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トレジャーハント

「主、少しお伝えしたいことがございます」


にゃんまるは静かに呼び、少し緊張した面持ちで歩み寄ってきた。いつもの落ち着いた雰囲気とは少し違い、どこか重要な情報を持ってきたようだ。


「どうした?にゃんまる」


不安げな様子を見て、少し警戒しながらもにゃんまるに問いかける。


「実は、ギルドから新しい情報が届きました」


にゃんまるは少し間をおいて、重要そうな話を切り出した。


「『アニマリウムの実』に関する情報です」


「アニマリウムの実?」


眉をひそめ、少し聞き覚えのない名前に首をかしげる。


「はい、その実は非常に特別な力を持つことで知られています」


にゃんまるはうなずきながら、続けた。


「ギルドが調査したところ、その実は死と生の境界に近い場所にのみ存在し、食べることで無限に近い再生能力を得ることができると言われています」


驚きと興味を隠せない様子で聞き入る。


「無限に近い再生力…そんなものが存在するのか?」


「はい。あくまで伝説ですが無傷に回復するだけでなく、命が尽きかけた者でさえもその力で甦ると言われています。ただし、その実を手に入れること自体が並大抵のことではありません」


にゃんまるはその言葉を慎重に選びながら続ける。


「アニマリウムの実は『死生の谷』という非常に危険な場所でしか育たないのです。その谷は、命と死が交錯する場所で、そこを越えなければ実には辿り着けません」


「死生の谷か…」


その名前に少し沈んだ表情を浮かべる。


「そんな場所を越えるなんて、かなりの覚悟が必要だな」


「その通りです、主」


にゃんまるは静かに答え、少し視線を落とした。


「ですが、無限の再生力を得ることができるのであれば、主にとっても非常に価値があるかと」


にゃんまるはゆっくりと顔を上げ、見つめた。


「ギルドから届いた情報では、その実を手に入れるために向かう者が少なくありません。ですが、谷を越えるには多くの試練が待ち受けているでしょう」


その言葉を重く受け止めながらも、少し決意を込めて言った。


「無限の再生力か…それがあれば、怪我の心配がなくなる。死生の谷に行ってみよう」


にゃんまるは深く頷き、敬意を込めた視線を送った。


「それでは、準備を整えたほうがよろしいかと。死生の谷は命を賭ける場所です。慎重に行動してください」


にゃんまるの言葉を受け、決意を新たにした。


「分かった。しっかり準備をして、死生の谷へ向かうよ」


数日後ーー。

にゃんまるはいつも通り、書類を整理しながらも、どこか焦ったような表情をしていた。何かが気になる様子で、目を向けた。


「失礼いたします、主」


にゃんまるは軽く頭を下げて、声をかける。


「うん、どうした?」


手を止め、にゃんまるを見つめる。


「実は、急ぎの依頼が入りましたので、今回は主お一人で死生の谷に行っていただくことになります」


にゃんまるは少し申し訳なさそうに言う。少し驚きつつも、理解を示して頷く。


「そうか。でも、一人だと少し不安だな」


にゃんまるは優しく微笑み、


「ご心配無用です、主。死生の谷へのルートはしっかりとお教えいたしますので、どうかご安心ください」と言った。


にゃんまるは地図を広げ、指で道をなぞりながら説明を始める。


「まず、エルモス村から出発し、北方向へ進んでいただきます。道を進んでいくと、最初に『霧の湿地帯』に差し掛かります。ここでは視界が非常に悪くなりますので、足元には十分に気をつけてください。湿地の中には魔物も出現することがありますので、警戒を怠らないように」


意深く耳を傾け、頷く。


「霧の湿地帯か。気をつけるよ」


「その後、湿地帯を抜けると『霧の峠』に差し掛かります」


にゃんまるは指をさらに進め、峠の部分を示した。


「ここが最も注意が必要な地点です。霧の中で幻覚を見せてくる存在がいるため、心が乱されることがあります。焦らず冷静に進むことが大切です」


少し考え込みながらも、にゃんまるの言葉に深く頷いた。


「幻覚か。冷静を保つようにする」


「そうです」


にゃんまるはさらに指を進め、


「峠を越えると、いよいよ死生の谷の入り口です。谷の中には強力な魔物が棲んでおり、その中にはアニマリウムの実を守っている守護者もいます。その守護者を倒さなければ、実に手を触れることはできません。」


