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36 先輩は来てくれたけど

続・修羅場です。

 飯尾くんは私の頬を優しく撫でて、それからもう片方の手で前髪をすくい上げた。


 毎度のことながら今日も思う。


(相変わらず、距離が近い……! そしてほっぺに触る意味もわからない……!)


 ちなみに飯尾くんは男子にもボディタッチを含め、危うい距離で接するので、ごくごく一部の男子に人気がある。彼は距離感を測る機能がポンコツだ。


「ほら、とれたぞ」

「ありがとう」


 私がお礼を言うと、彼は変化球で返してきた。


「僕に惚れたか?」


 意味がわからない。


「えっと…………なんで?」

「今日の僕は優しいだろう。そして女は優しい男が好きだ。それに僕のことをうっとりとした目で見つめていた」

「申し訳ないけど、まったくもって気のせいだよ」


 私が即座に否定すると、飯尾くんは皮肉げに唇を持ち上げた。


「お前は雰囲気に流されそうで流されない。意外と手強いな」

「そ、そう?」


 それははっきり言って、飯尾くん限定の警戒心だ。彼の狙いがわからないので、流された先に待つ未来が怖い。


 でも今日は彼の新たな一面を発見できた気がする。

 女の子の涙に弱いことや、不器用だけど必死に慰めてくれようとしたこと。

 私はほんのりと温かい気持ちになって、気がつけば微笑んでいた。


「惚れはしないけど、感謝はしてるよ? 今日も一緒にいてくれて気が紛れたし……」

「そうか」

「本当にありがとう、飯尾くん。理由も聞かずに、慰めてくれて……」

「フッ」


 それから飯尾くんは背中に1本の棒が入っているかのような美しい所作で立ち上がった。塞がれていた私の視界が一気に広くなる。

 そして見つけた、初めて好きになった人。


「先輩!」


 私の心が歓喜に震えた。しかしすぐに、その隣で蛇のようにしっかりと腕を絡めるギャルを見つけてしまい、高揚したばかりの気分が急降下する。

 現実は何も変わっていない。追いかけてもらって、一体何を期待していたのだろう。


「花……ごめん。見るつもりはなかったんだ。てっきり友だちと廻っているんだと思って……」

「?」


 ギャルの存在に気を取られていた私は、咄嗟に反応できなかった。


(見るつもりはなかった? 飯尾くんとのツーショットのこと? でも先輩にも彼女がいるし……)


 そもそも私たちはわたあめを食べていただけなはず。


「じゃあ、邪魔にならないうちに帰るよ」

「は、はい……?」


 私の悪い癖で、わからないままとりあえず返事をしてしまっていた。


「またね! あなたたちも続きを存分に楽しんでね。私も逞と色々楽しませてもらうわ」


 呆然と先輩の後ろ姿を見送る私。ギャルの足取りは弾むように軽い。むしろ浴衣のまま、サンバでも踊り出しそうな勢いだ。


(あれ? ギャルって足を挫いたはずじゃ……)


「おい、大丈夫か?」

「うん……今、何が起きたの? 続きを楽しむって、何の続き?」


 飯尾くんが意地悪そうに笑った。


「僕たちが付き合ってると思ったんじゃないか?」

「2人でいたから?」

「いや、違うな。もっとすごい誤解をした可能性がある」

「つまり、どういうこと?」


 そして飯尾くんがまた距離が縮めた。さっきの様子を再現するつもりのようで、彼の手が私の頬に伸ばされる。


「ほら……。もう少しで、()()できそうじゃないか?」

飯尾くんは次くらいで良い人になります。安心して読んでいただければ(/ω\*)


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