28 先輩の彼女?
波風が盛大に立ちます。ストレス耐性のない方はバックしてください(。>д<)
心配する先輩のお母さんを振り切って、私は半ば強引に家を出た。
雨宿りの前回、暑さと緊張で倒れた今回。
好きな人の家に長居する度胸がない私は、非戦略的早期撤退を選択した。
真夏の太陽に追い立てられるように家路を急ぐ。先輩の家を出て最初の曲がり角に差し掛かった。
この何の変哲のない角の向こうに、驚天動地の展開が待っているなんて思いもせずに。
「ちょっと待ちなさいよ!」
角を曲がってほんの数メートル進んだとき、背後から怒気を孕んだ少女の声が飛んできた。
茨の鞭のような棘のある言葉に絡め取られた私は、半ば強制的に振り返らざるを得なかった。振り返った視線の先。私の目の前には、面識のない女子が道のど真ん中で仁王立ちをしていた。
年齢はおそらく同じか、やや上か。健康的な小麦色の肌。私を睨みつけるつり上がった瞳とはっきりとした眉。そばかすの散った小さな顔と、短めのスカートからのぞく健康的な美脚が活発そうな印象を与える。
一言で言い表すなら、ギャル系の女の子だ。それもとびきり魅力的な野生の猫のような。
「どちらさま……ですか?」
混乱する頭を落ちつかせ、私は何とか口を開いた。
しかし彼女は私の勇気をあっさりと無視し、ゆるくウェーブのかかった茶髪を鬱陶しそうにかきあげた。それからフンと鼻を鳴らす。
鈍感な私でもわかる剥き出しの敵意に怯んで、じりじりと後退る。そんな物騒なものを向けられるその意味が、まったくもってわからなかったから。
でも次の言葉で、敵意の正体を知ることになる。
「あんた。逞に付きまとってるんでしょ?」
「え……」
「ギャル」。それは私とは普段関わりの無い人種だ。苦手意識も働いて、咄嗟に反応できずにいた。
このギャルは誰なのか。どうして先輩を呼び捨てしているのか。そもそもギャルは先輩の「何」なのか。
「何か言ったら? ちょっと可愛いからって、調子に乗るんじゃないわよ!」
「……っ! そういうあなたは逞先輩の何なんですか?」
私は一気に言って、それから唇を噛みしめた。初対面の相手に対する無遠慮な放言。不愉快な感情がふつふつと湧いてくる。
私は困惑と不審の眼差しで、遠慮なくギャルを睨み返した。するとギャルは勝ち誇ったようなせせら笑いを浮かべる。
「私? 私は逞の彼女よ」
「う……そ……」
それは文字通り絶望だった。口が乾いて声が掠れる。或いは声なんて、もともと出せていないのかもしれなかった。
真実は後から必ずわかります。サブタイトルに「?」ついてますからね!




