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第3話

 

 月曜朝。志那は目の下にくまを浮かべながら耳元で鳴り続けるアラームを止める。



 睡眠時間はたったの2時間。この〝2時間〟という数字は志那が一週間以内にS1到達という目標を達成する中でギリギリ許せる一日当たりの睡眠時間だった。



 正直な所、寝不足も寝不足。しかし志那は元々短時間の睡眠でもそこそこ何とかなるといった気があるので気合いで乗り切ろうとする。



 今日は平日である為、大学に行かなければならない。今日志那が履修している授業は2限、4限5限の計3科目であった。



 一分一秒が惜しいこの現状、思い切って一週間大学をサボろうかとも思ったが流石に辞めておいた。流石に進級の危機へと自ら飛び込むべきではない。



 歩いて最寄り駅へと到着すると、ホームにて電車を待つ。乗る予定の電車が来るまで後4分。駅のホームで志那は右手にスマホを持ち、動画配信サイトにアップロードされた動画を見る。



 もちろん見る動画はエルオン関連。ランクマッチが出来ない現状、せめて知識だけは盛っていきたい。



 今見ているのは『リオン型手筋完全解説』というタイトルの動画。アップロードしているのは志那の憧れリオン選手では無く、エルオン系の動画をメインに取り扱うストリーマーである。


 

 既にリオン選手の使っていた重騎士ハルバードという構成は強力な構成であると周知されており、既に他のプロ選手達の中でも研究されているらしい。お陰で30分越えのボリュームで詳細にリオン型、と名付けられたこの構成について解説を付けるような動画もちらほらと現れるようになっている。



 誰でも動画を見て予習さえすれば高い再現度でのリオン型が扱える反面、当然大会などでは対策が用意されてしまう。



 この一長一短がどう響いてくるかは誰にも予想は出来ない。



 * * *



 大学に着くと船木が居た。高校の頃からの同級生であり、学科も一緒。大学に入学してからはまだ少ししか経っていないが、ちょこちょこ連絡事項の共有等で助け合っていた。



 「おぉー、志那。今日の2限、別棟だってさ。」



 ニコニコと教科書を持ちながら俺を見つけた船木は近寄ってくる。



 「そうなんだ。じゃあ何でここに居るんだ?」


 「お前は気付かずにこっちの棟に来ると思ったからだよ。案の定だな。」



 船木はそう言うと階段を軽快な動作で下っていく。船木はいわゆる不思議な奴、というか行動や思考の先回りをよくしてくる奴だった。何か言えば「そう言うと思って……。」と手を打ってくる事が多い。



 高校に入った最初の頃こそびっくりしたが、今では割と慣れているし、助かっている。



 「今日後ろの方に座ろうぜ。」


 「サボんの?良いねぇ。」



 後ろの方に座りたい、と言っただけで俺がサボろうとしているかのように捉えられるのは心外だが、結局動画の続きを見たいだけなのであながち間違っていないのも悔しい。



 「そんなとこ。」



 鞄を背負いながら別棟へ向かう。

 






 教授がマイクを持ち、ホワイトボードに映し出したスライドの解説をする。



 残念ながら俺は授業内容の半分くらい聞けていないのだが。本当の所は授業を聞きつつエルオンの動画を見るぐらいの事をしたいのだが、俺程度の脳みそでは確実にどちらかが疎かになってしまう。聖徳太子になりたいなぁ、と思った。



 心の内で教授に「いつか復習します。」と約束し、動画に集中する。



 今見ているのは『夏大会環境予想』という概要の動画。今夏の大会で多くの人間が使ってくるであろう現時点知られている〝強い型〟を数分の短い解説と共にテンポ良く紹介していくという物である。



