銀河大戦
スマホゲームに夢中な中学生が怪しげな宇宙バイトに巻き込まれる話です。
宇宙からは無数のゴミが地球に降り注いでいる。そのほとんどは小さく地球に生きる者たちにはなんらの影響はない。
ただ、たまにとんでもなく大きかったり害のあるものが地球に降り注ぐこともある。
僕は坂井名結城、スマホゲームに夢中な中学2年生の男子だ。
今も自分の部屋にこもりゲームをしている。
いま夢中になっているのは『銀河大戦』最近リリースされたゲームだ。
リリース直後からコツコツとやり続けている。
宇宙艦隊を率いて星々を征服していき銀河の星を全て支配するゲームだ。
惑星一つからスタートして1週間、支配している惑星の数は10を超えた。
僕の勢力【魔界の堕天使】は順調に勢力を伸ばしている。
しかし気がかりなのは艦隊と艦隊司令官がイマイチ充実していないところだ。
無課金なので致し方ない部分もあるけど手持ちの艦隊カードも司令官カードも基本CランクカードのみRカードどころかAランクのカードすらない。
SRの司令官や艦隊に攻め込まれたら危険だ、一気に持っていかれるかもしれない。
そんな不安を抱えつつも僕は巧妙な戦略と戦術で支配エリアの拡大をしていた。
おっそうだ今日の無料ガチャを引かなくては、さあ来い今日こそRランクのカード、スマホに念を込めながらクリック、そして出たのはDランク司令官オルグ、cランク司令官レジル、cランク戦艦アーガイマ、他Cランク以下のゴミばかり、おいおい割と攻め落とした惑星の主達ですらもうちょっとは良いカード持ってたぞ。
なんで僕だけでもないんだよ。絶対何か操作されている。そんな気がする。
運営にクレームつけるべきなんだろうか?それぐらいちょっとイラッとする程に良いカードが出やしない。
しかしそこは僕の巧妙な戦術でカバーしている。
今日は付近で勢力を伸ばしているやつを潰すことにしている。
【うさぎまるまる】 僕の近隣で勢力を伸ばしてきている生意気な勢力だ。
ここは先制攻撃で叩いておくべきと判断して当面の戦略方針をうさぎまる殲滅と定めた。
しかもあの辺一体は鉱物資源が豊富な星が多く戦略的価値が大きい
艦隊を再編成して行く。
攻撃力の高い艦隊を中心に編成し艦隊戦力3,000で編成した。
部隊の総司令官としてリアンナ、お姉様キャラでカードのランクはCだけど統率だけは高い。
副司令官にレム、金髪ショートの気が強そうなキャラだ。
雷鳴突撃のスキルが意外と使える。
このスキルで突破口を開き残りの部隊で制圧する。
これが今の僕のメインの戦術だ。
この戦術で数々の敵を倒してきている。
今回もこの戦術で惑星一つ落とす予定だ。
さあ出陣だ!!
【みんな出陣よ!!】
リアンナの掛け声と共に艦隊が一斉に出陣する。
【敵部隊と遭遇、これより戦闘に入る】
リアンナのボイスと同時に戦闘が始まる。
敵の戦力はおよそ4,000
数では負けるが問題はない。
やることは決まっている。
敵を引き付けてからの・・・【雷鳴突撃発動!!】
レムの気合の入ったボイスとともに艦隊の陣形が変化し雷のような突撃が開始される。
敵艦隊の中心部を貫き2つに割れていく。
よし!!
このまま一気に攻め落とす。
そう思った次の瞬間、レム艦隊の突撃の勢いが急激に遅くなり止まった。
敵の防御スキルが発動した。
突進は止められ、レム艦隊はそのまま左右からの攻撃を受ける。
攻撃に特化した編成だから攻撃されたときは異常にもろい。
あっという間にレム艦隊は壊滅状態に追い込まれた。
救援をださなきゃ。
リアンナの艦隊を前進、正面からの打ち合いになった。
しかし戦力差を埋めることは難しく、リアンナの艦隊も数を減らしていく。
撤退
僕は撤退を決断した。
艦隊を再編成し撤退命令を出す。
しかし無情にも撤退すら出来なかった。
艦隊は全滅、リアンナとレムは戦死した。
僕は貴重なカードを失った。
スマホ片手にうなだれていた僕だったが悲劇はこれだけでは終わらなかった。
うさぎまるの惑星から艦隊が出陣してきた。
緊急警報がスマホの画面に表示される。
敵の数は?
