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転生したのに何も変わらなかったなんておかしい  作者: レーチ
第1章 異世界に来ちゃった
3/8

第3話 こんなに運がいいなんておかしい

 

 ギルドからの帰り道。ご機嫌な幸が


「言った通りに上級職になったでしょぉ。結城とは違うのよ!」


 と自慢してきた。なぜか恵太さんの写真を見せながら。


「あー。自慢するのはいいけど、なんで自分のお父さんの写真を見せびらかしているんだ?」


 申し訳なさそうに俺がそう言うと、幸は写真を見て


「な…え…違う。違うの。これは、あの…」


 そうしどろもどろに否定しながらも、顔がみるみる真っ赤になっていき、慌てて写真をしまった。そして、自分の冒険者カードを出して


「……言った通りに上級職になったでしょ。結城とは違うのよ…」


 少しテンションを下げて同じセリフを言う。


「いや、言い直しても駄目だから」


「むー。今のは忘れろー!」


「やだねーだ」


「もー、バカバカバーカ」


 そう言ってポカポカと殴りかかってくる幸。意外と痛いので


「分かった分かった。ごめんごめん」


「ほら見てよ。私の冒険者カードを」


 幸のステータスは俺を遥かに超えるステータスだった。特に魔力なんて三倍以上だ。てか、めっちゃめちゃ高ぇ。


「すげーな」


「でしょ〜。だから言ったでしょ。こんな凄い、しかもかわいい女の子と同じパーティーなんて、感謝しなさい」


「ありがたやー、ありがたやー。はい、これでいい?」


「ちゃんとやれっ!」


「そういえば、お腹空いたなぁ。なんか食べたいけどお金無いんだよ。幸も持ってないでしょ?」


「え、私持ってるけど…」


 さりげなく話を変えるとすっかり騙される幸。やっぱりアホだな。てか、持ってんのかよ。


「嘘っ。なんで?」


「パパがなんか、とりあえずって言って10万トートくれたの」


「じゅ…10万トート?!」


 普通に大金じゃねえか。


「うん。そうだけど」


「やっぱり金持ちだなぁ」


「ん?なんか言った?」


「いや、なにも」


「そお。お金ないんでしょ。しょうがないわね。この私がおごってあげるわ。感謝することね」


 今回は悔しいが、素直に感謝することにした。


「ありがとうございます」


「お、珍しく素直じゃない。じゃあ早速食べたいんだけど。結城ってなにか食べたい物ある?」


「別に。幸が決めていいよ」


「やった。じゃあ付いてきてね」


 そう言って、幸は鼻歌交じりに歩いて行った。




  「着いたっ!」


 10分程度歩いて着いたそこは、いかにも高級レストランって感じの建物だった。


「こんな高そうなところ行って大丈夫なの?」


「たしかに高いけど…。今日だけだから大丈夫!さあ入ろ入ろ」


 幸に手を引かれて店内に入った。


 入り口のドアを開けると中は別世界だった。


 少し小さめの店内には、白いテーブルクロスをかけたテーブルに椅子が置いてある。客は何人かいて、皆、楽しそうに喋っている。天井には大きなシャンデリアが、下の料理を煌々と照らしながら吊られている。


 そんな俺を幸の一言が現実に引き戻した。


「そんなところで、ぼーっと突っ立ってないで、はやく座るわよ」


 慌てて席に着く。危ねぇ。感激しすぎて危うく天使に雲の上に連れてかれるところだった。


「何食べる?私はこのスパゲティにするわ」


 メニューを見ると全てが高い。


「高っ!じゃあ俺はこのハンバーグにするよ」


 幸が店員さんを呼び、慣れたように注文をした。その感じが余りに手慣れてたのでつい


「この店来たことあるのか?」


「うん。何回か。パパに連れて来てもらったことがあるの」


「へぇー。ところでさ、おまえ家の場所知ってんのか」


「ええ、知ってるわよ。ギルドのすぐ近くよ」


 そうこう話しているうちに注文したものが来た。


「デミグラスソースのハンバーグとズワイガニとほうれん草のパスタです」


「「わー、うまそぉ」」


 そこからは二人共一言も喋らずに黙々と料理を食べていた。


 二人共食べ終わった頃


「じゃあ、帰るか」


「そうね。お会計してくるわ」


 そう言って幸はレジに行ってしまった。ちなみに料理は今まで食べたハンバーグの中で1番うまかった。


 幸には感謝しないとなぁ。冒険者として稼いだら俺も奢ってやろう。いつになるかわからないけど。などと考えてると幸が来た。


「おまたせ。じゃあ行きましょうか」


 俺は幸と一緒に家へと向かった。




「あ、ここよ」


「恵太さん小さいとか言っていたけど、普通にでかい家じゃん」


 中は、テレビやソファ、テーブル、ベッドやキッチンなど最低限の家具は置いてあった。(もちろんベッドは二つ)


 ソファに座って一息ついていると


「私お風呂先入ってもいい?私長風呂だから長くなるかもしんないけど」


「ああ、別にいいけど」


 幸がお風呂に入って一人になると


「俺って運いいよなぁ。いきなりこんな良いアルバイト見つけて、ただで夜ご飯食べれて、こんな立派な家住めて、しかもあんな可愛い子(さち)(見た目は)と同居できるとか。うまくいきすぎて怖い」


 そんなこと考えてると、トイレに行きたくなった。そう思って、ベッドから立ち上がって、気づいた。


「トイレとお風呂おんなじとこじゃん」


 ってことは幸がお風呂から出るまで入れないってことかよ。


 しかも、さっき長風呂って言ってたよな。


「やばい……。どうしよう…」


 とりあえず、お風呂場まで行って


「さぁーちぃー!トイレ行きたいからなるべくはやく出てくれ!」


「ひゃっ!?なんで?」


 いつもなら、かわいいなぁって思うけど、今の俺にはそんな余裕がない。


「トイレ行きたいんだ!」


あやぐじでぐれー(はやくしてくれー)


 慌てて出てくれた幸のおかげでなんとか間に合った。


「まったく。びっくりするじゃない」


「ごめんごめん。ありがとな」


「じゃあお風呂入るから先寝てていいぞ」


 そう言ってお風呂場に行った。


 お風呂から出ると幸はもう寝ていた。


「ふあぁ。さて、俺も寝るか」


 ベッドに入ると、予想以上に気持ち良くて、疲れがどっと出てきた。


 こんなに気持ち良かったらそりゃぁすぐ寝るか。


 幸に布団をかけてあげて、小さな声で


「おやすみ」


 と言った。


 幸が笑ったような気がしてびっくりしたが、眠気には勝てず、眠りに落ちていった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


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