お約束のパターン
楽器を弾いている人を見て、あんだけ弾けたら楽しいだろうなと思ったことないだろうか。今、思われる側にたてるかもしれない。
ケットシーに猫鳴りの髭をもらいひたすら夢中で弾いてたら、ある程度弾けるようになりました。前世で聴いてた曲も今ではある程度弾ける。慣れてきて魔力の糸も形をつくれるようになりました。
めちゃくちゃ楽しい!!
調子に乗って弾きまくって、魔力枯渇で倒れる。回復したらまた弾いてを繰り返してたら1日中弾けるようになりました。今では最早趣味と言ってもいい。
やりすぎてにゃんまるから戦闘訓練もしなさいと、怒られました。解せぬ。ということで体力のある午前中は戦闘訓練、午後は魔法訓練と充実した一日を送っている。今は地下の訓練所で戦闘訓練が始まるところだ。ケットシーは窓際で日向ぼっこをしている。
「主、今日は僕の動きをトレースして動いてください」
今回はにゃんまるが様々な武器の扱い方を教えてくれるらしい。にゃんまるが縦に振ればこちらも縦に振る。にゃんまるが横に振ればこちらも横に振る。寸分の狂いなくトレースする練習だ。
上級スキルの武器術がある為そんなに苦労しない。......はずなのにめちゃくちゃ難しい。知識があるのとそれを扱えるのとは違うということだろう。少しずつではあるが同じように動けているようにみえて、キレが違う。足さばきや剣筋、身体の使い方までまだまだ学ぶことが多い。
トレース練習の後は、にゃんまると模擬戦。当然ボコボコにされている。どの武器を使っても勝てない。相変わらずチート猫だと思ったけれど、リセラ、ヴァルターとも試しに戦ったらボコボコにされた。ただ自分が弱いだけかもしれない。
ヴァルターは基本的に武器を持たない戦い方、持っても何故かお盆やナイフ、近距離戦闘術に秀でているのでとても勉強になる。ちなみにヴァルターとにゃんまるならにゃんまるのが強いらしい。そこはちゃんとチート猫だった。
「主様、にゃんまる様、お昼の準備が出来ました」
リセラの声で戦闘訓練は終了すると、急いでシャワーを浴びお昼ご飯を食べる。めっちゃくちゃ美味しい。今日はサンドイッチだった。サンドイッチを食べていると、にゃんまるが話し出す。
「主、午後からは街へ行きましょう。この世界の雰囲気や物価などを知るのも大事です」
たしかにここ最近ずっと訓練ばかりだった。気分転換も兼ねて街にいくことになった。初めての街、楽しみだーー。
と、ワクワクしてできたのに、今はなぜかガラの悪い男たちに囲まれている。
どうしてこうなった。事の発端は数分前。にゃんまるに行くところがあるから、少しぶらついていて下さいといわれたので街を散策していた。そして色んな店を見ていたのだが突然女の子が走ってきて背後に隠れた。
「助けてください!」
といわれるとその後を追ってきたであろう見るからに悪いやつ。
「見つけましたぜお嬢、さあ帰りましょう!」
人攫いかと思ったけどなんか違和感。
「私は帰りません!」
うーん、お嬢様と付き人って感じだろうか。でも見た目が完全に悪者なんだよな。とりあえずこういう時は女の子の味方しろってじいちゃんが言ってた。
「まあまあ落ち着いて」
となだめようとすると、男たちが睨んでくる。
「なんだてめえ!もしかして人攫いか?うちのお嬢を返しやがれ」
おおっと?なにか勘違いされている。まわりは遠巻きに見ている。助けてくれよ、と思いながらも対峙していると男が拳を振り上げて飛びかかってきた。
拳が届く前に素早く一歩踏み込み、男の手首を掴む。勢いを利用して男のバランスを崩し、次の瞬間には地面に叩きつけていた。路地裏に鈍い音が響く。
「なんだと!」
他の男が驚きながら飛びかかってくるが、体はしなやかに動く。一人の蹴りを軽くかわし、その足を掴むと反対方向に押し返して転ばせる。続けて、背後から飛びかかってきた別の男の腕をつかみ、簡単に肩越しに投げ飛ばす。
「なんなんだこいつは!」
最後に残ったチンピラは後ずさりし始める。
「もう十分だろう?」
その声には一切の感情がなかったが、それだけで男の足は動かなくなった。そして次の瞬間、手刀が軽く男の肩に触れると、その衝撃で男は力を失い、膝をついて崩れ落ちた。
あれ、強くなってる。日々の成果がこんな所で現れるとはと、ちょっと感動していると遠くから今度は鎧の擦れる複数の音と女性の声が聞こえる。
「そこまでだ、女の子を攫う不届き者!相手は武器を携帯している。直ちに制圧せよ!」
勘違いその二の登場である。女騎士と警備隊だろうか。くっころ!って言いそうな鎧をまとった女騎士だ。いやそれどころじゃない。
「ま、待ってくれ!誤解だ!」
「問答無用!かかれ!」
ドジっ子女騎士かよ。話を聞いてくれない女騎士と警備隊は迫ってくる。
ため息をつきながら周囲を見渡した。彼らが誤解しているのは明らかだったが、話し合いで済む様子ではない。
「勘弁してくれ......」
警備隊員がまず一人、警棒のようなものを振りかざして突進してきた。しかしその動きはあまりに単純すぎた。軽く体をひねり、その攻撃を紙一重でかわす。続けて伸ばした手で棍棒を握り、力を抜いた動作で隊員の手から奪い取る。
「次は誰だ?」
もう一人が槍を突き出してきた。鋭い突きではあったが、即座に柄を押さえ、その力を利用して槍の持ち手をバランスを崩させる。槍の先端は地面に突き刺さり、隊員はそのまま転倒した。
「おい、しっかりしろ!」
女騎士が叫びながら長剣を振り下ろしてきた。
その一撃には訓練を積んだ確かな技量が感じられたが、一瞬で間合いを詰めると、振り下ろされた剣を手の甲で受け流し、その勢いで女騎士の懐に入り込む。
「少し落ち着け」
軽く彼女の手首を叩き、剣を手放させた。
「何なんだ……この者は……!」
女騎士は息を荒げながらも驚愕の表情を浮かべた。
隊員たちはその光景を見て動きを止め、場の空気が一気に緩んだ。剣を拾い、柄を彼女に向けて返す。
「これで分かっただろう。俺はただの通りすがりだ」
女騎士は悔しそうに口を結びながらも、剣を受け取った。
「見事です主」
ふいににゃんまるの声が聞こえる。
こいつ......一部始終みていたな。早くとめてくれよ。
女騎士はにゃんまるに気づくと、背筋を伸ばす。
「これはにゃんまる殿!女の子を拐う不届き者がいます、ご助力お願いします!」
「エルシア殿、その方は身元が分かっておりますので大丈夫ですよ、そしてそのお嬢さんも」
にゃんまるが言うには別れた後、依頼を受けていたらしい。
そしてその内容はとあるお嬢様の捜索と保護。なんでもとある大貴族のお嬢様がアルシアンに旅行に来たのだが、自由奔放な為見失ってしまったらしい。大貴族のお嬢様の為、緊急性が高いと判断しにゃんまるに指名依頼がきたそうだ。
にゃんまるに依頼される大貴族。考えれば考えるほどめんどくさそうな話だ。結局巻き込まれてしまったが。知らぬが仏。あまり深くは聞かない方が良さそうだ。
「申し訳ございませんでしたあああああ」
雲ひとつ無い空にくっころ女騎士ことエルシアの謝罪が木霊するのだった。