敵艦隊数およそ50,000!!!
50,000!?
おいおい僕の全艦隊を集結させてもその数は20,000程度で圧倒的に数で負けている。
しかもその艦隊を率いているのはSSRカードの鬼神ライゼルト
全然勝てる気がしないがあきらめたらそこで終了だ。
全勢力を惑星ハリスへ集結、総司令官にアリストナ、バランスの取れた能力のカードだ。
全キャラカードをかき集めても20名、育てていないキャラをのぞけばアリストを含めて5名
5名にそれぞれ4,000隻ずつ配置、編成をする。
雷鳴突撃の戦術はもう使えない。
読まれているようだしそもそもレムは死んだ。
こうなったらスキルにたよるのでなく、基本的な戦術を重視していくしかない。
陣形を整え迎え撃つ。
あっという間だった。
みるも無惨に僕の艦隊はやられていき艦隊司令官たちも戦死していく。
その後はひたすら僕の惑星が占領されて行くだけだった。
もう抵抗するための戦力などない。
こうして僕の国は滅んだ。
頭にきてスマホをベッドに放り投げた。
あーあもうやってらんない。
その日はそのままふて寝した。
翌朝、だるいだるいけど学校がある。
義務教育中だし学校へは行く。
たいして面白いことはないし今日は特に行きたくはない。
なぜなら・・・。
「なぁ銀河大戦どれぐらい進んだ?俺は昨日惑星2つ落として勢力15まで広げたぜ」
絶対にこの話題になるからだ。
朝学校に着くなりゲームの話をしてきたぽっちゃりとした体型のこいつは田尻川翔同じクラスの僕の数少ない友達の1人だ。
だけど今日は話したくない。
だって共通の話題はゲームなんだが今日はゲームの話はしたくない。
しかも今の感じだと田尻川は順調にゲームを進めているようだ。
「あぁ昨日はちょっとだけかな」
とりあえず曖昧な返事を返しておく。
「しかもさぁ聞いてくれよ。遂に遂にSRキャラのデコリスをゲットしたんだよ。昨日めちゃくちゃ興奮してさぁ。」
「マジ?良いなぁ」
いかん素直な気持ちが声に出てしまった。
「だろー坂井名はまだでねーの?」
「うんまぁまだランクSだけかな?」
これも嘘だ。
実際にはCランク以下しかでたことないけどちょっと見栄を張ってしまった。
「えっ2人ともすごいな僕なんかCランクだけだよ」
突然話に割って入ってきたのはクラスメートの中滝、同じゲームをプレイする仲間だ。
「だろランクSRだぜ、この感じで言ったら近々SSRとか出ちゃうかもな」
「うらやましいな僕なんかCランクカードしかないし他の惑星に攻め込んだこともないよ」
うらやましい・・・本当に心の底からうらやましい僕だって全然出たことないのに・・・。
しばし田尻川の自慢話に話を合わせつつ適当な返事をしていく。
「あれ?みんな銀河大戦してるの?」
急に女子の声。
普段僕たちには縁遠い女子の声。
ちょっとびっくりしながら振り向くとそこにはショートカットでスラッとしたシルエットのとても美人な平川さんが立っていた。
「えっあぁまぁ」
いきなり話しかけられて緊張でうまく返事が返せない。
「あれ平川もやるの?」
えっなんで田尻川そんなフランクに返せるの?
「僕もやってるけど2人と比べるとまだまだかな」
中滝、お前も?