 今夏の大会で多く見られるであろう構成は《戦士グレートソード》《重騎士ハルバード》《盗賊マンゴーシュ》《ハンタートマホーク》等。



 他にもいくつも存在するが、上記の構成が現状では頭一つ抜けたパワーを持つ構成であると知られている。



 しかし夏大会前、多くは出てこないとは思うが秘匿されている構成も存在する事が予想される。大会当日まで構成が伏せられ、初見殺しの要素を含めて刺してくる勢力も居る筈。



 この初見殺し構成に関してはその場で対応していくしか無いんだろうな、と志那は思う。



 正直な事を言うと目指すは大会優勝ではなく、リオン選手相手の勝利。もちろん大会優勝自体も目指してはいるが、本命ではない。だからリオン選手に到達する前に敗退は避けたい。リオン選手はどうせ勝ち上がってくる為、戦う事が出来るかどうかは志那自身にかかっている。



 とりあえず事前評価の高いこの4構成は練習をした上での対策が必須かな、と志那は思う。



 まずはS1帯まで到達し、夏大会の参加権を得なければならないのだが。





 そんな事を志那が考えていると、横から船木がスマホをこちらへと滑らしてくる。手元へと届いたスマホは画面が点いたままメモアプリが開かれており、そこには「4番と5番。」と書かれていた。



 何を言っているんだ?と思ったのも束の間、突如教授に指名され、ホワイトボードに映し出された問題の解答を迫られる。



 「4番と5番だと思います。」授業内容をほぼ聞いていなかった為、死を覚悟したが足掻いてみようと船木に見せられたスマホに書いてあった事をそのまま言う。



 俺の回答を聞くと教授は満足げに「そういう事だ。ここの流れからして……。」と言い、授業を続行する。



 びっくりした。この教授は普段全くと言って良い程生徒を指名しないから平気だろうと油断していた。それにしても船木はどうして教授が指名する事、それも俺である事を分かっていたのだろうか。



 ひとまず、「ありがとう。助かったよ。」と舟木に言う。船木はにこりとし、教科書へと目を落としていった。やっぱり不思議な奴だと思う。



 ひとまず平日の日中はひたすらにエルオンの動画を見続けていく生活をこの一週間くらいは続ける事になるだろう。




 * * *



 金曜夕方、ついにA4帯へ到達。



 空き時間があればエルオンのランクマッチを盛り続け、空いていない時間は無理矢理エルオンの動画を見る。睡眠時間は一日あたり二時間といった生活を続けた事により、ようやくエルオンプレイヤーの一般人の中では上級者といったランク帯まで到達する事が出来た。



 このランク帯まで辿り着くと敵の実力も分かりやすく強くなってくる。まず間違いなく相手は頭を使って戦ってくるし、その上で己の構成の強みを意識した様々なコンボを繋げてくる。



 環境構成と呼ばれる強い構成であると認識されている組み合わせも如実に増えてきた。A帯到達以降、既に何度か《重騎士ハルバード》構成のミラーマッチも発生している。


 こうなってくると適当に戦っていても勝てる、という状況ではなくなってくる。一戦一戦にかけるエネルギーが大きくなってくる分、疲労度も大幅に上がってきた。



 「よし!よし!!あと少し……。この土日全力でやれば間に合う!!」



 1度休憩を、とヘッドセットを外し布団の上で呟きながら枕元に置いておいたペットボトルの水を飲む。



 疲労は貯まったが、収穫もあった。A帯到達以降増えてきた環境構成を相手に戦うことによって、己の実力がグングンと伸びているのが実感できるのである。


 しかも相手が使っているのは恐らく夏大会にも出てくるであろう構成。練習しなければ、と思っていた対環境構成相手の戦い方を意図せずランクマッチ中に学ぶ事が出来たのは大きい。



 再びヘッドセットを被る。ゲームの電源を切らずにヘッドセットを外した為、被ればまた直ぐにランクマッチを再開出来る。


 フルダイブ型のヘッドセットを電源を切らずに外すのは危ないのでは?という意見もありそうだが、これはヘッドセット側の機能としてちゃんと実装されている物なので健康に影響は無い。





 戦闘開始ボタンを押す。マッチング。



 * * *



 ×××戦目。マッチングした対戦相手の名前は[もうやめたい]。何を辞めたいのだろうか。ランクマッチ?仕事?



