしていたな)


そう考えているとまたもやホブゴブリンが『ガアアアアァァ!!!』と怒り狂ったように地面を殴る。この一見意味不明な行動についてウェインは考察を巡らせる。


(なぜ避けられたことに対してそこまで(いか)るのか、()()あるな?)


ウェインはホブゴブリンがキレる前の行動、ジャンプによる攻撃に何か糸口がある、付け入る隙があると判断した。そして一つの()()に辿り着く。


(...試してみる価値はありそうだ)


そしてウェインは剣を構えなおしてホブゴブリンに言う。


「そろそろ終わりにしよう」

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