表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
R-001  作者: 白宮 安海
第一章 自由を求む暴発
8/75

第8話「対立」

 

「自由とは何か知ってるか?」

  ロッドはそう尋ねながら近づいてきた。機械の触手が体内に貫通している痛みに全身が痺れ始める。気管はひゅうひゅうと浅く息を吐き出す。

「自由は──死だ」

  と言いながら、ロッドは指先をネオのこめかみに宛てがった。引きずり込まれそうな赤い眼がすぐそこにある。今までよく見ていたはずの瞳が最早別のもののようだ。諦めるな、そう繰り返し脳へ指令を送る。ザアザアザア。血と雨が混じって地面を流れる。痛みへと神経が集中し、立ち上がれそうにもない。ならば。ネオはポーチの側面に指を滑らせると、ロボット用拘束ワイパーを引き伸ばし、ロッドの足首めがけて投げつけた。ロボットの内部素材に反応する特殊構造をしているワイパーはロッドの足首に絡みついて電流を走らせた。

  「あぁあっ」

 攻撃が効いているのを見て、ネオは気がついた。こいつには痛覚がある、と。だがその好機は瞬く間に終わり、体の中の触手を引き抜かれ更なる痛みに悶絶する刹那、再び今度は致命傷を狙って迫ってきた。──終わりだ。生命本能が覚悟を決めた。しかし、終わりは来なかった。雨が降りしきる音がやけに鮮明で胸騒ぎがする。

  触手に貫通したのは自分ではなく、トルネだった。

 トルネ…!!全ての世界の音が消え去り、コマ送りのように時間が流れる。肩甲骨から無数の黒い尖端が覗き、血が広く滲んでいる。彼女が懐にかかえていたものが水溜りに墜落した。両手に収まる程度の長方形の箱が開くと、オルゴールが流れ出す。とても耳心地のいい金属片の鐘の音がころころと鳴り続ける。箱の中で月と太陽が踊っていた。

「       」

 全身の血管が荒々しく脈打ち大地が震える程、筋肉が引きちぎれそうな程、叫びを上げた。

「ロッ、ド…おめで、とう。たんじょ、び…」

 トルネがか細い声でそう言うと、あとは一言も喋らずに息を絶やした。

 ネオは泥を握りしめ、ひ弱な身体に鞭を打ち、立ち上がるとロッドに食ってかかり、拳に力を込め頬へ向けて勢い良く殴り飛ばした。ロッドは触手を引っ込めながら、吹き飛ばされた。が、すぐに踵で態勢を立て直し、ネオへと向かってくる。ネオは怒りの蓄積から右腕がぼこぼこと膨らみ凄まじい熱エネルギーを溜め込んだ。そして躊躇いなくロッドに向けて放出した。

「ぐあぁぁあああ!!!」全身が引きちぎれそうな高圧。辺りは何も見えず、ただ怒りと憎しみを全て体外に放った。

  目の前には焼き焦げた地面が残っていた。仕留めたと思って膝から崩れ落ちた。だが、後頭部に冷たい指が押し付けられ、背中がゾクリと騒いだ。

「脆い。人間はこんなにも脆く壊れるものか」

 無関心と放棄に満ちた声が耳に響く。トン。指先で僅かに押されただけで体は言う事を聞かずに地面へ倒れた。痙攣をしながらかろうじて呼吸を紡ぐ。意識が遠のき始め、目が眩んでいく。

 ──トルネ…かあ、さん。ごめん、ごめん…また、俺は、なにもまもれなかった。


「良いことを教えてやろう。ネオ」

 景色が暗闇に乗っ取られる間際ロッドは言い放った。

「お前は何一つ守ることなんて出来ないんだ」

 雨に降られ、麻袋のような使い物にならない体が惨めで、精神はどこかへ飛んでいった。

 ──お前は大丈夫だ、ネオ。

 胸の奥で父が最後に柔らかく灯った。


  二人を置いてロッドは歩き出す。そして自由気ままに溢れ落ちる涙の雨を見上げた呟いた。

「これが自由」

 もうこの世界に囚われることはない。自分にも。


一部司令塔の通信サーバーが破壊されていたシヴァ部隊、及びリックとルウがこの場に到着したのはそれから30分後の事であった。しかしその場には、二人の姿は無かった。



 第一章 自由を求む暴発 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