 使っている構成は《戦士グレートソード》構成。ゴリゴリの環境構成である。まぁこちらも《重騎士ハルバード》なので環境構成なのはお互い様なのだが。



 戦闘開始の合図が入った直後、[もうやめたい]はグレートソードの溜めに入る。



 武器、グレートソードは中量級武器。〝溜め〟というギミックが存在する武器であり、背中に背負った鞘に刀身を仕舞っている時間に応じて、最大300%まで次の一撃のダメージ量が上昇するという仕様がある。ちなみに最大値までダメージを溜めていた場合は35%の確率でスタン効果も発動する。



 最大値まで溜めるのに必要な時間は7秒。なのだが、戦士という職業の基礎特性で武器効率アップという物がある。これは武器を扱う上で、装備している武器の性能を元の物より少し上げるという効果である。



 この戦士の武器効率アップにより、グレートソードの最大溜めまでの時間は5秒まで短縮されている。


 

 最短で五秒ごとに300%、35%でスタン効果の発動する攻撃は非常に厄介。



 さらに言えば通常攻撃で300%倍率の為、戦士の持つ攻撃技と重複して打たれてしまえばその攻撃は多彩さを増す。





 という事で、対《戦士グレートソード》の動きとしては五秒以内に何かしらの攻撃をし続けるのが理想。溜め中にダメージを与えれば、それまでの溜めを初期値まで戻す事が出来るからである。


 ただ、動きの遅い重騎士には五秒以内間隔で攻撃を当て続けるのはハードルが高い。


 ならどうするか。先にスタンを相手へ押しつけるのだ。



 現環境のエルオンはスタンゲーであるとよく言われる。相手より先にスタン状態を押しつけ、数秒間の行動不能となった相手へ高火力技をぶつけるというコンボがよく使われているのだ。


 ちなみに《盗賊マンゴーシュ》等のスタンに耐性を持つ〝盗賊〟という職を使うスタン構成をメタった(メタとは対策といった意味を持つ)構成も環境構成として存在する。



 スタンを取る上で現状最も取りやすい構成は《重騎士ハルバード》。



 ハルバードはクリティカル時にスタン効果を相手へと与える重量級武器。



 因みに全ての種類の重量級武器は武器の特性としてクリティカル率+10%を持っている。


 重騎士はクリティカル率+20%を基礎特性に持っている。



 さらに重騎士は攻撃技として穿鋼撃、という一点、正面方向へ通常攻撃の120%の攻撃を与える技が存在する。この技のクリティカル率は50%。


 つまり、重騎士がハルバード装備時に穿鋼撃を相手へと命中させた場合、80%もの確率でスタンを得ることが可能となっている。



 溜めに入った[もうやめたい]を見た志那は直ぐさま穿鋼撃を発動させようとする。


 志那も[もうやめたい]も技の発動自体は任意のタイミングで放つ事が出切る為、間合いを取りつつ、互いに相手へと攻撃を当てるチャンスを伺う硬直状態が一瞬発生する。


 溜め開始から5.75秒。[もうやめたい]が志那の懐目がけて飛び込み、通常攻撃を発動してくる。食らってしまった。


 スタンは発動しない。


 飛び込んできた[もうやめたい]を狙い、志那も穿鋼撃を放つが、回避される。



 再び二人は距離を取り、試合は初期状態へと戻る。いや、志那が一撃食らっている分不利となる。


 

 [もうやめたい]は再び剣を背負った鞘に仕舞い、溜めを始める。



 志那はハルバードを突き出し、通常攻撃を放つが、鞘からグレートソードを抜いた[もうやめたい]によって弾かれる。


 

