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お待たせして申し訳ございません!
なんとか続きました…!
注意
過激な表現を含みます。
グロテスク、リョナ
血の描写など。
上記の内容に了承しかねる方はブラウザバックを。
それでもイイよという方は5000文字程度ですがよろしくお願いします!
あの摩訶不思議なホラー体験をして目覚めた場所は屋敷の中だった。
どうやら、ロビーと思われる場所の真ん中で倒れていたようだ。
いったい、俺が何したっていうんだ。
仕方ないとさえ思えるこの生まれ変わりに憎まれ口を叩いても仕方がないだろう。
好きでこの身体に生まれたわけじゃない。
好きでこの世界に生まれたわけでもない。
理不尽とさえ思えるこの出来事に、俺は嫌になり三日目の深夜は集めた物をそのままに寝て過ごした。
この寝て過ごしてしまったことを、きっと後悔していただろうか。
未来が視えれば、この時は疲れた身体を押してでもこの屋敷から立ち去っていただろう。
その日の深夜。
何かの足音と物が動く音がして目が覚めた。
脳裏に過ったのは出会った鏡の、化物であり生前のこの身体の持ち主。
コツコツ…コツコツ…。
ヒールか革靴で歩いているかのような足音がする。
あの化物が記憶にどうしてもチラつくせいで胸の奥に嫌なものがこみ上げてくる。
耳を澄ませて、音の先を探る。
ヒソヒソと何かの話し声とドアを開ける音と複数人の足音。
先程のコツコツという足音は聞こえなかった。
生きている人の気配を感じられてホッとした気持ちになったと同時に、この人達が誰であるかを確認しなくてはならない。
幾つか思いつくものを並べていこう。
まずはココの持主…家主と言えば良いのだろうか…その人達だった場合。
俺は完全に不審者だ。
人の居ぬ間に上がり込んで空き巣同然の行為をしている事になる。
この時代で言う警察、つまりは役人か何かに突き出されてもおかしくはない。
人の気配が無いからと、勝手に物を私物化したことで窃盗の容疑も掛けられるだろう……。
「やらかした…」
頭を抱える。
素直に謝って許して貰えるだろうか…。
許してもらうしかないな。
家主だった場合はその方向でいこう。
次に、家主でない場合。
我が家でヒソヒソと話す必要があるだろうか…もし、時間帯の問題があるなら仕方ないかもしれないが。
でも流石に勝手知ったる我が家でコソコソと動く理由はそうそう無いと思う。
お咎めがあってこっそり帰宅……なんてことでもない限り。
まるで会社の帰りに飲みに行って帰りが遅くなりすぎた夫が、奥さんを起こさないように慎重に動いてる……みたいな。
「いや……どうかな…」
決して小さくはないこの屋敷…外観から見て4階建てにて奥行もある広い屋敷でそうそうコソコソしなくても問題はなさそうな気がしなくもない。
堂々と帰って来てもバレないだろう。
まぁ、本当にそうであるならば…だけど。
最後に。
「本当に人が住んでる家ならこんなに埃が被ってるはずがない」
中庭へ干しっぱなしの洗濯物。
人の気配を感じない離れ家。
同じく人の気配を感じない、埃っぽい屋敷の中。
つまり考えられる事は、空き巣かそれ以外の何か。
確認して見ないことには、何も分からないな。
で、あれば行動開始。
そのままにしておいた集めた物を肩から斜めにさげてこっそり鍵を開けてこっそり扉を開けてこっそり抜け出す。
うん、人影無し。
ではどうするか……先ほども決めた通り、まずはどんな人か確認する…安全そうならそのまま接触して、ダメそうなら逃げる。
これでいこう。
そもそも、どうやって安全そうかどうか確認するんですかね…。
「あ………日本語しか喋れない」
これは致命的。
外国語は英語を中学生レベルでしか訳せないしカタコトの英語でしかコミュニケーションをとれない……。
ま、まぁきっと?
異世界転生だから?
翻訳機能くらい付いてるんだろうけどね!
……付いてるんだよね?
