第27話 闇夜の奇襲
今更ながらモンスターの名前にルビを振る不必要性に気づきました。これからは無しで行きます。
感想お待ちしております!
二人は真っ暗闇の森の中を、地面に付いた血の跡をランプの光を頼りに走って辿る。
すると、エリシアから少し不安そうな声が漏れてくる。
「…むぅ……」
「どうした?」
「仮にゴブリンの住処があったとして…先ほどの神聖なる光で私たちの存在をすでに察知してしまっているのでは、と…」
「距離にもよるが、その可能性は高いかもしれないな」
「どうしましょう…守りを固められていたら無理ですよ…!二人じゃ手出しできません!」
「…その時は撤退して、来た道を全速力で戻る。そしてこの森を避けるようにして進む。時間がかかるのであまりやりたくないがな…命には変えられん」
「というのも、別に俺が本に書けそうな物を見つけたいがためにこの森を通り道にしただけであって、この森に入ることに対して固執しているわけではないからな」
「そして後からギルドでゴブリンについて報告する…と」
「3択だ。逃げたゴブリンを追いかけて、
1、住処がなければ、トドメを刺してそのままキャンプ地に戻る
2、住処があり、ゴブリンがまだ、集まっていなかったなら、住処諸共殲滅
3、住処があり、ゴブリンが複数体集まっていたならば、この森から全速力で撤退
…こんなところだ...おや…?」
ウェインはランプで照らしている足元にあるものを発見する。
「成程…」
ランプで照らされた地面にはゴブリンが力なく倒れ伏している。
「先ほど腕を切り落として逃したゴブリンのようだな。どうやら出血多量によって死んだようだが…」
ウェインがゴブリンの死体を確認して言う。
「…こいつは住処に行く途中で力尽きたのか、それとも本当にただ逃げただけなのか…」
ウェインはしゃがみ込みながら考えを巡らせる。まだ自分らの存在はバレていない。ならこのまま戻るか、周囲を探すか、この二択どちらかを取るか考えていると…
「……!ウェインさん、おそらくこの先に複数体のモンスターがいます」
目を瞑っていたエリシアが目を開け、ゴブリンが向かっていたであろう方向を指差す。
「ゴブリンか?」
「分かりませんけど…少し魔力を感じて…」
「魔力を探知できるのか?」
「はい。近くにいて魔力が一定以上ある生物であればですが…」
エリシアが頷きながら言う。
「どうしますか?おそらくまだこちらに気づいていないないようですが…」
「…住処があるのなら破壊するに越したことはない。人に危害を加える前に叩くぞ」
「分かりました…戦うのですね」
「ああ」
二人は剣と杖を構えながら先へと進んでいく。
およそ三分ほど歩いただろうか、少し離れた目線の先に洞窟の穴のようなものが見えてくる。
「ありましたね」
ゴブリンの住処は洞窟の穴を利用したものになっているようだ。入り口には火が灯されており、入り口前には少し開けた空間がある。そこにはゴブリンが三体、太い木の棒やら自ら作ったのだろう石でできた斧を持って会話のようなものをしている。
「見張りは三匹、上位種は見られない。…さて、どうするか」
ウェインは見張り三体を殺して洞窟の中に突っ込むほど愚かではない。中に何体のゴブリンがいるのか不明な以上、リスクが高すぎるからである。なので見張りにバレずに中のゴブリンから先に殲滅する手はないかと自身のできる方法を考え始める。
(火…洞窟の中には燃え広がらない、煙ならいけそうだが…。氷…溶解蜂は外気の温度を冷やしたから対処はできたが、火を扱える以上寒さでは死なないだろうな。風…)
何かないかと周囲を見回していると、すると地面に落ちているあるものに目が止まる。
「…これでいくか」
「何か思いつきましたか?」
「ああ、君は洞窟の入り口を…神聖なる砲撃…?だったか、それで破壊してくれ。生き埋めにする」
「それで中のゴブリンをすべて倒せるのでしょうか?別に入り口があるかもしれないですし、なかったとしてもホブゴブリンが一体いれば瓦礫などは簡単に退かされてしまうと思うのですが…」
「その通りだ。だから、そうされる前に燻し殺す」
「燻し殺す…!?どうやってですか?」
「これを使う」
そう言ってウェインは近くの太めの木の枝を音を立てずに切り落とす。そしてその枝をエリシアに見せる。
「木の枝?わっ!枝の中が赤い?」
ウェインが切り落とした枝は皮は普通の木のものであったが、中身は木とは思えないほど赤かった。
「これは燻し木という名の木だ。この名前は燃やせば煙が他の木と比べて多く出るところが由来だ」
「もしかして…それを洞窟の中に投げ込んで燻し殺…すと?」
「察しがいいな。燻し木に火をつけて洞窟内に投げ込む。そして入り口を瓦礫で塞いで中のゴブリン共を煙で殺す。この枝だけでも洞窟内を煙で満たすのには十分だろう」
「あとは、他に入り口があったらなら、そこから煙が出てきて発見できる。その場合は撤退を選ぶがな」
「なるほど、少しゴブリンが可哀想だと思うのですが…」
ウェインはエリシアの目をまっすぐ見据えて言う。
「モンスター相手に可哀想だとか思うのはやめておけ。特に人型のモンスターにはな。奴らは人に似た形をしているだけだ、常に我々を襲い、奪い、殺すことしか考えていない。迷わず殺せ。いいな?」
「はい…肝に銘じておきます…」
ウェインの少し圧の感じる声色に押され、エリシアは弱々しく返事を返す。