 しかしこれによって[もうやめたい]の溜めは初期状態へと戻る。



 志那は突き直後に穿鋼撃を用意している。[もうやめたい]は志那の発動技を認識した直後、横方向へ飛び、回避を試みる。



 フェイント。[もうやめたい]の避けを予測していた志那は回避行動を取られるまで発動中の穿鋼撃を放たなかった。


 横飛び直後の[もうやめたい]は志那の穿鋼撃を食らう。80%確率のスタン判定。



 スタン発動。



 [もうやめたい]はふらふらとその場にへたりこみ、数秒間の行動不能が発動した。



 スタンを確認した志那は直ぐさま高火力技を用意する。



 破砕剛重剣。



 スタン解除までの時間は2.75秒から4.40秒、職業や武器固有の耐性が存在しない限りランダムで決定される。



 《戦士グレートソード》にはスタン耐性は積まれていない為、最短でも2.75秒の攻撃準備の猶予が存在する。



 そこで重宝されるのが重騎士の専用技、破砕剛重剣。攻撃範囲は非常に狭いが、600%という倍率を誇る高火力技である。



 破砕剛重剣は入力から発動まで2.70秒の時間を要する。1度入力してしまえばその後の攻撃発生タイミングの選択も不可。攻撃発動までの2.70秒間はほぼ棒立ちの状態となる。



 通常時はその攻撃範囲の狭さと隙の大きさによって非常に扱いにくい技となるが、無耐性構成の相手のスタン時であれば、スタン復帰までに確実に間に合う600%技として非常に強力な技へと変化する。



 



 スタン中の[もうやめたい]へと志那の振り下ろした破砕剛重剣が直撃する。




 衝撃波によって[もうやめたい]は10m程先へ吹き飛ばされる。今の一撃によって[もうやめたい]の体力は残り3割程度へと減少した。



 [もうやめたい]はスタンから復帰。


 

 志那は剛重剣の命中直後から吹き飛ばされる[もうやめたい]の方向へと走り出していた。


 

 走りながらハルバードの通常突き攻撃を用意する。


 突き、突き、薙ぎという通常攻撃の3連コンボを全弾当てることが出切れば《戦士グレートソード》の体力なら削りきれる計算となる。志那は相手に反撃のチャンスを与える事無く試合を終わらせたい。



 飛び込んできた志那を見て、[もうやめたい]は即座に後ろへと飛び退く。



 志那が視界に捉えた[もうやめたい]の背中にはグレートソード。既に溜め攻撃のカウントダウンが始まっていた。



 しかしここで距離を互いに取ってしまえば体力面でのアドバンテージがあるとはいえ、勝負は再びふりだし。グレートソードのスタン効果で一気に逆転される可能性も大いにある。


 

 そう判断し、志那は距離を詰める。



 直後、[もうやめたい]の背中に負われたグレートソードが銀色に光るエフェクトを放つ。フルチャージの合図である。これによって志那は35%の確率で発動するスタンに身を晒される事となった。



 早さを求めた結果、志那は通常攻撃しか用意していない。対して[もうやめたい]は志那に距離を詰められつつも、何かしらの技を用意しようとしている。



 この距離、この猶予で発動する戦士の技は〝鎧砕き〟か?と志那は推測する。



 鎧砕きは120%倍率の攻撃技。クリティカル特性で20%のスタン効果が存在する。


 現在グレートソードの溜めがフル状態となっている為、合計して威力420%、55%確率でのスタン効果という凶悪な技になっている。



 短時間での高倍率火力にスタン効果を押しつけられる性能。間違いなく《戦士グレートソード》構成が環境に立つ事が出来る理由の一つであった。



 


 まずいなぁ。と志那は思う。55%確率でスタン。しかも初撃を食らっている以上、もしもスタンし、そのスタン中に1発でも相手がクリティカルを発動させてしまえば志那の負け、といった体力状況であった。



 この状況を無傷で回避する方法は存在する。ジャストガード、ゲーム用語でよく〝パリィ〟と言われる動きである。




 攻撃到達ぴったりのその瞬間に防御を入力する事によって発生する相手の攻撃を完全に弾く事が出来る技である。


 通常の防御でも攻撃をある程度防ぐ事は可能だが、スタンの確率は減少しない為パリィ以外にはあまり旨味が無い。



 パリィが発生する猶予秒数はエルオン有識者達の中でも議論されているが、今作のエルオンでは大体0.25秒以内なのではないか、と語られている。


 プロ帯の人間であれば練習場のダミー相手であればほぼ百発百中で狙って何度も発生させられる上位帯の必須級技術であるが、生きた人間との戦いとなれば話は変わってくる。


 攻撃到達タイミングを狙ってずらしたり等、読み合いが発生する対人戦ではプロでも狙ってパリィを行うのは難しくなってくる。まぁそれは攻撃側もプロであるが故、より高度な駆け引きが行われている世界での話なのだが。



 45%のスタンしない確率に賭けてこのまま殴りきるプランにするか、0.25秒のパリィに賭けるか。



 「防ぐ!!」



 志那は途中まで発生させていた通常攻撃をキャンセル、即座に左手に持っていた盾を構え、パリィを狙う。


 

 0.25秒!集中しろ!集中しろ!!



