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お金を稼ぎましょう 4

リリアに案内されながら、彼女の家――というより大きな屋敷を構える商会へと足を踏み入れた。豪華な装飾や広い廊下に、普段見慣れないものばかりで、少し落ち着かない気分になりながらも、リリアの後ろをついていく。


「お父様はこの時間、書斎にいらっしゃいますわ」


リリアの声が少し緊張しているように感じたが、それに気付かないふりをして頷いた。


書斎の扉が開かれると、そこには堂々とした風格を持つ中年の男性がデスクに座っていた。リリアの父親であり、この商会の主――ルイス・ヴァルフォードだった。


「リリア、帰ってきたのか。それにそちらは?」


ルイスが視線をこちらに移し見尋ねる。


「お父様、この方が先日お話した『猫奏輪』を作られた方ですの」


リリアが紹介すると、ルイスの眉がわずかに上がった。


「ほう、……貴方がその製作者だと?」


軽く頭を下げて応えた。


「はい。まだ試作段階ですが、もし可能なら貴商会で扱う手助けをお願いしたくて参りました」


ルイスは少し興味深そうに目を細め、


「なるほど。では、まずは品物を見せてもらおうか」


と言いかけたそのとき、リリアが一歩前に出て声を上げた。


「お父様、それについては私にお任せくださいませ!」


ルイスは一瞬驚いたように娘を見つめたが、すぐに冷静な表情を取り戻し、


「リリア、これは商会全体の話だ。お前が個人的に関わる話では――」


「いいえ、お父様!」


リリアは断固とした口調で言い返した。


「これは私がお願いしたことですの。そして、この猫奏輪は貴商会にとっても新しい可能性を切り拓くものですわ。私が責任を持って、商会内での取り扱いについて手続きを進めます!」


ルイスは少しの間、言葉を失ったように娘を見つめた。やがて深く息をつき、目を向ける。


「……リリアがここまで言うのは珍しい。普段なら、こういうことには口を出さないのにな」


「それだけこの『猫奏輪』には魅力があるということですわ」


リリアが力強く言う。


ルイスはしばらくの間、考えるように目を閉じていたが、やがて口を開いた。


「分かった。そこまで言うなら、お前に任せよう。ただし、責任は自分で取ることだ」


リリアの顔がぱっと明るくなり、


「ありがとうございます、お父様!」


と深々と頭を下げる。少し面食らったようにしていたが、リリアの強い意志に触れ、彼女がどれほどこのことに本気であるかを理解した。そして、ルイスに向き直り、改めて深く頭を下げる。


