美味しいものが食べたい 4
紋章の中心に足を踏み入れると、地面が青白く輝き始めた。同時に、廃墟に風が吹き抜け、空気が一変した。先ほどまでの静けさは消え去り、どこからともなく重厚な足音が響いてくる。
「主、気をつけてください!」
にゃんまるが警告を発する。その声と同時に、廃墟の奥から巨大な石像のような存在が現れた。それはまるで天空を支える守護者のような姿で、全身に刻まれた古代文字が青い光を放っている。背中には翼のような構造があり、鋭く見つめていた。
「これが…試練の相手か」
ダガーを握りしめ、構えを取った。
石像は何も言葉を発さないまま、ゆっくりと右手を掲げた。その手には槍のような武器が形成され、次の瞬間、石像が突進してきた。
「くるぞ!」
素早く横に跳び、攻撃をかわした。槍が地面に突き刺さると、衝撃で地面が砕け、埃が舞い上がる。
「主、この相手はただの力任せではありません。紋章が示す通り、何かの仕掛けがあるはずです!」
にゃんまるが空中で石像の動きを観察しながら叫ぶ。にゃんまるの言葉を胸に刻みつつ、石像を見極めるように距離を取った。そのとき、視界の隅に廃墟の柱に刻まれた同じ紋様が光っているのが目に入った。
「あれか…!」
石像の攻撃を回避しつつ、柱に向かって走り出した。石像はそれを見逃さず、槍を振り上げて追撃する。しかし、
猫足瞬歩!
無音で素早く動いて柱の近くに到達した。柱に刻まれた模様に手を触れると、そこから光が走り、廃墟全体に響き渡るような音が鳴り響いた。
石像が一瞬動きを止めたのを見て、にゃんまるが声を上げる。
「やはり、柱が鍵のようです!全部の模様を起動させれば勝機があります!」
「了解!」
次の柱を目指し、再び瞬歩で駆け出した。石像は再び動き出し、槍を投げてきた。
猫影幽牢!
槍をかわし、柱にたどり着く。二本目の柱も光り始めると、石像の動きが鈍くなり始めた。しかし、その代わりに全身の光が強まり、周囲の空間に異常な圧力が生まれた。
「時間がない…!」
焦る気持ちを抑え、三本目、四本目の柱を次々に起動していく。
最後の柱に手を触れると、廃墟全体が一瞬で静寂に包まれ、石像がその場に崩れ落ちた。青白い光が主人公の元に収束し、手のひらに新たな模様が刻まれる。
「これが試練の証か…」
手の模様を見つめながら呟いた。にゃんまるがグリフォンで降り立ち、満足そうに笑った。
「よくやりましたね、主。この力、きっと今後の旅でも重要な意味を持つはずです」
深呼吸をし、にゃんまるに頷いた。
「試練を越えたってことなら、次はこの力をどう使うかだな。アストラルにはまだ何か隠されている気がする」
「ええ、それに…スカイフルーツの木がたくさんある場所も探してみましょう」
にゃんまるが軽口を叩き、二人は試練の地を後にし、新たな探索を始めた。
にゃんまるがアストラルの中心部に近づくと、風景はさらに幻想的なものへと変化していった。空中には無数の光が漂い、その中に一際目立つ存在が浮かび上がる。それは、高さ数十メートルに及ぶ純白の木だった。
「これは…エアルベリーの木」
にゃんまるが景色を眺めながら呟いた。
エアルベリーの木は、枝の先端に宝石のように輝く果実をいくつも実らせていた。その果実は淡い空色をしており、薄い光を放ちながら、時折ふわりと枝から浮かび上がっては再び元の位置に戻る。まるで木そのものが呼吸をしているかのようだった。
「エアルベリーは、スカイフルーツと違い、完全に浮遊する果実です。食べた者には空を滑るような身軽さを与える力が宿るとされていますが、特に熟した果実は、心と身体を浄化する作用もあるとか」
にゃんまるが説明しながら木を見上げた。
「スカイフルーツよりも不安定に浮かんでいるな。これを収穫するのは一苦労だろう」
その様子を観察しながら言うと、にゃんまるは鋭い目で周囲を警戒し始めた。
「そうですね。エアルベリーはアストラルの力に直結している存在とも言われています。そのため、収穫を試みると試練が与えられることが多いです」
木の周りには風のような気配が満ちていた。そして、一歩木に近づいた瞬間、風が突如として渦巻き始め、空中に透明な精霊のような存在が現れた。
