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第17話 青い光

何か気になる点があれば感想にどうぞ!

ウェインはエリシアと共にアルディアの敷地を出る。


「……ふぅ」


ウェインは少し息を漏らす。


「ウェインさん、大丈夫ですか?」


「ん?ああ、心配しなくてもいい。少し…いやだいぶ疲れてな…」


「そうですねぇ、少し勿体無いですが今日は町を回るのはやめて宿屋で休みますか?」


「いや…エリシアは昨日町を散策したとはいえ、また全てを回ったわけではないのだろう?明日[サンセルト]を発つのだ、今日はのんびりと町を歩こうではないか」


「…!はい!行きたい場所がいくつかあるんですけど…そこを巡ってもいいですか?」


「ああ、構わない」


「ありがとうございます!では、行きましょう!」


そうしてウェインとエリシアは日が暮れるまで町を練り歩くのであった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜            次の日


「さて、荷物はこんなものでいいか」


ウェインは朝早く起きて荷物をまとめる。


(エリシアは…まだ起きていないだろうな。これから長距離歩くのだ、もう少し寝かせておくか。…もう鍛冶屋は開いているのだろうか?店の前で開店まで待つか)


ウェインはゆっくりと宿屋の外に出る。


宿屋の外に出て空を見る。そして小さく呟く。


「…いい天気だ」


空は少し橙色になりたての明るい晴れ空だった。


(さて、早すぎるとは思うが鍛冶屋に向かうか)


そうしてウェインは鍛冶屋のある方向へ向かう。


歩きながらウェインは考える。


(次行く町は[ハイナー]か。[サンセルト]からは徒歩で大体3日、4日というところだろうか…直線で行けば…だがな。エリシアは野宿は初めてだろうか?最初のうちは大変だろうな…これに関してはすぐに慣れるだろうが…モンスターは食べれるのか?…)


そんなことを考えながら歩いているとすぐに鍛冶屋に着く。


鍛冶屋の前にはOPENと書かれた立て看板が置いてある。


「…こんな朝早くから営業しているのか…」


そう呟くとウェインは鍛冶屋のドアを開く。


店の中に入ると厳ついドワーフと目が合う。


「お前さん…来るのがだいぶ早えな」


「目が早くに覚めてしまってな…防具の修理は終わったか?」


「当たり前だ、今持ってきてやるよ」


そう言うと厳ついドワーフは店の奥に行き、防具一式を持ってくる。


「ほらよ、修理のついでに綺麗に磨いといたぜ」


「俺が磨いても落ちなかった頑固な汚れが全て落ちている…」


少し黒ずんだ防具一式が綺麗に磨かれ…元の白い姿を取り戻していた。

その姿を見てウェインは少し感激する。


「…追加で料金は発生するのか?」


「ん?ついでだついで金はいらん」


「そうか」


そう言ってウェインは防具をその場で装備し始める。


「どうだ?不備はないか?」


「大丈夫だ。不備はない、むしろ着心地が良くなった気さえする。感謝する」


「おう、あんまし防具に頼りすぎるなよ、防具は修理したとて、どんどん劣化していく。またドラゴンの尻尾打ちでも食らってみろ、今度は死ぬぞ。盾の一つでも買っていきやがれ」


「盾…か」

(今まで速度重視の戦い方をしていた影響で少し重量があったり邪魔だからと盾などは装備していなかったな…)

(…だが、今は後ろに守るべき仲間がいる。攻撃を防ぐ手段はあった方がいいな。…速さ重視の特攻戦法は見直す必要がありそうだ)


「どうした?」


「いや…なんでもない。盾を買おう」


「おう。盾はあっちだ」


そうしてウェインは厳ついドワーフが指差した方向、盾が複数個置いてある空間に行き、自分に合った盾を吟味する。


(大きな盾は俺には合わない。あまり大きくなく、軽いもの…)


そして数十分かけてウェインは自分が買う盾を決め、

厳ついドワーフの前に置く。


「…ほう、ラハチタンの盾か。軽くて丈夫な良い盾だ」


ウェインが選んだのは、薄い黒色の、大きくも小さくもないシンプルな盾だった。


「これにする」


「おう、じゃあ21000ルミナ払いな」


「ああ」


ウェインは21000ルミナを払う。

そして盾を左腕に装着する。


「…よし、用は済んだ、では」


「おう、まいど」


ウェインはそうして鍛冶屋の外に出る。


空は橙色からすっかりきれいな青空になっていた。


(…エリシアはもう…いやまだ起きていなさそうだな)


