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空への憧れ

朝、陽の光がまだ柔らかい時間、エンバーは眠い目をこすりながら起き上がる。小さな体に赤く燃えるような鱗が少しずつ成長を感じさせるが、まだ幼いその姿はどこか愛らしさを持っている。周りには、静かな朝の空気と、木々がそよぐ音が広がっていた。


エンバーは一度、大きく伸びをすると、ゆっくりと地面に降り立ち、周りの空気を吸い込んだ。まだ力強く飛ぶことはできないが、時折翼を広げ、空に向かって小さく跳ねるように足を動かす。体力をつけるため、少しずつ歩きながら周囲を探索する。目の前に広がる草原や小川に興味を示しながら、ただ黙々と歩く。


昼間になると、エンバーは日差しを避けて木陰に移動し、しばらくそこで静かに休む。時折、他の動物たちが近くを通り過ぎるが、エンバーはそれに反応することなく、目を閉じて静かに休んでいた。


午後、エンバーは少し元気を取り戻し、もう一度小さな翼を広げて、地面を蹴って跳ねる。その動きにはまだ未熟さがあるが、確実に成長の兆しが見え始めている。時折、遠くから伝わる他の竜たちの鳴き声に耳を澄まし、何かを感じ取った様子で目を細める。


日が傾き、夕暮れ時になると、エンバーは再び木の下に戻り、静かにその場で眠る準備を始める。炎のような瞳を閉じ、あたりの音をぼんやりと聞きながら、ぐっすりと眠りにつく。明日もまた、同じように過ごすことだろう。ただひたすらに、成長を続ける時間が流れていく。


夜、わずかな風の音と共に、静寂が支配する中、エンバーは安らかな眠りに包まれていた。


次の日の朝、エンバーはまた静かに目を覚ました。昨日と同じように、柔らかな朝の光が彼の鱗に反射し、赤く輝く。その日は少し肌寒かったが、エンバーは心地よい朝の空気を吸い込みながら、再びゆっくりと起き上がった。まだ眠気が残っている様子だが、少しずつ体をほぐしていく。


周囲の景色を見渡し、エンバーは昨日とは少し違う気配を感じ取った。空に浮かぶ雲がいつもよりも低く、どこか重たく見える。彼は興味を持ち、翼を軽く動かして小さなジャンプをし、少し高く飛ぼうと試みたが、まだ空を飛ぶ力は完全にはついていなかった。翼を広げ、地面を蹴ったその瞬間、ちょっとした浮力が感じられるが、すぐに下へと引き寄せられた。


「まだ、無理か…」


エンバーは自分の翼を見つめ、少しだけうなだれた。しかし、すぐにその感情を振り払うようにして再び試みる。空を飛ぶことができるようになる日を目指して、何度でも挑戦しようと思っていた。


しばらくすると、エンバーの周りに微かな音が聞こえてきた。にゃんまると共にエンバーの成長を見守りながら、そっとその場に近づく。


「エンバー、元気か?」


にエンバーは振り返り、しっぽを揺らしながら小さく鳴いた。まるで「元気だよ」とでも言いたげに。少し笑って、そのまま立ち止まった。


「飛ぶ練習か? 少しだけ助けてやろうか?」


エンバーに向かって手を差し伸べた。エンバーはその手をじっと見つめ、少し悩んだ後、近くに寄ってきた。


「よし、まずはお前のペースでやてみて。焦らなくていい。飛ぶことはできるさ」


優しく言いながら、エンバーの体を支え、軽く背中を押した。エンバーは小さな翼を広げ、もう一度地面を蹴る。その時、少しだけ浮く感覚があった。


「うん、少しだけ、できた!」


その瞬間、エンバーは歓声を上げたように感じ、少しだけ足を広げ、空中に浮かぶ感覚を楽しんだ。まだ完全に飛ぶことはできなかったが、確実にその一歩を踏み出したことを実感していた。


「よし、次はもっと高く飛ぶことだ。できるぞ、お前なら」


エンバーはその言葉を胸に、もう一度挑戦する決意を固めた。その後、何度も何度も翼を広げ、少しずつ飛ぶ力を身につけていく。サポートを受けながら、エンバーは昨日よりも少しだけ高く、少しだけ長く空を飛ぶことができるようになった。


その日も、エンバーは日が暮れるまで飛ぶ練習を続けた。まだまだ完璧ではないが、確実に前進していることを感じながら。


夜が訪れると、エンバーは再び寝床で眠る準備を始めた。彼の体はまだ成長の途中であり、飛行の技術も未熟だったが、その心は確かに、少しずつ竜の本能に目覚めつつあった。


夜空には無数の星が瞬き、風が静かに吹き渡る中、エンバーはゆっくりと目を閉じた。翼や足が心地よい疲労感を訴えていたが、彼はその感覚をむしろ誇らしく思っていた。今日は自分にとって大きな一歩だった。


