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第25話 手入れ

感想をいただけると嬉しいです!


ウェインは地面に腰を下ろし、魔石の一つを取り出して眺め始める。


(魔弾の魔石…たしか魔力を込めてそれを弾として放出できるのだったか、このままの状態では戦闘で使うことはできないな…)


近くに落ちていた細く真っ直ぐな木の枝を4本拾い、長さを合わせるために無駄な箇所を折る。その後に枝を左の人差し指を囲うようにして配置して細い紐で結ぶ。そしてその中心に魔弾の魔石をはめ込む。


指先に魔石を付けた状態で指を見ながらウェインは考える。


(これなら戦闘で使えるか…)


そう考えながらぼーっとしていると、エリシアが声をかけてくる。


「ウェインさん!お料理できましたよ!」


「…ああ、今行く」


そう言ってウェインは焚き火の前まで足を運ぶ。


「今日の晩御飯は眺め鳥のバター焼きですー!」


「そうか」


皿の上にはバターの良い匂いが漂うこんがりと焼け、焦げ目が何とも美しい鶏肉が盛り付けてあった。


「これはまた美味しそうだな」


「ありがとうございます!…あれ?ウェインさん、その指に付けているいるものはなんですか?」


エリシアはウェインの指の変化に即座に気づく。


「ん?ああ、これか」


ウェインは指に付けたものをエリシアに見せる。


「魔弾の魔石をどうやって戦闘で使えるようにするか考えていてな。こんな感じに指に付け、そこから魔力を撃ち出すというのを思いついた」


「なるほど、指から魔力を撃ち出す…なんかかっこいいですね!」ピシィッ!


エリシアは人差し指をピシィッと伸ばしながらポーズを取る。


「かっこいいかどうかは知らないが…試しに撃ってみるとしよう」


そう言ってウェインは少し遠くの木に向けて人差し指を伸ばして構える。


「いくぞ」


バシュッ…!


ウェインは魔弾の魔石に魔力を込める。そして、魔力を魔石から解き放つ。そうすると魔石から半透明の白い魔力?のようなものが木に向かって飛んでいく。


バキィッ…


そして木に直撃する。当たった箇所は少しだけ凹む。それはこの魔弾の威力が決して低くないということを示していた。


「…!凄い!属性魔法を使えなくても遠距離に魔法を飛ばせるとは!」


エリシアは削れた木に近づいて目を輝かせ、感心しながら言う。


「………」


「…?ウェインさん?どうしましたか?」


エリシアが振り返りながらそう言う。新しい攻撃手段の検証結果に不満を抱いたのだろうか、ウェインからの感想が飛んでこない。ようやく口を開いたウェインの声は少し低く、ほんとうに若干震えていた気がした。


「…しまったな……」


「?あれ、ウェインさん、指、どうかしましたか?」


エリシアは左手の人差し指を右手で固定するように握っているウェインの姿にようやく気づく。


「威力が想定より少し強くてな、指が魔石に勢いよく押されてな、ほんの少し突き指をしたようだ」


左手の人差し指をピクピクさせながら言う。


「大丈夫ですか!?指、折れてませんか?回復魔法いります?」


「いや、いい、もう少し考えてから使うんだったな…失敗した」


自身の足元に落ちている枝たちを見下ろして言う。魔石を固定していた木が脆すぎたのだ。


「…形はこれでいい。あとは強度だな、町についたらちゃんとしたものを作ってもらうとしよう」

「さて、料理が冷めてしまう、はやく夕食を食べるとしようか」


「はい!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


2人は食事を終えたあとに各々の時間を過ごす。


(せっかく果物がたくさん採れたのだ、半分くらいはジャムにしてしまうか。朝食にも使えるし…エリシアも喜ぶだろう…多分)


ザッ…ザッ…ポトッ…


ウェインは小さめの鍋にシャクミを切って入れていく。


「ウェインさん、何を作ろうとしてるんですか?」


「シャクミでジャム的なものを作ろうと思ってな」


「ジャム!いいですね!!!絶対美味しいですよ!!!」


エリシアは目をキラッキラと輝かせて言う。

喜んでくれていそうでよかったとウェインは考えながらジャムを作る準備を続ける。


(砂糖を入れて、水をそこそこ…)


