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お金を稼ぎましょう 5

展示会が成功し、猫奏輪の評判が上々だった翌日。リリアの屋敷の庭で、リリアと紅茶を片手に今後の計画を話し合っていた。


「これで猫奏輪が少しずつ広まっていきますわね。改めておめでとうございます」


リリアが優雅にカップを置きながら微笑む。


「ありがとう。でも、これからどうするかはまだ全然考えてなくて……とりあえず作り続けるしかないかな」


少し戸惑いながら答えた。


「それだけでは足りませんわ」


リリアは真剣な眼差しを向ける。


「ここで一つ重要なことを決めるべきですわね」


「重要なこと?」


リリアは頷き、椅子の背もたれに軽くもたれながら言葉を続けた。


「ブランド名ですわ。この猫奏輪があなたの作品だと誰にでも分かるように、そして高貴な方々の記憶に残るような名前を付けなければいけませんわ」


「ブランド名か……確かに必要かもな。でも、どんな名前がいいんだろう?」


「想いを込めたものにするのがよろしいですわね。猫奏輪に託した願いや、この音色に込めた意味……それを反映させる名前にするべきですわ」


少し考え込みながら言った。


「音で人の心を癒したり、何かを思い出したりしてほしいっていう気持ちはあるな。特に、大切なものを守りたいとか……そういうの」


「それですわ!」


リリアが身を乗り出す。


「その想いを表現した素敵な名前を考えましょう。私も全力でお手伝いしますわ」


「ありがとう。リリアが一緒に考えてくれるなら、いい名前が浮かびそうだ」


リリアは満足げに微笑みながら、


「では、紅茶を飲み終えたら、書斎で一緒に案を練りましょうか。それと……もう一度猫奏輪の音色を聞かせていただけますか? その響きからインスピレーションを得られるかもしれませんわ」


と提案した。猫奏輪を手に取り、そっと音を響かせた。庭に柔らかな旋律が広がり、二人はその音色に耳を傾けながら新たな未来を描き始めたのだった。


リリアの書斎での会話は、次第に具体的なアイデアへと進んでいった。

机に広げられた紙には、候補として書き出された数々の名前が並んでいる。


「高貴な方々に気に入っていただけるような名前……でも、あまり堅苦しくなく、親しみやすい響きも大事ですわね」


リリアがペンを片手に言った。少し考え込みながら、


「そうだな。でも猫奏輪の魅力は、その音が心に響くことだと思う。だから、音と猫らしさを名前に込めたい」


と応じた。リリアが笑みを浮かべながら紙に走り書きをする。


「では、こんな名前はどうかしら? 『ネコリス』。猫の『ネコ』に、響きや優しさを連想させる言葉を組み合わせてみましたの」


「ネコリス……」


その響きを口に出し、少し考え込む。そしてふっと笑って頷いた。


「いいかも。親しみやすいし、でもどこか特別な感じもする。」


リリアは嬉しそうに手を叩いた。「本当ですの? ならば『ネコリス』に決定ですわね! ブランド名として覚えやすく、猫奏輪の魅力を引き立てる素晴らしい名前ですわ!」


こうして、「ネコリス」という名前が新たなブランド名として決まり、リリアと猫奏輪を世に広めるための第一歩を踏み出したのだったーー。


別の日の夜会での音楽が響く中、そっと立ち上がり、窓辺から会場を見渡していた。華やかに装飾された猫奏輪を手にした貴族たちは、興味深そうにそれを眺め、時には試しに耳を傾けている。その反応に安堵しつつも、新たな考えが浮かんでいた。


夜会が終わり、リリアとともに部屋に戻ると、椅子に腰を下ろしながら提案を切り出した。


「リリア、この猫奏輪、確かに貴族の間では評判がいいみたいだ。でも、もっと多くの人に手に取ってもらえる方法も考えたくなったんだ」


リリアは小首を傾げながら、


「もっと多くの人、というと?」


と尋ねる。


「今の猫奏輪は、効果や装飾にこだわっているから高価になってしまう。それはそれでいいけど、例えば、効果を少し抑えたり、装飾を簡素にすることで、もっと手が届きやすい価格のものを作れないかと思って」


