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14、訓練と研究で成果

前話あらすじ

パーティーメンバーは揃ったが、能力技能に偏りがあったアリア達は、各自で目標

を決め訓練や研究を行った。その結果ダークが銃術をマスターするなど一定の成果

をあげ、偏りも若干改善された。

 翌日、アリア達は寮母に地下室をカレリアやジェミーの研究室として使いたいと懇願し、他の寮生も使用するという事で許可がおりた。


 地下室は、このままでは使えないため、先輩の力を借りることになった。

 名はナディア・ゲイツといい、ネコ科の獣人でサラ先生と同じ。


 先輩の能力技能は生産全般。ジェミーとの違いは、中級の支援系魔法が使えるところで、このおかげでパーティー内でも重要なポジションを担っている。

 彼女は大工の技能もあるため、地下室に換気装置を取り付けたりするなど、改築にかなり協力をしてくれた。


 改築が終わった翌日、5人はそれぞれ訓練や研究を始めた。

 アリアはナディアに治癒魔法を教わる事になった。

 彼女の家系は昔神官をしていた関係で、魔力エネルギー「マナ」を上級魔術師並みに持っており、魔法の修得も早かった。


 現在は攻撃系魔法の炎・雷・風・氷系を修得しており、炎に限っては上級並み。

 もう一つの特徴は、魔法を使う時スペルの詠唱を必要とせず、念ずるだけで発動し、連続5回まで可能だった。

 通常は1回使用すると、次に詠唱できるまで若干の待機時間が必要となる。 


 今回は治癒魔法の修得を目指す。

 この世界の魔術は使用したい魔法のイメージを強く持つ事が大切で、攻撃系のファイヤーボルトなら燃えさかる炎のように感情を高めイメージする必要がある。それが高いほど攻撃の威力も増す。


 逆に支援系の治癒は、安らかなイメージが大切で、感情も落ち着かせる必要があるため、この切り替えが瞬時にできるかどうかカギになる。

 これが意外と難しく、大抵の魔術師は攻撃系か支援系に分かれる。


 生徒の中にも、両方使える者は少数いるが、中級攻撃+初級支援といったレベルで、両方中級の者はいなかった。

 アリアの攻撃系は中級なので、まずは初級支援系が使えるように訓練をする事になった。


 * * *


 百襲姫(モモソヒメ)は、異世界では女神であったため、特殊な能力を引き継いでおり、それを“祈り”と呼んでいる。


 神格は予言的巫女、神徳は諸願成就、厄除け、延命長寿などで、アリア達が百襲姫に願えば、彼女は祈り加護を与える。

 この能力のおかげで、彼女は索敵や探知、モンスター攻撃を回避させたり、パーティーの能力を一時的に増加させる事もできる。

 

 他に認識阻害という、変身能力も持っている。

 これは、見た者がそのように見えているだけなので、ドラゴンに変身すればその能力が使えるわけではない。


 この能力を一部使う事で、自身を発光させる事もできる。

 種族が妖精なので、滑空能力があり、発光と組み合わせるとダンジョンの天井付近で輝く照明器具にもなる。

 

 この発光能力は更に強くする事ができ、最大は太陽並みの光と熱エネルギーをもたらす事ができるため、モンスターに囲まれた時使用すると、周辺を一瞬にして岩も溶けるほどの灼熱地獄にする事もできる。


 ただこれは、味方も巻き込む危険があるため使用条件がかなり限られ、更に膨大なマナを消費するため、その日はもう能力を使えなくなる。

 

 今回“祈り”を治癒魔法のように使えるか探るつもりで、例えば体にダメージを受けた場合、その部位に対して治るように祈れば、回復するのかどうかを調べる予定。この能力も魔法と同じでイメージが重要。


 百襲姫は自身の事を女神と言っているが、アリア以外は信じてくれない。

 それを信じているアリアだけは言葉を使わず脳に直接意図を伝えることが可能。

 彼女たちは最近それを「念話」と呼ぶようになった。


 * * *


 ダークは、この世界にダークエルフとして転生、異世界では警察官であったため剣道ができ、銃も扱える。


 それ以外に空手などの格闘技も習っていた影響か怪力を得ており、拳で岩を砕いたり、手刀でモンスターを切り裂いたり、エルフなのに肉弾戦が得意な異質の存在となっている、その為同族からは軽蔑さる羽目に…。