…ついてるといいなぁ。
付いててください。
コミュニケーションが取れないかもしれないという一抹の不安を覚えつつ、長い廊下を出来るだけ足音を立てないように1階へ向かう。
あれ、でもこの長い廊下の先に1階があるんだから、ヒソヒソとした話し声が必ず1階から聞こえるなんてありえないよね。
そんな考えが頭を過ぎった時、2つ向こうの扉が開いた。
「ったく……金目の物もありゃしねぇ」
「ま、でも埃被ってるだけで物は揃ってんだ。住めねぇこたぁねぇだろうよ」
男の話し声。
夜目の俺には眩しい松明の灯りが部屋の中から見えた。
「盗めるもんもねぇんだ。お頭にさっさと報告すんぞ」
「へいへい…あとコッチの部屋2つだ」
「どうせドレも同じだろうがよ!適当に覗いてさっさと下に戻ろうぜ…」
こいつはやばいかもしれない。
聴こえた言葉が確かなら、盗みに来てる人達だ。
俺も人の事言えないけどね!
金目の物、盗める物もねぇ、下に戻ろう。
これは黒確定かもしれない。
隠れなきゃいけない。
どこに隠れる?
クローゼットの中、部屋の物陰……いや、ベッドの下だ。
この小さい身体なら潜り込む事も出来るはず。
荷物を先に滑り込ませて出来るだけ物音を立てないように潜り込む。
部屋の外から二人の足音が近づいて来て、扉を開けて入ってきた。
ベッドの下には俺が居るが…念入りに物色されたりしたら絶対に見つかってしまうだろう。
「この部屋も外れかぁ…やっぱこの屋敷何もないんじゃねぇの」
「それでもあっちの倉庫には色々あっただろうが」
「確かに、そうだけども…」
「それに何も無いってわけじゃぁねぇさ。地下室も倉庫も手分けしてんだ。2階が終わったら3階と4階も調べるぞ」
「たまたま俺らが運無しだったってぇ事か…ツいてねぇなぁ…ったくよぉ」
男の1人が乱暴にベッドに腰掛ける。
声を出さないように息を殺すだけでも精一杯の状態で心臓に悪い。
全力疾走した時のように心臓がドクンドクンと早鐘を打つ。
それに応じて息も、過呼吸を起こしそうなくらい息苦しい。
この心臓の音と呼吸音が届いてしまうのではないかと、ただソレを押し殺すのに必死だ。
「よし、次の部屋行くぞ」
「あいよ。次で2階最後か…あっちみたいに扉の内側へ物が倒れてなくて良かったぜ」
「……あぁ、そうだな」
2人組が部屋を出ていくのをベッドの下で確認する。
開け放たれた扉とクローゼット、物陰になると思っていた場所まで割と隅々まで調べていた片方の男と、愚痴の多くテキトーに見ましたといった感じの男2人組の松明の灯りが遠く細くなるまで見送って這い出た。
「日本語……だったよな」
少なくとも俺が英語を日常会話レベルで聴き取れるレベルでないのは自身がよく知っている。
これは、いわゆる異世界転生ボーナスだな。
どこかのマンガ小説には言語を1から学ばなければいけない話しもあったが…良かった。少なくともコミュニケーションはとれそうだ。
いや待て。
聴き取れるだけで実は俺が話せないパターンないか?
……すっごく不安になってきた。
たがしかし、聴く事も話すことも出来ないよりはマシだと思う。
マシだと思おう。
部屋を抜け出し、聞き耳を立てて安全かどうかの確認をする。
「おい、この部屋だけなんでベッドが使われた後みたいになってんだ」
「誰か居たって事か?」
これはヤバい。
後片付けなんて考えてなかったからそのまま出てきてしまった…。
とんだうっかりだ。
出来るだけ離れようと出来るだけ速く出来るだけ足音を殺しながら部屋を離れる。
後ろからは乱暴に物を開け放つ音が聞こえ始めた。
1階。
目覚めたであろうロビーの先にある厨房のような場所に隠れている。
小柄な身体が功を奏して狭く見えにくい隅の物陰に潜り込む事が出来た。
「おい、誰か居たか」
「いや誰も居ねぇな…ホントに人なんて居たのか?」
「話しでは誰かが使ったあとのあるベッドが2階にあったらしい」
「じゃあ別に人影とかそれっぽいのは見て無いってことか」
「このご時世だ。幽霊やお化けでもない限りこの廃村には誰も残ってないだろうよ」
幽霊やお化け…か。
化物なら見たが…あれはなんなんだろうな。
見張り数人がたむろしているせいで、話しの内容には困らないが抜け出せる機会が全くない。
抜け出す機会を窺ってそれなりに時間は経ったはずだが…未だにココという場面がない。
「ココも食料置きっぱなしで何があったんたまろうなぁ…まるで全員消えちまったみたいだ」
「縁起でもねぇこと言うなよ…」
「なんだよ、怖がってるのか?魔物が徘徊するにしたってそんな姿見てねぇんだから安心しろよ」
「なんで幽霊の話しから魔物の話しになるんだよ」
