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初めての街アルシアン

そっと腰を下ろした。その瞬間、身体が沈み込むような感覚に包まれる。ふかふかのソファはまるで雲の上に座っているかのようだった。今は猫なのでどう座るか悩んだがにゃんまるが人間の時と同じように座ったのでそれに習って座る。


指先が布地を撫でると、滑らかで温かな手触りが心を和らげる。高級な素材が使われているのは一目で分かり、しっかりと織り込まれた模様はどこか優雅さを感じさせた。


ソファに感動しているとドラゴニュートも座る。


「ゼファルト殿、例の件は後から伝えるとしてまずはこちらが例の主殿だ。」


にゃんまるに紹介されるがゼファルトの迫力にあまり言葉が出ない。


「はじめまして、にゃんまるの主です。よろしくお願いします」


ゼファルトは頷くとその瞳で見つめてきた。


「私はここアルシアンを預かるドラゴニュートのゼファルト・ドラグネアだ。貴方のことはにゃんまる様からきいている」


立場はにゃんまるのが上なのだろうか。にゃんまるってもしかしてすごい偉い猫なんだろうか。ゼファルトは街を治めているドラゴニュート、それより上のにゃんまるっていったい......

にゃんまるの立ち位置について考えていると、


「主殿、いろいろわからないことだらけだろうが、それは後からにゃんまる様から聞くといい。まずは今後について話しておきたいがよろしいか」


「はい、お願いします」


「まずこれからの生活だが家を用意してある。と言ってもにゃんまる様が住んでいるところだ。生活費はいくらかお渡しするのでそれで当面生活するといい」


なんという高待遇。何が起きているのか、まあにゃんまるのおかげなんだろうな。前世と違いにゃんまるに生かされてる感が強い。それはそれで飼い主としてのプライドが少し傷つくというか複雑な気持ちになる。


「なぜそんなによくしてくれるんですか」


その答えとして、ゼファルトはある伝説の話をしてくれたーー


昔々、竜が世界を脅かしていた。世界中の誰もが恐れる中、一人の青年と一匹の不思議な猫が立ち上がった。猫はただの猫ではなく、人の言葉を理解し、魔法を操る力を持っていたという。


二人は霧深い森を抜け、石の巨人を退け、ついに竜の住む洞窟へとたどり着いた。竜は炎を放ち、全てを焼き尽くそうとしたが、二人は決して諦めなかった。そして、竜の心が善と悪に引き裂かれていることに気づく。


善なる魂は竜の中で苦しみ、悪なる魂はその力を暴走させていた。青年と猫は協力し、悪なる魂を魔法で封印することに成功する。解き放たれた善なる魂は竜本来の姿を取り戻し、世界を守る守護者となることを誓い、大空へと飛び去っていった。


こうして世界に平和が戻り、青年と猫の勇敢な物語は、今でも語り継がれる伝説となった。


「これはこのアルシアンに伝わる伝説だ。しかしこれは、伝説ではなく真実なのだ。青年、勇者リオンは竜を封印し、このアリシアンを作り共に活躍したのがにゃんまる殿であり、伝説に出てきた世界を脅かした竜は我一族の先代なのだ」


にゃんまるは少し懐かしむような顔でいた。


「もう随分と昔のことです」


なんということでしょう。うちの愛猫は転生して世界を救って街を作ったらしい。それなんてなろう系?


「この話の大事なところは悪の竜を封印したというところです」


封印したということはつまり。


「完全に倒せてないってことか」


「その通りです主。そしてその封印が今解けようとしている」


なんとなくみえてきた、ここに転生した意味。きっとそれを倒すために転生したのだろう。いやできる気がしないのだが。つい先程ジルバにボコボコにされたとこだと言うのに。バステトが言っていた使命とはこのことだったのか。


にゃんまるは大丈夫と言わんばかりの顔をしている。たしかににゃんまるは強い。むしろにゃんまるが封印できるんじゃなかろうか。


「安心してください主、私はその為に強くなりました。私があなたを強くします」


いい笑顔だ。だがあくまで封印するのはにゃんまるではないと。なんという責任重大な使命。だがそこを超えねばにゃんまるとの生活はなくなってしまう。それはいやだ。とにかく強くなるしかない。


