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第五話 〜広くなりました〜

「いやいや、家をつなげるって...」


どういうことがどうなってこうなるのかがわからないんだけど...


「だって、あの娘はまだ外に出しちゃダメだし、私は午後からの講義で貴方は午前中だけでしょ?それなら繋げてしまえば私か貴方がお世話できるじゃない。」

「あー、なるほ、ど...?」


そうだとしても大胆すぎではないか...?確かに俺は午前の講義しか取っていないし、泉さんは午後の講義だ。だから、巡回者の集会がある土曜日以外はあの娘の面倒が見られる。


「そうですけど迷惑ですよ。俺が拾ってきたのに。」

「あら、巡回者として匿っているのなら組んでいる私もそれに協力すべきよ?」


「それに。」と更に泉さんは続ける。


「そうじゃないと、私が不服だもの。」


...あぁ、これだから泉さんに頼ってしまうんだよね。どこまでも甘えてしまう。


「じゃあ、そうしましょうか...」

「うん。そうだけれど、まずこちらだけで決めてしまってはあの娘が嫌だったら意味無いし...私にも会わせてくれない?」

「そうですね、いいですよ。」


こうしてサラッと凄いことが決まってしまった気がしたんだ...


......................................................


「...という事なのだけれど、大丈夫かしら?」

「はい、私は...大丈夫です。」


食器洗うぞー、と俺があの娘の食器を回収し、俺がそれを洗っている間に泉さんが自分の自己紹介と今までの経緯を話してくれた。

これから俺と泉さんとで平日の午前と午後と交代で面倒を見るという事をあの娘は特に嫌がるというわけでもなく、普通に受け入れたようだった。

まぁ例の如く


「ですが、そこまで、迷惑を...かけるわけには...」

「いやいや、迷惑とかそういうのやめようぜ?」

「私達が好んでやっているのだから。」

「...ありがとう、ございます。」


というやり取りはあったんだけど。

そして、さぁやるぞとなった時に泉さんがとても重要なことに気が付いてくれた。


「あっ、あなたの名前は?」

「私ですか...?」

「うん、これから一緒に生活するのだから、名前は知っておかないといけないじゃない。」


と言ってくれた。

そう、俺は名前を聞くのを忘れていたんだ...今まで「なぁ」とか「おい」だったからな。

あの娘は一瞬驚いたような惚けたような微妙な顔をしたけれど、直ぐに無表情に戻って


「真奈、です...」


といった。


「そう言えば、俺もしてなかったな。俺は和慎だ。改めてよろしくな。」

「えぇ、自己紹介してなかったの?」

「はい...」


えー、と泉さんは呆れたような顔をしてから、直ぐに柔らかな表情になり、


「まなちゃん、これからよろしくね。」


と、手を差し伸べた。

まなはさっきより明らかにビックリした顔つきになって、凄く長い間握手するか躊躇っていたけれど、泉さんは嫌な顔一つせずにまなの返事を待っていた。そんな泉さんにやっと、ぎこちないけれどまなの方から握手を返した。

まなが少し笑っている気がして、ちょっと嬉しくなった。


......................................................


「ってか、ここアパートですよ?工事費も色々...」

「あら、大丈夫よ。ここのアパートは壁を削ってしまっても、私のサークルで作っているホログラムで隠せるわ。」

「えっ、削る?ホログラムで隠す...??」

「まぁ、見てて。」


そう泉さんは俺にいうと、まなに向かって


「ここ、マーク付けたところの壁を取り外せるかしら?」

「...やってしまって、良いのですか?」

「えぇ、大丈夫よ。」


泉さんが許可をだすと、まなは壁に手を当てがう。すると、ぐにゃりと壁が溶けるように崩れ始めた。


「うぉっ?」

「うんうん、上出来ね。」


ジュルジュルと、溶けた壁だったモノが泉さんがしゃがみ込んで差し出した手のひらに吸い込まれる。あれ、壁ってこんな物だっけ...


「うん、壁の内側が見えちゃっていること以外は特に問題ないわね。」

「いやいや、何がどうなってこうなったんですか!?」


元からそこにありました。とでも言うかのような通路を指さして言う。泉さんは特に何でもないというように


「魔族って、能力に使うための力がとても高いから大体のものは壊せちゃうのよね〜。片付けさえ気にすれば、便利なものよ?」

「便利なものよ?って言われましても...」


泉さんの能力ってなんだっけ...そういえばあまりその事に触れたがらないから聞いていなかったけれど、ちょくちょくよくわからない能力を発揮してる気がする。まぁ、無駄に能力を言いふらすことはないんだけど。

なんだろう、掃除能力...?


「よしっ、じゃあスイッチをいれて...これでバレないわよ。」

「やる事がもう想像を超えすぎている...」


ホログラムが起動すると、そこは自然な元々の壁になっていた。手で触れるとすり抜けるから、違和感がかなりある。


「うん、上出来ね。これでしばらくは大丈夫ね。」

「たまに泉さんが怖いです...」

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