表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したのに何も変わらなかったなんておかしい  作者: レーチ
第1章 異世界に来ちゃった
2/8

第2話 こんな美少女と一緒にいれるなんておかしい

 

 俺は無事、冒険者になれた。しかし、ギルドで生活補助金を貸してくれたり、最初の装備をくれたり、簡単なクエストを紹介してくれたりするような、ゲームのようには、まったくいかなかった。なので、お金がなくとりあえずアルバイトをすることにした。やはり、現実はつらい。


 町をぶらぶら歩いていると、アルバイトを紹介する、紹介所というのを見つけた。入ってみると


「いらっしゃい」


 店主らしき一人の男が話しかけてきた。その男の向かい側の椅子に座ると


「どんなアルバイトをお探しでしょうか?」


「えっと、高収入で誰でも出来るようなのありますか?」


「はい、ありますよ。これなんてどうでしょう。土木工事。時給1500トート。月1万で共同の小屋に泊まれますよ」


 トートというのはこの世界のお金の単位で、価値はほぼ円と同じだ。


「あ、いいですね。場所はどこですか?」


「ここから馬車で一時間ちょっとのところです」


 遠っ!まず馬車に乗れるお金がないから無理だな。もっと近いところじゃないとな。


「もっと近いところはないんですか?」


「んー、そうですねー。あ、ありました。えっと、家庭教師ですね。ここから、歩いて20分のところです。日給は1万トート。安いですが、食事と、寝泊まりを屋敷でできます。どうですか?」


「それ、誰でも出来るんでしょうか?」


「はい。家庭教師だから、資格とか必要だと思いますよね。でも、ないです。1個だけありますが、あなたは大丈夫だと思いますよ。冒険者、っていう条件です。なんでかはよく分かりませんが」


「ありがとうございます。じゃあさっそく行きます」


「また困ったら来て下さい」


 あんな便利なところもあるんだな、と思いながら、教えてもらった場所に行ってみると


「でかい…」


 屋敷って聞いていたから、でかいとは思っていたけど、ここまでとは…。緊張するなぁ…。


 意を決してインターホンを鳴らす。すると


「はーい、どちら様でしょうか?」


「紹介所で紹介されて来た、飛田と申しますが…」


「あ、飛田さんですか」


「今行きまーす」


 しばらくして、ドアが開いた。中から美人な奥さんが出てきた。


「こんにちは」


「こんにちは。紹介所から話は聞いています。では、さっそくついて来てください」


 美人な奥さんに案内されたのは、広い客間。


「椅子に座ってお待ち下さい」


 奥さんはそれだけ言うと、客間から出て行ってしまった。


 言われた通り、椅子に座って待つこと数分。コンコンとドアがノックされ、若い男が入ってきた。


「こんにちは。あなたが飛田さんですね?」


「はい」


「お待ちしておりました。では、アルバイトの簡単な採用面接を行います。いくつかの質問に答えていただき、それで判断します。」


 やっぱりな。こんなうまい話、裏があると思ったんだよ。まあ、採用されるように頑張ろう。


「あなた、冒険者になってどれくらいですか?」


「なったのは今日です」


 一瞬、驚いたような顔をしたがすぐ元に戻り


「分かりました」


「冒険者カードを見せて下さい」


「はい、どうぞ」


 男性は、俺の冒険者カードをじっくり見ると


「ありがとうございます」


 他にも好きなものやタイプの女性まで、たくさんのことを聞かれた。家庭教師なのに必要なのだろうか。


 そして、一呼吸おくと


「では、面接の結果を発表する。………おめでとう、結城くーん」


 彼はそう言って肩を組んできた。急に馴れ馴れしい。


「え、合格ってことですか?」


「ああ」


「やっったーー!」


 すると、急にかしこまって


「では、仕事の説明をする。あ、私は永井 恵太。こっちは妻の莉音だ」


「よろしくお願いします」


 切り替えが恐ろしくはやいな。


「で、仕事なんだが。家庭教師ってのは嘘で、本当は娘の幸が冒険者になりたいって言うんだが。1人じゃ心配なので、一緒に行く人を探していたんだ。結城くんは今日初めたばっかりって言うし。ちょうどいいと思って。同じパーティーになって欲しい。うちは一応お金あるんで、小さめの家を買うから。屋敷で寝泊まりや日給1万トートは無くなりますが、どうでしょうか」


 なんだその嬉しい仕事は。


「全然良いですよ。てか、ちょうど1人だと寂しいなぁと思っていたとこなんですよ。こちらこそお願いします」


「とりあえず、幸に会ってくれませんか?」


 そう言われて案内されたのは幸ちゃんの部屋。永井さんご夫妻はどこかへ行ってしまった。女の子の部屋なんて入ったことないので緊張しながらも、ノックすると


「どうぞ」


 と聞こえた。


 入ると、中には同じくらいの年に見える女の子が座っていた。


「あなたが一緒に行く人?」


 白いワンピースを着た金髪の美少女が明るく聞いてきた。


「うん。飛田 結城だよ。呼び方は何でもいいから。よろしくね」


「私は永井 幸。よろしくね、ゆうき」


「ん、よろしく幸」


「冒険者始めたのっていつ?」


「今日だ。まだ何もやってない。だから、スタートは一緒」


「やったね!冒険者カード見せて?」


「いいよ。はい」


 幸は俺の冒険者カードを見ると


「なーんだ。ほんとに弱いのか。しかも、冒険者かよ。冒険者やめて、他のことした方がいいんじゃない。もう猫被んのやめよ」


「は…え…。うるせえな」


「何よ!私だったら上級職にだってなれるし」


「あーそうかい。じゃあギルド行くぞ!」


 会って10分で喧嘩するとは。まあ俺は悪くないし。………たぶん……………。





「ステータス高すぎないですか?特に魔力と知能がめっちゃ高いですよ。筋力と体力が低いですが、それを補って余りあるくらいですよ。これなら、数々の魔法を操る魔法使いの上級職「ハイウィザード」や、回復魔法や、強化魔法、浄化魔法を得意とする上級職「アークビジョップ」になれます。どうしますか?」


 幸はどうだと言わんばかりに俺の方を見てから


「ハイウィザードで」


「分かりました。これからのご活躍を期待しております」


 受付の女性がにこやかに言った。


 え、なんで。こういうイベントは俺に起きるんじゃないのかよ。幸は呆然としているおれに向かって


「行くよ!結城」


 そう言って、一足先にギルドから出て行ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