 そう言った経緯から、彼女はこの世界で体術、剣術、銃術の使用が可能はずだが現在のところ彼女が気づいているのは体術のみ。


 今回は警備隊のマークに師事し、銃の使い方を覚える事になった。

 これは、この世界に来た時狩人が放置した銃を拾った時や、先日の盗賊退治で目にした銃が、なんとなく扱えるような気がした為だった。


 カフェで考案した毒針と弾を使った攻撃を成功させるためにも、これは必ず修得する必要があった。


 * * *


 カレリアは幼いころ毒の魅力に取りつかれ、以来その研究し続けている。

 父が上級錬金術師で、家業もそれを生かしたアルケミーショップを営んでいるため素材も比較的簡単に入手できる。

 そのおかげで彼女の研究も捗り、毒だけなら錬金の能力は上級レベルで、上級毒を作れる。

 これは生徒の中でも数人しかいない。

 百襲姫の祈りの効果を得ると劇毒も作れるようになっている。


 今回の研究目的は、毒を以て毒を制す。攻撃を受けて傷口が出来た場合でも、専用の毒を使用する事で傷を癒すというものだった。

 戦闘による疲労に対しても弱い毒を使用し、体の自然回復力を高める物を研究中だった。

 これらの研究は8割程度終わっており、演習の日までに完成を目指して最後の追い込みしていた。


 * * *


 ジェミーは実家がコルにあり、防具屋を営んでいる。

 その影響で、幼少の頃から裁縫の腕前は良い。

 それと裁縫道具の針に異常な拘りを持っており、自作するために細工の技能も勉強した。

 針は裁縫以外でも使用しており、扉などの鍵をあけるピッキングもプロ級。


 また、村の学校に通うようになり、生物の授業を受けるようになってからは、針を生物に対して使い、動きを鈍くする実験も行っていた。


 今回は、これを応用し針でモンスターの動きを止めたり、カレリアの毒薬を使った毒針を急所に刺す事によって暗殺する技術を身につけたいと思っている。

 他に、針を使った治癒も密かに考えている。

 本人はまだ気づいてないが、裁縫より特殊技能のアサシンの方が彼女には向いている。


 * * *


 演習前日は日曜で学校も休み。5人は朝から練習と研究をしていた。


 アリアは百襲姫と一緒に、解放されている学校の魔術練習場でナディアと治癒魔法の練習をしていた。


「そう、その調子アリア。もっと清らかな物をイメージして!」

 魔術で作られた、ヒトの体を模した物に傷をつけ、それを早く治癒する練習。

 昨日の段階で、治癒自体は出来るようになったが、完治させるまで時間がかかっていた。

 ナディアの読みでは、今日追い込めば初級治癒は得とくできると見ている。


 百襲姫は、昨日の時点で魔法に置き換えると、初級レベルに達しており、今日は中級レベルに挑戦していた。

 彼女の場合は、同じ種の能力を持つ者が世界レベルで見て数人、数神と言った物なので、ナディアが彼女のレベルを把握できるはずがなかった。

 学校でこの能力を持つ者はいないので“祈り”と聞いても単なるお祈りと思い百襲姫を馬鹿にするのも致し方なかった。


 * * *


 ダークは、警備隊の演習場でマークと射撃訓練をしていたが、彼女は上達が早く今では師匠を上回り、マスターと呼ばれている兵士と射撃の精度を競っている最中だった。

「ダーク君は本当に初心者なのかな?僕が君に教えてもらいたいくらいだよ」

「何故だかわからないが、なんというか体が構え方や発砲タイミングを覚えているんだ」


「君は異世界では、射撃のプロだったのかも知れないな」

 ダークは会話しながらでも、全ての的に命中させていた。

 学校でも銃を扱える生徒はいるが、ダークはトップクラスの腕前になっていた。

 

 * * *


 カレリアとジェミーは、目の下にくまを作りながら寮の地下室で研究、実験を続けていた。

 カレリアの毒研究はほぼ完成していた。


 ジェミーは、寝不足で倒れそうなカレリアを実験台にして、眠りそうになるたびに、彼女に針をうちデータを収集していた。

「あぅ、カレリア寝ちゃダメだよ、ここに針刺すよ?」

「はう、ジェミーは僕を殺す気か、そろそろ寝させてくれないか…」


 モンスターに対しては昨日、森でオーガやハルピュイアで実験に成功している。


 寮の門限が近づくと、外に出ていた3人とナディアが帰って来た。

 食事をとった後、談話室で進捗状況を確認すると各自部屋に戻った。

 明日に備え少し早めに眠りについた。


 * * *


 その夜、みんなが寝静まった頃、402号室の窓辺には白い肌をした若い女性が壁を引っ掻かいていた。


 百襲姫はマナを消費し疲れていたので、この夜は彼女を認識する事は出来なかった。


●登場人物

ナディア・ゲイツ

桐花寮 201号室の寮生

17歳 170センチ ネコ科の獣人


得意とする能力技能:中級支援系魔術、生産全般(鍛冶・裁縫・細工・大工・調理)


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