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第19話 旅の初日終了

何か気になる点があれば気軽に感想にどうぞ!

ウェインとエリシアは昼食と休憩を挟みつつ、数時間歩き続ける。


「…案外旅とは暇なものなのですね…」


エリシアが口にする。


「そうだな。現状ロック鳥以外にモンスターも出ておらず、景色もそんなに変わらない。退屈と思うのも理解できる。想定と違ってがっかりしたか?」


「い、いえ!そう言うわけでは…」


「現実の旅とは、フリンダルの冒険譚のように大きな出来事が短い間にぎゅっと詰まっているわけではないからな」


「そうなのですね…」


ドドドドドドッ


「ウェインさん!地面が…!?」


そう会話をしているといきなり地面が少し揺れる。


「ああ、モンスターだ」


「は…いッ!?ウェインさん!?」


そう言うとウェインは瞬時にエリシアを荷物を持つようにして担ぎ、その場を離れる。


その直後、


ボンッ


地面が少し膨らみ、大きな音を立てながら崩れて土煙が舞う。


「…危なかったな…」


「……ええと…はいぃ」


ウェインは少し顔が赤くなったエリシアを地面に下ろす。そして土煙が発生している所を見る。


「地面から襲ってくるモンスター…ワーム系統のモンスターか?」


「ワーム…」


エリシアの顔が赤色から青色に急激に変化する。


土煙が晴れる。


地面から上半身を出していたのは…


「ファイドリュウか」


体と爪が大きく成人男性ほどのサイズのモグラだった。


「ファイドリュウ…ですか?」


「危険度Cのモンスターだ。地面からの攻撃が厄介で、あの大きな爪は危険だから注意してくれ」


「はい!」


「地面に潜られる前に叩くぞ」


そしてウェインは剣を抜き、ファイドリュウに走って近づく。ファイドリュウも地面の穴から出て構える。


「ふんッ」


カァンッ


ウェインの剣撃をファイドリュウは正面から両爪で受ける。


(このまま俺がヘイトを稼ぎ、エリシアの攻撃を当てる…)


ウェインはファイドリュウの連続攻撃を剣と盾で弾きながら考える。


「エリシア、援護を頼む」


「はい!お任せください!」


エリシアは杖に魔力を込め、魔法を放つ。


神聖なる光線(ホーリーレイ)!」


一筋の白い光線がファイドリュウに放たれる。


ファイドリュウは神聖なる光線(ホーリーレイ)に気づき避けようとするが…


「そうはさせん」


バゴンッ


ウェインが盾でファイドリュウの顎を殴り、動きを止めさせる。


その直後、エリシアの神聖なる光線(ホーリーレイ)がファイドリュウの右脇腹に命中する。


ファイドリュウは目を見開きグウッッと声を漏らす。


「終わりだ」


ウェインは攻撃を当てられ硬直するファイドリュウの少しの隙を見逃さず、剣を喉に突き刺し、そのまま上に向かって刃を突き上げる。


グアアッと鈍い叫び声を上げて、ファイドリュウは地面に仰向けに倒れる。


「…戦闘終了だ」


「それほど強いモンスターではなかったですね…」


「そうだな。こいつは地面からの攻撃が厄介なのと鋭い爪が脅威なだけで攻撃は遅く、防御も脆い。攻撃を当てさえすれば思いのほか楽に倒せる」


「では、日が暮れる前に進めるだけ進んじゃいましょう!」


エリシアは先に歩き出す。


「ああ…」


ウェインも歩きだした。だが、その時…


ドドドドドドドッッ


先ほどの揺れよりも大きな揺れが起こる。


「ウェインさん!?これは…」


「2体目か…?」


そうしてウェインは自身の足元を見る。


地面から爪の先端が出てきていた。


「ッッッ!?」


ウェインは反射的に後ろに回避し盾を下に構える。


その瞬間、ウェインは地面からの強力な一撃を受けて後方へ吹き飛ばされる。


「ウェインさん!!」


「くっ…問題ない!」


ウェインは地面に転がり、すぐに体勢を立て直す。盾で防御したおかげで怪我を負うことはなかった。そして攻撃してきたモンスターを見る。


「2体目のファイドリュウ……!こいつら、()()()だったのか…エリシア!離れろ!」


2体目のファイドリュウはエリシアの方向を見て右腕を上げる。


エリシアは横に杖で防御しつつ回避する。


(避けきれない…!)


