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封印のゆらぎ2

にゃんまるが封印の核に手をかざすと、結晶に刻まれたひびから微かな光が漏れ始めた。古代文字が浮かび上がり、まるで息を吹き返したかのように洞窟内に光が広がる。


「この封印は、闇竜の魔力を吸収することで保たれる構造です」


にゃんまるが静かに説明する。


「しかし、その魔力の循環が乱れているのが問題です」


「その循環をどうやって直すの?」


周囲を警戒しながら尋ねた。


「少し複雑ですが、私が魔力を調整します。ただし、その間は完全に動けません」


にゃんまるが真剣な表情で答える。


「主、ここでの守護をお願いできますか?」


フェリスタルを抜き、力強く頷いた。


「任せろ。何が来ても通さない」


にゃんまるが集中を始めると、封印の結晶から暗黒色の霧が吹き出し始めた。それはまるで何かを拒絶するように周囲を覆い尽くす。


その時、洞窟の奥から低い唸り声が響いた。


「何か来る…!」


音の方向に向き直ると、洞窟の暗闇から複数の魔物が姿を現した。彼らは先ほど倒した魔物とは異なり、小型だが数が多い。


「分散している分だけ、厄介そうだな…。」


フェリスタルを構え直し、冷静に距離を測った。


「にゃんまるを守る。それだけだ」


最初の一体が飛びかかると同時に、フェリスタルが閃いた。刃の一振りで魔物を切り裂き、その場で霧散させる。しかし、倒しても次々と新たな魔物が現れる。


「こいつら、湧き続けるのかよ…!」


焦りを押し隠しながら次々と魔物を退けていく。


にゃんまるの声が背後から聞こえた。


「もう少しだけ時間をください…!魔力の循環は安定しつつあります!」


頷きつつ、さらに集中力を高めた。


「時間を稼ぐだけだ。ここで止める!」


魔物の一体が背後からにゃんまるに迫ったその瞬間、猫影潜行のスキルを発動。影の中から素早く飛び出し、魔物を一刀両断にする。


「ふぅ…危なかった」


小さく息を吐く。


しかし、その直後、洞窟内に異様な静けさが訪れた。


「終わったのか?」


警戒を解かずに辺りを見回すと、にゃんまるがゆっくりと立ち上がった。


「ええ、封印の修復が完了しました」


にゃんまるが微笑むと、結晶から漏れていた黒い霧が完全に消え、再び封印の輝きが戻った。


「さすがだ、にゃんまる」


フェリスタルを収めながら安堵の表情を浮かべる。


「こちらこそ、主のおかげで無事に修復ができました」


にゃんまるが軽く礼をする。


「これで当分は封印が安定するでしょう」


しかし、その時、にゃんまるの表情が曇る。


「ただ…この封印の弱まり方は自然なものではありません」


「どういうこと?」


険しい表情になる。


「誰かが意図的に封印に干渉した可能性があります」


にゃんまるが洞窟の奥を見つめる。


「原因を突き止めない限り、同じことが再び起こるでしょう」


二人は一度ギルドに戻り、今回の依頼について報告することを決めた。その背中には、新たな試練が待ち受けている予感が重くのしかかっていた――。


山を降りた後、依頼の結果を報告するためギルド本部に向かった。道中、修復した封印について考え続けていた。


「誰かが封印を壊そうとしている…か」


独り言のように呟く。


「ええ。リオンと共に封印を施した時、かなり厳重にしておいたのですが…」


にゃんまるが少し険しい表情を見せた。


「何者かが意図的に干渉しなければ、ここまで封印が弱まることはあり得ません」


「その“何者か”を突き止めないと、また同じことが起きるな」


「おそらく、今回の報告をすればギルドも動きを見せるはずです」


にゃんまるが穏やかな声で応えた。


「主もお疲れでしょうし、一度落ち着いて対策を練りましょう」


ギルド本部に到着すると、受付の職員が二人を出迎えた。


「お帰りなさい。カイロン様が待っています」


