お金を稼ぎましょう
修行を終え、自宅へ戻って数日後。転生したらお金稼ぎとかするなとふと思い出し、にゃんまるに資金を稼ぎたいと相談した。
「にゃんまる、何か俺でもできることでお金を稼げないかな?」
にゃんまるは問いに一瞬考え込んだが、ふと猫鳴の髭で奏でた美しい旋律を思い出した。
「主、猫鳴の髭で奏でた音楽を、何か形にしてみるのはいかがでしょう?」
首を傾げた。
「形にするって? 曲を演奏するだけじゃなくて、もっと別の方法で?」
にゃんまるは柔らかい笑みを浮かべて提案した。
「そうです。例えば、音を仕組みとして保存し、誰でも再生できる装置を作るのです。前世の機械のようなものは難しくとももっと簡易的なものなら作れるかもしれません」
「オルゴールみたいなものかな?そんなの、どうやって作るんだ?」
「それを考えるのが主の役目ですよ。この世界にはオルゴールはありません。ただ、似たようなものを作ろうとした発明家が過去に存在した記録を見たことがあります。その手法を応用すれば、再生可能な楽器のようなものが作れるかもしれません」
興味を抱き、目を輝かせた。
「やってみる価値はありそうだな。でも、どこから始めればいいんだ?」
にゃんまるは小さく頷いて答えた。
「まず、仕組みを作るための知識が必要です。この世界には音の振動を模倣する『共鳴石』や、細かい部品を動かすための魔力装置が存在します。それらを組み合わせて、音を再現できる仕組みを考えましょう」
にゃんまるは町の道具屋や鍛冶屋を訪れ、必要な材料を集め始めた。共鳴石、魔力駆動部品、小型の木製ケースなどを手に入れ、家に持ち帰った。
自宅に戻ると、集めた材料を机に広げ、にゃんまるとともに作業に取りかかった。
「まず、共鳴石に音を記録できるか試してみましょう。猫鳴の髭で一曲演奏して、石がどう反応するか確認します」
演奏を始めると、共鳴石が淡い光を放ち、音の波紋が石に吸い込まれるように記録された。記録された音を魔力で解放すると、演奏とほぼ同じ音が石から響き渡った。
「うまくいったみたいだな!」
にゃんまるも満足げに頷いた。
「次はこの音を繰り返し再生する仕組みを作りましょう。魔力駆動部品を使えば、石に記録された音を一定のリズムで再生できるはずです」
数日間の試行錯誤の末、にゃんまると共に、共鳴石を中心に据えた小型の再生装置を完成させた。装置の側面には回転軸があり、それを回すと石が発光し、記録された旋律が再生される仕組みだ。
「これが……俺たちの音を届けるための装置か」
にゃんまるは優しく微笑みながら言った。
「はい、これが新しい一歩です。この装置を広めれば、主の音楽が多くの人々を癒やし、力を与えることでしょう」
完成した装置を手に取り、感慨深げに眺めた。
「この世界にはまだないものだ。これが、挑戦の形なんだな」
こうして、にゃんまると共に音楽を形にするという新たな試みを始めた。それはやがて、この世界に新しい文化をもたらすことになるのだった。
翌朝、にゃんまると町の広場に向かった。週に一度開催される市場には、様々な商品や工芸品を求める人々が集まっている。露店を借り、小さな木の台に完成した「猫奏輪」を並べた。
「誰か興味を持ってくれるかな……?」
不安げに呟いた。
「心配ありません。主の音楽は心を動かします。この装置も必ず誰かに響くはずです」
にゃんまるは自信たっぷりに答えた。
気を取り直し、装置を手に取って説明を始めた。
「これは音楽を再生する装置です。中に音の記録がされていて、これを回すと……」
装置を回すと、優しい旋律が流れ始めた。
「猫鳴の髭」で演奏した曲が柔らかな音色で響き渡る。通りがかりの人々が足を止め、その不思議な装置に目を向けた。
「なんだこれは?」
「こんな音楽、聴いたことがない!」
そのうち、一人の女性が興味を示して声をかけてきた。
「これ、どうやって作ったの? 音楽が石に記録されているなんて信じられない!」
簡単に仕組みを説明しながら、試しに操作させてみた。女性は装置を手に取り、回して音楽を再生すると、目を輝かせた。
「これはすごいわ! 私、これ欲しいんだけど、いくら?」
驚きつつも、「猫奏輪」の最初の値段を告げた。
「……10銀貨でどうですか?」
女性は即答で購入を決めた。
「こんな素敵なものなら安いくらいだわ! ありがとう!」
猫奏輪が初めて銀貨10枚で売れた日、心から喜び、少し驚きながらもその成果を噛みしめていた。にゃんまるがいつも見守ってくれていたおかげだと思い、感謝の気持ちを込めて声をかける。
「にゃんまる、ついに売れたよ!銀貨10枚で…!」
にゃんまるは静かに言葉を受けて、穏やかな微笑みを浮かべた。
「おめでとうございます、主。最初の一歩を踏み出しましたね。猫奏輪が評価されるのは、あなたの努力の賜物です」
その言葉に照れながらも、心の中で自信を深めた。そして、次の一歩を踏み出すために、再び次の目標を設定しようと決意した。
「でも、これで終わりじゃないよね。もっとたくさんの人に、猫奏輪を届けられるようにしたい。」
にゃんまるはゆっくりと体を伸ばし、目を見つめながら言葉を続ける。
「その気持ちが大事です。今はその一歩を踏み出したばかりですが、次に進むための準備は着実に進んでいます。どんどん挑戦して、成長していくことが、あなたにとって重要なことです」