ファイドリュウは右腕をエリシアに向かって振り下ろす。


「やらせるかッ…!」


攻撃が当たるよりも先にウェインは剣に弱風属性魔法(ウインド・マジック)を込める。

そして、アルディアに放った時と同様に剣を勢いよく突き出して風を真っ直ぐに飛ばす。


黄緑色の風がファイドリュウに向かって飛んでいく。そして風はファイドリュウの左足を吹き飛ばす。


グウッッ!?と鳴きながら、左足を失ったファイドリュウは体勢を崩して攻撃ははエリシアの右横を通り過ぎる。そしてそのままうつ伏せで倒れ込んだのであった。


エリシアは倒れ込んだファイドリュウからさらに距離をとる。


「ありがとうございます!ウェインさん!」


「感謝は後だ、とどめを刺す」


ウェインはファイドリュウに向かって走っていく。


負けを悟ったファイドリュウは顔を歪ませながらウェインの方向を振り向き睨む。そして地面を腕で掘って逃亡する。 


「…!?逃げた!?」


エリシアはファイドリュウが掘った穴に近づき、杖を構える。


「魔法を撃っても届くでしょうか…」


「俺がやる」


ウェインが穴を両足で跨ぐ。

そして剣を両手で逆手向きで握り、弱風属性魔法(ウインド・マジック)を剣に纏う。


「逃がさんぞ」


ウェインは剣を穴の中心に目掛けて突き刺す。


剣から風が勢いよく、真っ直ぐ地面に流れていく。


そしてその風はファイドリューを捉える。


風はファイドリュウの下半身から頭にかけて貫通する。そしてその風は土に当たり、小さな衝撃を起こす。


ゴゴゴッ…


少しして揺れがおさまる。


「倒せたのでしょうか?」


「地面の中だからな、分からない。死んだとは思うが、これだけやったのだ死んでいなかったとしても人間の前にはもう姿を現さんだろう」


「凄いですね…!ウェインさんの風攻撃!」


「俺の魔力量では継続して魔法を付与できるのは3分ほど、さっきのように飛ばしたりするのは3、4回が限界だがな」


「そうなのですか…」


魔力瓶(マジックポーション)を飲めば一応はもっと使えるが…まあ良い。日が暮れる前にさらに進むぞ」


「了解です!」

(………魔力量…)


ウェインとエリシアは連続2回の戦闘を終えて、歩き出す。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


日が暮れ始める。


「周囲が暗くなってきたな…今日はここまでで進むのはやめだ」


「分かりました!」


2人は少し離れた所に生えている木の下で夜を過ごすことになった。


ウェインはそこらに落ちている細い木の枝や太めの木の枝、燃えそうなものを集めてくる。そして、マッチで火をつけ、焚き火を作成する。


「火はこれでいいか」


「では私は…」


そう言ってエリシアは杖に魔力を込める。


「はっ!」


杖が強く光り、周囲に一瞬ドーム状のものが発生し、すぐに消える。


「何をしたんだ?」


「簡易的な結界を張りました。この結界内に魔力を持った生物が入ってきたら光り輝いてその侵入を教えてくます!」


「結界か…助かる」


「いえいえそれほどのことは…」


「いらないとは思うがこれも置いておくか」


ウェインは小さな道具を取り出す。


「これに少し魔力を込めてくれないか?」


その小さな道具をガチャと動かしてウェインは言う。


「…?分かりました」


エリシアはその小さな道具に魔力を少し込める。その後にウェインも魔力を込める。


「あの…これは?」


「俺が外で夜を過ごす時に使っている魔道具だ」


「どのような効果があるのですか?」


「この魔道具にはアルディアが町に結界を張る時に使ったような魔石が組み込まれていてな、この魔石に魔力を込めると小さな結界を作ることができるのだ。そして、この魔道具に魔力を込めた者以外が結界に入るとカチッと音を出して知らせてくれるという魔道具だ」


