第5話 (自称)女神とまた会うなんておかしい
「なんでいるんだよ!」
「あ…あのね、これには理由がありまして…」
「結城を送った後、お菓子食べてたら無くなっちゃったんで、暇だったんです。だから、ヘラの仕事を見ていたら…。あ!ヘラって言うのは私の後輩女神です。それで、見ていたらドアが開いちゃって前に倒れこんだんです。そしたらヘラがびっくりして転送魔法ミスっちゃったみたいなんです。それで怒られて、罰として異世界に送られちゃいました。おかしいと思いません?失敗したのはヘラなのに私が怒られるなんて…」
「いや自業自得だろ!」
明らかにアテナが悪いだろ!てか、失敗された人が一番かわいそうだな。南無。
「えー。ひどいです。結城なら私のこと分かると思ってたのに…」
そんな風にビービーうるさいアテナの相手をしているうちに、集合の時間になってしまった。
「じゃ俺、幸……仲間との集合時間だから行くわ」
「え、結城に仲間なんているんですか。めっちゃ意外ですよ。私も仲間に入れてくださいよー」
そんなことを言いながら追いかけて来るアテナから逃げるべく、全力で走った。すれ違う人々が冷たい目で見てるような気がしたが…。それは気にしたら負けというものだ。
ギルドに着くと、もう幸がいた。
「遅いわよ!」
「いや、時間ぴったりだろ」
「普通は5分前にはいるの。で、そのかわいい女の子は?」
なぜか、怒ったような口調で聞いてきた。
「こいつはアテナ。一応、女神だ」
「一応じゃなくてちゃんとした女神ですー」
「いや、そういうのいいわよ」
まったく信じてない様子で幸が言った。まあ信じろっていう方が無理か。
「ほんとだってば!」
「わーすごいねー(棒読み)」
お坊さんのお経でもこんな棒読みじゃないだろってぐらいの棒読みだった。
「ったく、信じてないだろ。まあいいや。アテナはこのパーティーに入りたいらしいんだけど、いいか?」
「いいわよ。ちょうど仲間欲しかったしね。よろしくね、アテナ。さっそくなんだけど、アテナ、冒険者カード見せて」
幸が少し馬鹿にしたように言った。絶対自分より低いと思って見下してやがるな。
「私、まだ登録してないんですよ。今からしてきます」
そう言ってアテナは立ち上がり受付の方へと歩いて行った。
アテナがいなくなるやいなや、幸が
「あいつが私より高いわけないわ」
やっぱりそうか。そんなんだと嫌われるぞ。まあ馴染めそうでよかったんだが。
「そんなこと分かんないだろーが」
「分かりますぅ。私上級職なんで」
そんなことを話していると、アテナが帰ってきた。
「冒険者カード見せて」
幸がそう言って手を出した。
「はい。どうぞ」
アテナはそう言って冒険者カードを差し出した。
幸はそれを見た途端、見下していた余裕の表情が崩れた。
「嘘…。私より高いじゃない」
ほんとかよ。そう思って幸の持ってる冒険者カードを、覗く。
そんなに高いわけ………………………あった。
「高すぎだろっ!」
職業はアークビジョップで、ステータスは全て幸より高かった。
俺らが驚いていると、アテナが嬉しそうに
「まあ、女神ですからね。2人はどうなんですか?」
くっ…痛いところをついてくるぜ。
「「はい」」
2人同時にカードを見せる。
「幸はハイウィザードで私より少しだけ低い。結城は……」
アテナは途中でやめて、何も言わずにカードを返してきた。
やめろよ。余計に傷つくだろ。
「さっそくクエスト行きましょう」
アテナはそう言って掲示板の方へと歩いて行った。
「これがいいですよ」
そう言って見せたのは、俺らがさっき行ったトカゲのクエストだった。
「でもこれさっき俺ら行ったよ。1匹だけ倒したけど失敗したよ」
「期限は受けてからその日いっぱいですよ。だから大丈夫ですよ」
俺らの知らなかった事を悠然とアテナは言った。
絵の具で塗ったような青い空、緑の草原。なびく銀と金の髪の毛。そしてその髪の持ち主の、絵に描いたような美少女2人。そこに異質なオーラを放つ大きな2匹のトカゲ。
さあ、リベンジだ!
俺たちはギルドで祝杯をあげていた。
トカゲは余裕で倒した。アテナが幸に強化魔法をかけ、幸が攻撃魔法を打って倒す。
ぶっちゃけ、俺いらなかった。
サマイという炭酸のちょっと苦いみたいな飲み物を飲む。みんな飲んでいたので試しに飲んでみた。
まずくはないのだがそんなうまくもなかった。
一通り飲み、帰ろうとギルドから出た。
ちょっとはしゃぎすぎたようだ。3人ともくたくただ。
出る時にアテナが何気なく呟いた。独り言のつもりだったのかもしれないが。
「ペット欲しいなぁ」
これが後に大波乱を起こす原因となるのだが、女神のアテナでさえ知る由もなかったのだ。