美味しいものが食べたい 2
空はますます広がり、地平線がどんどん遠くなっていく。アークの翼が風を切る音と、にゃんまるのグリフォンが軽やかに飛ぶ羽音が空に響く。その響きが、空を駆け抜ける冒険の始まりを一層強調していた。
「主、見えてきました」
にゃんまるが空の向こうに浮かぶ島々を指差した。確かに、目の前に広がるのは、空に浮かぶ奇妙な島々。これがアストラルだ。
「本当に、あそこに行くのか…」
息を呑んだ。島々は幻想的で、まるで夢の中の世界のように浮かんでいる。空を舞い、竜や鳥のように自由に飛び交うことができるとは、まるで別世界のようだ。
「はい」
にゃんまるは力強く答えた。
「アストラルは、何世代にもわたって最も貴重な食材や薬草、そしてスカイフルーツが手に入る場所です。私たちの目的地もその一つ、スカイフルーツが育つ場所です」
「スカイフルーツか…」
その果実の味と力を思い描きながら、心の中でその目的を再確認した。
アークは軽く唸り、さらに翼を広げて加速した。その力強さに身を委ねながら、次第に浮かぶ島々に近づいていく。
「これから先、少し風が強くなるかもしれません」
にゃんまるが注意を促した。
「アストラルの島々は風が強く、空気が不安定です。でも、心配しないでください。グリフォンもアークも、この空を飛ぶのは得意ですから」
「わかってる」
アークの背にしっかりと座りなおした。風がますます強くなり、周囲の空気が一層冷たくなってきた。だが、それでもアークは動じることなく、その翼をしっかりと羽ばたかせ続ける。
「見てください、あの島」
にゃんまるが目を輝かせて言った。遠くの島の上に、奇妙な光景が広がっていた。空に浮かぶ小さな山々の上に、虹のように輝く色彩が漂い、その中にいくつかの果樹が見えた。スカイフルーツの木だ。
その光景を見て、思わず息を呑んだ。
「あれが、スカイフルーツの木か…」
「そうです」
にゃんまるはうなずきながら、グリフォンをその木々の周りへと誘導していった。
「あの木々の中に、スカイフルーツが実をつけています」
アークもその後に続き、ゆっくりと空を降りていく。その木々がどんな実をつけているのか、心を躍らせながら見守った。
アストラルの風景は、まるで幻想的な別世界だった。浮かぶ島々はまるで雲の上にあるかのように、空を舞う竜や鳥の影が浮かび上がる。その島々の表面には、エメラルドグリーンの草原が広がり、岩肌には光り輝く鉱石が埋め込まれていた。風は温かく、しかしどこかしっとりとしていて、まるで天界にいるような錯覚を与えてくれる。
「見てください、この景色」
にゃんまるは目を輝かせながら言った。
「アストラルの島々は、地上では決して見られないような風景が広がっています。天空に浮かんでいることで、空気や光の加減がまるで異なるんです。」
「本当に、どこを見ても美しい…」
アークはそのまま、さらに低く降りて、島々の中央へと向かう。周囲に浮かぶ島々を見下ろしながら、主人公はその壮大さに圧倒される。少しずつ降下し、風が肌に心地よく触れる。やがて、目の前に広がったのは、空に浮かぶ小さな山々の上に、スカイフルーツの木が生い茂る場所だった。
アークがゆっくりと着地すると、その光景に見とれて立ちすくんだ。木々は透き通るような光を放ちながら、青空のように輝く実をつけている。まるで空の一部がこの島に降り注いだような美しさだ。
「ここがスカイフルーツの実る場所です」
にゃんまるがゆっくりと歩き出し、その実を指差した。
「あの実が、空を飛ぶ力を宿しています」
その実をじっと見つめ、手を伸ばして一つ摘み取った。手に触れると、ひんやりとした感触が伝わる。その実の色は、まさに青空のような輝きを放っていた。
「これが…」
その実を手に取り、驚きの表情を浮かべた。
「本当に、幻想的だ」
にゃんまるは微笑んで答えた。
「はい、この果実を食べることで、空を飛ぶ力を得ることができます。さあ、主も一緒に、スカイフルーツを味わってみてください」
見た目は、まるで空そのものを映し込んだかのように、澄んだ青色をしている。果実の表面は薄い雲のようにふんわりとした模様を持ち、まるで空を切り取ったかのように透き通って見える。光を浴びると、果実はまるで青空の中に浮かぶ雲のように輝き、見る者の目を引きつける。
その果実は、手のひらサイズほどで、皮が薄く、透明感がありながらも非常に強い弾力を感じさせる。表面には微細な光沢があり、触れるとほんのりと温かみを感じるほどだ。果実の周りには、細かな繊維状の枝があり、まるで小さな空に浮かぶ雲がかかっているかのような印象を与える。
「見た目も、まるで空そのものみたいだ」
その美しさに思わず感嘆の声を漏らした。
「はい、その通りです」
