ドラゴンだあ!2
ひたすら西を目指してやって来ましたマグナ火山帯。赤黒く染まる空の下、地平線に連なる荒れた山々の中心に巨大な火山がそびえ立つ。その火山の頂上からは、黒煙が激しく立ち上り、赤熱した溶岩が時折爆発的に噴き出している。周囲の大地は、長い年月にわたる溶岩の流出によって黒く焼け焦げ、所々にまだ赤く光る裂け目がある。その熱で空気が揺らぎ、地面からは絶え間なく硫黄の匂いが漂う。
山腹には、溶岩が固まってできた天然の洞窟がいくつも広がっており、深い奥底からは獣のうなり声のような音が響いてくる。その音に混じって、時折、巨大な翼が空を裂く音が聞こえる。鋭い目を凝らせば、赤い鱗を持つ巨大な影が火山の縁をゆっくりと歩いているのが見えるかもしれない。その影が一度空へ飛び立つと、翼の風圧だけで地面が震え、周囲の火山灰が舞い上がる。
火山地帯全体には、静けさの中に潜む緊張感が漂っている。この地に足を踏み入れる者は、火竜の視線を感じずにはいられない。火山そのものが生き物のように脈打ち、火竜と一体となってこの地を支配しているように見える。
「火竜はこんな所にいるのか」
とても生物が生息していけるとは思えない環境にきている。しかしそこで火竜は生息している。餌らしい餌は見当たらない、何を食べているんだろうか。
火竜は火を噴くイメージだけどどうやって火を吹いているのか、魔法で出すなら口から出さなくてもいいと思う。
火竜は洞窟奥深くに巣をつくるらしいのでまずは洞窟を探す。火山地帯だけあってそれらしい穴は多い。火竜の巣となりうる環境というのは勿論ある。
例えば周りが高温であることを好むので近くに溶岩が流れていたりすると可能性は高い。また、巣の入口に爪痕や焦げた跡であったり鱗が落ちていることもよくある、らしい。
らしいと言うのはにゃんまるがそう言っていたからである。この世界は全知全能ギーギル先生はいないがにゃんまる先生がいる。アドバイスを元にそれらしい洞窟がないか探していく。
それにしても暑い。めちゃくちゃ暑い。汗がじんわりとでてくる。にゃんまるがカバンからふたつ瓶を取り出した。
「主、これを。これはヒエルポーションといって体温を下げる作用のあるポーションです」
そんな便利なものがあるのかと関心しつつ、一気に体に流し込む。すると不思議と暑さが和らいでいく。大体半日くらいもつらしい。味はチョコミントの様な味がした。
注意深く周囲を見回す。こんな時こそあのスキルを使うべきだろうと、猫耳響覇を使おうするとにゃんまるにとめられた。猫耳響覇は高音の周波で探し出す為その音にドラゴンが反応してしまうそうだ。まさかの弱点だ。なので仕方なく目視で探している。
ウロウロとしているとそれらしき洞窟を見つけた。
にゃんまるに目配せをするとお互いに頷く。火竜が居るかもしれないのでなるべく音を立てずに潜入する。奥にたどり着くと、かなり広い空間が現れた。
洞窟の天井は高く大きな穴が空いている、壁一面には無数の爪痕が刻まれていた。それらは、火竜が巣穴を作り上げる際に岩を引き裂いた名残だろう。その痕跡の一つ一つが、ドラゴンの圧倒的な力を物語っている。
中心には、巨大な溶岩の湖が広がっている。赤い光は洞窟全体を照らし出し、絶えず泡立つ溶岩の音が神秘的なリズムを刻んでいる。湖の縁には大小さまざまな骨が転がっていた。獣のものもあれば、人間のものと思われるものもあった。それらはこの地が命を吸い取る場所であることを否応なく示している。