「実は私もおとといぐらいから始めたんだけど全然うまくいかなくて、よかったらコツとか教えてくれない?」
「おう、いいぜ、戦術のコツがあってさぁ、キャラの特徴をうまく使ってこんな感じでデコリスとかリアンナぐらいのキャラを中心にしてさ」
なんか盛り上がっているが結果が出ていない僕はいまいち会話に入れない。
あの、憧れの、あの平川さんが話しかけてくれて、話をするチャンスなんだけど、結局なんか相づちをうつだけで大した会話なく終わった。
せっかくのお話をするチャンスだったけど何もできなかった。
これはやっぱり銀河大戦で大敗を喫しているからだ。
このままでは終われない。
家に帰ったら銀河大戦を再開だ。
心に誓う。
その日は銀河大戦の事ばかり考えていたので授業はちょっとも頭に入ってこなかった。
急いで帰宅してゲームを起動させる。
1からやり直しだ。
ゲームのコツはつかんでいる。
スタートの惑星はバランス型の惑星、近接戦闘が得意な艦隊を多めに配備
キャラガチャで突撃系のスキルを持ったキャラを引き当てるのみ。
リスタート特典で獲得したガチャチケット10連ガチャで良いカードを引き当てる。
アルフレッド、マリン、シルビア、アカネ
遠距離後方支援系のキャラが多い。
しかも全員Cランク以下、だいぶ厳しい展開だ。
そして最後の一枚
レム
レムが帰ってきた。
雷鳴のレム
これで僕の得意の戦術はそのまま使える。
そう雷鳴突撃からの総攻撃
艦隊編成をする。
艦隊司令官シルビア
リアンナほどの統率は無いけどバランスの取れた司令官だ。
そしてレム
この編成でまず近隣惑星の中から鉄鉱石系の資源が多そうな惑星を攻略する。
資源を増やすのは安定した艦隊生産には絶対に必要だ。
惑星スゴン、これが近くて鉄鉱石の資源も豊富な感じだ。
攻撃する惑星を定めて出撃する。
敵の抵抗はあったものの、僕の敵ではない。
雷鳴突撃一択であっという間に撃破した。
その日は調子が良かった。
次から次へと惑星を陥落し5つ程惑星を支配下においた。
結果としてゲームをしたまま朝を迎えてしまったのだが満足感はある。
徹夜明けでフラフラしながらも学校へは行く。
なぜなら昨日の快進撃をみんなに伝えたいからだ。
「よう!どう?調子は?」
田尻川だ。
「まあまあだ。」
気持ち的な事で言えば絶好調だったのだがここは控えめに返事をする。
「なになに順調そうだな。SSRでも出たか?」
「いや・・さすがにそれは・・・」
出るわけないだろそんな簡単に
「じゃあどんな感じ?」
「とりあえず勢力は5倍ぐらいに拡大したよ」
惑星1から5に増えたのだから嘘ではない。
「えっマジで?すごい勢いじゃん、大丈夫なのかそんなに広げて守り切れるのかよ」
「余裕だよ」
そりゃまだ惑星5つだからね。
「調子乗ってんなぁ俺もちょっと気合い入れてやらないとだめかな」
気合は入れなくていいよまだ全然追いつかないからさ。
「おはよう!坂井名君そんなに調子良いの
?」
平川さんだ。
超ドキドキする。
「ぉはよぅ、まぁあれかな昨日は結構やったから」
「だってこいつ勢力5倍だってよ」
「えっほんとに?すごいな、私なんて全然勢力増えなかったのに」
「まっまあ」
あぁなんか緊張しすぎてうまく喋れない。
それに比べて田尻川よ。
お前ごときが何故平川さんとそんなに堂々と話せるんだ。
お前はこっち側だろ?
「ねぇ坂井名君戦闘のコツとか教えてくれない?」
頭の中で愚痴を言っていたら平川さんに急に話しかけられた。
しかも若干距離が近い。
っていうか顔近い。
より緊張する。
鼻息とかちょっと荒くなってないだろうか
「コツっていうか、その僕の...あれとしては...その雷鳴突撃を戦術の中心にそこからの展開でいろいろと」
なんかやっぱりうまく話せない。
「ふ~んそうなんだぁ、やっぱり」
「ん?」
やっぱり?
