第24話 変化の考察
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個人的にかなり忙しくなってきたので次の更新はしばらく後になりそうです。ご了承ください。
サンセルトの騎士三人と別れたのち、二人は先に進むのであった。
「何の変哲もない森を通り抜けるはずが大変な目にあってしまったな」
「そうですね…これからまた一つ、森を通り抜けなければいけないのでしたよね?」
「そうだ」
「確か先ほどの森よりも大きいのでしたよね?」
「そうだ、森を通り抜けるのに丸一日ほどはかかると聞いた」
「では、森の中で夜を明かすことになりますね」
「そうなるな」
ウェインはそう返す。だが、その言葉の後にエリシアから強い視線を感じる。ウェインはエリシアの方向に顔を向けると、エリシアが「むむむ」と唸りながらこちらを見ていた。
「…どうした?」
「…いえ、夜を明かすというので思い出したのですが、今夜は私が最初に見張りをしますね?いいですよね?」
圧を感じる声色で言う。
「………」
これは交代の時に起こさなかったのをかなり根に持っているのか?とウェインが思考しているとすぐに
「い・い・で・す・よ・ね?」
とさらに念を込めて言われてしまい、ウェインは頷く他なかった。
休憩をとりつつ歩いて数時間、かなり歩いた先に本日二つ目の大きな森が見えてくる。
「日が暮れる前に森が見えてきましたけど…森の外でキャンプをしますか?」
「いや、進めるだけ進む。森の中で夜は明かすぞ」
「そうですか。了解しました」
ウェインとエリシアは二つ目の森を目指して歩き続ける。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 森の中
「…今のところ蜂の羽音は聞こえません!」
「そうポンポンと溶解蜂が森にいてたまるか」
「それもそうですね。…この森は先ほどの森よりも少し暗いですね」
「そうだな、背後も警戒しておけ」
「はい!」
2人は森の奥へと進んでいく。
「…」キョロキョロ
エリシアは周囲を見渡しながら歩くウェインに問う。
「どうしました?」
「いや、今日の夜の食事について考えていてな」
「お腹が空いたのですか?」
「いや、今手持ちにある食べ物はあまり消費したくなくてな。できれば道中で何か食べれるものを見つけて採っておきたくてな」
「それもそうてすね…あ!あれはどうですか?」
エリシアの目線の先には水色の瑞々しそうな木の実が生っている木があった。
「……ふむ」
「美味しそうではないですか?」
「…だめだな」
ウェインは止めた足を再度動かして歩き始める。
「え?なんでですか?」
「あれの皮と種には毒がある」
「なら実だけを食べれば良いのでは…」
「つまり、種の毒が実に浸透してしまっている可能性がある。幻覚作用がある毒だ。しかも実の部分もあまり美味しいとは聞かない。食べない方がいい」
「そ、そうなのですか」
「ああ、…これなら食べられるぞ」
ウェインは右の茂みに生っている赤色と黄色の小さな実を指さす。
「これですか」
エリシアは手にとって言う。
「ああ、これは少々酸っぱいのが特徴のサワミンという実だ。よく眠気覚ましに食べる人もいる、わりと人気な実だ」
「食べても良いですか?」
「構わない。この実は栄養も豊富でな、せっかくだから袋にあるだけ入れておくか」
「ではいただきます」パク
ピシャリ…!