「守護者を倒す、か」


その言葉にしばし考え込み、


「しっかり準備して行くよ」


「その通りです」


にゃんまるはにっこりと微笑み、


「もし何かあれば、早めに帰ってきてください。死生の谷は危険な場所ですので、無理はなさらず、慎重に行動なさってください」


力強く答える。


「ありがとう、にゃんまる。無事に帰るから、心配しないで」


にゃんまるはその言葉を受けて、少し安心したように頷く。


「はい、主ならきっと無事に戻ってこられると信じております。気をつけて行ってらっしゃい」


微笑みながら頷き、準備を整えて死生の谷へと向かう決意を固めた。


翌朝ーー。

準備を整え、にゃんまるからの最後の言葉を胸に死生の谷へと向かう。


エルモスまではアークで行き、そこから徒歩で向かう。霧の湿地帯を通る途中、空気がひんやりと感じられ、湿気を含んだ土の匂いが漂ってくる。足元はぬかるんでおり、進むたびに足音が泥に沈むような感覚があった。霧の中で視界がほとんど奪われ、周囲は一面白いぼんやりとした景色となり、何も見えない。


「こんな中で道を外すわけにはいかないな…。」


黙々と歩きながら、慎重に前進していく。


湿地帯の中で時折、木々の間から何かが動く気配があったが、何も姿を現さなかった。それでも、にゃんまるの言ったとおり、警戒心を緩めることはなかった。視界が悪いため、少しでも変化があれば反応できるように、耳を研ぎ澄ませていく。


しばらく進んでいくと、前方に薄暗い岩肌が現れ、霧の峠が見えてきた。霧が濃くなり、目の前がさらに見えにくくなったその瞬間、ふっと身を固くした。


「これが霧の峠か…」


足を止め、注意深く周囲を見回す。


にゃんまるが言っていた通り、この場所では幻覚を見せる存在が現れる可能性がある。焦らず、落ち着いて進まなければならない。だが、どうしても心の奥底で不安が湧いてきた。これまでの冒険では、どんな魔物にも対処してきた自信があったが、この峠には未知の力が待ち受けているような気がした。


その時、視界の隅に、ふわりとした光のようなものが見えた。ふっと目を向けると、そこには一人の女性が立っている。白い衣装を着たその姿は、どこか夢の中で見たような不思議な印象を与えた。


「……?」


その女性をじっと見つめ、警戒心を強める。足元には重い霧がまとわりついて、周囲の音も聞こえにくくなっていた。その女性はゆっくりと、無言で歩き出した。歩き方は、まるでただの幻のように足音が響かない。


「これは…幻覚か?」


一歩、また一歩と慎重に距離を取ろうとしたが、その女性が急に振り返り、優しく微笑んだ。その笑顔があまりにも穏やかで、何とも言えない違和感を感じさせた。


「あなた…は本当にここにいるのですか?」


その瞬間、女性はにっこりと微笑み、足元の霧が一気に晴れていく。視界が明るくなり、周囲の景色が現れた。彼女の姿も、その霧の中に溶けるように消えていった。その光景に一瞬驚いたが、すぐに冷静になり、にゃんまるが言っていた言葉を思い出す。


「幻覚、か…。さすがに強力だな」


気を引き締め、再度歩みを進める。霧の峠を越えると、岩肌が険しくなり、やがて死生の谷の入り口が見えてきた。辺りには不穏な雰囲気が漂い、空気がひんやりとした冷たさを帯びていた。


「ここが…死生の谷」


その場に立ち止まり、周囲を見回す。谷の中には重厚な黒い雲が低く垂れ込めており、いくつかの巨大な岩が散乱している。谷底からは微かな音が聞こえ、そこに潜む魔物たちの気配を感じ取ることができる。


「守護者か…」


短く呟き、心を落ち着けて進む決意を固めた。


谷の中へ一歩踏み込むと、その空気がますます圧迫感を増し、心臓が速く鼓動を打ち始める。彼の中の戦闘本能が覚醒し、周囲に視線を向けながら、どんな魔物が現れるのかを待った。


だが、どこか遠くから、ひときわ大きな足音が近づいてくる。

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