第四話 〜提案〜
天然ぽんずさんが暫く待っても絵を書いて下さらないので、ぼんと一気に八話まで公開しちゃいます。
挿絵がないと寂しいものですね..
取り敢えず食え、まずはそれからだ。と言って、あの娘を放置してリビングに戻る。
大口を叩いたは良いものの、具体的にどうするかとかは全くもって決めていない。あの娘には普通の生活をして欲しいんだけど、戸籍が無いというのが一番痛いし...
まぁ、取り敢えず買い物だよな。今、あの娘が持ってるものは多分今付けていたボロシャツ一枚だろうし。あとは近所との付き合いもあった方が良いんだろうな。
とか、考えながら自分の昼食を食べていると、ピンポーン、と呼び鈴が鳴った。
「誰だ?こんな時間に来るなんて。」
はいはーい、と返事をして玄関まで向かう。宅配便か何かかな?
しかし、実際はそうじゃなかった。
「こんにちは、今日、大学休んだでしょ?」
「泉さん?」
小野寺泉、このアパートの301号室の住民で、黒髪のショートヘアの少し長身の女の人。同じ大学に通っているし、受講している講義室が同じ棟にあるのでよく会う。この人の特徴と言ったらなんといっても両瞳が少しおかしい事だ。特殊な種族とのハーフだったりするのかな、詳しくは知らない。
ちなみに、俺の部屋は302号室、つまりお隣さんである。俺が住み出した頃から仲良くしてもらっていて、俺が巡回者になった時に何故か「私も入っていい?名前だけ。」と言われて俺とタッグを組んでいる。
タッグと言っても一緒に外で何かするというものではなく、泉さんの特技である「超高速検索」で俺が関わっている事件の情報収集をしてもらっているだけだけど。
それでもかなりお世話になっている人だから、何かと頭が上がらない。
「今日は私、休講だったんだけど、あなたが休んでいたみたいだったし暇だったから。ノートだけ纏めておいたからどうぞ。」
泉さんが鞄からノートを取り出す。表紙に「異能Ⅱ科」と書いてあるそのノートの中身は丸文字ではあるものの、とても綺麗な字で講義の内容が書かれていた。ノートを見ているだけで講義の様子が思い浮かぶがわかる程度に。
「うわ、これ泉さんがやってくれたんですね...」
「うん、見にくかったらごめんね?」
「いやいや、取ってくれるだけでもとても助かりますし、見やすいですよ。俺の10倍は見やすいです。」
少し心配気だった泉さんだったけど、そう言うと表情が和らいた。泉さんは少し微笑んだような顔をして、
「良かった。これ、あげるから使ってね。」
とノートに手を乗せて言った。
やばい、いい人過ぎて...
「何かあったら言ってね?...もうあったんだろうけど、なにか助けられるのなら助けたいから。」
「あ、ありがとうございます...」
「それじゃ、またね。」
肩に鞄を掛け直して隣の部屋に帰ろうとする泉さん。
「あ、待ってください」
まぁ、タッグ組んじゃってるって言うのもあれだし、ここまでしてもらっているのに話さないというのもなんか...ね?
「少し時間あります?話したいことがあるんです。」
......................................................
「...って事なんですよ。」
「なるほどねぇ...」
一通り説明をして一息つく。泉さんも出したお茶を呑んでふぅ、と息をついた。
「人間ならよくある話だけれど、魔物なのね...」
「そうなんですよ、匿ってみたはいいものの、どうすればいいのか...」
むむー、と二人して悩む。ちょっと冷めかけた紅茶を啜りながら。
そして飲み終わってカタンとカップを皿に戻した時、泉さんが切り出した。
「じゃあさ、うちと部屋をつなげちゃおうよ。」
「...はい?」