「〜〜〜〜ッッ!?」
一個食べただけでまるで電流が流れたかのような痺れがエリシアの口に走る!エリシアは思う。少々酸っぱいとは一体…と。
「ゴホッゴホッ」
「ん?大丈夫か?」
ウェインがサワミンをプチプチ採りながら聞く。
ゴクゴク
エリシアはたまらず水を飲む。
「…少々酸っぱいって言ったじゃないですか!ものすごく酸っぱいじゃないですか!」
「そうか?」ヒョイパク
ウェインは兜をずらしてサワミンを口にする。
「…?眠気覚ましにはちょうどいいが…そこまで酸っぱいとは思えないが」
「えぇ…」
エリシアは信じられないと言わんばかりに余裕そうなウェインを見る。
「一通り採れたし行くぞ」
「むぅ」
エリシアは頬をぷくぅと膨らませながら後ろを着いてくる。
(食べ物の味の感じ方は人によって違うからな…なにか騙してしまったみたいで少し悪いな)
そうウェインは考えながら何かエリシアの機嫌を取れるようなものがないかと周囲を見ながら思考する。
「…!」
ウェインは木になっている手のひらに収まるくらいだろうか、そのくらいの大きさの黄緑色の果物を見つける。
「あれも食べれる木の実だぞ」
「…酸っぱそうに見えますが」
「いや、あれは酸っぱくないぞ、本当に」
ウェインはバックパックの側面についているロープに繋がれた小さいピッケルのようなものを手に取る。
そしてそれをブンブン回しながら木の下に行き、それを投げる。すると木の枝に上手く巻きついた。
「よし」
そしてロープを引っ張り木の枝を地面に近づけるように下げる。
「取れるだけ取ってくれるか?」
「…はい」
エリシアはその木の実を6個ほど取り、袋に入れる。
そしてウェインは木の枝に巻きついた小さなピッケルを取り外す。
「…食べてみなさい」
「…ちなみに聞いておきますが、どんな味なのですか?」
「うむ、それはシャクミといって瑞々しくて甘い果物だ。君の村の周りには生っていなかったのか?」
「はい、私の村の近くにはありませんでしたね。…では食べてみます…」
エリシアはゆっくりとその果物を口にする。
シャクッ…
「…!甘い!ウェインさん!これ甘いです!」
「そうだろう、天然物でも糖度が異常に高い果物らしいからな」
ニコニコでシャクミを食べるエリシアを見て、とりあえず機嫌が治ってよかったと内心で胸を撫で下ろすウェインであった。
「…そろそろ暗くなりそうだな…」
「早めに焚き火を作っちゃいましょう!」
「そうだな…む、」
「どうしました?」
エリシアがウェインが向いている方向を向くと、木の枝の上で、少し大きめな鳥がこちらを見ていた。
「あの鳥は何と言う名前なのですか?」
「…眺め鳥だな」
「眺め鳥?」
「ああ、文字通りただ人を遠くから眺めるだけの鳥だ。危険度はE、何の危害も加えてこない」
「あの見た目で何もしてこないのですか…」
眺め鳥の見た目は若干黒がかった濃い茶色の羽色で、体が大きく足の爪は鋭く、夜だからか、目は鋭く赤色に光っている。
「何事も見た目で判断してはいけない…ということだ。…あれを夕食にするか。だが木の上にいて攻撃を当てづらいな…」
「私が魔法で撃ち落としましょうか?」
「ヤツは動きが早い。君の攻撃速度でヤツを捉えられるかどうか…」
「いえ、問題ないです…!やらせてください!」
いつにもなく張り切っているエリシアにウェインは大丈夫か?と思いながらも今晩の夕食がかかった戦いを任せるのであった。
エリシアは眺め鳥に向けて杖を構える。そして魔力を込める。
(込める魔力は多く、発射する魔力は鋭く勢いよく、だけど少し粗く…)
眺め鳥は危険を察知して木の枝から離れた飛び立とうとする。
「エリシ…」
「"神聖なる光線"!!」
その瞬間、ウェインがこれまでに見た神聖なる光線よりも遥かに速く、細い光線が飛んでいく。いや、光線と言えるほど光が長くは続いておらず、それはまるで白い槍のように飛び立とうとしている眺め鳥の姿を捉える。
ドォン…!