その言葉にうなずき、心を新たにした。
「ありがとう、にゃんまる。じゃあ、次はもっと工夫して、もっとたくさん作ってみるよ」
そして、再び創作の時間に戻り、さらに猫奏輪の音色を磨き、改良を加えていくことに決めた。
猫奏輪を手に取り、改めてその音色を確かめた。ささやかながら、繊細で心地よい響きが部屋を包み込む。しかし、これで満足するわけにはいかない。猫奏輪を売った先で、もっと高く評価されるためには、どこかに改善点があるはずだと感じていた。
「まずは、鑑定を使ってみるか」
そう呟くと、すぐに手元にあった魔法の道具、鑑定石を取り出した。軽く握ってから、猫奏輪にかざす。魔法の力が込められた鑑定石が、静かに輝きだす。しばらくの静寂の後、鑑定結果が目の前に浮かび上がった。
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【鑑定結果】
名称: 猫奏輪
効果:
1. 音色を聴く者に心の安らぎを与える
2. 疲労感を軽減し、癒しの力を持つ
3. 音を聴いている者の集中力を向上させる
品質: 普通
使用回数: 無制限
付加属性: なし
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「なるほど、癒しの効果があるのか。でも、品質は普通か…」
少し肩を落としたが、すぐに気を取り直す。これはあくまで最初の製作段階に過ぎない。猫奏輪にまだ改善の余地があるということだ。
「じゃあ、改良しよう」
道具を取り出し、さらに細部に手を加え始めた。音色をより美しく、深みのあるものにするために、素材の見直しや、音の反響を調整する装置を追加することを決めた。音の広がりが良くなるように、微調整を重ねる。何度も手を加えながら、その音色がどんどん深まっていくのを感じた。
数時間後、ようやく改良が完了した。再度、鑑定石を使ってその結果を確認する。
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【鑑定結果】
名称: 改良猫奏輪
効果:
1. 音色を聴く者に心の安らぎを与え、深いリラクゼーションを促す
2. 疲労感を軽減し、心身をリフレッシュさせる
3. 音を聴くことで集中力を大幅に向上させる
4. 低音域と高音域のバランスが取れ、音の深みと広がりが増した
品質: 高品質
使用回数: 無制限
付加属性: 音波による精神的回復効果(中程度)
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「高品質…!これは…!」
思わず声を上げて喜び、改良した猫奏輪を手に取る。音色がより豊かになり、癒しの力も格段に強化されたことがはっきりとわかる。これなら、より多くの人に受け入れられるだろう。
「これなら、もっと高い値段でも売れるかもしれない」
改良した猫奏輪に満足しながらも、次なる目標を思い描いていた。この猫奏輪が売れることで、さらなる創作の自由と可能性が広がる。にゃんまるにも見せて、自分の努力の結果を伝えたくなった。
「よし、これで次のステップだ。」
主人公は改良された猫奏輪を大事に手に持ちながら、にゃんまるに報告する決意を固めた。少し興奮気味で、にゃんまるの元へ向かう途中、どこかで売れた後のことを思い浮かべていた。
「これがうまくいけば、もっと創作活動ができる…」
そう自分に言い聞かせながら、にゃんまるの元へと足を進める。しばらく歩いていると、にゃんまるがこちらに気づき、嬉しそうに小さな声で呼びかけた。
「主、何か良いことでもあったような顔をしているようですね。」
にっこりと微笑んで答える。
「うん、実は改良した猫奏輪が出来たんだ。効果も上々だよ」
にゃんまるは興味津々でその手にある猫奏輪を見つめる。
「おお、素晴らしい。さっそくその完成品を拝見させてください」
主人公は猫奏輪をにゃんまるに差し出した。にゃんまるはそれを受け取り、軽く試しに音を鳴らしてみた。最初の音色が広がり、穏やかな響きが周囲に溶け込んでいく。
「ふむ、非常に澄んだ音色ですね。これなら、音の癒し効果もかなり強く感じられるでしょう」
にゃんまるは満足そうに頷きながら言った。
「改良を加えた結果、音の広がりやバランスも良くなったし、精神的回復効果もある。これで、きっとより多くの人に喜ばれるはずだよ。」
にゃんまるは目を細め、しばらくその音に耳を傾けていた。
「とても素晴らしいです、主。私も改めてその進歩に感心しますよ。さて、この猫奏輪をどこで売るつもりですか?」
「まずは街のマーケットに出してみようと思う。あそこなら、色んな人に見てもらえるだろうし、売れる可能性が高いと思うんだ。」
にゃんまるは少し考え込み、そしてにっこりと微笑んだ。
「では、私も少し手伝いましょう。マーケットで売れる価格について、アドバイスができるかもしれません」
「本当に?助かるよ!」
にゃんまるの助言を頼りにして、いよいよ猫奏輪を街へ持っていくことを決意する。にゃんまると共に、次のステップに進むための準備を整えながら、その日が来るのを楽しみにしていた。
「さあ、行こう。これが新しい一歩だ」
そう言うと、にゃんまると共に出発した。