リリアの目が輝く。


「それは面白い発想ですわね! 確かに、猫奏輪は贈り物としても魅力的ですし、記念日や誕生日のような特別な日の贈り物としても少し高くても人気が出そうですわ」


頷き、続けた。


「そうだ。『ネコリス』として高級路線のブランドは維持しつつ、簡素なモデルを別ラインで展開するんだ。用途に合わせて選べるようにすれば、幅広い層に届けられると思う」


リリアは机に手をついて前のめりになり、


「素晴らしいですわ! ぜひその案で進めましょう。この路線なら、大商会の力を使っても広めやすいですわね!」


と興奮気味に答えた。こうして、猫奏輪は高級ブランドとしての「ネコリス」と、手頃な大衆向けモデルという二つの路線で展開されることになった。


夜会が終わり、リリアとともに部屋に戻ると、ソファに腰を下ろし、しばらく考え込んでいた。


「リリア、猫奏輪の反応はすごく良かった。でも、これから本格的に広めるには解決しないといけない問題がある」


リリアは主人公の言葉に耳を傾ける。


「問題……生産量です?」


軽く息をつきながら言葉を続けた。


「そう、今は僕が一つずつ作っているけど、この方法だと数が限られてしまう。高級品としての価値は保てるけど、それ以上の展開は難しい」


リリアは頷きながら考え込む。


「確かに、いくら素晴らしい商品でも、数が少なすぎては需要に応えられませんわね……。何か良い方法があるかしら?」


しばらく黙り込んだ後、思いついたように顔を上げた。


「魔術具職人や細工師と協力するのはどうだろう? 僕が作る基礎部分を簡略化したり、再現しやすくする設計を考えれば、もっと多くの人と作業を分担できるかもしれない」


リリアの顔が明るくなる。


「それは名案ですわ! 核となる部分を担当し、それ以外の工程を信頼できる職人に任せることで、効率的に生産できますわね」


「ただし、品質には妥協しない。高級品の『ネコリス』ラインは僕が最後まで仕上げることにするけど、大衆向けの猫奏輪については職人たちの協力を得て、しっかりした体制を作りたい」


リリアは勢いよく頷いた。


「それでしたら、私が信頼できる職人たちを探してきますわ! 商会としても全面的に協力します!」


リリアに礼を言いながら、自分の中で固まった計画に手応えを感じていた。


翌日、リリアは早速商会のネットワークを活用して動き始めた。主に優秀な魔術具職人や細工師たちの情報を集め、それらを共有する。


「こちらが、私の商会で推薦された職人たちのリストですわ」


リリアが差し出した羊皮紙には、見慣れない名前がずらりと並んでいた。それぞれの職人の技術や得意分野が簡潔にまとめられており、一目で優秀さが伝わる。


目を通しながら感心した。


「すごいな、これだけの人を短時間で探し出すなんて。さすが商会だ」


リリアは誇らしげに微笑んだ。


「当然ですわ。これもネコリスブランドを世に広めるためですもの。ただ、どの職人が適しているか、実際にお会いして確認した方がよろしいかと思いますわ」


「確かに。直接会って、どれだけ僕の意図を理解してくれるかが大事だな」


リストを片手に立ち上がる。


「リリア、もしよければ一緒に来てくれるか? 君の方が交渉や職人の選定には慣れてるだろうし」


リリアは即座に頷く。


「もちろんですわ、お任せくださいませ」


その日の午後、リリアとともに職人を訪ねた。小さな工房には独特の匂いが漂い、職人たちが黙々と作業をしている。迎え入れてくれたのは、丸眼鏡をかけた初老の男性だった。


「これはこれは、リリア様。こんな小さな工房まで足を運んでくださるとは。で、こちらの方が噂の……?」


リリアが微笑みながら紹介する。


「こちらが猫奏輪を作られた、主様ですわ」


軽く頭を下げた。


「初めまして。猫奏輪の改良と量産の相談がしたくて、こちらに伺いました」


初老の職人は興味深そうに見つめた。


「猫奏輪……聞いたことはあるが、まだ実物は見たことがないな。ちょっと拝見してもいいかな?」


懐から小さな猫奏輪を取り出し、そっと差し出した。職人は手に取り、細かい彫刻や魔法陣をじっくりと観察する。


「こりゃあ……とんでもない代物だな。この細工はかなりの技術が必要だ。それに、この魔法陣……既存のものを応用してるが、配置の仕方が独創的だ。」


職人の目が輝く。


「ぜひ協力させてもらいたい。ただ、このクオリティを量産するのは一筋縄じゃいかん。時間はかかるぞ」


主人公は真剣な表情で答えた。


「クオリティを落とすつもりはない。でも、簡略化できる部分は考えたいんだ。職人さんの力を借りれば、それも可能だと思う」


職人は頷きながら笑った。


「なるほどな。よし、一度試作してみようじゃないか。具体的な仕様を教えてくれ」


こうして、リリアは優秀な職人たちを訪ね歩き、猫奏輪の量産に向けた体制を整えていった。ネコリスブランドを高級品として貴族層に訴求しつつ、大衆向けのシンプルな猫奏輪も展開する準備が少しずつ進んでいく。


「これで、もっと多くの人に猫奏輪を届けられる……」


夜空を見上げ、少しだけ胸を張った。隣でリリアが微笑む。


「ええ、ネコリスブランドはこれからが本当の始まりですわね」


そして、二人は新たな希望を胸に、次なるステップへと進むのだった。

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