お金を稼ぎましょう 終
ネコリス・ギャラリーが軌道に乗り、日々の運営が順調に進んでいく中、少しずつ思い始めていた。商会の事業が確立し、ネコリスのブランドも安定した。この場所で自分の役割は果たした――次に目指すべきは、再び冒険者としての道だ。
ある日、店の運営がひと段落ついた夕暮れ時、リリアを店の奥の小さな休憩スペースに呼び出した。外の光が柔らかく店内に差し込み、二人は静かな空間で向かい合って座っていた。
「リリア、少し話があるんだ」
静かに切り出した。
リリアは微笑んでうなずく。
「もちろん、どうぞお話しください」
と、穏やかに応じた。少し迷ったように言葉を選んだ後、続けた。
「ネコリスが軌道に乗って、ここでやるべきことはほぼ終わったように感じている。ここでの役割は君に託しても大丈夫だと思っている」
リリアは驚いたように目を見開きながらも、すぐに落ち着いた表情を浮かべた。
「つまり…ご自身は、冒険者に戻るおつもりということですね?」
「うん」
うなずき、真剣な表情で答えた。
「これまでずっと、冒険者として過ごしてきたから、その道に戻ることが自然な気がして。もちろん、オーダーメイドの製作は続けるけれど、販売や管理、そしてブランドの発展は君に任せたいんだ」
リリアはしばらく見つめ、その後、静かに笑った。
「ご安心ください、私がしっかりとお手伝いしますわ。あなたの目指すべき道をサポートすることが、私の使命ですから」
その言葉に少し驚き、そして感謝の気持ちを込めて答えた。
「ありがとう、リリア。君がいれば、安心して任せられる」
リリアは頭を下げるように少し腰を低くし、
「それに、私も新たな挑戦を楽しみにしています。あなたが再び冒険に出ること、私も応援しますよ」
と、力強く言った。
リリアの言葉に心強さを感じながら、彼女に微笑み返した。
「それなら安心だ。お互いに頑張ろう」
その後、店での最終調整を済ませ、オーダーメイドの仕事に集中しながら、少しずつ冒険者としての準備を整えていくことを決意した。リリアが店を引き継ぎ、ネコリスが大衆にも浸透していく中で、冒険者としての再スタートを切るために心を新たにしていた。
「冒険の世界、もう少しだけ未踏の場所があるんだ。新たな発見、新たな仲間――それを求めて」
そう呟きながら、少しだけ空を見上げたーー。
ある日、自分の口座を確認するためにギルドカードを確認したとき、思わず息を呑んだ。目の前に広がる数字は、想像を超えていた。
「これは…?」
彼が目にしたのは、数十倍、いやそれ以上に膨れ上がった金額だった。以前、少しずつ商売が軌道に乗ってきた頃に比べて、口座の残高は一気に増加している。初めてリリアと手を組んだとき、彼女の言葉通りの成果が現れていることを実感した。
「まさか、こんなに…」
呆然とした。リリアが運営する商会の利益は、思っていた以上に大きく、予想を遥かに超えていた。ネコリス・ギャラリーのブランドが広がり、貴族や上流階級の間で評判となり、それが利益を生み出した結果だ。さらに、商会の他の取引にも成功が続き、驚くべきスピードで資金が集まっていた。
口座を見つめながら、改めてリリアの手腕に感服した。彼女はただのお嬢様ではなく、商才に長けた実力者であり、その冷静な判断力と巧みな戦略で、すべてを動かしていることが如実に感じられた。
「リリア…君がここまでやるとは、正直思っていなかった」
小さな声でつぶやいた。心には、これからの冒険への決意とともに、リリアへの深い信頼が芽生えていた。彼女がしっかりと店を切り盛りしてくれているおかげで、安心して冒険者の道へ戻ることができる。そして、どんな困難が待ち受けていようとも、リリアならきっと乗り越えられると確信した。
「これからも、君に任せるよ」
口元を引き締め、心の中でリリアに誓った。
リリアの手腕を信じ、冒険者として新たな一歩を踏み出す準備が整った今、しばらくその口座の数字を見つめながら、彼女に対する感謝の気持ちを深く噛みしめていたーー。
深呼吸を一つし、工房に置かれた猫奏輪を手に取った。その美しい形状と精緻な装飾は、他のものとは一線を画していた。今回、彼が作り上げた猫奏輪は、ただの猫奏輪ではない。リリアへの感謝の気持ちを込めて、全力で作り上げたものだ。
優しく猫奏輪を包み込み、細心の注意を払いながらその手に持った。細やかな猫の装飾や金細工が施されており、どこを見ても美しさを感じさせる。しかし、その真価は見た目だけにとどまらない。
猫奏輪を開けると、まず最初に広がるのは穏やかな旋律。それに合わせて、きらりと輝く光が猫奏輪の内部でゆっくりと舞う。光の粒が、まるで生きているかのように、周りを優しく包み込んでいく仕様だ。
「これは、特別なものだ」
