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にゃんまるの密かな特技

夜の街、猫鳴の髭を弾きながらまったり過ごしている。

静寂な空には雲一つなく、満天の星が輝いていた。街灯の暖かな明かりが照らしぽつんと置かれた木製のベンチで腰を下ろしていた。手には「猫鳴の髭」と呼ばれる、不思議な音色を奏でる楽器がある。

細長い猫の髭指先で髭をそっと弾くと、音が空気を揺らし始める。


最初の一音は、まるで夜空に小石を投げたような静かな響きだった。次第に、流れるような旋律が生まれ、夜の静寂に溶け込むように音が広がる。その音色は風のように軽やかで、同時にどこか切なく、胸の奥に深く届く響きがあった。


目を閉じ、指の動きに集中する。髭に触れるたびに感じる微かな振動と、それに続いて生まれる音の流れ。その音はまるで語りかけるように、猫鳴の髭に込められた魔力が周囲の空気を揺らしているのを感じさせた。


「ふう……いい音が鳴らせるようになってきた」


小さくつぶやく声が夜の静けさに吸い込まれる。周囲には誰もいないと思っていたが、風に揺れる草の影から、小さな野良猫が一匹顔を出した。その猫は興味深そうに見つめ、そっと近づいてくる。そして、足元に座り込むと、まるで音色に聞き入るかのように、演奏を静かに見守っていた。


音楽はやがて高まり、空気中に漂う魔力の流れが次第に鮮明に感じられるようになった。星空の下、夜風がそよぐ中、音色と魔力の光がまるで心と世界をつなぐ架け橋のように響き渡っていた。


演奏が続く中、音色が変わり始めた。指先が猫鳴の髭を弾くたびに、音はより深みを増し、夜の静寂に重なるように響き渡る。その響きはただの旋律ではなかった。それは、空気中の魔力に共鳴し、夜の公園全体に染み渡るような感覚だった。


周囲に微かな光が浮かび上がる。音の波紋が広がるたびに、光が星屑のように揺れ動き、地面からほんの少し浮かび上がるように舞い上がる。その光は柔らかく暖かく、触れれば溶けてしまいそうな儚さを持っていた。


ふと、足元にいた野良猫がその光を追いかけるように前足を伸ばした。それに反応するように、光が猫の周囲を踊り始める。演奏を続けながら、ほんの少し笑みを浮かべた。


「やっぱり、気持ちが音に乗るんだな。」


その呟きとともに、指の動きが一層滑らかになる。猫鳴の髭が弾かれるたびに、まるで星空が答えるかのように音が澄み渡り、光が輝きを増していく。そして、その光が小さな円を描き始めた。それは、周囲に柔らかな結界を作るような形になり、野良猫もその中に包み込まれた。


「これが……魔力の制御か」


手を止めずに感じ取った。その結界は外界の風を静め、音だけが響く特別な空間を作り出していた。


野良猫は結界の中でゆっくりと横たわり、安心したように目を閉じた。指の動きを徐々に緩め、旋律を静かに収束させる。最後の音が鳴り終わると同時に、光は徐々に薄れ、再び夜の闇が公園を包み込む。


猫鳴の髭をそっと膝に置き、深く息をついた。体中に流れる魔力が、これまでとは違うほど鮮明に感じられる。それはまるで、自分が自然の一部と繋がったかのような感覚だった。


「……少しだけ、わかってきた気がする」


夜空を見上げながらそう呟くと、微かな風が頬を撫でた。野良猫は眠りに落ちたまま、静かな夜の一部となり、隣で小さな安らぎを共有していた。


《猫ノ結界を獲得しました。外部からの攻撃を防ぎ、安らぎを与えます。》


部屋に戻るとケットシーが現れる。


「主様、魔力の流れがとってもよくなってるにゃ」


猫鳴の髭のおかげだろう。ケットシーには感謝しなければ。


「ありがとう、猫鳴の髭をくれたおかげでかなりコントロールできるようになったよ」


「主様の弾く曲はとっても優しくて素敵なのにゃ。実はにゃんまるしゃんも上手なんですよ」


なんと、にゃんまるも弾けるのか。それは聴いてみたい。というわけで、探してみよう。

夜の静寂が広がる中、にゃんまるは部屋の中央で瞑想していた。柔らかな月明かりがカーテンの隙間から差し込み、その銀色の光が彼の毛並みを優しく照らしている。四本の足をしっかりと床につけ、尾を体に巻き込むように落ち着かせて、まるで一体の彫刻のように微動だにしない。その姿は、ただの猫とは思えないほど神秘的で、どこか荘厳な雰囲気さえ漂わせていた。