「まずはこの生活になれることだ」


話はわかった。とりあえず強くなることを目標にしよう。転生者としてチートがあればと思わずにはいられなかった。


「ではそろそろいきましょう主」


そう言って塔をあとにした。

まずはにゃんまるの家へ向かう。


アルシアンの外れににゃんまるの家はある。彼の家へ向かう道は、畑や牧草地を抜け、木々が生い茂る細い道へと続いている。道の両脇には野花が咲き乱れ、鳥のさえずりがどこか心を落ち着かせた。昼間は柔らかな日差しが木漏れ日となって道を照らし、夜には星明かりと遠くのランタンの光が小さく揺れる。


その道をさらに進むと、小さな丘の上にぽつんと建つ石造りの屋敷が見えてくる。屋敷は古びてはいるが、手入れが行き届いており、屋根には赤い瓦が並び、外壁は白く塗られている。窓枠と扉は深い茶色で統一され、玄関脇には鉢植えの花が置かれている。


家の前には小さな畑があり、野菜やハーブが整然と植えられていた。その横には木製のベンチと小さな井戸があり、訪れる者を優しく迎え入れる雰囲気を漂わせている。家の背後には、広がる丘陵と青々とした森が続き、風が吹くたびにその木々がさざ波のように揺れる。


どこか素朴で静かな空気を持ちながらも、訪れる者に安心感と温かさを与える場所だった。


玄関前には静かに佇む2人がいる。


「「おかえりなさいませ、にゃんまる様」」


一人は人族の老執事。その男は、にゃんまるが数少ない「信用できる」と認めた人物の一人だった。背は低く、白い髭を整えたどこにでもいるような老人に見えるが、その瞳には鋭い観察力と揺るぎない落ち着きが宿っていた。彼の動きは音もなく、屋敷のどこにいても彼の気配を感じさせないほどだった。


彼の判断と行動には一切の無駄がなく、何があっても必ずにゃんまるの望む結果を導き出す。執事がにゃんまるに対して絶対の忠誠を誓っていることは疑う余地もなかったが、それ以上に、彼はにゃんまるが見せる小さな弱さや迷いを理解し、そっと支える存在だった。


かつて、にゃんまるが危機に陥ったとき、執事はただ一言も発さずその場に現れた。彼の手に持たれていたのは、見るからに使い込まれた杖。それを軽く振るだけで周囲にいた敵たちは動けなくなり、にゃんまるは一言も言わずにその場を離れることができた。そのときの執事の姿は、普段の控えめな老人とは思えない、圧倒的な威圧感を放っていた。


普段の彼は控えめで、ただ黙々とにゃんまるのために働き続けるだけだ。けれど、彼の背中からはいつも「絶対的な信頼」を感じさせる何かが漂っていた。にゃんまるが執事に向けて言った言葉はただ一つ。


「あなたがいるなら、大抵どうにでもなる」


その言葉が全てを物語っていた。執事にとってはそれ以上の報酬など必要ないだろう。


そしてもう1人はエルフ族のメイド。

長い銀色の髪をきっちりと編み込み、濃い緑の瞳が静かに輝いている。彼女の動きには、エルフ特有の優雅さとしなやかさがあり、掃除一つとっても舞踊のように美しかった。


家事全般をそつなくこなしながらも、そのすべてに卓越した技術を見せた。料理では香り豊かなハーブを使い、見た目にも美しい一皿を作り上げる。屋敷のどこに埃が溜まっていても、彼女の目を逃れることはない。だがそれだけではない。彼女の真価は、その戦闘能力にあった。


細い指先が操る弓は、どんな標的も正確に射抜く。背中に隠された短剣は、必要とあらば目にも止まらぬ速さで閃き、敵を無力化する。普段は落ち着き払った態度で、家事に集中しているが、にゃんまるやその家族に危険が迫るとき、その冷静さは凛とした戦士の鋭さへと変わる。


彼女の性格は穏やかで礼儀正しいが、その瞳には確かな覚悟と深い知識が宿っている。長い寿命を持つエルフならではの経験が、彼女をより有能な存在にしていた。ある日、にゃんまるが家を空けている間に、家を狙った侵入者が現れたが、彼らが何かをする間もなく静かに縛り上げられていた。


「申し訳ありませんが、ここは通行禁止です」


と、彼女は淡々と言うだけだった。

彼女の存在は、屋敷の中に静かで確かな安心感をもたらしていた。

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