にゃんまるは微笑みながら続けた。
「スカイフルーツの皮は非常に薄く、力強い青色をしています。その色合いは、まさに空を映し込んだようなものです」
スカイフルーツを手に取り、じっとその青く透き通った表面を見つめた。まるで空そのものが凝縮されているかのようで、手のひらに乗せると、ほんのりと温かさを感じる。それは不思議な感覚で、果実から伝わってくる優しい温もりに、どこか心が落ち着くようだった。その美しさに感動しながら、果実をもう少しじっくり観察した。
「表面に浮かぶ模様、まるで雲が広がっているみたいだ」
「その通りです」
にゃんまるはにっこりと笑いながら続けた。「スカイフルーツは、空気中の成分を取り込んで育つため、空の色をそのまま反映させるのです。青い空がそのまま果実に宿っているようですね」
慎重に果実を割ってみた。中身は、ほんのりと薄緑色を帯びていて、果肉はしっとりとしており、甘い香りがほのかに広がる。果実を割った瞬間、その柔らかな果肉が透けて見え、まるで透明なジェリーのような感触を与える。
「中もすごく綺麗だ…」
その美しさに思わず息を呑んだ。
「果実の色合いがまるで空の深さを感じさせる」
にゃんまるは頷きながら説明を続けた。
「スカイフルーツの果肉は、見た目はシンプルですが、まさに空気を含んだような軽やかさを持っています。味わうと、口の中でその酸味と甘さが絶妙に絡み合い、まるで風を感じるかのような清涼感があります」
果肉を一口食べ、その味わいに驚く。
「本当に、空の味って感じがするみたいだ…! すごく爽やかで、さっぱりとしているけど、後味がとても甘い」
「その通りです」
にゃんまるは満足げに頷く。
「スカイフルーツは、空気を吸い込んだような清涼感が特徴的で、ほんのりとした甘さと酸味が口の中に広がります。まさに、空を飛ぶような感覚を与えてくれる果物なのです。」
その味わいに感動しながらも、少し考え込んだ。
「これを食べることで、ほんの一時的にでも空を飛べるなんて、すごい力が宿っているんだな」
「はい、食べた者は、体に浮遊の力を宿し、一時的に空を飛ぶことができるのです」
にゃんまるは誇らしげに言った。
「まさに、天を目指す者にふさわしい果実と言えるでしょう」
スカイフルーツをじっと見つめたまま、ふと問いかけた。
「でも、こんな果実がどうしてアストラルでしか育たないんだろう?」
にゃんまるは少し考え込むように耳を動かしてから答えた。
「スカイフルーツは、その成長に特殊な環境を必要とします。アストラルは、魔力が濃い空間で、地上と違って風や気圧も独特です。その環境が、この果実を育てる鍵なのです」
「つまり、地上じゃ育てられないってことか」
感心したように頷いた。
「ええ、地上の土では、スカイフルーツの種は発芽しませんし、空気の流れが安定していないと、あの独特な浮遊力を持つ果実にはならないのです。アストラルの風が、果実の成長を支えているんですよ」
にゃんまるの声には、どこか敬意が込められていた。果実をそっと持ち上げながらつぶやいた。
「魔力の濃い風に育まれる果実か… なんだか、この果実にも生きているって感じがするな。」
「そうですね」
にゃんまるは穏やかに笑う。
「実際、スカイフルーツを収穫するにはタイミングが非常に重要です。熟しすぎると、風に乗ってどこかへ飛んでいってしまいますし、早すぎると浮遊力が弱く、あの特別な味わいも生まれません。」
「収穫するのも難しそうだな」
感嘆の声を上げた。
「ええ、だからこそスカイフルーツは希少で高価なんです」
にゃんまるは小さな肉球で果実を指しながら説明を続けた。
「ですが、その価値に見合うほどの美味しさと力を持っています。たとえば、これを使ったデザートや飲み物は貴族たちの間で大変な人気ですし、冒険者にとっては空を飛ぶ力を得られる貴重なアイテムになります」
静かに果実を見つめながら、少しだけ笑みを浮かべた。
「じゃあ、この果実を持って帰ったら、みんな驚くだろうな。特に、ジルバあたりが興味津々になりそうだ。」
にゃんまるはくすりと笑いながら、尾を揺らした。
「確かに、あのライオン族なら興味を持つでしょうね。ただし、あまり独り占めしないように気をつけてくださいね」
思わず笑い出した。
「わかってるよ。でも、この果実を味わえるなんて、なんだか特別な気分だな。リセラにも持って帰ろう」
「ちなみにスカイフルーツ、市場では金貨3枚です」
まさかの金額。前世で言うキャビアやフォアグラみたいなものだろうか。環境も入手経路も特殊すぎて希少なのだろう。ただこの景色はスカイフルーツだけじゃなくアストラルに来る価値があった。冒険してるという感じがして嬉しさが溢れる。
それにしてもスカイフルーツ高すぎる!!!




