アクエバ
エルムレインに戻って数日後、エンバーの訓練をしていると、寝床の奥で静かに休んでいたアークが目を覚ました。その大きな黒曜色の体を揺らしながら、エンバーに興味を持ったのか、じっと見つめていた。
エンバーはその視線に気づき、くるりと振り返ると、興味津々といった様子でアークに近づいていく。
「エンバー、ちょっと待て! アークはまだ完全には慣れてないんだから、あんまり急に近寄るなよ」
制止するが、エンバーは聞かず、まっすぐアークの前まで行き、元気よく小さな鳴き声を上げた。
アークはゆっくりと首を動かし、エンバーを見下ろす。その瞳には少し驚きと興味が混じっているようだった。
にゃんまるが様子を見ながら呟く。
「エンバーは子供ですから、アークの威厳を恐れないのでしょうね。ある意味、大した度胸です」
「それはいいけど、アークが怒ったらどうするんだ……」
少し心配しながらも、二匹の様子を見守ることにした。
エンバーはアークの大きな体を見上げると、興味を抑えきれないように彼の尻尾や足元をくるくると回りながら観察し始めた。その様子にアークは少し困惑したように首をかしげるが、攻撃的な態度は見せない。
やがて、エンバーはアークの尻尾の先に飛びつこうとして軽くジャンプした。しかし、その瞬間、アークが低く唸り声を上げ、エンバーの動きを止めた。
「エンバー! やりすぎだ!」
声をかけると、エンバーは慌ててその場で動きを止め、大人しくアークを見上げる。
アークはじっとエンバーを見下ろした後、ゆっくりと頭を下げ、彼の額に自分の額を軽く触れさせた。
にゃんまるが驚いたように口を開く。
「……アークが自ら触れるとは珍しいですね。どうやらエンバーを受け入れたようです」
「本当か? よかった……」
安心したようにため息をつき、エンバーの元に近づいた。
その後、アークはまるで年長者のようにエンバーを見守るようになった。エンバーが力の制御に苦戦していると、アークが少し離れた場所から視線で導いたり、小さく唸って注意を促したりする姿が見られるようになった。
ある日、エンバーが火球の練習をしている最中に、勢い余って火球が飛び散りそうになった。すると、アークが咄嗟に自分の翼を広げて火球を受け止めた。
「アーク!」
慌てて駆け寄るが、アークは涼しげな表情で火球を弾き返し、そのままエンバーに向けて低い唸り声を上げた。
エンバーはその唸り声に怯えるどころか、真剣な表情で頷き、再び集中して火球を生み出す練習を始めた。
にゃんまるが感心したように言う。
「アークはエンバーにとって良い師匠になるかもしれませんね。彼の厳しさと優しさが、エンバーの成長を助けているようです」
「ああ、アークに任せて正解だったな。もっと二匹のサポートをしていかないと」
笑いながら、二匹の絆が深まる様子を見守るのだった。エンバーは無邪気ながらも、アークの指導を受けることで少しずつ成長していった。アークもまた、エンバーの存在によって少しずつ心を開き、穏やかに接するようになった。
そんな二匹の姿を見て、竜たちが築く絆の深さに感銘を受ける。そして、エンバーとアークの成長が、これからの冒険でどれだけ大きな力となるかを確信するのだった。
竜たちの生活が続く中、エンバーとアークはさらにお互いを理解し合い、まるで兄弟のような関係を築いていた。エンバーが無邪気に遊びに誘う一方で、アークはそれを見守りつつ、必要なときだけ厳しく指導する。
そんなある日、日課となっている竜たちの訓練をしていると、アークとエンバーが並んで立っていた。
「お前ら、今日は何か一緒にやりたいのか?」
問いかけると、アークがゆっくりと頷き、エンバーも勢いよく尾を振った。
にゃんまるが鋭い目つきで二匹を見て口を開く。
「どうやら、この二匹は一緒に力を合わせた訓練を望んでいるようですね。主、試しに共闘の練習をさせてみてはいかがですか?」
「共闘か……面白そうだな。でも、エンバーがアークに合わせられるか心配だな」
少し悩むような顔をしたが、結局、二匹にそれぞれ自分の力を存分に使って協力する方法を試させることにした。
訓練場で、簡単な指示を出すことにした。目標は、いくつか設置されたダミーを破壊すること。条件は、アークとエンバーが力を合わせて攻撃することだった。
エンバーが火球を作り出し、それをアークの翼で風の力を使って加速させる。これが二匹の最初の試みだった。
エンバーの小さな火球がアークの風を受けて勢いを増し、ダミーの一つを簡単に吹き飛ばした。
「おお! いいぞ、その調子だ!」
声を上げると、エンバーは得意げに尻尾を振り、アークも満足そうに低く唸った。
次はエンバーが炎を広げて周囲を覆い、それをアークが風で制御して吹き飛ばす作戦だった。しかし、途中でエンバーの力が暴走し、炎がアークの体に少し触れてしまった。
「アーク!」
叫ぶが、アークは慌てることなく翼を広げ、炎を軽く払いのける。そして再びエンバーに向き直り、優しく低い唸り声を上げた。
エンバーは申し訳なさそうに頭を下げたが、アークが静かにうなずくと、再び気を取り直して訓練に挑んだ。
何度か試行錯誤を繰り返した後、二匹の動きに次第に連携が生まれていった。エンバーの炎はアークの風によって強力な爆風となり、複数のダミーを一度に吹き飛ばすまでになった。
にゃんまるが感心したように言う。
「ふむ、二匹の力がここまで噛み合うとは思いませんでした。アークの冷静な判断力とエンバーの純粋な力が、素晴らしいバランスを生み出しているようです」
「確かに、あいつらには本当に可能性を感じるな。これなら、いざというときに俺たちの大きな助けになるかもしれない」
微笑みながら、二匹の成長に目を細めた。
その日の訓練が終わると、エンバーは疲れたのかアークのそばに身を寄せて横たわった。アークも嫌がることなく、静かにその姿を見守っている。
そんな二匹の様子を見ながら呟く。
「……あの二匹は、本当にいいパートナーになれそうだな」
にゃんまるが満足げに語る。
「ええ。この調子なら、彼らの力がこれからの戦いや冒険で大いに役立つことでしょう。それにしても、あなたも立派な竜の世話役になりましたね、主」
「そうか? まあ、そう言ってもらえるなら悪い気はしないな」
少し照れたように笑いながら、再び遠くの空を見上げた。エンバーとアークの絆がこれからどんな未来を切り開いていくのか、彼は胸を躍らせながら考えていた。
にゃんまるは静かこちらを見るとある提案をしてきた。
「主、DCLをとってみませんか?」
「DC...なんだって?」
にゃんまるがニヤリと笑う。こういう時のにゃんまるは何か楽しいことを思いつく時だ。
「ドラゴンケアライセンス、通称DCLです」
「なにそれかっこいい」
教えてにゃんまる先生!