「ううんなんでもない、すごいね今度試してみるよ」
何か変なこと言ってないよな。
大丈夫だよな。
なんか話せば話すほどに不安だ。
でも今日は平川さんと話ができた。
幸せな気分だったのだが田尻川の一言でちょっと不快になる
「あぁそういえば俺またSRでたぜ、今回は軍神ニオルだったぜ」
「えぇすごいニオルって確か相手のスキルを一回無効に出来るスキルじゃなかった?すごいよね」
また?僕は出てないのに?しかも平川さんがすごい食いついてる。
くそっ今夜もっていうか週末だし土日もやり込んでやる。
心に誓い夜を迎える。
自分の部屋にこもりスマホでゲームを起動する。
さてどこの惑星から攻めていこうか?
近隣の惑星を探索し情報収集をする。
惑星サバナ、ここだな。
経済効果が高いし人口も多い。
兵士数の増加には必要な惑星だ。
さて出撃する艦隊の編成をしようとしたその時
【緊急警報!】
画面に映し出されるメッセージ
16時の方向敵影多数その数およそ20,000
15分後にこちらの攻撃範囲に入ります。
何?
この体制が整っていないこんな時に
でも20,000程度なら全艦隊集結させれば数では互角、守備側のほうが星の防御設備が使えるし有利だから問題ない。
勢力拡大の出鼻をくじかれた感じはあるけど仕方がない。
守備に適した艦隊編成に切り替えてと
総司令官レム、リザイアの防御スキル【鉄壁】で艦隊の防御を強化、アナゼルのスキル【浮遊機雷】で侵攻の速度を遅らせてとあわよくば気づかず突っ込んでくれて兵力を削れればラッキーだ。
万全の態勢だな。
さてどんな奴がに攻めてきたのか?
返り討ちにして更に攻め込んでやる、
敵艦隊の情報を確認
攻撃的な艦隊編成
工作艦とかは無さそうなので機雷排除には時間がかかりそうだ。
ユーザー名は
【うさぎまる】
出たよこいつ、でもちょうどいい前回の雪辱をここで晴らしてやる。
うさぎまるの艦隊は何の策もなく浮遊機雷に突っ込んできた。
ハマった。
対策が見事にハマった。
よしよしこれで数を減らせる。
勝てる。
勝ち筋が見えてきた。
このまま普通にやれば間違いなく勝てる。
余裕だ。
数に任せて策がない奴に負けるわけがない。
返り討ちにしてやる。
艦隊を惑星から出撃させる。
総攻撃の指示を出し攻撃がはじまる。
その時
【緊急警報】
敵の援軍を確認その数およそ100,000隻。
えっ?思わずスマホを落とした。
拾い上げて2度見するも状況は変わらない。
じゅうまん
くそっ雷鳴突撃で敵の艦隊に風穴を開けて突破口を開くか?
いやダメだまたレムや他の司令官を失うことになる。
ここは一旦退却
退却しながら浮遊機雷の設置、高速移動スキル、そしてなけなしのアイテム手持ちの惑星バリアを本星にはる。
これで24時間は耐えられるけどその先の展開に希望が見えない。
20,000あった戦艦も半数がやられ司令官も3名戦死した。
5つあった惑星も1つしかなくなった。
どうにもならない戦力差これは課金の力か無課金の限界なんだろうか?