そして眺め鳥と接触した光線は被弾した部位で超小規模な爆発を起こす。眺め鳥はそのまま地面に垂直落下していく。
「ほう」
(今までの神聖なる光線とは何か違うな…。そういえば巣穴の前で溶解蜂に撃っていた神聖なる光線も何か違うような気がしていたが…)
そう考えながらも落ちた眺め鳥に向かっていき軽々トドメを刺す。
「やった!やりました!私やりましたよウェインさん!」ピョンピョン
エリシアは飛び跳ねながら喜びを爆発させる。
「ああ、少し聞きたいことがあるが、それはこいつを解体してからだな」
ウェインは眺め鳥を体を解体していく。
「うむ、見た目に反して食べられそうな部位が少ないな」
「見た目で判断してはダメですよ!」ニコッ
「そうだな…」
そうエリシアに先ほどの会話で自分が言ったことを見事に返される。
「…3日分はもつだろう。今晩はこいつを適当に焼くとするか」
「私たちには調味料も食材もありませんしそうなりますよね…あ、私が作りますよ?!」
「…分かった」
そう前のめりに言われてしまい、ウェインは承諾するほかなかった。
辺りはすっかり暗くなり、ウェインたちはその場でその日を終えることとなった。
焚き火をそうそうに作り、エリシアは結界を、ウェインは魔道具を設置する。
「さて、お肉を焼きますよ!」
「ああ、…そういえばバックパックのサイドポケットに使い切りのバターが入っていてな、これも料理に活用してくれ」
「了解です!」
エリシアはフライパンを熱してからバターを投入する。
料理中のエリシアにウェインが疑問を投げかける。
「エリシア、溶解蜂の時といい、先ほどの、眺め鳥の時といい、俺がこれまでに見た神聖なる光線とは少し違うように見えたのだが…」
「私、ロック鳥を撃ち落とした時に思ったのです、速度も威力も少し足りないな…と」
「ほう」
「一流の神官が撃つものであればモンスターを倒すのに申し分ない威力になるのですが…私の魔力放出量ではまだモンスターを一撃で倒すことはできないのです…」
「魔力放出量…か」
「一流の神官の魔力放出量100だとして、私の魔力放出量は良くて50ほどなのです。これは同じ魔法をあったとしても私は一流の神官の半分ほどの威力しか出ないということになります。まあ、単純な魔法の威力は測れないのですが…」
「このままではウェインさんの足を引っ張ってしまう、それで私は考えたのです。少し工夫をして撃ってみてはどうか…と」
「工夫して撃つ?」
「はい、頭の中で神聖なる光線をイメージし、速度を上げるために杖に通常よりも魔力を込めて、無駄な魔力消費を抑えるために範囲を絞り、接触部位を焼くのではなく爆発させることによる威力向上…など、自分なりに魔法をアレンジしました」
「それで、完成したのが…」
「速度と威力重視の神聖なる光線…いえ、神聖なる砲撃です!」
「…ずいぶんと物騒な名前になったな」
「今になってこの名前をつけたことが恥ずかしくなってきました…」
エリシアは顔を赤らめ恥ずかしそうに俯く。
「いや、俺は良いと思うぞ。使う魔法の名前を分けることは重要だ、分かりやすいように個性的な名前をつけることは理にかなっている」
「そうですか、ならよかったです」
「………」
ウェインは考える。既存の魔法を自分なりにアレンジすることは可能なのか?と。理論上はおそらく可能なのだろう。だがこの娘、頭の中でアレンジした魔法を発動するための練習をしているようなそぶりはなかった。つまり、頭の中だけで神聖なる光線を別の魔法に変化させ、実践で、おそらく巣穴から出てきた溶解蜂で一度目、眺め鳥に撃った二度目の魔法発動だけで変化させた魔法を己がものとしたのだ。練習なしで応用とも言える魔法を発動したのだ。これはかなり凄いことなのでは?とウェインは深く考えるが、自身には今日中にやることがあったのを思い出し、そのことについて思考するのをやめるのであった。
詳しく知りたい方に
・魔力放出:魔法を使う者の技量、成長度合いによって魔法の威力が変わり、それは魔力放出量によって決まります。魔力放出量がその者の70/100しかない場合、どんなに頑張っても魔法の威力は70/100止まりになります。ようは魔力を外に放出する時の限界量なわけです。弓の弦をちょっと引くのと、限界目一杯引くのとでは威力は変わるでしょう?そんなイメージです。
・魔法の発動と威力:魔法は大きく分けて詠唱魔法と無詠唱魔法が存在します。簡単に言えば詠唱魔法は口に出して詠唱しなければいけないが、威力が無詠唱魔法よりも高いです。口に出して詠唱しなければいけないので無詠唱魔法よりも時間がかかり、途中で遮られれば詠唱キャンセルとなり一からやり直しになります。腕の立つ魔法使いなら詠唱を途中で遮られても遮られた箇所から詠唱をすることが可能です。無詠唱魔法は即座に魔法を撃つことができるが、詠唱魔法よりも威力ははるかに劣ります。ほとんどの魔法を使う者は、無詠唱+魔法名を言うことによって魔法を発動します。これが1番が手っ取り早いので。魔法名は言うことによって魔法の威力低下を防ぐことができます。
例)
詠唱魔法 威力200〜/100
詠唱魔法(魔法名を言わない) 威力150/100
無詠唱魔法 威力100/100
無詠唱魔法(魔法名を言わない) 威力60/100