「おいお前ら何サボってんだよ、さっさと物詰め込むぞ」
部屋の奥…ロビー側から1人現れて数人を集めている。
逃げ出すならここしかない。
部屋を離れるのに合わせてこっそり裏手口に伸びる通路に向かう。
あの数人がココから入ってきたせいで逃げそびれたのを思い出して今さら舌打ちしそうになるのを堪えながら、ゆっくりと開ける。
開けた扉の隙間から見えるものを確認する。
……少なくとも見える範囲に見張りとか居ないみたいだ。
緊張の糸を解せぬまま開けた扉の裏を確認する為に顔を覗かせる。
その先にも人影は無かった。
おそらくだが、さっき話してた物を積む作業に人数を割いているのだろうと思う。
正面と思われる方ではドスンドスンと何かを積む音と人の掛け声が聞こえる。
このまま更に裏門か裏口みたいな場所を見つけるか抜け出せそうな道を探そう。
人の気配と物音に注意しながら1歩踏み出す。
「ってっ」
踏み出したはずがコケてしまった…。
今の物音で誰か人が来ないかという不安が脳裏を過ぎる。
その不安を早く拭う為にも起き上がる。
違和感を感じる。
起き上がれない。
正確には身体を起こす事は可能なのだが立つことが出来ない。
不思議に思って足元を見た。
暗がりで見えないそこに何か転がっている。
何だろうとそれに手を伸ばして確かめる。
「なんだこれ……っひ!」
手に取って、驚きのあまりそれを落とした。
たいして重さのないそれはトサリと静かに音をたてる。
「あ、足…?……なんで、こんなとこに……」
落とした視線の先、つまり自分の足元が視界に入る位置。
「え、あ……ぁ…?え…?」
驚きで揺れる視界にうつったのは、足首から先が無い自分の脚。
理解の追いつかない頭が震える手でソレを確かめるように手を伸ばした。
あったはずの場所に無いもの、無い場所に本来あるべきものが無い事実。
それを認識した時、じんわりと熱を帯びるように、しかし切口はまるで冷めているかのように痛覚が身体を支配し始めた。
「ぁっ…っ、あっ、っづぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!!!!!!?ぁぁぁぁぁ!!!?」
状況も環境も無視して叫ぶ。
その悲鳴に人が集まって来る気配がした。
「っは、づぅぅぅ!!!あぁぁ!足、あし、アシ、あし!!!」
松明の灯りに照らされた姿はさぞ滑稽だっただろうか。
両足を落とした少女が悶え苦しむ姿は。
「あーぁ……引っかかる馬鹿が居たもんだ」
体格の大きな男が歩み寄ってくる。
「ガキぃ…災難だったなぁ」
「はっ、はっ、はっ、足が…足が…」
「お前…馬鹿か……そんな事しても治わけねぇだろうが」
男から見た姿はさぞおかしかった事だろう。
目の前に居る子供が、切れた傷口に落ちた足を必死に付けようとしているのだから。
「あぁ足が、足がくっつかないんです!早く逃げないといけないのに足に足がくっつかないんです!助け、助けてください…!!!」
付けようと藻掻く度に傷口からグチャグチャと血の粘液が辺りに飛び散り、男から見た少女の手から顔から松明に映る全身を赤く汚していく。
「おい、コイツも連れてけ。奴隷として変態共に高く売れる。死なねぇように止血と治癒魔法を忘れんなよ」
「ヤダ……やだヤダやだぁ!!!逃げなきゃ、逃げなきゃ…!」
捕まると本能的に理解した瞬間、今まで付けようともがいていた足を放り投げて這いつくばって逃げる。
逃げられるはずもない。
パニックを起こし、無理矢理傷口を広げ、出血量を増やした今の彼女には例え万一逃げきれたとしても失血死は免れない。
「逃げなきゃ……逃げなっ、がっ!」
後頭部に強い痛みを覚え、一瞬思考がクリアになる。
無くなった足と冷たくなっていく身体。
痛みも麻痺して感覚も鈍い。
見下ろす男を視界に捉えた。
「頭、コイツはヤッてもいいんで?」
「馬鹿野郎、傷付いた商品を誰が買うってんだ。処女ならそのまま手出しすんじゃねぇぞ。俺が確かめる」
唯一分かったことは、まだ死なないという事。
そしてどこかに連れていかれるという事。
まだ死なないことを喜ぶべきか、死んだ方が良かったと後悔するべきか、この時の俺には何も分からなかった。
約半年ぶりの投稿……遅れて本当に申し訳ございません。
仕事を辞め精神的にも時間的にも余裕を手に入れたのでまた少しずつ執筆していく次第です。
仕事やほかの趣味と両立させて書いてる方々は本当にすごいと改めて実感しました。
中世の医学について。
今話の最後に一言出てきた“治癒魔法”……魔法ってとんでもなく便利だなって思いました(小並感)。
さて、皆さんは「中世医学」と聞くと何をどの程度を思い浮かべますか?
