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騎竜レース開幕

観客席からは、緊張と興奮が入り混じった声が響き渡る。今日のレースはCランクとBランク、いずれも若手の竜騎士たちとその竜たちが繰り広げる戦いだ。広大な競技場の真ん中に立つスタートラインには、数頭の竜が整列している。観客の目は、すでにその竜たちに釘付けだ。


「主、緊張してるみたいですね」


にゃんまるが穏やかな声で言うと、主は少し肩をすくめて答える。


「なんだかドキドキする…」


このレースは、初めての観戦。目の前で繰り広げられる迫力あるレースを見ていると、つい自分がその一員になったかのような感覚に陥る。それでも、その緊張を必死に隠そうとした。


「でも、すごいね…竜たち、こんなに速いのか…」


「はい、レースを観ることで、竜騎士としての技術や竜の能力も見えてきます。とても勉強になりますよ」


にゃんまるの言葉通り、レースが始まる直前、会場の熱気は最高潮に達していた。風が吹き荒れ、竜たちの鱗が煌めく。今、スタートラインに並んでいる竜たちは、どれも必死に周囲の騒音を無視し、呼吸を整えている。だがその眼差しには、一点の曇りもなく、ただただ目の前の勝利に集中している様子が見て取れる。


「それでは、スタートです!」


司会者の声が響き、スタートの合図とともに、竜たちは一斉に駆け出す。空気を切り裂くような速さで、竜たちは次々と空中に舞い上がり、コースを一気に駆け抜けていった。観客席からは歓声と拍手が上がり、息を呑んでその姿を追う。


「すごい…本当に、空を飛んでいるみたい…」


手を握りしめ、目の前のレースに目を奪われていた。そのスピードに圧倒され、まるで竜たちが風のように駆け抜けていくのが感じられる。空を飛ぶ姿は、まるで嵐のように荒々しくも美しい。


「Cランクの選手たちは、まだ経験が浅いとはいえ、こうして見ると迫力満点ですね」


にゃんまるの言葉に、頷く。確かに、まだ荒削りな部分も見受けられるが、それがまた魅力的だ。若き竜騎士たちが一生懸命に競い合うその姿には、見る者すべてを引き込む力があった。


やがてレースが進むにつれて、激しい競り合いが繰り広げられる。後ろから追い上げてきた竜が、前方の竜を抜き去る瞬間、会場は大きな歓声に包まれる。空中での鋭いターンや障害物の回避が、観客にとっては息を呑む瞬間となる。


「最後の直線、すごいスピードだ…!」


思わず声を上げると、にゃんまるも軽く微笑んだ。


「これが騎竜レースの醍醐味です。全ての力を出し切る瞬間を目の当たりにできるのは、貴重な体験です。」


そして、ついにゴールラインを越えた一頭の竜。その竜は、空中で華麗なひとひねりを加えて、見事に着地した。レースの結果は決まったが、その表情には達成感と共に、次への挑戦を見据えるような強い意志が宿っている。


「素晴らしいレースでしたね」


にゃんまるが静かに言うと、感心したように頷いた。


「うん、どの竜もすごくカッコよかった…」


その後、Bランクのレースが始まり、また別のドラマが繰り広げられる。しかし、Cランクの若き騎竜たちの姿が強く印象に残った。


そして翌日には、Aランクとエクストラランクのレースが待っている。競技のレベルは更に上がり、全く違う緊張感が漂うことだろう。その瞬間を心待ちにしながら、主は次のレースを楽しみにしていた。


翌日ーー。


澄み渡る青空に、騎竜たちの緊張が伝わるような静寂が広がる。観客席は既に満席で、誰もが息を呑むようにスタートの瞬間を待ち構えていた。このAランクの騎竜レースは、今日のハイライトだ。選ばれし竜騎士たちが繰り広げる、空中での激闘。その光景は、ただの競技を超えた壮大なドラマだった。


