竜騎士への道 5 素材集め編
槍を作るための材料を持ち、にゃんまるの助言に従って町外れにある「竜牙工房」へ向かうことにした。この工房の職人、カイラ・スミスは竜素材を扱うことで有名で、特に武器作りにおいて右に出る者はいないと評判だった。
にゃんまるが隣を歩きながら語る。
「カイラ殿は竜素材の加工に関しては一流です。主の槍も、彼女なら満足のいく仕上がりになるでしょう」
「そうか……でも、やっぱりこういうところは緊張するな。」
苦笑いを浮かべる。
「ご安心を。必要な材料は揃っていますし、あなたの熱意が伝われば問題ありません」
道を進むと、竜の彫刻が刻まれた大きな木製の看板が目に入った。その上には、力強い文字で「竜牙工房」と書かれている。看板の下には竜の牙や鱗を模した飾りが取り付けられており、独特の雰囲気が漂っていた。
「ここか」
深呼吸をして扉を押す。
店内は意外にも広々としており、壁には完成した槍や剣、盾が並んでいた。どれも竜の鱗や骨が巧みに組み込まれており、ただの武器というより芸術品のように見える。
奥から、逞しい腕をした女性が姿を現した。髪はショートで少し跳ねており、革のエプロンには煤と汗の跡が滲んでいる。彼女こそ、この工房の主であるカイラ・スミスだ。
「お客さんかい? 何を求めてここに来た?」
彼女は低めの声で尋ねたが、その口調には親しみが感じられた。
鞄から黒曜竜の角を取り出し、差し出した。
「槍を作ってほしい。これを使って、竜に乗る時でも扱いやすいものを」
カイラは角を見つめ、ニヤリと笑った。
「ほぉ、黒曜竜の角とはね……こいつは珍しい。しかも素材として最高だ。ただし、値も張るし手間もかかるが、それに見合った槍を作ってやるよ」
にゃんまるが一歩前に進み、カイラに丁寧に頭を下げた。
「カイラ殿、この角は主の相棒の角なのです。特別な槍を作っていただけると幸いです」
「相棒ねえ……ますます興味が湧いてきたよ。よし、あんたの覚悟を聞かせてもらおうか。その槍に何を求めてるんだ?」
一瞬考え込むが、しっかりと目を見て答えた。
「軽さと強さ、それから竜との連携が取りやすい武器がいい」
カイラは満足げに頷き、手のひらで角を撫でながら言った。
「分かった。まずは素材を見極めるところから始める。できるだけ早く取り掛かるから、ちょっと待ってな、久しぶりに腕がなるよ」
カイラは黒曜竜の角を手に取り、その表面を指先で慎重に触れながら材質の感触を確かめていた。彼女の動きはまるで竜素材と対話をしているかのようで、にゃんまるとその様子を息を飲んで見守る。
「やっぱり、いい角だな。このツヤと硬度……純度も高いし加工のしがいがある」
カイラは満足げに頷いた。「この角を元に、竜の力を引き出せる槍を作れると思う。ただし、いくつか必要な工程があるんだ。素材の加工には少し時間がかかるし、あんた自身も手伝ってもらうことになるけど、問題ないかい?」
「もちろんだ。できることがあれば、何でもやる」
力強く答えた。
「いい返事だね。そうだな……まずは槍のバランスを取るための追加素材が必要になる。この角だけでも十分強いけど、振り回しやすくするには補強材が欲しい。竜の骨や鱗、それに竜鉄なんかを使えば完璧な仕上がりになる」
にゃんまるが考え込むように言葉を添える。
「補強材についてはこちらで調達することもできますが、主がご自身で探されたほうが、竜との絆を深めるきっかけになるかと」
「それはいい案だ」
カイラが頷きながら続ける。
「特に竜鉄ってのはちょっと特殊な素材でな。山岳地帯に生息する特定の鉱石竜から採れるんだよ。もし本格的に挑むなら、あんたの竜が頼りになるだろう」
アークを思い浮かべながら返事をした。
「分かった。その素材を集めに行ってみる。場所を教えてくれますか?」
「もちろんだ。ただし、鉱石竜は気性が荒いし、なかなか簡単には手に入らない。慎重にな」
カイラは棚から地図を取り出し、手渡した。
「ここの山脈に行けば見つかるはずだよ」
地図を手に取り、にゃんまると顔を見合わせる。
「ありがとう、カイラ。準備が整ったらすぐに向かうよ」
カイラは軽く肩をすくめて微笑んだ。
「気をつけてな。お前の槍を完璧なものにするには、まずその竜鉄が欠かせない。それと……もし素材を持って帰ってきたら、今度は工房での作業を手伝ってもらうよ。自分で使う武器なんだから、自分の手も加えたほうが愛着が湧くだろ?」
「分かった」
力強く頷き、工房を後にした。工房を出た後、地図を広げながらにゃんまると相談を始めた。
「この鉱石竜がいる山脈って、結構険しい場所だな。アークで行くとしても、慎重に行動しないとまずそうだ」
険しい山々が描かれたエリアを指差す。にゃんまるが地図を覗き込みながら答える。
「鉱石竜は地中深くを掘り進みながら生活する竜ですから、周囲に洞窟や岩場が多い可能性が高いです。それに、待ち伏せを仕掛けるのが得意なので、無策で挑むのは危険です」
軽くうなずきながら地図を折りたたんだ。
「確かに。それなら、慎重に準備を進めるべきだな。まずは山脈周辺の環境を調べて、安全なルートを探そう。それと鉱石竜の弱点や特徴もできるだけ情報を集めたい」
にゃんまるは提案に同意しつつ、静かに言葉を続けた。
「鉱石竜と戦うのであれば、やはり一人よりもサポートがいたほうがいいでしょう。黒騎士殿とヴォルガリオスに協力をお願いしてはいかがですか? 黒騎士殿なら、竜に関する知識も豊富ですし、何より頼りになりますよ」
少し考え込んだ後、頷いた。
「確かに、黒騎士とヴォルガリオスなら信頼できる。彼らに手伝ってもらえれば、鉱石竜相手でも安心だ」
にゃんまるは微笑んでうなずいた。
「では、黒騎士をお呼びしましょう。 彼ならすぐに来てくれるでしょう」
深呼吸し、影に向かって静かに呼びかけた。
「黒騎士、ヴォルガリオス、頼みがある。出てきてくれ」
呼び声に応えるように、周囲の影がわずかに揺らぎ、そこから黒騎士とヴォルガリオスが姿を現した。黒騎士は片足を跪き、静かに問いかける。
「黒騎士御身の前に、 我が力が必要とあらば、何なりとお申し付けください」
一歩前に出て、地図を広げながら状況を説明した。
「実はアークの角を使って槍を作りたいんだ。そのために、この山脈で鉱石竜を探し出して戦う必要がある。お前たちの助けが必要なんだ」
黒騎士は立ち上がり地図をじっと見つめ、少し考え込んだ後、静かに頷いた。
「鉱石竜は厄介な相手ですが、ヴォルガリオスと共に全力でお力添えいたします。山脈の険しい地形も、ヴォルガリオスがいれば恐れるに足りません」
ヴォルガリオスは静かに見つめ、穏やかな息遣いでその同意を示したようだった。
「ありがとう、黒騎士、ヴォルガリオス。これで心強い仲間が揃った」
感謝の念を込めて二人を見た。
こうして、黒騎士とヴォルガリオスという頼もしいサポートを得て、鉱石竜との戦いへと一歩近づいていった。