しかし中学生の僕にできる課金は限られている。
限られているけど
翌朝僕はなけなしのお小遣い1,000円を握りしめコンビニへ走る。
カードを買いチャージする。
初めての課金
さあこいつで一気に戦力を強化するぞ
強化パックを購入
これでSSR、疾風のシルフィGET
スキル強化レベル上げアイテムもシルフィに注ぎ込んで最強の司令官を育成。
シルフィの【弾幕劫火】遠距離攻撃で敵を近づけさせないで戦力を削りながら頃合いを見てレムの【雷鳴突撃】でいつものパターンに持ち込む。
惑星の防衛システムもあるし返り討ちに出来るはずだ。
今日1日体制を整え防御を固めることに専念した。
その日の夜運命の時間24時間のバリア効果が消滅する。
やつは来るのか?【うさぎまる】は
【緊急警報!!】
【敵の艦隊その数およそ100,000】
やっぱり来た。
こちらの艦隊数は課金のおかげで50,000
数では圧倒的に負けているが今回は司令官の陣容が違う。
艦隊を惑星付近に配備
ギリギリまで引きつけて
【弾幕劫火】
シルフィのスキル発動と同時に無数の砲撃で画面が埋め尽くされる。
敵の反応は?
【弾幕劫火】
えっ同じスキル
向こうも同じスキル
正面からの撃ち合いになった。
しかしこのままの消耗戦になると数で負けてる僕は圧倒的に不利
どうする?
まだ早いけどレムを投入か?
焼け石に水感がすごいな。
どうする?
画面を見ながら悩んでいると頭の中に声が響く。
【ここは撤退です】
誰の声だ?
【シルフィですここは撤退しかありませんこのまま戦っても無駄死にです】
なになに?シルフィの声?
【聞こえていますか?撤退です】
【俺もその意見に賛成だ2回も無駄死にはしたくない】
レム?
レムの声?
【早く決めろ時間がない】
レムの口が悪い。
でも2人の意見は最もだがもう退却するべき惑星がない。
【ここから4時の方向小さな惑星があります。惑星ダゴン、ここを攻めて支配下に置いてバリアを張ってください】
いやだったらこの惑星でバリア
【駄目です戦闘中の惑星はバリアを張れません】
あぁそうか
戦闘から撤退
目標ダゴン
【雷鳴突撃で敵本陣を攻撃できた隙で退却をする】
それだとレムが犠牲にならないのか?
【大丈夫だ死ぬ気はない】
じゃあその作戦で
司令官たちに指示を出し作戦を実行していく。
【雷鳴突撃】
【弾幕劫火】
その他スキルそう発動そして撤退そのままダゴン制圧へ
すぐさまバリアを張り、僕はかろうじて全滅を回避した。
ただそれは意味があったのかどうかあと一日で状況が変わるとは思えない。
近隣のプレイヤーに同盟と援軍を求めるか?
この圧倒的に不利な状況で同盟を組むようなやつはいない。
手詰まりだ。
起死回生には課金、課金しかない。
いやでも現実の軍資金は前回の課金で底をつきた。
金さえあれば
そう思いながら打開策のないまま翌朝を迎えた。
今日は月曜日、学校がある。
気持ちは学校どころではないが学校へは行かないわけには行かない。
「なあ聞いてくれよ遂にゲットしたぜ。SSR疾風のシルフィだよ。すげーよこいつ」
田尻川のゲーム自慢
「あぁシルフィなら僕も...」
「マジかよー俺だけかと思ったのにお前もかよ」
GETはしているので嘘ではない。
はしゃげるような状況ではないが
「2人ともほんとにー?すごいわね。私なんか全然よ」
「あ、うん」
平井さんに話しかけられると返事ははいまいちうわのそら、だって今夜には失いそうだしね。
あーあバイトでも出来ればな中学生には無理な話だけどね。
学校から帰宅、いまいちやる気は出ないがスマホを見る。
何かメールが来ている。
知らん宛先からだ。
まあ普通なら開かない。
なんのウィルスがあるかもしれないから
だけどなんか今日は何となく開いてしまった。
バイト急募
年齢不問
性別不問
下のリンクをクリックするだけで登録OK
簡単な清掃をするだけで高額収入のバイトです。
給与:成功報酬
金額は清掃の難易度によります。
怪しすぎる。
絶対フィッシング的なやつ、もしくは流行りの闇バイト
どっちみちろくなことがない。
そう普段なら見もしないしリンクを開くなんてことはしない。
そんなのは当たり前なんだけどなんか今日は吸い込まれるようにリンクをクリックした。
登録が完了しました。
メールに来たメッセージ
なんか急に怖くなってメールを閉じた。
その日も無難に学校はおわり下校する
下校途中に急に携帯が鳴る。
【Emergency】
画面に赤く大きく映し出される。
出てきた英語の意味はわからん。
だけどなんか画面からは危険な感じは出ている。
そして警報のような音が鳴り止まない。
危険ぽいことは僕にもわかる。
とりあえず音を止めようと画面をクリックしてみる。
【現場に急行】
の文字の後マップが表示される。
なになに怖い。
変なのクリックしなきゃ良かった。
完全にウィルス的なのにやられてる。
もう電源を落とすしかない。
電源ボタンを長押しするも全然電源が落ちない。
そこまでウィルス?
