軍の行方
徒歩の部隊が到着する3時間前。
騎兵隊及びアイスドール部隊がブリズバーン付近に到着しようとしていた。
「リチャード副隊長!いるか!」
「はい!トーマス隊長ここに」
「部隊を散開させろ!」
「もうブリズバーンですよ。どうしたんですか」
「勘だ!嫌な予感がする」
「!!全員散開しろ!隊長の命令だ!」
整然と並んでいた騎兵隊が四方に散らばる。
突然、2体並んで歩いていたアイスドールの片方が片方のアイスドールを思いっきり殴り飛ばした。
と同時に周囲の雪を玉にして四方に弾丸のように飛ばした。
騎兵隊が散開していなかったらそのいくつかは当たり、重傷を負っていた可能性がある。
軍ではない馬に乗った冒険者が数名同行していたが、反応が遅れて数人が犠牲になった。
「まずい!乗っ取られたぞ!」
ドールはドールユーザーがコアにコードと言われる呪文を付与することでコントロールする。
コントロール時はコアの中にある仮想空間に精神体でダイブしているようなイメージだ。
この状態をコアにアクセスしているという。
誰もコントロールしていないコアをコントロールするためには、コア内にいるドール本体が構築している防御魔法を解除することでコントロールする権限を掌握する。
ではコントロール中に他のドールユーザーがコアにアクセスしようとするとどうなるか。
この状態を決闘と言い、決闘に勝てばドールのコントロールを奪うことができる。
こうならないように、コントロール中のドールのコアにはドールユーザーが防御魔法を施すうえ、コアに近づく必要がある、コアにアクセス中は無防備になるなど障害も多く、通常乗っ取りは発生しにくい。
乗っ取られる10分前。
ドールユーザーのイーサンはドールの後方10mぐらいを馬車にひかれて移動していた。
周辺を警護の騎兵に守られ、馬車の中でドールをコントロールしている。
この間は瞑想しているような状態にある。
イメージの中でパキッという音が聞こえ、コアへの侵入者を感知した。
移動中だぞ?いったいどこから?
混乱しつつ決闘モードになったコア内に至急防衛機構を構築する。
「論理迷宮!」
侵入者を防ぐ迷宮がコア内に構築されていく。
しかし構築速度より早く1層、2層と突破され、ついには目の前に現れた敵のドールユーザーにナイフを突き立てられる。仮想空間内での出来事のため実際の肉体にダメージはない。
「(レベルが違い過ぎる…ドールマスターか…)」
決闘に敗北すると精神体がコアからはじき出され気絶する。
乗っ取られたアイスドールはブリズバーンには向かわずより北方のミスリル鉱山を目指して走り始めた。
「何をするつもりだ。乗っ取られたアイスドールを追え!」
こうして、徒歩の部隊が到着した時には軍はミスリル鉱山へと向かっていた。