流転
「ドールマスターのクローディアがわが国に入国したらしいぞ」
「ドールレス・ドールマスターのクローディアか。ドールを捨て駒にする非情なドールマスターめ。一般ドールならまだしも古代の遺跡から発掘されるコアを使ったエンシェント・ドールを捨て駒にするとは言語道断。そんな疫病神は早々に退去して欲しいもんだな」
マンハイム王国とロンフォール王国との戦争に勝利をもたらしたクローディアであったが、国家の軍事力を左右するエンシェント・ドールを失ったことによる罪に問われ、国外追放となっていた。クローディアが操るドールがコアを破壊されたことは今回が初めてではなく、すでに3体に及んでいた。
「お主がドールマスタークローディアか」
「はい国王陛下」
「確かにわが国もドールユーザーの不足には悩んでおる。ドールは死なぬが人は死ぬのでな」
「では、私を雇っていただけないでしょうか」
「マンハイム王国を追われたそうだな。エンシェント・ドールを捨て駒に使うとか」
「捨て駒に使ったことなどございません。私が操るドールは・・・その・・・自らの意思を持っているのです」
「自らの意思!?正気で言っておるのか!ドールに自らの意思などあるはずもない。戯言を。仮に本当に意思を持つとして人間の命令通りに動かぬドールなど危険極まりないわ」
「・・・」
「悪いがわが国ではお前は雇えぬ。他を当たるがよい」
私ももうこれ以上ドールを失いたくない。でもドールユーザーをやめて私に何が出来るだろう。
そもそも、なぜ私のドールだけ私の命令を無視するような行動を取ることがあるのだろう。
クローディアは頭の中で繰り返し繰り返し同じことを考えていた。思い当たるのは父が遺してくれたルーチンだ。父が作ってくれていたドールの基本動作を組み込んだルーチン。一般に使用されているルーチンよりもはるかに繊細な動きを可能にするため必ずコアに入れるようにしている。
父はルーチンをブラックボックス化しており、中にどのようなコードが組み込まれているのかはクローディアもよくわからない。あの中に、謎を解く鍵があるのかもしれない。