第21話 危険な羽音
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何かに気になる点があれば感想にどうぞ!
休憩を挟みながら歩き始めておよそ5時間、左前方に森が見えてきた。
「森が見えてきましたね、このまま歩けば素通りできますが…」
「行くに決まっているだろう」
「ですよねー」
2人は左方向にある森に歩いていく。
「森などの暗く死角が多い場所には特に気をつけてくれ。突然出てきたモンスターに不意打ちを喰らって即死なんて稀にあることだからな…」
「はい、森には何がいるか分かりませんからね、どんなことが起きても対応できるようにしないといけませんね」
ウェインは指を折り曲げながら言う。
「ああ、スライム、ゴブリン、トロール、オーク、獣類、ヘビ、虫など他にもたくさんのモンスターが森を生息地にしている場合が多い。何が出てきても不思議ではない。それ以外にも植物型のモンスターなどもいるからな本当に気をつけてくれ」
「一つ疑問に思っていたことがありまして…ウェインさんはモンスターの知識などが多そうなのですが…どこでその知識を得たのですか?」
「小さい頃に父親が旅で出会ったモンスターを丁寧に教えてくれたのと、モンスターについての本を読み漁って知識を身につけた。1人で旅に出ることは分かりきっていたからな、幼い頃はとりあえず知識を得ることに心血を注いでいたのだ」
「子供の頃なのに覚悟が決まりすぎですよウェインさん…」
「…そうか」
「私にモンスターについての知識はあまりないのでウェインさんのモンスターについての解説などは地味にありがたいと思っています」
「そ、そうか」
「はい!森に入りますね」
「ああ、本に書けるようなものがあるだろうか」
そうして2人は森の中に入っていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 森の中
スタスタ…
「まぁ、いたって普通の森のようだな」
「そうですね、今のところは危険度Eのモンスターなどしか見てませんね」
「そうだな、危険度が高いモンスターに出会わない方がこちらとしてはありがたい」
「それもそうですね…」
ブウゥゥゥゥン……!
重く、なぜか恐怖心を掻き立てられてしまうような羽の音がおそらく空からだろうか…一つだけ聞こえてくる。
(重低音のきいた羽の音…)
「ウェウェウェウェインさん!?嫌な音が聞こえた気がするのですが…!?」
「…ああ、まったく何が普通の森だ、だいぶ面倒な類の森に入ったな」
ブウゥゥゥゥン……!
「周りに音の主は見えるか?」
「いえ、音だけ聞こえます」
「そうか、なら一旦隠れるぞ」
2人は大きな茂みに身を潜める。
「はぁ、どうしたものか」
「あの、この音の主って…」
「姿は確認できてないが、十中八九蜂系のモンスターだろうな」
「ああ…とうとう虫のモンスターと戦うことになるとは…」
エリシアは肩をガックリと落とす。
「虫は嫌いか?」
「はい…目が大きいのも無理ですし、足が複数個あるのも無理ですし、何より集団で襲って来るのも無理なんです」
「確かにな、虫系のモンスターは何を考えているのか分からんからな、正直言って嫌悪感を感じるのは分からなくもない」
「それよりも…」
ウェインは茂みから顔を出して周囲を見渡す。
「蜂系のモンスターは基本一体いたら近くに巣があるのは確定だからな、できれば戦うのは避けたい。見つかる前に引き返すぞ」
「良いのですか?この森のことは本に書けそうですが…いや、私はいち早くこの森を抜けたいのですけど…」
「蜂系のモンスターは総じて凶暴で数が多く手強い。それに比べてこちらは前衛1人に後衛1人と単純に数が少なく戦力もあまり高いとは言えない。今戦うのはあまり良い選択ではない。だから本に書くことよりも今は逃げるぞ。命大事に、だ」
「はい、では早くこの場を去りましょう」
「ああ、来た道を「嫌だ!こっち来るな!」
ウェインの言葉を遮るように男性の大きな声が聞こえてくる。
「ウェインさん…!今男の人の声が…」
「ああ、蜂に襲われているのだろうな…申し訳ないが森を抜けるのは辞めだ、助けに行く」
「はい!もちろんです!行きましょう!」
ウェインとエリシアは声がした方向へと走って向う。
小さく開けた場所に鎧を着た男がへたり込みながら槍を振り回している。
「…俺はあそこに突っ込む、エリシアは隠れて様子を伺っていてくれ。状況によっては援護を頼む」
「了解しました!」
ウェインは鎧を着た男がへたり込んでいる場所へ飛び出し、男の正面に縦を構えながら立つ。
「大丈夫か…?」
「やめ…へ?あなたは一体…」
「ただの通りがかった冒険者だ。それより…」
ウェインは男の正面の空を見る。
ブウゥゥゥゥン…!
