国王登場
王の住む城は、大地の中心にそびえるかのようにそそり立っていた。巨大な城壁が周囲を囲み、その高さは人々を圧倒するほどだ。白い石で造られたその城は、太陽の光を浴びるたびに煌めき、あたかも天上の存在のような威厳を放っている。
塔がいくつも天に向かって伸び、それぞれの先端には黄金の装飾が施されている。その輝きは遠くからでも見え、城の存在がこの国の象徴であることを示していた。城の正面には巨大な門があり、門の中央には王家の紋章が刻まれている。竜と獅子が絡み合うデザインは、王の権威と力を象徴していた。
城門をくぐると、その豪華さに息を呑む。広大な廊下は滑らかな大理石で敷き詰められ、足音さえ吸い込まれるかのような静けさが漂う。天井は高く、金の彫刻が施された梁が連なり、無数のシャンデリアが空間を柔らかな光で包んでいる。
壁には歴代の王の肖像画が並び、重厚な絵画が物語るのはこの国の誇りと歴史だ。柱は白い大理石で作られており、装飾には黄金と青の細工が施されている。至る所に飾られた花瓶には季節の花が生けられ、その香りが空間に彩りを添えている。
謁見の間に近づくにつれ、雰囲気はさらに厳かになっていく。大扉の前には重厚な赤い絨毯が敷かれており、扉の装飾には竜が描かれ、その目は宝石が埋め込まれていた。
扉がゆっくりと開かれると、広々とした謁見の間が姿を現す。部屋の中央に敷かれた赤い絨毯は玉座まで続いており、両脇には豪奢な柱がそびえる。柱には黄金の模様が施され、その足元には燃えるような赤い花が彫刻として刻まれている。天井はドーム状になっており、鮮やかなステンドグラスが光を受けて色彩を変えながら部屋全体に神秘的な雰囲気をもたらしている。
そして、玉座に座る王の姿。
王は年の頃五十代に見えるが、その眼光は鋭く、まるで相手の心を見透かすかのようだ。銀色に輝く髪と短く整えられた髭は、気品と威厳を感じさせる。
身に纏う衣装は紫を基調にしたローブで、金糸で縫われた紋様が品格を際立たせている。その肩には白い毛皮が掛けられ、手には黄金の装飾が施された杖を持つ。杖の先端には宝石が輝き、王の権威を象徴するかのように光を放っていた。
にゃんまるが膝をつき頭を垂れる。それにならって同じように膝をつき頭を垂れる。
「久しいなにゃんまる。そしてよく来たその主よ」
王の声は低く、深みがあり、話すたびに部屋全体に響き渡るようだった。その一言一言には国を治める者の重みが感じられ、彼がこの国の中心であることを否応なく理解させられる。玉座に座っていても、その存在感は部屋中に満ちており、誰もが自然と頭を垂れずにはいられなかった。
にゃんまるは頭を垂れたまま話し始める。
「おひさしゅうございます、エルムレイン陛下。にゃんまると主、御身の前に」
「うむ、おもてをあげよ」
頭を上げると国王の眼光が鋭くみつめる。
にゃんまるは話を続ける。
「本日はご報告とお願いがありまいりました。マグナ火山地帯にて、火竜の誕生を確認。そしてその保護についてお願いがあります」
周囲の人達がざわつく。火竜の誕生はそれほどのことらしい。しかし国王は顔色を変えない。
「最後に火竜の誕生の記録があったのは、100年ほど前か」
「おっしゃる通りで御座います、そしての幼竜の保護をこちらに任せていただきたいのです」
そばに居た大臣らしき人が声を張り上げる。
「バカを言うな!火竜は国で保護すべき存在、それを一介の者に任せるなど!」
「控えよ」
国王が黙らせる、しかし陛下......ともごもごしている。
「報告の件は分かった、保護については後に話すとしよう。下がって良い」
