トレジャーハント 3
アニマリウムの実を手に、改めてその不思議な輝きを見つめた。銀と金が交じり合う光沢を放つその果実は、まるで生命そのものが凝縮されたような神秘的な雰囲気を纏っている。
「これが…無限再生の力を宿すと言われるアニマリウムの実か」
黒騎士が静かに主人公の背後に立ち、守護者のように見守っている。彼の存在が、さらに覚悟を与えるようだった。
アニマリウムの実に軽く歯を立てた。
果実の皮は驚くほど柔らかく、舌に広がるのは言葉にできないほどの濃厚な甘みと、かすかな苦み。それはまるで命そのものを味わっているかのようだった。
果汁が喉を滑り落ちた瞬間、身体中に電流が走るような感覚が広がった。視界が一瞬歪み、体が宙に浮いているような錯覚に陥る。そして次の瞬間、圧倒的な力が内側から溢れ出した。
「――ッ!」
思わず膝をつき、胸を押さえる。内側で何かが弾けるような感覚が続き、全身に暖かさが満ちていく。肌が輝き始め、傷や疲労が瞬時に消えていった。
さらに、先ほどまで感じていた微かな痛みや疲労すら完全に消え去る。その瞬間、身体が「完全な状態」へと戻る感覚を得た。
《無限再生を獲得しました。あらゆる損傷、状態異常を即回復します。》
「これが…無限再生の力…か」
手のひらを開き、自らの力を試すようにダガーで軽く指を切った。わずかな痛みと共に流れ出した血液。しかし、ほんの数秒で傷は完全に塞がり、まるで何もなかったかのように元に戻る。
その場にいた黒騎士も、変化を静かに見つめていた。
次に、試すように歩みを進め、壁に手をついた。わざと強い衝撃を与え、その勢いで倒れる。しかし、地面に激突した瞬間、衝撃で負った微細な骨折や擦り傷も一瞬で修復された。
「これが『無限再生』…もはやどんな戦いでも倒れることはないな」
拳を強く握りしめ、これから先の運命を見据える。
「無限再生」と「黒騎士」の力を手に入れたことで、彼の旅路は新たな段階に進む。
黒騎士の赤い瞳が光を宿し、彼の忠誠がさらに確固たるものとなったかのようだった。
「行くぞ、黒騎士。この力を存分に使い、道を切り拓く」
黒騎士は静かに頷き、彼の背後に忠実な影として付き従った。死生の谷を後にした足取りには、迷いも恐れもなかった。
死生の谷を後にした主人公と黒騎士。二人の姿は霧が立ち込める細い山道を抜け、谷を囲む岩壁を登り切る頃には薄明るい空の下に現れていた。
主人公はアニマリウムの実で得た無限再生の力を、何度も感覚的に確かめていた。黒騎士もその様子を黙って見守りつつ、時折その鋭い視線で周囲の警戒を怠らない。
道中、突然草むらが激しく揺れた。そこから飛び出してきたのは巨大な魔狼の群れだ。牙を剥き出しにして襲いかかってくる様子に、普通の冒険者ならば恐怖で動けなくなっただろう。
「テストには丁度いいな」
黒騎士に目配せをし、フェリスタルを抜き放つ。
魔狼の一匹が空中に飛びかかる。
猫足瞬歩!
狼の背後を取り、空を裂くような一閃を繰り出した。
猫爪最夜!