精霊は淡い青い光をまとい、優雅な動きで見つめている。
「天空の果実を求めし者よ、心の澄み渡る力を示せ」
試練の言葉に一瞬たじろいだが、覚悟を決めて応じた。静かに頷き、精霊の前に進み出た。その瞬間、周囲の風が強まり、渦の中心に彼を巻き込むように動き出した。精霊は優しい声で問いかける。
「汝の心に迷いがないことを示せ。我らの果実を手にする覚悟があるならば、その想いを風に託せ」
渦の中で目を閉じ、自らの心を落ち着かせた。アストラルへの旅、エアルベリーの力を求めた理由、仲間たちとの絆――そのすべてが脳裏をよぎり、彼の心に確かな決意をもたらす。
「俺は、この果実を手にして、自分の道を切り開きたい。そして、この力を必要としている仲間たちに届けるんだ」
心の中で強く念じ、目を開いた。その瞬間、風がピタリと止まり、渦は光の粒となって消え去った。精霊は満足そうに微笑み、空中を漂うエアルベリーの中からひとつを手に取るよう促した。
「汝の決意、確かに受け取った。この果実が汝の力となることを祈ろう」
木に近づき、慎重に浮かぶエアルベリーのひとつに手を伸ばした。果実に触れると、暖かな感触が手に伝わり、果実が軽やかに彼の手の中に収まる。
「これが…エアルベリーか」
その輝きをじっと見つめた。果実の表面は光を帯びており、手にしただけで心が安らぐような感覚に包まれた。にゃんまるが、果実を興味深そうに眺めた。
「主、これでアストラルの真髄に触れましたね。エアルベリーを得たということは、今後の旅に大きな力となるでしょう」
手にしたエアルベリーをじっと見つめると、その果実がほんのりと輝き、浮遊しているような感覚を覚えた。にゃんまるはその様子を見守り、念じると、目の前に透き通る光が現れ、鑑定が始まった。
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エアルベリー
品質: ☆☆☆☆☆ (五つ星)
種別: 幻想的果実
効果:
食べることで一時的に軽やかな浮遊能力を得る。
浮遊中は重力から解放され、一定時間自由に空を滑ることが可能。
浄化の力: 食べる者の心身の疲れを癒し、精神的な浄化を促進する。
心の迷いを払拭し、次に進むための決意を固める手助けをする。
伝承:
古くから「天の果実」として扱われ、手にした者は心が清らかになり、人生の大きな転機において成功を収めると言われている。
浮遊する力があるため、持ち主はしばしば「空を飛べる者」として尊敬される。
備考:
収穫が非常に難しく、アストラルの深い場所でのみ見ることができる。
精神的な試練を乗り越えた者のみが手にすることができる貴重な果実。
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鑑定結果が表示されると、改めてその果実が持つ神秘的な力を実感した。心の中にある不安や迷いが軽くなったような気がし、手にしたエアルベリーが今後の旅にどれほど重要な役割を果たすのか、自然と感じ取ることができた。
「やっぱり、ただの果物じゃないんだな」
その結果に満足しながら、エアルベリーを慎重に袋にしまった。
にゃんまるもその様子を見て、微笑みながら言った。
「エアルベリーは、ただの力ではなく、心をも浄化する力を持っているんです。これを食べることで、あなたの心がさらに強く、確固たるものになるはずです」
「試練を越えたことで得たものだからな。簡単に手に入ったわけじゃないし、大事に使いたい」
アストラルの中心部を後にし、二人は空を滑るように飛ぶための準備を整えた。にゃんまるが先にグリフォンにまたがり、アークの背に乗る。
「エアルベリーの力、後で試してみるのもいいかもしれませんね」
にゃんまるが笑いながら言う。
「いや、まずは地上に戻ってからだ」
微笑み返し、アストラルの絶景を最後に見渡した。
光り輝く木々、浮遊する島々、澄み切った空――そのすべてが彼の心に刻まれた。新たな力を手にしたことで、二人の旅はさらに広がりを見せるに違いなかった。