 志那は相手の剣筋を凝視しながら盾を構える。


 己の身へ剣が迫る。剣の到達するスレスレ、その限界まで引きつける。



 「今っ!!」



 志那は盾を突き出し、パリィを狙う。





 が。




 [もうやめたい]も志那がパリィを狙った事に気付いていた。グレートソードが減速する。



 パリィは失敗。通常ガード判定となる。




 剣が届くタイミングをずらされた。





 55%のスタン抽選。スタンが発生する。



 志那は片膝を付き、動けなくなる。

 



 志那は苦い顔をする。



 [もうやめたい]は即座に〝覇王剣〟という技を用意する。覇王剣は400%倍率、扇状に剣を薙ぐ溜め攻撃である。しかし重量級職業を対象とした場合に限り補正がかかり、550%倍率の攻撃を与えられる技へと変化する。


 重騎士は重量級職業。現在[もうやめたい]の覇王剣倍率は550%へと変化していた。


 食らってしまえば既に体力がある程度削れている志那は敗北するだろう。



 防ぐにも志那はスタン中。



 

 しかし、覇王剣を用意した[もうやめたい]を見て志那は跪きながらも勝機を見いだす。



 その勝機とは〝覇王剣〟の攻撃発動に3.05秒の時間を要するという事。



 スタン耐性を持たない《重騎士ハルバード》構成の最短スタン時間は丁度2.75秒。



 2.75秒から4.40秒の間をランダムでスタンする志那にとって、3.05秒までにスタンが解除されれば再び志那はパリィのチャンスが生まれる事となる。



 これは[もうやめたい]のプレイミスと言って過言ではない動きであった。



 しかしランクマッチのA4帯、ある意味では上級者と名乗る人間も出てくるランク帯とはいえ、スタン復帰までの時間や技発動までの時間を正確に把握している人間は少ない。



 殆どの人間は攻撃発動までの時間やスタンの時間などをもっとふんわりとした、感覚的なもので理解している。



 故にミスをする。詰め切れた筈の試合にワンチャンを生んでしまう。



 志那はその綻びを見逃さない。



 2.75秒経過。解除されない。


 2.80秒経過。解除されない。


 2.90秒経過。解除されない。




 3.00秒経過。スタン解除。



 スタンから復帰した志那は盾を構える。先に攻撃して発動中の技をキャンセルさせるのが一番安全であったが、0.05秒の猶予では間に合わない。




 盾を突き出す。パリィ発動。




 [もうやめたい]はその手に持っていたグレートソードを弾かれ、手放してしまう。



 パリィ直後の〝弾き〟はスタン程では無いが、次の攻撃までにタイムラグを生じさせる。



 それは短い時間だが、攻守を交代させるには十分な時間であった。



 ハルバードを薙ぐ。



 技は打たない。この詰め切った間合い、パリィ発動直後の優勢を逃さない。


 

 突き、もう一度突き、下から再び薙ぐ。


 

 クリティカルが発生する。



 クリティカルを含む通常攻撃の三連撃により、残り少なくなっていた[もうやめたい]の体力バーが0となった。



 志那の勝利である。



 ランクポイントの変動画面が志那の視界へと映し出される。



 「一試合が重たい……。」



 志那は汗が流れるような感覚を感じ、首元を拭う。実際の体はちっとも汗ばんではいないのだが。





 金曜深夜、A5帯到達。


 現時点志那


 A5級 LP(ランクポイント)4240P


 夏季全国大会出場登録締め切りである6月23日月曜0時まで残り49時間

 

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