どーしよっ音は止まらないし電源切れないし
こうなったら仕方がない。
ぎゅっと鞄の奥にスマホを入れ家に向かって走り出した。
ヤバいヤバいヤバいどうしよう?
「ちょっと待ちなさい、そっちじゃないわよ」
呼び止められて周りを見渡すも誰もいない。
「スマホよスマホを見なさい。」
おそるおそるスマホを取り出す。
画面には金髪の女性が映し出されている。
金髪のきれいな姉さん・・・何となくレムに似ている。
そのせいか若干親近感がわく。
「あのさ今画面に映し出されている承諾するってボタン押してくれる?」
たしかに画面には【承諾する】って表示されている。
「あのこう言うときって普通拒否するってボタンとかキャンセルってボタンがあると思うんですけど」
「ないわ」
「ん?」
「あなたには拒否権はないわひたすら承諾してOKするしか選択肢はないわ」
「むちゃくちゃ言ってますが」
そっとスマホをしまおうとする。
「あーっあーっあーっ無駄な抵抗はやめなさい。このままずっと喋り続けるわよー!」
なんて迷惑な。
渋々【承諾する】をクリックする。
「よしっ承諾したわね」
突然スマホの画面が光って画面の中にいた女性が目の前にいた。
びっくりしすぎて尻餅をつき唖然としていると
「まったくちゃんとしてよね、バイト契約したんだから呼び出しがあったらちゃんと目的地に移動してちゃんと働いてくれないと」
ちゃんとちゃんとうるさいな。
「あのいろいろわからないんですが?」
「あっ時間がない、説明はあとでちゃんとするからまずはマップの目的地に移動してくれる?」
「いやでも」
「いいから移動してちゃんと説明するから」
「いや」
「移動移動移動移動して!!時間がないの!!」
そんなに切れられても、とは思っただけで逆らうのも面倒なのでスマホのマップを開き目的地に移動することにした
ここから歩いて15分程度の場所だ。
大きめの川沿いの土手
何度この場所は何にもない場所だと思うんだが
渋々とぼとぼ歩き始める。
「歩くな!!ちゃんと走れ!!走れ!!走れ!!時間がない!!」
「時間って何?何の時間?」
「いいから走ってちょうだい!!時間がないの!!」
更に渋々走り始める。
走るのは苦手だ。
そもそも運動とかしたくない方なのに
川の土手付近についた。
すごく...息が...切れる。
「さあ準備を始めるわよ」
「はぁはぁはぁ...何の...?」
「もちろん清掃に決まってるじゃない」
「清掃...?」
「当たり前じゃない。あなた清掃のバイトに登録したわよね」
「清掃...そういえば...メール...」
メールの文章が頭の中に浮かぶ
簡単な清掃をするだけで高額収入のバイトです。
そういえばそんな事書いてあつたけど
「あの土手のゴミ拾いとかですか?」
「何言ってるの?あなたが掃除しなきゃいけないものはもうすぐここに来るわよ」
ここに...来る?
「あの...ゴミ...が来る?」
「まあ、そうねゴミよ。宇宙からのゴミがやってくるわ」