そう思った直後、後ろから声がする。


「あれ?ウェイン君?」


「む…」


後ろを振り向くと一昨日、昨日と続けて顔を合わせた道具屋の店主、メイナ・オーネスがいた。


「よく会うな…なぜ、俺だと分かった?装備を着た姿は見せてはいなかったはずだが…」


そう、ウェインはメイナに素顔の時の自分しか見せていない。防具を完全に着込んだウェインの姿など見せたことはないのである。


「やっぱウェイン君だったか〜なんで気づいたかって?そりゃ私の作った腰掛けバッグ持ってるの世界に2人だけですしぃ」


ウェインの腰にかけたバッグ、風の魔石が埋め込まれたバッグを指さす。


「….それもそうだな。朝早くになにか用事か?」


「いや?朝早くに町を散歩するのが私のルーティンなの。そんで私が作ったバッグ腰にかけ人がいて(ウェイン君?)って思って声をかけたわけ」


「そうか、では」


「ちょいちょい!ちょっと待って!」


その場を立ち去ろうとするウェインをメイナが引き止める。


「…何だ、何か話でもあるのか?」


「いやその…アレをあげてぇ…エリシアちゃん、どんな反応してた?」


「アレ…とは?」


「はぁ?まさかまだあげてないの?ネックレス!?」


メイナは少し目を見開いて言う。


「ネックレス…あ」


ウェインはやっとエリシアに渡すためにと買ったネックレスの存在を思い出す。


「…まさか忘れてたの?まじで?」


「完全に忘れていた…しまったな」


「…そういうプレゼントはすぐに渡しなさいよぉ〜」


メイナは呆れ気味に言う。


「そういうものなのか…」


「そういうもんなの!」


「…うむ、今日中に渡すとするか」


「うんうん!そうしてそうして!じゃないと、次来た時に買わせる物、ヘンテコなモノにしちゃうわよ〜?」


「…それだけは勘弁願いたいな」


「だったら忘れずに渡すことね!今日この町を発つんだっけ?」


「ああ、朝食をしっかり摂ってから…行こうと思う」


「そう…じゃ!またね〜!良い旅になることを祈っとくわ!エリシアちゃんに悲しい思いさせないでね〜」


「…言われなくてもそのつもりだ。では、世話になったな」


「じゃね〜!」


そう言ってウェインとメイナはそれぞれ違う方向に歩き出すのであった。


そしてウェインは静かな町をゆっくりと歩く。


(これからはエリシアと2人の旅か……他人と旅をするのは久しぶりだな…あれから何年経ったのだろうか…まぁ、良い。エリシアはまだまだ未熟な新米冒険者、しっかりとフォローしながら、大きな怪我なく無事に旅をおえたいものだ)


(…少しづつではあるが店を開ける準備をしている所が増えてきたな。そろそろエリシアを起こして朝食を摂るとするか)


そしてウェインは宿屋の方向に足を進める。


「む…」


宿屋がはっきりと見える距離まで歩いて行くと、宿屋から白い服を着た少女が出てくる。エリシアだ。


宿屋から出たエリシアはキョロキョロと周りを見ており、すぐにウェインと目が合う。そして、笑顔になったかと思うと、小走りでウェインの元へ近づいてくる。


「ウェインさーん!」


「起こすまでもなかったか」


そしてエリシアはウェインの目の前で足を止める。


「ウェインさん!防具の修理は済んだのですね!」


「ああ、完璧に修理してもらった」


「そうですか、ではこの町を発つ前に何か食べて行きませんか?」


「…俺もそうしようと思っていた」


「本当ですか!なら早く行きましょう!」


「ああ」


エリシアはルンルンと前に歩き出す。ウェインも後を追おうとするがその時、自身がするべきことを思いだす。


(いかん、忘れないうちに渡さなくてはな)


「…?ウェインさん?どうかしましたか?」


エリシアは後ろを振り向き首を傾げる。


「…いや、するべきことを思い出しただけだ」


「するべきこと…ですか?」


「そうだ」


そうしてウェインは腰にかけたバッグから一つの綺麗に包装された箱を取り出す。


「これを君に渡そうと思っていてな」


「………え?私にですか?」


「ああ、気にいるかどうかは分からないが、とりあえず受け取ってくれ」


「…!はい!ありがとうございます!」


ウェインは箱をエリシアに手渡す。


「…今開けても良いですか?」


「構わない」


「では…」


エリシアは丁寧に、そして慎重に箱の包装を解いて行く。そして包装を全て解き、箱を開ける。


「…!」


箱の中身は銀色のチェーンに銀色の飾り、そしてその中心には青い宝石が埋め込まれた美しいネックレスが入っていた。


「………」


エリシアはそれを少しの間、見つめ続ける。


(……何も言わない…気に入らなかったのだろうか…)


その時、エリシアの目が潤む。


「あの、その…ありが…とう…ございます」


そして小さく息を吸いながらウェインに感謝の言葉を伝える。


「どうして…私に贈り物を?」


「…そうだな……」


そして少し間を置いてウェインは答える。


「…これからよろしく…ということで…その…」


ウェインは顔を少し逸らす。


「…ふふっ、そうですか、ありがとうございます!一生大事にさせて頂きます!」


「…そうか」


そしてエリシアは箱からネックレスを取り出してウェインに差し出す。


「?」


「今、付けてくれますか?」


「…分かった」


ウェインはネックレスを受け取る。そしてエリシアは後ろを向き髪をたくし上げる。


「いくぞ」


「はい!」


ウェインはエリシアの首の横から手を出してネックレスを前に出す。そして左右同時に手でチェーンの先端を掴み、首筋に向かう。


(これであっているのか?)


そう考えながらネックレスのチェーンの先端と先端をくっつける。


「…これで….いい…はずだ」


「ありがとうございます!」


エリシアは二歩前に出て振り向く。


「どうですか?」


エリシアが笑顔で問う。


「…綺麗…だと思うぞ」


青空を背に、エリシアは満面の笑みで笑い、ネックレスは風に吹かれてチャリンと音を出しながら揺れる。


ネックレスに埋め込まれた青い宝石が光に反射しキラリと光る。


その青い光はその日の青空に負けないほど美しく明るい色を放っていたのだった。

詳しく知りたい方に


・ラハチタン:薄い黒色の鉱物。軽くて頑丈な防具や武器になる。しかもそれなりに安いので冒険者に人気。

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