闇の刃が鋭く放たれ、魔狼は悲鳴を上げながらその場に崩れ落ちる。だが群れは怯むどころかさらに勢いを増し、迫ってくる。
黒騎士も動き出した。
大剣を一閃すると、黒い魔力が波となり広がり、複数の魔狼を吹き飛ばした。その動きは鋭く、無駄がない。あえて自ら傷を負い、無限再生の力を試すような動きを見せた。魔狼の爪が肩口を掠めた瞬間、皮膚が裂け血が流れたが、すぐさま傷口は黄金の光を放ちながら塞がった。
「やはり、この力は本物だ…!」
笑みを浮かべ、戦いをさらに激化させる。次々と魔狼を切り伏せていく中で、彼はどこか安堵にも似た感覚を覚えた。
全ての魔狼を討ち取った後、黒騎士がそっと近づいた。
「…主、無限再生の力を持った者でも、過信は禁物です」
その静かな忠告には、どこか真剣さが滲んでいた。
「わかっているさ。だが、これが新しい力だ。限界を試さずにはいられない。だが死なないわけじゃない、これからは気をつけるよ」
黒騎士の言葉を受け止めつつも、どこか自信に満ちた声で答えた。
谷を完全に抜け、平原が広がる光景が目の前に広がったとき、二人は少し足を止めた。
「次はどこへ向かう?」
問いに、黒騎士は一瞬考えるようにしてから答えた。
「新たな試練を求めるのなら、東の大地に広がる“灰の荒野”へ向かうべきかと」
黒騎士の指差す東の地平線を見据えた。そこに広がる“灰の荒野”は、かつて数多の戦士や冒険者たちが挑み、そのほとんどが帰らぬ場所とされている危険地帯だった。
「灰の荒野か…あの地には一体何がある?」
問いかけながら、手にしたフェリスタルの刃先を丁寧に拭き取る。その動きには、これまでの戦闘を経た余韻と次なる戦いへの準備が感じられた。
黒騎士は静かに語り始めた。
「灰の荒野には、古代の戦で滅びた者たちの魂が今も彷徨っています。そこに眠る“灰塵の王”と呼ばれる存在は、彼らの怨念を力に変えて支配しているとか。」
「灰塵の王ね…。そいつが次の試練になるってわけか」
微かに口角を上げた。その目には、挑戦に燃える光が宿っている。
黒騎士は反応を見て、少し迷うように言葉を続けた。
「ですが、主。灰の荒野にはただ強さだけではなく、怨念に飲み込まれれば、無限再生の力さえ無力化されるかもしれません。」
「怨念か…。それも試す価値があるな」
自信に満ちた声で答えると、黒騎士の肩を軽く叩いた。
東へと向かう道中、二人は平原を抜け、風が巻き上げる草原を歩いた。荒野が近づくにつれて、空気は次第に重く、周囲の景色は乾いた灰色に染まっていった。
「感じるか?この空気」
立ち止まり、風に乗る独特の冷たさを感じ取る。その表情には僅かな緊張と期待が入り混じっていた。
黒騎士も同じように周囲を見渡しながら頷いた。
「はい。灰の荒野の入り口は近いようです。…ですが、一度踏み入れたら戻るのは容易ではありません」
「だからこそ行くんだろう」
前を向き直ると、一歩を踏み出した。その背には、黒騎士が静かに従う。
灰の荒野の入り口にたどり着いた時、二人は立ち込める霧と地を這う黒い気配に包まれた。
その場所はまるで生きているかのように不気味にうごめき、周囲には無数の朽ち果てた剣や盾が散乱している。
「ここが“灰の荒野”か…。さっそく歓迎の準備が整ってるみたいだな」
フェリスタルを構え直し、前方を見据えた。
すると、地面から黒い靄が形を取り、怨念の塊のような姿が現れた。その無数の目が主人公と黒騎士をじっと見据えている。
「さあ、試練の始まりだ」
戦いへの一歩を踏み出した。黒騎士もその後に続き、二人は荒野の奥深くへと進んでいくのだった。
黒騎士が荒野の中心に近づくにつれ、空気はさらに重く、耳鳴りのような音が響き始めた。灰色の霧は濃度を増し、視界がほとんど遮られる。その中、黒騎士が声をかけた。
「主、この先が灰塵の王が待つ場所のようです。しかし、その力を前にすれば、並の意志では己を保てないかもしれません」
一瞬だけ立ち止まり、背後の黒騎士を振り返った。
「安心してくれ。これまでの試練で、そんなものは覚悟の上さ」
その声は、揺るぎない決意に満ちていた。
中心地に足を踏み入れた瞬間、霧が一気に晴れた。広がるのは広大な闇色の空間。その中央には、巨大な玉座に座す異形の存在がいた。
「灰塵の王…か」
その姿を見て呟いた。その体は朽ちた骨と黒い炎で構成されており、その瞳はまるで虚無そのものだった。灰塵の王がゆっくりと立ち上がり、低い声が響き渡る。
「愚か者よ、この地に何を求める。貴様に死の覚悟があるか?」
その挑発を一笑に付し、フェリスタルを構えた。
「覚悟なら、とうに済ませている。お前がその力を試したいなら、全力で来い」
灰塵の王が手を掲げると、周囲の地面から無数の亡者が湧き上がる。その姿は、かつてこの地で倒れた冒険者や戦士たちの成れの果てだ。
「主、亡者たちが動き始めます。ここは一刻も早く王を討つべきです」
黒騎士が冷静に状況を伝えるが、微笑を浮かべたまま答えた。
「心配するな。奴ら相手に無限再生の力を試してみるのも悪くない。」
亡者たちが一斉に襲い掛かる。
神速!
