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生まれ変わるナイトクロー

リカルドの鍛冶場に戻ると、昼間とはまた違う雰囲気が漂っていた。鍛冶場の内部は赤々と燃える炉の光に照らされ、リカルドの力強い金槌の音が響いている。


「戻ったか」


リカルドは振り返ると、二人を見てにやりと笑った。


慎重に星喰い鉱石を差し出す。リカルドは受け取ると、光に透かしてじっくり観察した。


「ふむ、これは間違いねぇ。いい鉱石だ。よくんな厄介な場所から持ち帰ったもんだな」


その言葉に、少し得意げに肩をすくめる。


「まぁ、ちょっと面倒な連中に絡まれたけどな」


「それでも無事に戻れたのは何よりです」


にゃんまるは柔らかく微笑みながら言った。


リカルドは大きく頷き、炉の火をさらに強めた。


「さて、これからお前のダガーを修復するが、この鉱石を使うには特殊な手順が必要だ。完成まで少し時間がかかるぞ」


「問題ない。大切な武器だから、じっくりやってくれ」


リカルドはすぐに作業を開始した。鉱石を炉に入れ、高温で溶かしていく。溶けた星喰い鉱石は神秘的な輝きを放ち、まるで星屑そのもののようだった。


「星喰い鉱石はただの素材じゃない。ただ硬いだけじゃなく、持つ者の力に反応して形状や強度を変化させる性質がある。だから、お前の手に馴染む武器に仕上げるには、お前自身の戦い方や心の在り方も考慮しなきゃならねぇ 」


リカルドはそう言いながら、手際よく金槌を振り下ろしていく。その動きは力強いが繊細で、長年の経験が感じられるものだった。


その様子をじっと見つめた。ナイトダガーには、にゃんまるから譲り受けた思い出が詰まっている。そして、数々の戦いを共に乗り越えた相棒でもある。


「完成するのが楽しみだな」


ぽつりと呟く。


「ええ。リカルド殿の腕なら、きっと素晴らしいものが仕上がるでしょう」


にゃんまるは穏やかな声で返す。


炉の中で輝きを増していく星喰い鉱石。その光を見ながら、新たな武器がもたらす未来に思いを馳せていた。


数時間後ーー。

リカルドは汗を拭いながら、ついに最後の仕上げを終えた。


「できたぞ」


彼が差し出したのは、以前のナイトクローとは全く異なる輝きを放つ一対のダガーだった。

ダガーは、かつて使っていたナイトクローの面影を残しつつも、さらに洗練された姿に仕上がっていた。


作業台の上に並べられた一対のダガーは、星喰い鉱石を用いたことで、その刃全体が夜空のような深い輝きを纏っている。光にかざすと、刃に散りばめられた星のような模様が浮かび上がり、角度を変えるたびに虹色にきらめく。


「見ろよ、これが星喰い鉱石の力だ。ただの鉱石じゃない。その刃は、夜空そのものを閉じ込めたかのような輝きを放つだろう?」


リカルドが誇らしげに語る。


刃の先端は、猫の爪を思わせる曲線を描きつつも、鋭利で繊細な造りをしている。その鋭さは、触れた者を容赦なく切り裂く威力を秘めているようだった。


鍔は猫の顔を象っており、左右で向きが対称的。猫の目にあたる部分には小さな宝石がはめ込まれ、光を浴びるたびに不思議な輝きを放つ。まるで刃そのものが生きているかのような迫力を感じさせる。


柄は猫の尻尾のようなしなやかな曲線が施され、持ち手部分には滑り止めの加工として猫の肉球模様がさりげなく彫り込まれていた。その触り心地は驚くほど滑らかで、手にしっくりと馴染む。


鞘は、ダガーの刃と同様に猫をモチーフとして作られていた。鞘自体は黒い皮革で覆われ、光沢を帯びたその表面は、まるで夜空に煌めく星々のように静かに輝いている。細かな金糸が縫い込まれ、目を凝らすと、猫のシルエットが浮かび上がっているのが分かる。そのデザインは、まるで刀身が猫のしなやかな尾のように滑らかに鞘の中に納まるために作られたかのように感じられる。


鞘の口部分には、鋭く立ち上がるように猫の耳が形作られており、その先端は優雅な曲線を描いている。その形状は、ただの装飾ではなく、鞘を握る者にとって直感的に扱いやすく、手にしっくりと収まるように作られている。