溶岩湖のそばには、火竜の寝床と思われる場所があった。溶けた溶岩が冷えて固まった巨大な岩の上には、無数の鱗が散らばっている。その鱗は暗い洞窟の中で赤黒く光り、まるで火星が散りばめられたように見える。岩の周囲には獲物の残骸が積み上げられ、火竜がここを支配していることを如実に示していた。
そして、洞窟の奥には、いくつかの卵が見えた。それらは炎のように赤く輝き、まるで内側で命が蠢いているかのように熱を発している。その周囲には炎が漂い、生半可な生き物が近づくことすら許さないような神聖さを放っていた。
「ここが火竜の巣......」
どうやら火竜は出ているようで姿は見えない。今のうちに周辺に散らばる骨を見てみる。 大型動物の骨が多いように感じる。ここから10kmくらい先に森があるのでそこで狩りをしてここに持ってきているのかもしれない。それと鉱石もいくつか落ちている。食べているのか何に使っているのか今は分からない。生物調査は結構楽しい。将来なるのもありかもしれない。
卵はおおよそ1mくらいだろうか、橙色の光沢をもっていて、大人が手をいっぱいに広げてぎりぎり抱えられるくらいの大きさ。しかし表面温度はかなり熱い、これを抱えて移動するのは無理な気がする。
調査を続けていると、遠くから咆哮が聞こえた。どうやらここのぬしがかえってくるみたいだ。
「主、火竜が戻ってきます。一旦引きましょう」
まだまだ興味があるものは多いが戦闘はなるべく避けたいのでにゃんまるの指示に従った方がよさそうだ。急いで元きた道へ引き返すと入れ替えに上の穴から巨大な火竜が現れた。
鱗は燃え上がる溶岩のように赤く光り、縁には黒い影が蠢いていた。翼を一振りするたびに炎の粉が散り、空中にまるで星屑のような赤い輝きを残す。それは美しくも恐ろしい、絶対的な力の象徴だった。
火竜はゆっくりと降下しながら、地面に向かって旋回を始めた。その動きには、獲物を狩る猛禽のような鋭さと、空を支配する者の威厳があった。翼が切り裂く風が熱を帯び、大地に熱波を巻き起こす。そのたびに草は焦げ付き、遠くの木々は炎を上げて倒れていく。
ついに火竜が地上に降り立つ瞬間、彼の巨大な爪が地面を掴み、大地が軋む音が響いた。大地はまるでその重さを拒むように震え、周囲には無数の亀裂が走った。火竜の尾が地面を叩くたびに、火花が散り、焦げた匂いが立ち込める。
火竜が広げた翼は、まるで天地を分かつ大地の裂け目そのものだった。広げた瞬間、暗い壁に炎の光が反射し、まるで太陽が二つ現れたように周囲が赤く染まった。その赤い瞳がぎらりと輝く。
そして、火竜は喉を低く鳴らした。最初は低い唸り声だったが、それは次第に地鳴りのような響きを伴い、最終的には咆哮となって空を裂いた。その声は大気を震わせ、まるで世界そのものがその支配を認めざるを得ないかのような絶対的な存在感を放っていた。
火竜の全身が熱を纏い、周囲の空気が歪む。燃え盛る炎が尾を覆い、翼から滴り落ちる炎の粒が地面を焼き尽くす。彼の降臨は、ただの自然現象ではない。それは破壊の神そのものが降り立った瞬間だったのように見えた。
その存在感に呼吸をするのも忘れる。生ける災厄、そして燃え盛る伝説そのものの火竜だった。
かっこいい!!あれが、本物の火竜!かっこいい!!竜を倒すとドラゴンキラーという称号が与えられるらしい。ドラゴンキラーは憧れの象徴であり絶対的な実力の証明になる。あれを倒すほどの強さを持つものがこの世に何人いるのだろうか。
初めてみる火竜に興奮していると、落ち着けと言わんばかりににゃんまるに肩を叩かられるのだった。しかしその表情はとても優しかった。
ドラゴン回まだ続きます。