「よくできてますね」


「ああ、ガラクタが沢山置いてある店で見つけた掘り出し物だ。値段はかなり高かったが、機能は値段以上だ。これのおかげで俺は夜、モンスターの襲撃をやり過ごしてきたわけだ」

「さて、夕食の準備をするぞ」


「はい!昼は干し肉と水のみだったですが…」


「…そうだな、夜は少し豪華にするか…」


「そういえばファイドリュウは食べれないのですか?」


「いや、食べれ()する…だが…簡潔に言うと不味い、肉から土の味がするぞ…」


兜で顔は見えないが、苦い顔をしているだろうことは想像に難くない。


「すでに経験済みでしたか…」


「よほどのことがない限り食べるのはやめといた方がいい」


そう言ってウェインはバックパックを漁り出す。


「確かここら辺に…あった」


ウェインは木の箱をバックパックから取り出す。


「それはなんですか?」


「開けてみろ」


ウェインはエリシアに少し大きな長方形の木の箱を渡して開けるように促す。


「分かりました」


エリシアは木の箱を開ける。


「…!冷たっ!」


箱を開けると中から冷気が溢れてくる。


「これは…美味しそうなお肉!」


木の箱の中には冷やされた大きな肉が入っていた。


「それは北牛(ほくぎゅう)の肉、部位はサーロインだ」


北牛(ほくぎゅう)って、高級な牛さんですよね?」


「そうだ、確か北部大陸の国、[セイラント]で育てられた牛だったか…貰い物だから詳しくは分からないな」


「貰い物なのですか?」


「ああ、その肉は1週間ほど前…商人の荷物輸送の護衛依頼だったか、安全に護衛してくれたからって報酬のルミナと一緒にくれた物だ。保存の仕方が分からないと言ったらその特殊な加工が施された木の箱…魔道具なんだがそれを売ってくれた」


「この箱はやはり魔道具でしたか」


「そうだ。蓋の部分が少し分厚くなっていてな、そこに氷の魔石を埋め込まれている。氷に魔力を込めれば冷気が出て中のものを冷やす…というものだ」


「…?でしたら、魔力を込め続けなければいけないと思うのですが…」


「その疑問は正しい。魔石は魔力を込め続けなければ効果を発動しない。ならどうやって、魔力を込めていないのに冷気が出るのかについてだが…」


「魔法陣ですよね?」


エリシアは氷の魔石が埋め込まれている箇所の周りにうっすらと書いてある魔法陣を指差す。


「よく分かったな」


「これでも魔法を使う者ですから!この魔法陣は…魔力を貯めて徐々に流す…といった効果を発揮する魔法陣ですね」


ウェインはそれを聞いて少し感心しながら言う。


「そこまで分かるのか…魔力をその魔法陣に込めれば勝手に魔力を魔石に流してくれる、限界まで魔力を込めれば大体1週間ほどは効果を発揮してくれると言っていたな」


「なるほど」


「まあそんなところだ。さて、調理をするか。エリシア、フライパンを取ってくれ」


「了解です!」


ウェインはフライパンに何のモンスターから抽出したかは分からないが油を少し垂らし、火の上で熱する。


「そういえばトングなどを買うのを忘れたな」


「そうですね…[ハイナー]で買いますか?」


エリシアは紙にメモを取る。


「そうだな、それまではフォークを使って上手くやるか」


「分かりました!今食器を出します」


エリシアは食器を自身のバックパックから取りだす。


ウェインはフライパンの位置はそのままで、バックパックから何かを取り出す。


「下味は大事だからな」


そう言って2つに切り、皿に乗っけた北牛のサーロインにパラパラと何かをかける。


「ウェインさん…!貴重なお塩をそんなにかけていいのですか!?」


ウェインはいきなりの大きな声に一瞬ビクッと体を震わせる。


(内陸部では貴重だからなそう言うのは…まあ正しい)