そして、鞘の下部には、猫の足跡を模した小さな金具が付けられている。まるでその足跡が地面を踏みしめるかのような精緻な作りで、その一歩一歩がしっかりと力強さを感じさせる。


鞘を持つと、ぴったりと手に馴染む感覚が広がる。フェリスタルを納めることで、その鞘はまるでダガーと一体化したかのように感じられる。どこか妖艶で神秘的な印象を与え、誰もがその美しさに見とれてしまうだろう。


鞘を手に取り、優しくダガーを納めると、刃の音もなく、まるで猫が静かに眠りにつくように、音を立てずに納まった。鞘がフェリスタルを包み込む瞬間、彼はその心地よい重みを感じながら、再び手に取ることを楽しみに思った。


「前も思ったけど、この柄の肉球模様…にゃんまるの趣味なのか?」


怪訝そうに目を細めると、にゃんまるはしれっとした顔で一言。


「いえ、実用性ですよ。滑り止めは重要ですから」


そして、両刃を合わせると、猫が闇夜に飛び跳ねるようなシルエットを描く。このデザインにはリカルドの遊び心が込められており、見た者を驚かせる効果も期待できる。


「名を付けるなら『フェリスタル』だな」


リカルドがポツリとつぶやいた瞬間、その名前が心に響いた。猫(Felis)と星(Star)が合わさったような、神秘的でどこか優美な響き。


「フェリスタル…いい名前だな」


新たな武器を手に取り、その軽さと馴染み具合を確かめながらつぶやいた。これからの戦いで、彼の相棒となるにふさわしい一振りだった。


「これは……軽い。それに、まるで手に吸い付くような感覚だ」


「そいつはお前専用だ。持ち主にしか真価を発揮しねぇし、お前が強くなればなるほど、そいつも強くなる。」


リカルドの言葉に、感動を隠せない。


「ありがとう、リカルドさん。本当にありがとう」


「さん付けはいらねえ、礼ならそのダガーを使って、思い切り暴れてこいよ」


リカルドは豪快に笑い、また炉の火を強めた。


新たなナイトダガーを手に入れた。これからの試練に向けて、彼の心はますます燃え上がっていた。


工房の外に足を踏み出すと、静かな午後の陽射しが彼を包み込んだ。新たなダガー「フェリスタル」を手に、何度も握りしめてその感触を確かめる。手に馴染む感覚は、まるで生き物のように心地よく、もう長い間一緒にいたかのような親しみを感じた。


「さて…試してみるか」


フェリスタルを手に取ると、無意識に刀身をゆっくりと振ってみる。しなやかで、軽い。しかし、その刃は鋭く、空気を切り裂く音が心地よい響きとなって返ってくる。


にゃんまるが横でじっと見守っている。


「試し切りですか?」


微笑みながら頷いた。


「ああ、やってみないと気が済まない」


彼は目の前にあった木の丸太を見つめ、すっとフェリスタルを構える。軽やかに一歩踏み込み、すぐに刃を振り抜く。その動きはまるで猫が獲物を狙うかのように素早く、しかし決して力任せではない。


「フッ…」


刃が丸太に触れると、予想以上の切れ味に少し驚いた。フェリスタルの刃は、あっという間に木の表面を切り裂き、まるでバターを切るようにするりと滑った。彼の腕力よりも、ダガーそのものの力が引き出されていく。


そのまま次々に刃を動かし、いくつかの切り込みを入れると、丸太は次第に細かく裂けていった。


「すごい…」


息を呑む。フェリスタルの切れ味は、これまで使っていたナイトクローを凌駕していた。とても繊細でありながら、力強さも感じられ、まるで猫の爪が物を裂くような軽快さで切り込んでいく。


にゃんまるがじっと見守る中、しばらく無言で刃を振り続けた。


「どうですか?」


にゃんまるが期待を込めて尋ねる。


静かにフェリスタルを見つめると、微笑みながら答える。


「完璧だ。これならどんな相手にも負ける気がしない」


その言葉とともに、もう一度フェリスタルを空中で舞わせ、さらに精度を高めるように動きを調整する。風を切り裂く音が耳に心地よく、心の中に新たな自信が芽生えていった。


「これが俺の新しい相棒だ」

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