そろそろおうちにかえりましょう
旅の途中で訪れた数々の場所を楽しんできた。たくさんの冒険を経て、気づけばだいぶ遠くまで来てしまっていた。
その日の午後、にゃんまるが歩みを止め、静かに向き直る。
「主、少しお話がございます」
足を止めてにゃんまるを見ると、彼はしばらく黙った後に続けた。
「ここまで長く旅をしてきましたが、そろそろ家へ帰るべきではないかと思います」
少し考え込み、ふと竜たちのことが頭に浮かぶ。
「確かに、竜たちのことも気になるしな」
にゃんまるは頷き、落ち着いた声で言った。
「そうですね。遠くまで来てしまいましたが、家に戻れば、待っている者たちがいることでしょう。」
にゃんまるの言葉を受けて、軽く頷く。
「そうだな、帰るか」
にゃんまるは微笑み、ゆっくりと歩き出す。
「では、帰りましょう。道中、安全に気をつけながら行きましょうね」
にゃんまるに続き、家へと向かう道を歩き始めた。
にゃんまるは歩きながら、過去の冒険を思い返し、少し懐かしさを感じていた。
「それにしても、こんなに遠くまで来ていたなんて、ちょっと驚きだな」
軽く笑いながら言うと、にゃんまるも静かな声で応じた。
「はい、あの時はついつい夢中になってしまい、遠くまで来てしまいましたね。しかし、今となってはいい思い出です」
「確かに、いろんなことがあったな」
歩みを進めながら、冒険の数々を思い出していた。その中で、数多くの出会いや出来事が目に浮かぶ。
やがて、道の途中で少し休憩を取ることにした。草むらに座り、少しだけ足を伸ばして一息つく。にゃんまるも横に座り、穏やかな表情で周囲を見渡す。
「こんなふうに、少しのんびりとした時間も大切ですね」
にゃんまるが静かに呟くと、頷きながら言った。
「うん、急いで帰る必要もないし、ちょっとした休憩もいいな」
そのまま目を閉じ、風の音を聞きながらリラックスしていた。
だが、突然、にゃんまるが急に立ち上がる。
「主、気をつけてください」
その声に反応し、素早く立ち上がった。
「どうした?」
尋ねると、にゃんまるは冷静な表情で周囲を見渡しながら答えた。
「少し、気配が…近づいているようです」
にゃんまるの視線の先を見つめる。風の中に何かがひっかかるような感覚があり、すぐに警戒を強めた。
「魔物か?」
少し身構えると、にゃんまるが頷く。
「恐らく、そうです。すぐに退避しましょう」
にゃんまるは、動き出すように促す。
無言で頷き、にゃんまると共にその場を離れる。無駄に戦闘を避けるのが得策だと判断したからだ。
だが、その直後、草むらから現れたのは予想外の魔物だった。巨大な爪を持つ獣が、二人に向かって突進してきた。
獣の影が草むらから一気に飛び出し、鋭い爪を振り上げながら突進してくる。
冷静にフェリスタルを手に取り、構えをとった。
「にゃんまる、どうする?」
落ち着いて尋ねると、にゃんまるは冷静に反応した。
「まずは引きつけてから、隙を見て攻撃を」
にゃんまるの言葉通り、前に出ることなく、相手の動きに合わせて後退しながら、戦う準備を整える。
獣は目の前に迫ると同時に、荒々しく爪を振るわせた。その動きに合わせて、素早く身をかわしながら、背後に回り込んで攻撃のチャンスを伺った。
「にゃんまる、少し時間をくれ」
にゃんまるは軽く頷き、瞬時に前に飛び出した。剣を引き抜くと、素早い動きで獣の足元を狙う。
「断ち斬る!」
にゃんまるが放った剣技は鋭い一撃で獣の前足を切り裂き、その勢いで獣は前足を引きながら後退した。だが、獣はすぐに反応し、爪を振り上げてにゃんまるに襲い掛かる。
「危ない!」
思わず声を上げると、にゃんまるは一度後ろに飛び退き、相手の攻撃をかわす。
「くっ…二匹か」
冷静に状況を見定めると、さらに二匹目の獣が現れる。その瞬間、にゃんまるは素早く声を上げた。
「主、少しお待ちください」
にゃんまるがその場で静かに立ち、剣を構える。緊張感が漂う中、にゃんまるの目が鋭く光り、冷静に敵を見据えていた。
猫爪連斬!