案内されたのは、ギルドマスター専用の執務室。豪華さと機能性を兼ね備えた部屋に入ると、カイロンが大きな机の向こうで腕を組んでいた。


「よく戻ったな」


カイロンが深い声で二人に語りかけた。


「早速だが、今回の依頼の報告を頼む」


にゃんまるに軽く目配せをし、封印修復の経緯を簡潔に説明した。洞窟内での魔物との戦闘、封印が弱まっていた原因、そして修復が完了したこと。


「…つまり、何者かが意図的に封印に干渉した可能性があると?」


カイロンが眉をひそめた。


「ああ。にゃんまるの言う通り、自然に崩れるような封印じゃなかった」


静かに答える。


「ふむ…わかった」


カイロンが少し考え込んだ後、顔を上げた。


「お前たちが封印を修復してくれたおかげで、しばらくの間は問題ないだろう。ただ、放置するわけにはいかないな」


「ところで、今回の依頼はただの調査依頼ではなかったようだが」


カイロンをじっと見つめた。


「…気づいていたか」


カイロンが薄く笑った。


「今回の依頼にはもう一つの目的があった。それは、お前を試すことだ」


「試す…?」


眉をひそめる。


「そうだ。お前がギルドのナイトランクに留まる器ではないことは、以前からわかっていた」


カイロンが立ち上がり、歩み寄る。


「今回のような危機に対応できる力量を示したお前には、次のステップがふさわしい」


カイロンは少し間を置いて言葉を続けた。


「正式に、ビショップランクへの昇格を認める」


驚きながらもその言葉を受け止めた。


「…俺がビショップランクに?」


「そうだ」


カイロンが真剣な眼差しで主を見つめる。


「今後、ギルドにとってより重要な役割を担うことになる。その覚悟があるなら、この昇格を受け入れてほしい」


しばらく考えた後、深く頷いた。


「ああ、やってみるさ」


「いい返事だ」


カイロンが満足げに笑う。


「それでは、次の試練に備えろ。お前の力を必要とする時はすぐにやって来るだろう」


部屋をにゃんまると出てしばらくの間無言だった。


「主、これからはより困難な道を進むことになるでしょう。」


にゃんまるが柔らかな声で言った。


「ですが、私も共にいます」


「わかってるさ」


軽く笑いながら答えた。


「お前がいるなら、どんな道でも進んでやる」


二人の背中には、新たな決意と冒険への期待が満ちていた。


1階で新しいギルドカードを受け取り、じっくりと観察した。そのカードは以前のナイトランクのものと同じ素材で作られていたが、色合いやデザインに明確な違いがあった。


カードの表面は深い青紫を基調とし、光を受けるたびに静かに波打つような輝きを放つ。まるで月夜の海がそのまま封じ込められたかのようで、神秘的な美しさを纏っている。


右上には、チェスの駒を模した「ビショップ」の彫刻が施されている。駒は細部まで繊細に彫られ、まるでそのまま盤上で役目を果たせるかのような存在感がある。ビショップの紋章は魔力によって淡い青白い光を放ち、持ち主のランクを静かに示していた。


中央部には、名前が優雅な筆記体の魔法文字で記されている。その文字は青と銀が混じり合い、角度を変えるたびに変幻する光沢を見せる。名前の下には小さく「ギルド認定ランク:ビショップ」と刻まれ、ランクの昇格を実感させる仕組みだ。


裏面には、所属ギルドと個人の魔力紋が描かれている。魔力紋は以前よりも複雑で精密になり、紋章全体に淡い紫の光が宿っている。持ち主の魔力に共鳴し、カードを握るたびに微かな暖かみを感じさせる。


縁取りには、銀の中に青紫のラインが織り込まれ、より洗練された印象を与えている。そのデザインは「ビショップ」のランクにふさわしい気品と威厳を感じさせた。


このギルドカードは単なる証明書ではない。それは歩んできた道と、新たな責務を担う覚悟を映し出す象徴だった。

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