「あの!ウェインさん、質問いいですか?」


「?どうした」


エリシアはウェインの作業工程を見ながら質問を投げかける。


「その…シャクミはとても甘いですよね?そこに砂糖を入れてしまったらそれはもうとんでもなく甘くなってしまうのではないですか?」


とんでもなくと言うのと同時に両腕をふんわりと大きく広げてジェスチャーをする。


「そうだな…ジャムを作る上でな、砂糖は別に甘くするためだけに入れるものではないのだ」


「そうなのですか?」


「ああ、細かいことは知らないが砂糖には防腐作用と細菌増殖を防いでくれる効果があるのだ。ジャムは基本長期保存するものだろう?」


「えっと、基本瓶詰めで棚にしまっている期間が多いですね」


「普通果物を煮詰めてドロドロにしただけで長期保存が可能になるわけではない、すぐ腐る。だから砂糖の防腐作用を利用して腐らないようにするのだ」


「なるほど、ただ甘くするためだけに入れているわけではないのですね」


「その通りだ」


焚き火の上にフライパンを持っていき中身を煮詰める。


「これをあと30分ほど煮詰める」


「分かりました!それではその間私は武器の手入れをします!」


「そうか」


「では…」


エリシアがウェインに向けて両手を広げる。


「……?」


ウェインはその行動の意図が分からず思わず首を傾げる。そして、その行動の意図を知るためにエリシアに向けて口を開く。


「どうした」


「え?あの、ウェイさんの剣を…」


「…そうか、武器の手入れとは俺の武器も含まれていたのか」


「はい」


「いや、俺のは手入れ不要だ」


「ウェインさん、あなたの武器…血とかも払ってないですしよく見たら所々小さな刃こぼれがありましたよ」


「…確かにここ最近は手入れをしていなかったが…」


「ですので!私がお手入れをしようかと!」


エリシアの勢いがすごい。なぜそこまで他者に尽くせるのだろうか。ただ心優しいだけなのか。


「研げるのか?」


「研ぎ石があれば…あと拭いて綺麗にしようかと」


「そうか」

(武器は常に万全の状態にしておくのが当たり前…初心者でも分かることだろう。…なんということだ、いつの間にか自分自身のことについて疎かになっていたか…)


主要武器が剣だけのウェインにとって剣とは自分の命を預けている物、生命線に等しい。そんな大事な武器の管理を疎かにしていたことに気づきウェインは自分自身に対して落胆する。


「では武器の手入れは危ないから俺がやろう、手を切ってしまったりしたら大変だ。君がジャムを作ってくれ」


「お構いなく。私がやります、やりたいんです。それとも自分の武器を渡すのは嫌…ですか…?」


「嫌…ではないが、…任せても良いか?」


「はい!喜んで!」


満面の笑みを見せるエリシアに対して分からんなと思いながらもウェインは剣を縦にして渡す。


「重いぞ、気をつけろ」


「はい、分かりまし…たッッ!?」ズドッ


エリシアが受け取った剣はウェインの手を離れた瞬間に地面に突き刺さる。それはそれは見事な刺さり具合であった。


「「……………」」


「…重いですね…すごく」


「だから言ったろう、怪我はないか?」


「大丈夫です…」


「そうか、引きずっても構わないぞ」


「いえ、流石にそれは…頑張れば余裕です、多分」


そう不安げに言ってエリシアは剣をほんの少〜し地面から浮かせ、荷物が置いてある場所へと抱えながら持っていく。


「研ぎ石は確かバックパックの下ら辺に入っていたはずだ」


「分かりました」


そう言ってエリシアはウェインの荷物を物色していく。


(少女に持たせるには重すぎたか…だが冒険者としてはあれ以上に重いものを運ぶことがあるだろう。まぁ、旅をしていくうちに筋力がついてくるはずだ、心配せずともよいだろう)


ウェインは焚き火の前でシャクミを煮て、エリシアはウェインの剣を器用に研いでいる。


その2人を複数の影が遠くの木々の後ろから見つめているのを2人は知る由もなかった。

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