にゃんまるの剣が一閃、その一撃はまるで風のように素早く、獣たちの隙間を縫っていった。鋭い一撃が獣の皮膚を切り裂き、獣は痛みによろめきながら後退する。その隙に、後ろから一気に飛び込んでフェリスタルを使って反撃した。主人公の一対のダガーが巧みに交差し、獣の防御を打ち破ると、獣はひとたまりもなく倒れ込んだ。
「やったか?」
深く息をつきながら確認した。にゃんまるも無事に戻り、静かに肩をすくめた。
「どうやら、何とか退けられたようです」
にゃんまるが微笑み、を見つめる。
「でも、驚きました。二匹も一度に現れるとは」
苦笑しながら言うと、にゃんまるは少し考え込んだ後、答えた。
「確かに。ただ、こうして無事に乗り越えられたことを考えれば、また一歩進んだと言えるでしょう」
にゃんまるの言葉に、深く頷いた。
「そうだな、もっと強くならないと」
手に持ったフェリスタルを見つめながら、次の戦いに備える決意を固める。
「では、行きましょうか」
にゃんまるが歩き始め、それに続いた。静かに歩き出し、再び遠くの自宅へと向かって歩みを進める。
帰路の旅を続ける途中、町を見つけたので休憩も兼ねて立ち寄ることになった。町の広場を歩いていると、一人の商人が慌てた様子で周囲を見回しているのに気づいた。商人は、見たところかなり動揺しているようだった。手には一部手作りの袋や商品のようなものを抱え、まるで失くしたものを探しているかのように周囲を見渡している。
「どうしたんだろう?」
にゃんまるに小声で尋ねた。
「分かりませんが、何か困っているようです」
にゃんまるも視線を商人に向けた。商人がふと目を合わせると、駆け寄ってきた。
「お、お前たち!ちょっと聞いてくれ!頼みがある!」
商人は息を切らせながら声をかけた。立ち止まり、にゃんまるもその様子を静かに見守っている。
「何かあったのか?」
商人に問いかける。
「実は、うちの竜に異変が起きてな。最近、様子がおかしいんだ。急に怒ったり、暴れたりするんだが、理由が分からなくて……」
商人の顔に焦りが浮かんでいた。少し考え込む。竜といえば、自身も過去に竜との接触があったが、そんな異常な兆候を感じたことはなかった。しかし、商人の困り果てた様子を見ていると、放っておけない気持ちが湧いてきた。
「竜の異変か……」
にゃんまるに視線を送ると、にゃんまるは小さく頷いた。
「どうやら、この商人が本当に困っているようです。私たちで少し見てみましょう」
にゃんまるは静かに言った。決断を下し、商人に向かって答える。
「分かった。その竜を見せてもらおう」
商人は大きく息をつくと、手を引いて先導を始めた。
「ありがとう、助かる!ありがとう!」
商人に案内され、少し外れた場所にある広い敷地に到着した。そこには、竜が一匹、鎖に繋がれて横たわっていた。竜は明らかに不安そうな様子で、時折目を大きく見開き、暴れようとしていた。
「こいつだ……」
商人は不安げに竜を指さした。
「最近、何かを感じ取っているようで、いきなり怒り出すんだ。私にはどうしていいのか分からない」
竜に近づくと、じっとその目を見つめた。竜はまだ不安そうにしているが、視線を感じ取ったのか、少し落ち着いた様子を見せた。
「にゃんまる、どうすればいい?」
「まずは、竜と意思疎通を試みてみてください。以前より、あなたの中に竜の気配を感じ取る力が増しているはずです」
にゃんまるは落ち着いて答えた。深呼吸をし、竜に向かって静かに声をかけた。
「落ち着いて、お前を助けに来た」
竜に穏やかに話しかけ、ゆっくりと手を伸ばす。
その瞬間、心に竜の叫び声が響いた。鋭い感情が直接伝わってきた。その叫びは痛みと恐怖のようだった。
「お前、何かに悩んでいるのか?」
再び竜に語りかけ、心の中でその感情に耳を傾けた。竜の心から、恐怖や不安、そして孤独のような感情が流れ込んできた。それは、竜が何か強い力に縛られているようなものだった。
