ミスリルドール強奪計画
エルヴィラは追撃してくるフロストヴェイル軍をアイスドールで迎撃しつつミスリル鉱山に到着した。
アイスドールの攻撃方法は、氷の礫を打つ氷弾と格闘による近接攻撃がメインだ。エルヴィラクラスになると、氷弾が強力になった氷槍や、氷を利用した剣や斧などを生み出して戦う氷武具といった上級クラスの攻撃スキルを利用できる。
「だめです!氷弾で近づけません!」
近づくフロストヴェイル軍の騎馬兵は氷弾を軽く打つだけであっさりと迎撃されてしまう。
「お頭の姿見えねぇが、ミスリル鉱山に向かってることは確かだ。野郎どもバラバラにミスリル鉱山に向かうんだ。軍を背後から狙うぞ」
海賊の手下たちは散開し、ミスリル鉱山を目指して個々に向かっている。
フロストヴェイル軍はアイスドールに意識が集中しているため、手下たちには気づいていない。
「奴め、コアを狙ってるのか。それなら無駄なことだ」
トーマスがつぶやく。
アイスドールの最大速度は騎馬兵のそれとほぼ同等のためフロストヴェイル軍とエルヴィラのアイスドールは、ほぼ同じタイミングでミスリル鉱山に到着している。
フロストヴェイル軍にかまわず鉱山の奥に進むエルヴィラ。
アイスドールを1㎞程度離れた場所から、魔法によって姿を隠した状態でコントロールしているため、フロストヴェイル軍はエルヴィラを捕捉できない。
現在の魔法技術ではせいぜい100m以内にはドールユーザーがいないとドールをコントロールできないため、ドールユーザーがいない状態で独自に動いているように見える。まして、隠匿魔法については、知らない者も多い。また、騎乗しながら同じスピードで移動しつつドールを操るというのも現在では考えられない高度な技術だ。
アイスドールに騎馬兵で攻撃してもコアを傷つけられなければダメージを与えられない。アイスドールは分厚い氷でコアを守っているうえ、すぐに修復されてしまう。
これが、周囲にドールの材料が無い場所であれば徐々に周りにダメージを与えコアをむき出しの状態にできれば勝機があるが、今回はそれは不可能だ。
唯一の対抗手段はもう一体のアイスドールだが、アイスドール同士でぶつかり合ったところで、お互いに有効なダメージを与えられない。軍はチャンスをうかがうべく追跡するしかない状態だ。
追跡中にタックルして止めるという方法も考えられたが、操縦のレベルが違い過ぎてエルヴィラのアイスドールの方が速いため追いつけない。
ミスリル鉱山に入ってから奥に進むと、1m四方程度の巨大なコアが氷壁に埋まっているのが見える。しかし、その前には巨大なドラゴンが鎮座している。
氷龍。古代龍族の一角とされる。その寿命は数百年とも数千年ともいわれ、数少ない人を超える種族である。
舌打ちするエルヴィラ。
この氷龍はどういう理由かわからないがドールのコアを守っている。
コアに侵入しようとすると氷龍に邪魔される。氷龍がドールを起動する権限を有しているが、あえてコアの状態のままにしているようだ。
そうこうしているうちにフロストヴェイル軍の攻撃が開始された。
背後からもう一体のアイスドールが迫り、エルヴィラのアイスドールを取り押さえようとタックルしてきた。しかし、あっさりと躱され、操縦しているドールユーザーに氷の礫が飛び無力化される。
アイスドール同士ではらちが明かないうえ、ドールユーザーも負傷したことで、軍のアイスドールは行動不能になってしまった。
「ドールユーザーはまだ見つからんのか!」
「周囲100mを念入りに捜索しているはずなのですが、一向に見当たりません。もしかして、自らの意思で動いているのでは…」
「そんなわけがあるか!必ずどこかにドールユーザーがいるはずだ!何としても探せ!」
軍が勝つためには方法は一つしかない。ドールユーザーへの直接攻撃だ。
必死でドールユーザーを捜索するフロストヴェイル軍。しかし、全く見当違いの場所を探している。
エルヴィラは思案していた。
氷龍を出し抜き、トロール級ミスリル・フレームのコアにアクセスする方法はないだろうか。