「ご許可をいただき、ありがとうございます。リリアさんと一緒に、良い結果を出せるよう努力いたします」


ルイスは軽く頷くと、リリアに目を向け、


「では、任せたぞ」


と言い、再び書類に視線を戻した。


こうして、リリアの新たな協力関係が始まったのだった。


リリアは父親から許可をもらうと、こちらに向き直り満面の笑みを浮かべた。


「さあ、早速進めて参りましょう!まずは、猫奏輪の魅力をどうお客様に伝えるかを考えなくてはなりませんわ」


彼女の熱意に少し圧倒されながらも頷いた。


「えっと、試行錯誤で作ったものだから、売り方とかは全然考えていなくて……」


「なら安心してくださいませ。私が全力でサポートいたしますわ!」


リリアは力強く拳を握り、まるで冒険に出るような勢いで言った。その情熱的な様子に、少し心が和んだ。


リリアは自室へ主人公を案内した。大きな窓から庭が見渡せる、明るく広々とした部屋だ。机の上にはきれいに整えられた帳簿や文房具が並び、彼女の几帳面さがうかがえた。


「ここで一緒に計画を立てましょう。まずは、猫奏輪の特徴を整理いたしますわ」


リリアは机に座り、椅子を勧めた。


「特徴、か……。」主人公は少し考え込む。


「そうだな。猫奏輪は、猫鳴の髭で整調した音を結晶化したもので、触れるとその音が流れる仕組みなんだ。静かな音色が特徴だと思うけど……」


「その静かな音色が、人々を癒す力になるのですわ」


リリアは頷きながら答えた。


「では、癒しをテーマにして、宣伝文句を考えてみましょうか」


感心しながらリリアの言葉を聞いた。


「癒し……確かに、それなら興味を持つ人も多いかもね」


リリアは微笑みながらメモを取り始める。


「それから、いくつか実物を試しに持っていって、どれが一番反応が良いかを確認する必要がありますわね」


「試作したものならいくつかあるよ」


猫奏輪をいくつか取り出して見せた。

リリアはそれを手に取り、じっと眺める。


「これを見た瞬間に、誰もが手に取りたくなるようなデザイン……。少し工夫すれば、もっと目を引くようになるかもしれませんわね」


「デザインか……あんまり考えたことなかったな」


照れくさそうに頭をかく


「そこも私にお任せくださいませ!」


リリアはにこりと微笑んだ。


「次は試しに社交場に出してみて、反応を見てみるというのはいかがですか?」


「それなら、僕も手伝うよ」


真剣な表情で頷いた。

こうして、リリアと猫奏輪を世に広めるための準備を着々と進めていくのだった。


数日後、リリアとともに、彼女の提案で設けた簡易な展示スペースに立っていた。場所はマーケットではなく、貴族たちが集う社交場の一角。リリアは自宅の庭を利用し、特別な展示会を企画していた。


「猫奏輪はその希少性を生かして、高貴な方々に価値を認めていただくべきですわ。数が限られるなら、それを逆に魅力として伝えましょう」


リリアの声には揺るぎない自信があった。


リリアが手際よく準備を整える様子を見守りながら、改めて彼女の才覚に感心していた。展示スペースには、豪華な猫をモチーフにした装飾が施され、猫奏輪が美しく並べられている。


「これ、本当に売れるかな……?」


少し不安げに呟いた。


「ご心配には及びませんわ。貴族の皆様は、特別で希少なものにこそ価値を見出しますの。それに、この猫奏輪の音色はきっと心を動かしますわ」


リリアはにっこりと微笑みながら言葉を続けた。


「さあ、堂々と胸を張ってくださいませ」


展示会が始まると、訪れた貴族たちは猫奏輪に興味を示し始めた。リリアはその一人一人に丁寧に声をかけ、猫奏輪の特別さを説明する。


「こちらは猫奏輪と言いまして、触れると美しい音色を奏で、心を癒してくれますの。ひとつひとつが手作りで、世界に二つとない品でございます」


その場で実際に音を聞いた人々は、柔らかな旋律に驚きと感動を隠せなかった。


「なんて美しい音なんだ……」


「これほど繊細で上品な音色、初めて聴いた」


次々と感嘆の声が上がる。


少し緊張しながらも、説明するリリアの堂々とした態度に励まされていた。


展示会の終盤、貴族の夫人が猫奏輪を手に取り、リリアに尋ねた。


「この猫奏輪、ひとついただけるかしら?」


「もちろんでございますわ。ただし、こちらの猫奏輪は完全予約制で、今すぐにお渡しできる在庫は限られておりますの。ご注文いただいた際には、お時間をいただくことをご了承くださいませ。」


「そうなのね。でもこの音色を聞いたら、待つ価値があるわ」


夫人はその場で予約を申し込み、展示会は大成功に終わった。


展示会の後、リリアは微笑みながら話しかけた。


「ほら、やっぱり成功しましたわ。猫奏輪は特別な力を持っていますのよ」


売上よりも、初めて自分の作ったものが認められた喜びに浸っていた。


「本当にありがとう、リリアさん。君がいなかったら、こんな風に売れるとは思わなかったよ」


「ふふ、リリアとお呼びくださいまし、私も楽しかったですわ。でも、これからが本番ですわね。この猫奏輪を本物のブランドとして確立させるために、私たちで力を合わせていきましょう」


彼女に感謝しながら力強く頷いた。


「うん、これからもよろしく、リリア」


こうして、希少なブランド物としての猫奏輪の第一歩が踏み出されたのだった。

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