竜の異常が魔法的なものであることに気づく。竜が感じ取っている不安や恐怖は、誰かが竜を操ろうとしている影響のようだった。
「呪いみたいだ......誰かがこの竜を操ろうとしているんだ」
にゃんまるもその言葉を聞き、目を細めて竜に向かって歩み寄った。
「それなら、どうすれば解除できるのでしょうか?」
竜の心と繋がりながら、その答えを導き出す。
「魔法の呪縛を解くためには、まずこの竜を封じている力の源を探さなければならない。おそらく、竜の首に掛かっている鎖に何か手がかりがあるかもしれない」
竜に近づき、鎖をじっと見つめた。その鎖の中に、微かな魔力が宿っていることに気づく。
「これか」
どうやら何者かが鎖に細工をしたらしい。一体誰がこんなことを......。心の中で呟きながら、鎖に込められた魔力を解く方法を試みる。しばらくその魔力を感じ取ろうと集中した。すると、鎖から微弱に漏れ出す魔力の流れを感じ取った。その流れは、外部から加えられた力によって竜に接続されているようだ。つまり、この呪縛は外部の誰かの意志によってかけられ、竜の自由を奪っていたのだ。
「まずは、鎖に込められた魔力を切り離す必要がある」
心の中で自分に言い聞かせながら、手を伸ばした。
深く息を吸い、手のひらを鎖にかざした。手をかざすと、手のひらから微弱な光が放たれ、鎖の魔力と交わるように流れ込んでいった。しばらくの間、鎖に込められた魔力は反応していたが、魔力がそれをゆっくりと浸透させ、効果を表し始めた。
「呪縛の力を剥がす……」
呪文のように呟き、心の中で魔力を集中させた。魔力の流れを鎖に送り込みながら、呪縛を解くために必要な「解放の意志」を持ち続ける。それはただの力ではない。竜が自由になるための「願い」とも言えるものを込めなければならなかった。
イメージは猫鳴の髭の魔力操作だ。絡み合っている魔力を解き、安らぎの形に変える。
心が竜の心と繋がった瞬間、強い感情が押し寄せてきた。竜の恐怖と不安、そして縛られていることへの苦しみが伝わってきた。その感情を感じ取りながら、その苦しみを解放する決意を新たにした。
「解け、呪縛よ……」
最後に力を込めて呪文のように言葉を放つと、鎖が一気に震え、魔力の流れが一気に暴れ出した。その力を抑え込み、さらに魔力を送り続ける。すると、鎖が光り輝きながら、やがて破裂して弾け飛び、竜にかけられていた呪縛が完全に解除された。
竜はその瞬間、大きく息を吐き、ゆっくりと立ち上がった。目を向け、その眼差しはもはや苦しみを感じさせることはなかった。
にゃんまるに向かって微笑みながら、竜の首にあった鎖の破片を拾い上げた。
「これで、呪縛は完全に解けた」
にゃんまるは静かに頷く。
「見事です」
と称賛の言葉を投げかけた。数分後、魔力を解き放つことに成功した。竜は大きく息をつき、目を閉じて落ち着きを取り戻した。
「よし、これで大丈夫だ」
満足そうに竜に微笑んだ。
商人は驚きと安堵の表情を浮かべながら、感謝の言葉を口にした。
「本当にありがとう!これで、また安心して商売ができる!」
竜の問題を解決すると、商人から感謝の品として贈り物をもらった。それは、古びた箱に包まれた小さなアイテムだった。
「これは……?」
箱を開けながら問いかけた。
「『竜の涙』だ」
商人は微笑みながら説明した。
「この涙は、竜が深い感謝を示すために滴るものだ。私の代わりに、君にお礼を言いたいと思って」
その涙を手に取ると、穏やかな温かさが伝わってきた。その涙は、竜の心から流れ出たものだけに、特別な力を持っているようだった。
「ありがとう」
商人にお礼を言うと、にっこりと微笑んだ。商人は満足そうに笑いながら、に手を振った。
「また何かあったら、いつでも頼んでくれ」
竜にも最後の一礼をして、にゃんまると共に次の目的地へと向かう準備を整えた。