「主、Aランクのレースは全く別次元の戦いです」


にゃんまるが静かに語りかける。


「竜も騎士も、一流の者だけが出場を許されるレースです。命を懸けた、技と心のぶつかり合いを目にする覚悟はできていますか?」


「緊張するけど、すごく楽しみ」


声は震えながらも、その瞳はしっかりと前を見据えていた。


スタートラインに並ぶ四頭の竜。それぞれが、目の前のコースに全神経を集中させている。


最内側に立つのは、フェルディア家のライアン卿とその竜、エクスヴィンド。

黒光りする鱗に金色の紋様が走るその姿は、まるで空の王者のようだ。竜騎士ライアンも鋭い眼差しを向け、エクスヴィンドの首元をそっと撫でる。


「彼の特徴は、圧倒的な加速力です。最初のダッシュで他を突き放す可能性が高いですね」


にゃんまるの解説に、主は真剣に耳を傾ける。


隣には、赤い鱗が炎のように輝く竜、フレアストーム。その乗り手は女性竜騎士のアリシアだ。


「フレアストームは、非常に攻撃的な性格の竜です。急旋回や空中での激しい動きが得意ですが、それゆえに制御が難しい。アリシア様がどうコントロールするか、注目です」


さらにその横には、緑色の鱗が草原の風を連想させる竜、グリーンアロー。穏やかな見た目に反して、卓越した飛行技術と安定感を誇る。


最後に、漆黒の竜ナイトスレイヤー。全身が影のように闇に溶け込む姿で、その動きは非常に読みにくい。騎士は無口な男で、観客の間では「沈黙の殺し屋」と呼ばれている。


「それでは、Aランク騎竜レース、スタートです!」


司会者の声と共に、スタートの鐘が鳴り響く。瞬間、竜たちが一斉に駆け出した。砂塵が舞い上がり、竜の巨大な翼が風を巻き起こす。


最初の直線。エクスヴィンドが圧倒的な加速力で先頭に立つ。他の竜たちも追随するが、エクスヴィンドの速度には一歩及ばない。


「さすがフェルディア家の竜ですね。序盤でのリードは大きなアドバンテージです」


にゃんまるが低く唸るように言う。


しかし、フレアストームが急接近する。アリシアの巧みな手綱さばきで、竜は空中で鋭い角度を描きながらエクスヴィンドの内側へ割り込んでいく。観客席から驚きの声が上がる。


「すごい、あのターン…!」


食い入るようにレースを見つめていた。その迫力に圧倒され、手に汗を握る。


最初の障害物区間に突入する。空中に設置された巨大なリングをくぐり抜けなければならない。エクスヴィンドは安定した飛行でリングを通過。一方、フレアストームは荒々しい動きでリングを強引に抜ける。


後方からはグリーンアローが静かに追い上げを開始する。その動きは滑らかで無駄がなく、まるで風そのもののようだ。ナイトスレイヤーも、その漆黒の体で影のように追走する。


「中盤の戦いが見ものですね。この後の急旋回エリアで、技術の差が大きく出るでしょう」


観客の目が釘付けになる中、竜たちは次々と急旋回エリアに突入する。この区間では、竜の旋回能力と騎竜の判断力が試される。


エクスヴィンドは一瞬の遅れもなく旋回を終えるが、フレアストームがここで大きな差を詰めた。その後ろには、グリーンアローがピタリとつけている。そしてナイトスレイヤーが、誰にも気づかれないように接近していた。


「ここからが勝負です」


にゃんまるが言葉に力を込めた。


最終直線に入る。エクスヴィンドとフレアストームの一騎打ちの様相を呈するが、背後から突然、ナイトスレイヤーが影のように現れる。漆黒の竜は観客の誰もが予想しなかった速度で二頭に追いつき、一瞬の隙をついて内側を駆け抜けた。


「ナイトスレイヤーが先頭に立った…!」


ゴール直前の死闘。エクスヴィンドが再び加速し、ナイトスレイヤーを猛追する。最後の最後で、二頭が同時にゴールラインを駆け抜けたかに見えた。


「ゴール!判定は…僅差でエクスヴィンドの勝利です!」


場内は歓声と拍手の嵐に包まれた。どの竜も限界まで力を尽くし、その勇姿が観客の心に深く刻まれたのだった。その光景を目に焼き付けながら、心の中で呟いた。


「いつか…あの舞台に立てるだろうか」


にゃんまるは横顔を見つめ、静かに言った。


「きっとその日が来ます。ですが今は、この感動をしっかりと胸に刻みましょう」

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