夢見るぬいぐるみ
まわたくんのぬいぐるみは、めだまやきのせハンバーグのぬいぐるみ。夜、ぎゅっとしていっしょにねんねすると、おいしい夢を見ます。
テーブルの上には、ボウルいっぱいのサラダ、スープ、ライス。もちろん、しゅやくはめだまやきのせハンバーグです。たべることが大好きなまわたくんは、夢の中でもおなかいっぱいになるのです。
まわたくんのいもうと、はりちゃんのぬいぐるみは、ぺんぎんのぬいぐるみ。夜、おててとはねとをつないでねんねすると、ひえひえの夢を見ます。
なんきょくの海をながめて、ぺんぎんとアイスキャンディをなめます。よう日によって味が変わります。今は水よう日だから、水色のラムネです。小さいはりちゃんは、夢の中では、アイスキャンディを半分じゃなく、一本食べられます。
黒ねこのぬいぐるみは、まわたくんとはりちゃんのお母さんが、枕もとにねんねさせています。お母さんが子どもの時は、ふかふかの白ねこでした。お母さんのそばにいて、けがをしたり、おねつをだしたりするたびに、白い毛が黒っぽくなり、がしがしになっていったのです。黒い毛は、お母さんをしっかり守った証です。
黒ねこのぬいぐるみは、長い夢を見ています。いそがしいお母さんに、ホットミルクをいれて、きゅうけいしてもらいます。お母さんのおひるねの見はり番が、夢での役目です。
まわたくんとはりちゃんのお父さんは、まくらやおふとんを作るおしごとをしています。ときどき、ぬいぐるみのためにミシンをカタカタタンとうごかします。
ぬいぐるみが、お父さんがぬったおふとんでねんねすると、幸せそうに夢を見るのです。わたがしの雲、ゼリーの虹。お友だちとメリーゴーランド。海や空へお出かけ。数えきれないほどの、いろいろな夢。
君と毎日あそんでいるぬいぐるみは、いったいどんな夢を見ているのでしょうか。そうっと、耳をすましてごらんなさい。
……ほら、おだやかなねいきが聞こえてきますよ。
あとがき(めいたもの)
改めまして、八十島そらです。
ハンバーガーと、ホットドッグのぬいぐるみを昔、ある先生からいただいたことがあります。余命を越えて教壇に立ち続けた生物の先生でした。
はっきりした記憶ではないのですが、スーパーに並んでいた食玩で、ひっくり返したら点心に変わるぬいぐるみがあったような。エビがぎょうざに、カニがしゅうまいに、ブタが肉まんに。どうしたことでしょう、ぬいぐるみなのか、食べ物なのか、話題が混乱してしまいました。