竜騎士への道 3 武器編
訓練所の地面から離れ、竜の背中で風を感じながら、空中で槍を使う感覚を試すつもりだった。アークが翼を広げ、軽やかに地面を蹴って空高く舞い上がると、その揺れに合わせて身を安定させる。
「うわっ、すごい揺れるな……。」
少し不安そうに呟いたが、すぐに冷静さを取り戻し、槍をしっかりと握り直した。
「大丈夫だ」
エルシアの声が響く。彼女も竜に乗りそばで指示を送ってくれている。アークは軽やかに空中を旋回し、槍を構えたまま、エルシアのアドバイスに従って動き始めた。
「まず、空中では、体のバランスをしっかりと保たなきゃだめだ。竜が飛ぶとき、急に動きが大きくなるから、それに合わせて動けるように」
エルシアは空中でのバランスの取り方を教える。
アークの動きに合わせて、軽く体を揺らしながらバランスを取る。槍を前に突き出し、まずは正面にいる仮想の敵に向かって突き刺す動きを試みる。竜の飛行に合わせた突きが決まると、槍の先端が風を切る音を立て、少し嬉しそうに顔をほころばせた。
「うむ、上手くできてる」
エルシアが褒める。
「でも、これからは空中でのスピードとタイミングが大事よ。もし敵が高速で動いていたら、その攻撃を避けるために、槍の使い方をもっと工夫しないと」
エルシアはすぐに続けた。
「槍は突くだけでなく、横に振ってもいい。空中で大きく振れば、敵の攻撃をかわすこともできるから、今度はその動きに挑戦だ」
槍を少しひねりながら、空中で一度大きく振ってみた。その振りが風を巻き起こし、竜の飛行が一層加速する。空中での動きは地上とは違い、全体のバランスとタイミングが重要だと実感し、槍を使う力加減を少しずつ調整していく。
「うまくいった?」
少し不安げに尋ねると、エルシアは満足げに頷いた。
「うむ、良い感じだ。まだ少し慣れが必要だが、竜に乗って槍を使う感覚が身についてきてる!」
エルシアは嬉しそうに笑う。
「これを繰り返して練習すれば、空中でも問題なく戦えるようになるぞ」
アークの背中で槍を握り直し、空中での使い方をさらに掴んでいく。竜の飛行に合わせて槍を振るたびに、風が顔に当たり、空を自由に舞うような感覚が心地よく広がった。
上手く扱えているのは武器術のスキルのおかげだろう。スキル補正なしでこの動きは正直できる気がしない。リオンに心の中でお礼を言う。
槍の練習を終えると、次に長剣を取り出し、再びアークの背中で準備を整えた。長剣は槍と違って、間合いが近い攻撃に適しているため、今度は敵との接近戦を意識して動く必要があった。
「長剣は槍と違って、もっと細かい動きが求められる」
エルシアが空中から指示を送る。
「空中では腕をしっかりと使って、振り下ろすときの力加減が重要よ。あまり大きく振りすぎてもバランスを崩しやすいから、コンパクトな動きが求められるぞ」
アークの背中で姿勢を正し、長剣を構えた。大きく振り回すのではなく、小さな動きで相手を切り裂くように意識を集中する。
「まずは正面から試してみろ」
エルシアの指示に従い、長剣を前に突き出してみた。力強く、かつ精密に振り下ろす動作を試みる。剣先が空気を切り裂く音が響き、その一撃は空中で美しい弧を描いた。
「うむ、良い感じだ」
エルシアが少し嬉しそうに言った。
「でも、空中ではもっとスムーズに動けるように、体の回転を使ってみてくれ」
次に、身体をひねりながら、長剣を横に振る動きを加えた。自分の体重を乗せて回転させることで、剣に力を込めやすくなる。その一撃が強く、空中での反動を感じながらも、剣をしっかりと制御できた。
「それで、もっと剣の力を感じてきた」
試行錯誤しながら、次第に長剣の使い方を掴んでいく。
「そうだ、その調子だ!」
エルシアはさらにアドバイスを送る。
「空中での打撃は、地上のように大きな力をかけられない分、スピードと精密さが大切になる。相手が攻撃してきた時に、その攻撃を避けるための素早い切り返しも覚えておくといい」
エルシアの言葉を胸に、さらに長剣を振りながら空中での動きを試してみる。アークが飛行しながらも安定しているため、少しずつ空中でのバランスを取れるようになり、長剣の一振りがだんだんと力強く、正確になっていった。