「………」
(少し強く言いすぎただろうか…)
そう心の中で己が言った言葉について反省していると…
「魔法撃てます!」
「よし、俺が洞窟内に燻し木を入れた瞬間に頼むぞ」
「はい」
ウェインは洞窟を正面にし、燻し木に火をつける。そして即座に枝を左指で掴みながら前に出し、右腕を引きながら突きの構えをして剣を握る。
ザザザーッ
周囲の空気が動き、木の葉が音を立てる。ウェインの剣に風魔法が付与される。ゴブリン達はいまだにこちらの存在には気がついていない。
「いくぞ」
そう言った直後…
パッ
枝を指から離す。そしてその枝を剣で突く!すると、剣から勢いが少し抑えられた風が放出され、枝を洞窟に届けるようにして真っ直ぐと、煙で道を作るようにして飛んでいく。
カラン…
風によって洞窟へと送り出された燻し木は洞窟の入り口付近上部の天井に当たり、地面へ跳ね返っていく。そして洞窟の暗闇の奥へと消えていく。残されたのは燻し木が進んだ煙のみであった。
ゴブリン達は自身らの近くを通過した風と煙により、ようやく異変に気がついたがもう遅い。
「神聖なる砲撃!」
ドゴオォォン…
作戦通り、エリシアの聖なる砲弾が洞窟の入り口を見事破壊し、瓦礫により封鎖する。
『ギ!?』『ゲギャ?』『ガギィヤ!?』
三体が洞窟の入り口が破壊されたことにより、驚きの声を発した直後、即座に飛び出したウェインの刃がゴブリン達を捉える。
ザンザン…ザシュッ…
ゴブリン三体はウェインの攻撃に反応することもできず、斬り殺された。
「思いのほかあっけなく終わりましたね」
茂みの中から出ながらエリシアが予想外と言ったら口調で言う。
「そうだな…」
そう返しながら、ウェインは空を見上げてさらに言う。
「この近くには他の出入り口はないらしい。離れた所にあることを想定して、この後もこの森を探索するぞ。その際、別の見回りのゴブリン共がいたら当然叩くぞ。いいか?」
「はい!より一層気をつけて行きましょう!」
瓦礫からゴブリンが這い上がってこないのを確認した後、二人は歩き出す。だがその直後、何かに反応したエリシアの声が飛ぶ!
「ウェインさん!!!後ろ!!!」
「何!?」
ウェインが振り向き、盾を構えると、茂みから炎と矢が飛んでくる。
「チッ…」
矢を剣で弾き、炎を盾で防ぐ。
「見回りの部隊が戻ってきたのか…?」
ウェインは正面に構えた盾をずらして攻撃してきた存在を確認しようとした。だが、その時…
ズシン…ズシン…ズシン…
「…な!?エリシア!避けろ…!」
「え?きゃっ…!」ドン…
何者かが木を薙ぎ倒しながら突進してくることを察知したウェインは、自身の斜め右後ろにいたエリシアを弾き、その進路からずらす。
次の瞬間、
ドォン…!
「ぐぅ…!?」
ウェインは何かの突進を食らう。盾でかろうじて身体への直撃は防げたが、突進の勢いそのままその存在とともにまるで連れ去られるようにして、ウェインと大きな存在は木に当たりながら夜の闇に消える。
「…ッッ、!?ウェインさん…!?」
ウェインがその場から消えたことに困惑の声を上げると、
『ギギッ…』『ゲヒャッ』
そしてエリシアが後ろを振り向くと、地面に杖を持ったゴブリン、木の枝の上に弓を持ったゴブリンが佇んでいたのであった。
~ウェイン視点~
バギッ…ドガッ…
「がっ…」
ウェインは大きなゴブリンによる突進から逃れられていなかった。何度も木に直撃しており兜の口のあたりから血が漏れ出ている。
(ぐっ…このままでは…ミンチになってしまう…)
ドスッ…
ウェインは剣で大きなゴブリンを刺す。が、刺した部位の皮膚と筋肉が硬く、大きなダメージにはならない。
(怯みもしないか…どうにかしなければ…なら…)
そうして、火属性魔法を剣に込める。炎が刀身を覆う。
『ギアァッ!!?』
「うぐっ!?」
大きなゴブリンは過剰とも言える反応を見せたのち、走るのを止め、ウェインを弾いて距離を取る。
弾かれたウェインは地面に転がり、木に当たって止まる。
(やっと走るのをやめてくれたか…ぐっ…)
ウェインは背中の痛みで寝たままでいたいのを我慢しながら立ち上がる。そして大きなゴブリンを見る。
大きなゴブリンはウェインに近づかず、木を薙ぎ倒して自身の動きやすい空間を作っていた。木がなくなったことにより月明かりが大きなゴブリンを照らす。
体はゴブリンよりも遥かに大きく、左腕の二の腕から首筋にかけて大きな火傷跡があり、背中には大きな石の斧を背負っている。
(図体の大きなゴブリン…ホブゴブリンか…。…エリシアと随分と離れてしまった…早く戻らなくては…)
ブゥンッ…
「随分とやる気満々のようだな」
ホブゴブリンは背中に背負った大きな石の斧を横に振った後構え、臨戦体制をとる。
(石の斧…見たところ切るのではなく、叩き潰す用途で使う物のようだな)
ウェインも剣を構えてホブゴブリンを睨む。
「早めに終わらせたいんだ…行くぞ」
そう言ってウェインはホブゴブリンに向かって走り出すのであった。
詳しく知りたい方に
ホブゴブリン:ゴブリンの上位種。通常のゴブリンよりも体格が大きく、力が強い。
燻し木:燃やせば煙がとてつもなく出てくる木の名称。枝のみでも他の木とは比べるべくもないほど煙が出る。ちなみに枝内部の色と木の根が四方八方にまっすぐ伸びているところで見極めることができる。燻し木はよく狼煙などで使われる。




