表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と氷柱の弓遣い  作者: 星空くん。
1/1

その出会いは、突然に。

 


 日が沈み切り、宵のうちの駅前。

線路を駆けようと、じわじわ音を鳴らしながら

電車が前進する。


 人が行き交う出入口を過ぎ、

ホテルやビル群がズラっと立ち並ぶ大通り……

車やバス、タクシーなどが颯爽と駆け抜けていく。


 街灯やネオンの光を受け、

身に付けていた指輪がほんのり光った。


 駅から少し歩き、人気の無い路地裏に入る。

ズボンのポケット、微かに震え光が点った。

足を止め、スマホを取り出し通知を確認する。



あや~? サバイバーウォーズ10時からで… …』



(へいへい……)



 ゲームの誘いだ。



 了承を返事をしようとロック画面をスワイプすると、

小さく弾く音が鳴り、



「 … あれ?反応しねぇ 、あぁ……」



 吐いた息が白く目立つ時期だ、

手袋をしていたのを忘れていた。



(めんどーだなぁ)とか思いながら外し、

上着のポケットにしまい今度こそ。


 無事に返信を完了すると、スマホを握った手ごと

ポケットに入れ再び歩きだす。


 ビルとビルの間に挟まれた、少し窮屈さを感じる

この通路は、自宅がある住宅街への近道だ。

ナビで案内されるようなちゃんとした道で行くより、

5分早く着く。信号も無いしね。



「うぃ~ 寒っ……」



 声が漏れてしまう程の気温の低さを感じながら、

目を細めゆっくりと前へ進む。


( …ん?)


 あれはなんだろうか?

端に置かれたダンボールが目に止まった。

朝には無かったものだ。

眉をひそめ近づいていく。

薄暗くてはっきりは見えないが、これは…



「 白い…猫?…だ……」



 しゃがんでスマホの明かりで照らす。

(この猫やけに小さくねぇか?)とも思ったが、

 動物関係は疎い。こーゆー種類も居るのかね?



「なんかあげたいんだけどなぁ……」



 背負っていたショルダーバッグの中身を探りながら猫が

食べれそうなものが無いか確認する。



「ガムなんて食べる訳ねぇしな…持ってる飲食物

 ガムとカフェオレしかねぇ俺……」



 どうしようかと悩んだがどうしようも出来ない。

けど妙にその猫に魅了されているように感じた。


(コンビニかスーパーでなんか買ってくるか)


 そう思い立ち上がろうとした時、



『その指輪……、何処で拾ったの?』



 突然、脳内にその言葉が反響した。


(女の子の声……?)


 強烈に入り込んで来る感じ、聞く事を拒否できない感じ、不思議な感覚だった。



「こ、これはじいちゃんの形見だけど……」



 自分の意思でこの言葉を発した訳では無い。



何かに口を動かされた。



訳の分からない状況から、ハッと我に返る。



 バッグから白猫へずらした視線の先、あれ?



「靴……? 黒い靴下……? ……脚?」



 ダンボールに入った白猫は居なかった。

 というかダンボールすら無くなっていた。

 今、目の前にあるのは人間の足だ。


  ( え……? なんで……? )


 疲れてるのか…幻覚を見てるのかな?と、

自分の目を疑う。


(いやいやどう見ても足だよなこれ……)


 視線の先を順番に上げていく。


 靴、

 黒い靴下、

 細い脚、


 チェック柄のスカート、

 さらに視線をずらしていく


( 制服……?スタイルいいな、

  胸……?リボン着いてるし、 )


 何となくだが、女子高生?と判断した上で、

いよいよ顔を拝見する。



  「あ……」



 目に映ったのは、小顔で、笑顔……

髪は雪のように鮮やかに白く、ボブだ。


 気になったのは彼女の頭上だ。


 カチューシャとは考えにくい自然と生えたような、

猫耳が付いていた。


 彼女は怒ったり敵対してる感じでは無いが、言葉を発する事も無く、こちらをじっと見詰めている。


 自分の感覚がおかしくなければこの子、


(めちゃくちゃ可愛い…)


 俺も自然と体が反応し立ち上がる。

下から見上げてたから詳しく分からなかったけど、

身長は意外と低い。150cmくらい?かな?



「 君… さっきの白猫?」



 先に数秒の沈黙を破ったのはこっちだった。

直感的に思っていた事が、自然と口から溢れた。



「おぉ~! 正解っ!」



 今度は彼女が返事をしてきた。

 (正解なの?それはそれで疑問だぞ……?)

 とりあえず会話はできるっぽいなと質問しようとしたが、



「君、騎士にならないっ!?」



 彼女の方が先に話し出した。

いや突然だな。

てか、彼女なんて言った?今、



「 … … え? 騎士?」



 なかなか理解できなかったので聞き直す。



「 そっ!騎士!」



 と言いながら猫耳の少女は、俺が来た道の方を勢い良く

指差し、つられて視線を指の先へ移す。

正確に言うと指差していたのは駅前のビルの壁にある、

電光掲示板だ。


【光の騎士団、悪夢の討伐に成功】


 流れてくる画面に映っていたのは、

この文字だった。


 そこで初めて騎士の意味を理解した。


  【 光の騎士団 】


 それは、「悪夢」という人間の悪い夢から生まれ、人間を次々と襲う化け物に対抗する為に、

日本政府が公認している悪夢討伐組織だ。


 基本的には試験を受けないと騎士にはなれない。


「私の推薦だったら大丈夫よ、

  の騎士は嫌な顔するだろうけどね、」



 彼女はにっこにこで自信満々に答えた。



(それ苦しむの多分、俺なんだけどなぁ…)



 一応お偉いさんの推薦でなれる事は知ってる。

ということはこの人、結構偉い人?

それはそうと、



「なんで俺を推薦するんですか?」



 これが一番の疑問だった。



 通りすがりのただの高校生である俺を

この人はなんで推薦するのか……



「直感っ!」



 … … … は?



「私、人より5倍勘がいいからね … …

  君、相当活躍するよ」


「それあんたの直感が外れたら、

  俺ただ死にに行くだけやんけ」



「 正解ッ!」



(ビックリするぐらい軽いなおい)

悪魔がやべぇ奴なのは一応知ってるから、

心の中でツッコミを入れる。大丈夫かこの人。



「まぁ、そうならない為に今から君を試すから、」


  「 着いてきてっ!」



 そういいながら走り出して行った。



「え、ちょ、待て待てっ……」



(試すって何やねん~ッ)


 いきなり過ぎてまだ状況把握は完璧では無いが、

自然と彼女を追いかけていた。


 想像出来ないくらい凄い事がおきそうな予感、

全部分かっている、だけど不思議だ。



 この状況が嫌では無かった。



 心が弾むような、これから起きる事を楽しみにしている

自分がいた。


 光があまり届かない路地裏で、身に付けている

 指輪が小さく光り輝いているなど、気付きもしなかった。



 師走の空気を切り裂き駆けていく2人の足音が、

路地裏に鳴り響いた。



 第1話 .路地裏の出会い。 END

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