私は、もうめっちゃ残酷で怖い!ってイメージしかなかったです。
そしてそれはあながち間違いではなかったです…。
この先の文章は想像力が豊かな人には痛々しい話しになるので自己責任でお読みください!
・傷口の治療
日常生活や戦場において傷口は早期に塞がないと感染症になりますよね。
それなりに有名な話しですが、やはり熱した鉄で傷口を………想像するだけでも恐ろしいです。
消毒剤として尿が使用されていたのはご存じですか?
出したばかりの尿は無菌で、確かに綺麗だと言われていますがアレを身体に浴びる………。
・痔の治療
痛いですよね。辛いですよね。
作者はまだなった事ないので辛さは分からないですが、相当なものだと聞きます。
昔、痔になった患者への治療方は尻の穴に筒を通して、その中に熱した鉄の棒を挿入して焼き切るというものだったそうです。
お尻の、穴に、鉄の棒………。
・目の治療
白内障や緑内障はやはり当時もあったようで。その治療方は「目に針を刺して濁った膜を押し出す」だそうです。
目に、針を、刺す………。
・頭蓋穿孔
頭蓋骨に穴をあけて、治療する方法だそうです。
脳の障害や病気を治す為に使われていたそうですが……感染症とか大丈夫だったんでしょうか。
2000年代にも治療があったそうですが、聞くだけで頭が痛くなりそうです。
・瀉血
瀉血というのは、医者が患者の血管を切り開いて定期的に血を取り出す医療だそうです。
ヒルに血を吸わせて行う治療もあったようですが、瀉血を行う理由が「血が多いと身体に悪いんだよ!だから定期的に血を抜こうね!」って広く信じられてたそうで、血を抜いて抜いて、失血死してしまったとある国の大統領も居たとか居なかったとか……。
・麻酔
映画でよく見られる麻酔ナシで手術するシーンがありますよね。
もう見てるだけで痛々しいというか…作者はスプラッター物が大好物なので「いいぞもっと見せて!」ってなるタイプなのですが…コホン。当時も麻酔は確かにありました。
あるにはあったんですけど、化学の知識が追いつかなかったばかりに鎮痛剤や抗生物質など間に合わず感染症で多くの患者が無くなったそうです。
しかも、麻酔がしっかり普及され始めたのは約150年前。
その頃までは天然ハーブとワインを混ぜて患者に飲ませて落ち着かせる…といった具合で。
他にもレタスや酢、アヘンなどの有害な物も混ぜ合わせていて調合方法を間違えば、お亡くなりー!な事も十分に有り得た、そいつぁひでーや!な麻酔方法がありました。
・医療における占星術
歴史が好きな方、得意な方はおっ?と思うかも知れません。三○志や信○の野望で似たような話しを聞いたことがあるかもしれません。
約1500年頃までヨーロッパの医者は患者のホロスコープをみてから、医療を施すよう法的に定められていたそうです。
日本でも信仰や占い呪いで病気は治る!と信じられていましたし、奇跡的に助かっていたんだなぁと思いました(小並感)
ざっくり纏めましたが如何でしたか?
調べれば調べるほど、中世の医学怖ー!ってなりますよね。
それと同時に「まほうのちからってすげー!」ってなりました。
魔法があればなんとかなるよのハイファンタジーが多い中、ありがちな設定や説明や描写でも「魔法がなかったら」って考えると恐ろしいですよね。
今回も長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございます!
治安、食事、医療、と大まかな現実の時代背景を説明していって後書きでの説明ネタが無くなりそうです!でもいくつかまだストックはあります!
今回もありがとうございました!