まるで影のような動きで敵を翻弄する。
フェリスタルが放つ一閃が亡者たちを次々と切り裂くが、倒したかと思えば、彼らは再び立ち上がる。
「しぶとい奴らだな…」
苦笑しつつもさらに戦い続けていると、灰塵の王が動き出した。
「弱者の戯れに興じる暇はないだろう」
そう言いながら王が手を振ると、闇の波動が広がり、強制的に後方へ吹き飛ばされた。
「くっ…!」
激しい衝撃により地面へ叩きつけられたが、その体はすぐに修復されていく。無限再生の力が確かに発動しているのを感じ、立ち上がった。
「これが無限再生の恩恵か」
自身の回復速度に驚きつつ、再びフェリスタルを握り締めた。
灰塵の王はその様子を見て笑った。
「面白い…その力がどこまで持つか試してやろう」
その言葉と共に、灰塵の王との本格的な戦いが始まった。黒騎士は一歩引き、主の戦いを見守る。その背中には、信頼が滲んでいた。
戦闘は激しさを増し、灰塵の王は次々と闇の魔法を繰り出した。その力は圧倒的で、空間全体が震えるような威圧感を放っている。しかし、一歩も引かずに応戦を続けた。
「その程度の力で何を威張っている?」
闇の波動を回避する。
猫爪最夜!
刃から放たれる闇の力は、灰塵の王の放つ魔力を切り裂き、その巨体に深い傷を刻む。
しかし、その傷もまた闇の力によってすぐに癒えていく。灰塵の王もまた、再生能力を持っていたのだ。
「フフ…無限再生を誇るか。だが、私の力の前ではそれも無意味だ」
灰塵の王は不敵な笑みを浮かべ、闇の刃を召喚して襲いかかる。
「同じ土俵なら、どちらが上か試してみるか」
その刃をかわす。
影猫輪環!
闇の刃の攻撃を吸収し、それを増幅して灰塵の王へと反射する。
灰塵の王は予想以上の力にたじろぐが、すぐに立て直した。
「面白い、だがその程度では足りぬ!」
王が両腕を広げると、周囲の亡者たちが一斉に爆発し、その闇のエネルギーが王の体に集まっていく。王の体はさらに巨大化し、力を増幅させた。
黒騎士がその様子を見て声を上げた。
「主、このままでは奴は完全体となり、手がつけられなくなります!」
一瞬だけ考えを巡らせた。無限再生の力があるとはいえ、王が完全体となれば打倒は困難になる。
「なら、こっちも全力でぶつかるしかないな」
勇者召喚!
光の中から現れたのは、かつて世界を救った勇者の精霊。その力が宿り、フェリスタルは黄金の輝きを放つ。
「さあ、行くぞ!」
黒騎士と勇者の力を借り、灰塵の王へと突撃したーー。
戦いの末、闇光一体を発動し、光と闇の力を融合させた一撃を灰塵の王に放った。その力は王の再生能力を上回り、その体を粉々に砕いた。
最後の一撃を受けた灰塵の王は、虚ろな瞳で見つめながら崩れ落ちた。その場にはただ、灰塵の王の残骸と「ネクロマンサーの刻印」が残された。
黒騎士がゆっくりと歩み寄る。
「主、お見事です。この刻印を手にした今、貴方はネクロマンサーとしての力を得たのです」
その刻印を手に取り、光がその体に吸い込まれるのを感じた。頭の中に新たな知識が流れ込み、亡者を操る力と死を超越する術が自分のものとなったのを理解した。
戦いが終わり、黒騎士共に静寂に包まれた谷を後にした。死生の谷を抜け、ただの冒険者ではなく、無限再生とネクロマンサーの力を持つ最強の存在として、さらなる試練へと歩みを進めていくのだった。
《ネクロマンサーを獲得しました。亡者を使役できます。》
闇堕ちはだめ!絶対!