「今度は反応を速くするために、振りかぶる前に動きを予測してろ」
エルシアの言葉を受け、長剣を構え直して、しっかりと空間を見つめた。その瞬間、空中での次の動きを予測し、直感的に長剣を振り下ろした。剣先が空気を切り裂き、まるで相手の攻撃を迎え撃つように一撃が決まった。
「いい感じだ!」
エルシアは大きく褒めた。
「これで空中でもしっかりと戦えるようになるぞ。次はもう少し早いペースで練習してみようか」
長剣を握りしめたまま、次の動きへと進む準備を整えた。空中での戦闘を、さらに磨きをかけていく決意を胸に、再び剣を構えた。
しばらくの間、空中での長剣の動きに集中していたが、心の中で決めかねていた。確かに長剣の使い方も次第に身についてきたが、槍を使った時の快適さと安定感が、どうしても忘れられなかった。
「槍の方が自分に合っているかもしれない」
空中での動きを試みながら、長剣を腰に剣を腰に差し、槍を再び手に取った。アークの背中にしっかりと身を預け、槍を構えてみる。
「槍は距離を取れるし、空中でもバランスが取りやすい」
軽く槍を振り、空中での安定感を確かめた。長剣と違って、槍は大きな力を込める必要がなく、むしろスムーズに振り回せる感覚があった。
「空中でもしっかりと威力を発揮できる、何より使いやすい」
槍の先端を振り回しながら、その感覚に満足していた。槍の細長い形状が、空中での素早い反応にも適している。
「槍に決めるのが一番かもしれない」
その瞬間、心の中で決断を下した。これまでの試行錯誤を経て、槍の使い方が最も自分に合っていると確信した。
「これで決まりだ」
槍をしっかりと握りしめ、空中での感覚をさらに高めるように、槍を巧みに操る。エルシアが空から見守りながら、にっこりと微笑んだ。
「よかった。君に合った武器が見つかって」
エルシアの声に、満足げに頷いた。
そして、槍を自信を持って手にし、これからの戦いに向けて準備を整えた。槍を握りしめ、しっかりとその感覚を確かめた後、地上に降りる。
「エルシアさん、本当にありがとうございました」
深く頭を下げて、感謝の気持ちを伝える。エルシアはにっこりと笑いながら、軽く手を振った。
「どういたしまして。君がいい武器を見つけられてなによりだ」
「おかげさまで、すごく使いやすい武器を選べました」
改めて感謝の言葉を述べた。
「特に騎乗した状態での使い方を教えてくれて、本当に助かりました」
その言葉に、エルシアはにやりと笑う。
「ああ、あれは基本的なことさ。君がすぐに覚えられたから、私も教え甲斐があったよ」
深く頷きながら、改めてお礼を言うつもりだった。しかし、突然エルシアが少し照れくさそうに目を逸らし、少しだけためらってから口を開いた。
「実は…お願いがあるんだ」
その言葉に驚き、エルシアを見つめた。
「お願い、ですか?」
エルシアは少し恥ずかしそうに顔を赤らめながら、言葉を続けた。
「アークの鱗を1枚だけ、もらえないか?君が騎乗してるアークの鱗…あれはすごく貴重だし、少しだけでも持っていたら、私もずっと大事にするんだ」
そのお願いに少し驚き、そして考え込んだ。アークの鱗は確かに貴重なもので、簡単には手に入らないものだ。しかし、エルシアがそれだけ頼みたくなるほど、大切に思ってくれていることが伝わってきた。
「ええっと、アークの鱗を一枚…」
少し考えた後、ゆっくりと答えた。
「もちろん、エルシアさんに差し上げます。大切にしてくれるなら、問題ありませんよ」
とはいえ、直接アークから引っこ抜く訳にはいかないので、寝床に落ちているもので我慢してもらおう。アークも持っていけと言っているような気がする。エルシアはぱっと顔を明るくして、笑顔を見せた。
「本当に?ありがとう!じゃあ、後でたのんだ!」
微笑みながら頷いた。
「もちろんです。今度、アークから鱗を一枚もらってきます」
エルシアは嬉しそうに跳ねるように笑う。とてもいい笑顔である。眩しい。おめめがキラッキラしてる。
「楽しみにしてるぞ!」
あれ?エルシアが可愛いぞ?