瞳を閉じた彼の顔には静かな集中が宿り、耳だけが周囲の音を捉えるかのようにわずかに動く。微かに揺れるろうそくの灯りが、影を作りながら彼の背後の壁にそのシルエットを描き出していた。


空気の流れすらも止まったかのようなこの空間で、にゃんまるの周りには見えない気が漂っているかのようだった。その気配は柔らかくも力強く、まるで周囲の空間を浄化しているかのようだ。


「瞑想」とは聞こえがシンプルだが、彼の行為はそれ以上の何かを感じさせる。目には見えない魔力の流れを整え、思考を深めるその行為には、深遠な意味が込められているのだろう。ときおり、彼の周囲にほんのりとした光の粒が現れては消えるのは、その証だろうか。


ドアの影からそっとその様子を覗くと、にゃんまるの存在がただの相棒ではなく、はるかに高次な存在に感じられる瞬間だった。


正直声をかけづらい。邪魔しちゃいけない雰囲気だ、諦めてまた今度にしよう。そう思いそっとドアから背を向けると背後から声がした。


「主、どうしました。何か用があったのでは」


振り返ると目は閉じたまま話しかけている。このまま帰るのも何なので素直に聞いてみよう。


「にゃんまるが猫鳴の髭の演奏が上手だって聴いたから聴いてみたくて」


にゃんまるは考える素振りをすると引き出しから猫鳴の髭を取りだした。


「これは自分の髭で作った猫鳴の髭です。まだリオンと修行していた時に作りました」


そういうと、静かに演奏を始める。

にゃんまるは静かな部屋の中で、猫鳴の髭を手に取った。その姿勢はまるで楽器に命を吹き込むように、凛として美しい。彼の手足が素早く、かつ優雅に動き、猫鳴の髭の弦に触れると、次第にその小さな楽器から音色が流れ出す。


最初に弾かれるのは、柔らかな低音から始まるメロディ。指先が弦に触れると、響きはまるで風に揺れる葉音のように繊細で、空気の中をゆっくりと広がっていく。その音が響くたび、にゃんまるの姿は音楽そのものと化し、まるで音が彼の体を通り抜けているかのような調和を見せる。


爪の先が弦に触れた瞬間、音色が鮮やかに跳ね上がり、次第に旋律は速さを増していく。高音が空気を切り裂くように、まるで星が煌めくような美しい音が部屋の中に舞い散る。その音には力強さと軽やかさが同時に備わっており、聴く者の心を捕えて離さない。


にゃんまるの目は半開きで、集中した表情を浮かべている。まるで音の波を完全に支配しているかのように、その演奏は自在で、驚くほど複雑な技術を見せる。軽やかな指使いで弦を弾き、リズムを変化させるごとに、まるで小さな精霊たちがその音に導かれて踊っているかのような感覚に陥る。


曲の中盤に差し掛かると、にゃんまるは微妙に表情を変え、指の動きを緩やかにする。まるで深い森の中にいるような、静かで神秘的なメロディが流れ出す。その音色は、聴く者の心を落ち着かせ、深い思索へと導いていくかのようだった。


そして最後に、にゃんまるは一瞬だけ目を閉じ、全身を使って一気に最終楽章へと突入する。手足の動きが一段と速く、猫鳴の髭はまるで羽のように軽やかに奏でられる。音色がどんどんと高まり、最高潮に達したところで、最後の一音が宙に消えるように静かに収束する。


演奏が終わると、部屋は再び静寂に包まれる。にゃんまるは目を開け、深い呼吸を一つして、穏やかな表情を浮かべた。彼の体からは、まるでその音楽が空気そのものとなって、余韻として残り続けているかのようだった。


その演奏には、ただの技術以上の何かが込められている。にゃんまるの心の中にある静かな強さや、深い感受性がそのまま音として現れ、部屋の中の空気を一変させていた。


めっちゃ上手い!!

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