「海沿いの村で塩を沢山買ったからまだまだある。これからの調理でも気にせず使ってもらって構わない」


「わ、分かりました…すごいですね。私の村にも塩はありましたけど高価でしたので…手が出しづらくて」


「そうか。…焼くか」


塩を買うには町に行くか商人頼りでしかも値段が高いから貴重なのは当たり前か…とウェインは思いながらも肉を一つ、フォークに器用に乗っけてフライパンの上に置き焼き始める。


ジュー…


「…冒険に出てからこんなに良い肉を食べるのは初めてだな」


「良いのですか?ウェインさんが達成した依頼で貰ったお肉なのに私も食べてしまって…」


「1人で食べるには大きい、それに…その俺たちは…パーティだろ?良いものは共有したいと思うのは変か?」


「いえ!そんなことは…!」


「そうか、ならよかった」


ウェインは肉をひっくり返し、赤い部分がなくなるまで焼く。


(良い匂い…)


「…よしそろそろ良いか。皿を持っていてくれ」


「了解です!」


エリシアは皿を持ってウェインに近づく。そしてウェインは焼いた肉を皿に置く。


「冷めてしまう前に食べてしまってくれ」

(付け合わせなどあるがあれば良かったのだがな…)


ウェインは二つ目の肉をフライパンに乗っける。


「そうですか…ではお言葉に甘えて先にいただきますね」


「ああ」


エリシアは地面に敷いた布の上に座り、北牛のサーロインを食べる。


パクッ


(…!!)


エリシアの脳に電流走る。


(柔らかい!!少し噛んだだけで切れてしちゃう!しかも甘い!?肉そのものが他の牛のお肉に比べて甘くて美味しい!焼く前にかけた塩と合わさってメリハリのついた味が最高でいくら食べても飽きないと思います…!このお肉!)


エリシアはすんごい笑顔で肉をゆっくりとパクつく。


「……」


ウェインはその顔を見て兜の中で少し顔を緩ます。


(…!)

「…危ない……」


よそ見をしてしまったことで肉を焦がしそうになるも何とかそれを回避してウェインは安堵する。


2人はいいお肉を楽しみ食事を終えるのであった。


「お腹を満たすことはできたか?」


「はいぃ…満腹ですぅ」


「ならよかった、大き方食べ応えのある肉だったな」

「さて」


外した兜を取り付けながらウェインは言う。


「後片付けをするか」


ウェインとエリシアは食事の片付けをし、しばらく各々の時間を過ごす。


「夜の見張りは2時間おきの交代でいいか?」


「大丈夫です」


「火は消さずに燃やし続けてくれ、いいな?」


「分かりました!」


「よし、相当疲れているのだろう?先に寝てくれ。交代の時間になったら起こす」


「いいのですか?」


「ああ、俺はまだやることがあるからな」


「そうですが…ではお先に眠らせてもらいます」


エリシアはぺこりと頭を下げ、自身の毛布が置いてある場所に座る。そして、両の指の根本をを互いの指の間に交差するようにして握り、祈る。


「…均衡の女神様、本日も実りある良き1日を生きていく力を与えてくださり感謝致します。明日も我らに生きていくための知恵と力を授けて頂けますようお願い致します」


そう祈ってから毛布に包まり眠りにつく。


そう言えば神官は肉とかは食べてもよかったのだろうか…とウェインは考えながら焚き火の前に座る。


そうしてウェインとエリシアの2人の旅初日は終わるのであった。

詳しく知りたい方に


北牛ほくぎゅう:北部大陸、セイラントで育てられた牛。危険度はE。体全体もれなく美味しい牛。その分値段もかなり張る。つまりその牛の肉を貰えたウェインはとても運が良かった。

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