一言も話すことなく謁見が終わってしまった。話せる空気ではなかったのだけれど。にゃんまると王の間をでて客間へ案内された。
客間の扉を開けると、静寂とともに豪華さが漂う空間が広がった。天井は高く、淡いクリーム色の漆喰が塗られ、その中央には繊細な金の模様が広がるシャンデリアが吊り下がっている。その光が部屋全体を柔らかく照らし、まるで時間がゆっくりと流れる特別な場所であるかのような感覚を与える。
壁には淡いグリーンの壁紙が貼られ、黄金色の縁取りが施されている。四季を描いた絵画が等間隔に飾られ、その足元には大きな赤い絨毯が広がっている。絨毯には王家の紋章が刺繍されており、その緻密な細工は職人の技術を感じさせる。
部屋の中央には深いクッションが施されたソファと、その周囲に配置された肘掛け椅子が並ぶ。どれも落ち着いた紺色の生地で覆われ、刺繍された金糸の模様が気品を添えている。ソファの前には丸い大理石のテーブルが置かれ、その上には季節の花を生けた水晶の花瓶が光を受けてきらめいている。
窓辺には薄い白いカーテンが揺れ、風が吹くたびにふわりと優雅に舞った。窓からは城内庭園が見え、その緑と花々の色彩が客間の落ち着いた雰囲気を一層引き立てている。
部屋の隅には控えめに配置された小さな書棚があり、歴史や詩集がぎっしりと並んでいる。それに添えられるように銀のティーセットが置かれたサイドテーブルがあり、訪れた客が心から寛げるような配慮が隅々に感じられる空間だった。
「少しここで休憩しましょう、次は応接間で陛下と幼竜についてお話します。先程と違ってもっとラフな場所なので安心してください」
できないが。相手は国王だ。気を許していい相手じゃない。下手打ってしまったら首をはねるかもしれない。こわすぎる!とりあえず用意されたお茶を飲んでゆっくりと心を落ち着かせる。しばらくするとノックが聞こえる。メイドが呼びに来たようだ。
「にゃんまる様、主様、ご準備が出来ました。応接間にご案内します」
メイドの後ろをにゃんまると歩く。にゃんまるはいつもどうりの冷静な感じだ。
「なあにゃんまる、緊張とかしないの?」
にゃんまるの表情は変わらないようにみえる。
「現国王は小さい時から知っていますし、前国王とも面識があるので強いていえば甥っ子に会う感覚でしょうか」
国王を甥っ子よびするにゃんまるの余裕っぷりをみて緊張が和らいでくる。しばらく歩くと扉の前でメイドが止まりノックをする。
「失礼します陛下、にゃんまる様と主様をお呼びしました」
「はいれ」
国王の返答の後扉が開かれ、応接間に入るとそこには国王と護衛数人、そしてゼファルトとカイロンがいた。扉が閉められるとなんと国王と護衛がにゃんまるに平伏した。ゼファルトとカイロンは慣れているのかいつものことというような感じでみている。
「にゃんまる殿、主殿先程は失礼しました。ようこそおいで下さいました」
先程とのギャップに固まっていると、にゃんまるは手を上げる。
「そういつもかしこまらなくて結構ですよフェル殿」
「いえいえ生きる伝説であるにゃんまる殿とその主殿の前では、一国の男など小さいものです」
にゃんまるは最早伝説となり神格化されている。にゃんまるはともかく、主である自分はその恩恵にすぎない。なんともきまずい。顔がおかしかったのか、カイロンが笑う。
「主なんて顔してるんだよ。ちょっとはにゃんまるの冷静さを見習え」
「いや、だって、国王陛下ですよ!そりゃ緊張しますよ!」
ま、そうかとカイロンは言いつつも笑いが堪えられないのかクククと笑っている。
「カイロン、陛下の前ですよ。貴方はもう少し礼儀作法を学びなさい」
「そりゃあ無理って話だ」
ゼファルトがカイロンに小言を言う感じはイメージ通りだった。