その時、近くで微かな音が聞こえた。葉が揺れる音と共に、にゃんまるがそっとエンバーのそばに座ったのだ。にゃんまるは何も言わず、ただ静かにエンバーを見つめていた。その瞳は温かく、どこか頼りがいのある雰囲気を漂わせている。


エンバーはその視線を感じ、軽く目を開けてにゃんまるを見た。にゃんまるは小さく微笑むと、軽く尻尾を振りながら空を見上げた。


「あなたも大変ですね。けど、諦めないその気持ち…悪くないですよ」


にゃんまるが呟くと、エンバーは小さく鳴いて応えた。それは疲れていながらもどこか満足したような声だった。


やがて、夜はさらに深まり、周囲は完全な静寂に包まれた。風の音だけが聞こえる中、エンバーは深い眠りに落ちた。その夢の中で、彼はすでに広大な空を自由に飛び回っている自分の姿を見ていた。


翌朝、陽光が再びエンバーを照らした。彼は軽く伸びをし、朝の冷たい空気を吸い込むと、新たな一日を迎える準備を始めた。今日は昨日よりもさらに高く飛ぶ練習をしようと決意していた。


にゃんまる共に今日もエンバーを見に来た。エンバーを見ると、不思議と笑みが浮かぶ。


「おはよう、エンバー。今日も練習しような」


エンバーは大きくしっぽを振り、その言葉に応えるように翼を広げた。やる気をさらに高める。


訓練場に向かう途中、エンバーは昨日と同じように地面を蹴り、少しずつ浮かぶ感覚を掴んでいく。まだ安定しないが、確実に前進している。その翼が風を切る音が、成長の証となっていた。


「少しずつ、確実にだ」


励ましの言葉をかけると、エンバーは嬉しそうに振り返る。その瞳には、自信と希望の光が宿っていた。


エンバーの日々はまだ始まったばかりだ。しかし、主人公たちの支えを受けながら、彼は少しずつ本来の力を引き出し、いつの日か自由に空を翔る立派な竜へと成長していくのだろう。


訓練場の広がる空に、小さな火竜エンバーの翼が音を立てて舞う。彼は飛行練習を始めてから少しずつ進歩し、いまや短時間ならば安定して空を飛べるようになっていた。その小さな体が風を切りながら上昇し、旋回し、降下する姿には、どこか誇らしげな雰囲気が漂っていた。


しかし、夢中で飛ぶうちにエンバーは訓練場を囲む結界の存在を忘れてしまった。翼を大きく広げたまま、ふと気がつけば視界に見慣れない山々が広がり、風の匂いもどこか違う。エンバーは少し戸惑いながらも飛び続けていたが、そのとき鋭い鳴き声が遠くから響いてきた。


空の彼方から現れたのは、野生の竜種だった。巨大な体と鋭い牙を持つその姿は、明らかに敵意を秘めていた。エンバーは慌てて身を翻そうとするが、翼を動かすタイミングを誤り、バランスを崩してしまう。


その瞬間、突如として影が空を横切った。


黒曜竜アークがどこからともなく現れ、野良竜とエンバーの間に割り込んだ。アークの鋭い眼差しが野良竜を見据えると、その巨体がゆっくりと威圧的に動く。野良竜は唸り声を上げながらも、アークの威容に一瞬たじろいだ。


アークは振り返ることなく、エンバーに軽く尾を振って合図を送る。それは「ついてこい」という無言の命令だった。エンバーは恐怖心を抑えながらアークの後を追うことにした。


アークは翼を広げて空高く舞い上がり、エンバーを導くように滑らかな飛行を見せる。その動きは荒々しい空気を切り裂くようでいて、どこか美しさを感じさせるものだった。エンバーはその姿を見て、必死に同じように翼を動かそうとした。


何度も失敗を繰り返しながらも、アークはエンバーに絶妙な間合いで付き添い、時には風を操って彼を助けた。エンバーはその支えを受けながら、少しずつ翼の使い方を学んでいった。


飛行練習が終わりに近づく頃、エンバーはアークの背中を見つめながら、勇気を持って自分の翼を大きく広げた。そして、初めて自らの力だけで空中を自由に飛び回ることができたのだ。


その瞬間、エンバーは気づいた。飛ぶことは単なる技術ではなく、自分を信じる力だということに。


アークは静かに空中でエンバーを見守り、やがて彼が安定した飛行を見せると、大きく頷くような仕草を見せた。そして、そのまま静かに風に乗り、影のように消えていった。


地上へ戻ったエンバーは、にゃんまると待つ主の元で静かに翼をたたみ、少し誇らしげな鳴き声をあげた。笑顔で彼を迎え入れ、頭を軽く撫でながら言った。


「エンバー!いつの間に飛べるようになったんだ、凄いじゃないか!」


エンバーの小さな鳴き声は、感謝と決意に満ちていた。


にゃんまるは静かに遠くを見る。


「あとでアークにはお礼を言いに行かなければ行けませんね」


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