「…溶解蜂か…厄介な…」
溶解蜂…個体差によるが約1mほどの大きさの蜂であり、麻痺成分が含まれている溶解液を口から吐き出し皮膚と肉を溶かして人間を行動不能にした後に巣に連れ帰って幼虫に食わせるという単体では危険度C、集団であれば危険度Bの凶悪なモンスターである。
「おい、助けに来てくれたことはありがたいが逃げろ!溶解蜂は危険すぎる…!」
「どうせ今逃げてもお前に溶解液をかけて半殺しにした後に追いかけて来る…ならば仲間を呼ばれる前にこいつを殺すしかないだろう」
「だが…」
カチッ!カチッ!ブウゥゥゥゥン…!
融解蜂は顎をカチカチ鳴らしながら突進してくる。
「大丈夫だ…俺達に任せろ」
ガアンッッ…!
ウェインは溶解蜂
ウェインは溶解蜂の突進を盾で防御する。
カチッ!グアアッ…
溶解蜂は盾とウェインの腕を足でがっちり掴む。そして口を大きく開ける。
(溶解液…!)
その瞬間、左方向から放たれたであろう白い光線が溶解蜂の頭に命中する。
溶解蜂は顔を光線で焼かれて口を開けながら硬直する。
「今…!」
ウェインは溶解蜂の首を横から斬り飛ばす。
「ウェインさん!お怪我はありませんか?」
エリシアが茂みから飛び出してくる。
「俺は大丈夫だ。それよりも…」
ウェインは依然地面にへたり込んでいる鎧を着た男を見る。
「私は無傷です、ですけど…」
男は口籠る。
「何かあったのですか?」
「…一旦この場所を離れるぞ。死体が放つフェロモンなどで他の蜂が寄って来るかもしれない」
ウェインは剣を布で拭きながら言う。
3人は少し離れた茂みに隠れる。
エリシアの質問に対して男は答える。
「私の連れが2人、溶解蜂に連れ去られてしまったのです」
「ほう、連れ去られた後に俺たちが駆けつけたわけか」
「はい、2人は私を庇って捕まり、私は命からがら逃げて…」
「早く助けてやらんと2人とも食われてしまうぞ」
「…!いますぐ救助に行かなくては…!」
男は駆け出そうとするが、ウェインが男の腕を掴んで止める。
「そうだな、俺たちも助け出すのを手伝おう、エリシアもそれで良いか?」
「はい!困っている人がいたならば助けるのは当たり前ですから!」
「良いのですか…?溶解蜂の巣は危険度B、この人数で行けば助け出せる可能性よりも死ぬ可能性の方が高いですよ?」
「構わない、俺たちは冒険者だ、いつでも死ぬ覚悟はできている」
「………」コクッ
ウェインは男をまっすぐ見据えて言う。その言葉に合わせてエリシアも頷く。
「…ありがとう、ございます…!」
男は深々と頭を下げる。
「2人が連れ去られた方向は分かるか?」
「はい、こちらです。行きましょう」
男は迷いなく歩いていく。その後ろをウェインとエリシアはついていくのであった。
詳しく知りたい方に
・溶解蜂:約1mほどの濃い橙色と黒色が特徴の蜂。危険度はC。巣、もしくは10数体からなる集団になると危険度はBとなる。かなり凶暴であり、複数体に襲われたならば逃げることを推奨する。お尻の部分に針はあるが毒がない珍しい蜂。たが、その代わりに口から当たった箇所を溶かし、麻痺成分が含まれている溶解液を出す。捕らえた獲物はすぐには餌にせず、死なない程度にズタボロにし、半殺しにして餌にするその時まで生かすという習性がある。なぜそうするかは不明だ。