猫奏輪を慎重に手に取り、リリアに渡す前に一度だけ鑑定を行うことにした。鑑定のスキルを発動させると、目の前に一瞬、薄い光が現れ、猫奏輪に秘められた情報が浮かび上がる。
「これが…」
静かに鑑定結果を読み上げた。
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猫奏輪(特別製)
ランク:SS
カテゴリ:装飾品
付与効果:
癒しの旋律:持ち主周囲の精神的疲労を回復させ、リラックス効果を与える。一定時間内、心の平穏を保つ。
幸運の音符:持ち主の行動に偶然の好機が重なりやすくなる。些細なことから大きなチャンスまで、良い方向に導かれることが増える。
守護の力:持ち主が直面する危機を和らげる。一定の時間、危機回避率を高める。
共鳴の力:持ち主が発する感情が周囲に伝播し、他者の精神状態を浄化する。人々を元気づけ、ポジティブな影響を与える。
備考:
リリア専用に作成された特別な猫奏輪。心の強さを引き出し、癒しと運命を共鳴させる力を宿す。
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鑑定結果が終わり、少し驚きながらもその詳細を確認した。特に「共鳴の力」の効果は、他の誰にもできないような強力な能力であり、リリアがこれを持つことで商会や周囲の人々に多大な影響を与えるだろうと確信した。
「…ランクSS、思った以上に、すごい力を持っているんだな」
ちょっとやりすぎた感はあるが、リリアへの感謝なので問題ない。微笑みを浮かべながら、鑑定結果を紙に記す。
猫奏輪を小さな箱に包み込み。静かに猫奏輪を手に取ると、リリアの元へ向かう。
「これ、君に渡したいと思って作ったんだ」
リリアは少し驚きながらもその目を輝かせた。
「私に…?」
ゆっくりと頷く。
「君には、商会を背負う者として、もっと自信を持ってほしい。だから、この猫奏輪を君に渡すよ」
リリアはしばらくそれを見つめ、そして慎重に手を伸ばして受け取った。
「ありがとうございます…本当に、ありがとうございます」
その声は、どこか震えていて、感謝の気持ちが溢れ出ているのが伝わってきた。
微笑みながら
「これで君がどんな困難にも立ち向かえる力になることを願っている」
リリアは手に取った猫奏輪を胸に抱きしめ、目を細めて笑った。
「非常に強力な効果が宿っているよ。君の力を支え、周囲にも大きな影響を与えることになる。これを使えば、リリアもさらに成長できるだろう」
リリアはその言葉に驚き、しかし嬉しそうに頷いた。
「こんなに素晴らしいものを、私にくれるなんて…本当にありがとう」
猫奏輪を手に持ちながら、リリアに優しく渡した。
「君にふさわしいものだと思ったから。これで、君の未来がさらに明るくなるように祈っている」
リリアはその猫奏輪を手に取ると、まるでそれが自分の一部のように大切そうに抱えた。
付与された効果はただの音色や美しさにとどまらない。まず第一に、リリアがこの猫奏輪を持ち続けることで、その周囲に癒しの力が満ちていく。猫奏輪の音色には、心を落ち着かせ、疲れを癒す効果があり、日常の中で感じるストレスや疲労が次第に和らいでいく。
さらに、猫奏輪には「幸運の音符」が秘められており、これを持ち歩くことで、偶然に恵まれるようになる。無意識に手を伸ばした場所に良いことが訪れるなど、些細な幸運が続くだろう。
「そして…これは、君がこれからも素晴らしい成果を出し続けるためのものだ」
猫奏輪の光が一瞬強く輝くと、リリアの前に守護の力が宿る。この猫奏輪を身に着けている限り、リリアは困難な状況でも冷静さを保ち、力強く前進できる力を与えられる。また、持ち主の感情や意思を反映するように、猫奏輪の音色は持ち主の心に応じて微妙に変化し、常に力を引き出してくれる。
そして、最後に、最も強力な効果が宿っている。それは「共鳴の力」。猫奏輪がリリアの心と完全に共鳴した瞬間、周囲にいる者の感情をも浄化し、ポジティブな影響を与えることができるのだ。商売の現場で疲れている者がいたなら、その心を軽くし、次第に元気を取り戻していく。リリアが人々に与える影響力が、これまで以上に強力になるだろう。
リリアにその猫奏輪を差し出し、静かな笑みを浮かべた。
「これで、君の未来がもっと明るく、素晴らしいものになるように。感謝の気持ちを込めて作った、僕からの贈り物だ」
リリアは目を見開き、しばしその美しい猫奏輪を見つめていた。その音色、光、そして何よりもその力を感じ取っていた。心からの感謝が込められた贈り物に、彼女は自然と微笑みながら答えた。
「ありがとう、あなたの気持ちは、しっかりと受け取りましたわ」
その言葉に、主人公は満足げに頷き、リリアに微笑み返した。
資金源、ゲットだぜ!




